前腕骨折の重傷例を解説します。骨幹部がポキッと折れた骨折は比較的、障害を残さずに治癒しますが、関節の脱臼を含むような骨折は何かと障害を残しがちです。
 
病態
モンテジア骨折とは、尺骨骨幹部骨折と同時に肘部の橈骨頭の脱臼したものです。原因は、転倒によって手を地面に強く突く、もしくは強くねじると、腕の中で尺骨と橈骨が強制的に回内運動、つまり内側にねじれを起こします。逆に回外、外側にねじれて脱臼することもあります。その時に尺骨は橈骨と強く衝突して骨折し、その衝撃が元になって橈骨は橈骨頭が脱臼してしまうのです。
 下図のようにねじれの方向によって伸展型(左)と屈曲型(右)に分かれます。
 
     ← 伸展型のXP
 ← 伸展型のXP
治療
 徒手整復を基本とします。多くはまず骨折した尺骨をプレート固定します。次に肘部脱臼の整復ですが、橈骨輪状靱帯や方形靱帯(それぞれ尺骨と橈骨をつなぐ靭帯)の断裂を伴う場合、再脱臼を防ぐためワイヤーで固定します。
 
後遺障害
〇 橈骨の脱臼部により肘関節の可動域や、尺骨の長さが変わることにより手関節の可動域制限が起こる可能性があります。したがって肘関節は必須、その他、手関節や回内・回外の可動域制限の有無を確認します。
| 部位 | 主要運動 | ||
| 肘関節 | 屈曲 | 伸展 | 合計 | 
| 正常値 | 145 ° | 5 ° | 150 ° | 
| 8 級 6 号 | 15 ° | 5 ° | 20 ° | 
| 10 級 10 号 | 75 ° | 5 ° | 80 ° | 
| 12 級 6 号 | 110 ° | 5 ° | 115 ° | 
|  ※ 肘関節に参考運動は存在しません。 | 
 
〇 尺骨癒合後の変形については、プレート固定などの観血的手術で整復されれば、まず起きません。念のため、XP(レントゲン)だけではなく、CT(3D)検査を行うとよいです。
 
〇 その他、前腕から手指までにしびれが残存した場合、稀にですが肘部管症候群、前腕の神経麻痺(橈骨神経・正中神経・尺骨神経 麻痺)の可能性を残します。この場合、神経伝導速度検査などで客観的に数値を残す必要があります。
 
 明日は実際にモンテジア骨折で等級認定された例をUPします。
 

 
				
 



