死亡診断書には正式なフォームがあり、記載方法も毎年、厚労省がマニュアルを発行しています。医師はこのマニュアルに沿って記載をしています。国から記載要領が指示されているのです。自賠責保険もこのような診断書作成マニュアルを作成して医師に配れば、世の後遺障害申請者はどれだけ助かることでしょう。後遺障害診断書は毎度、医師の主観・独断で書かれますから、医師が保険や労災の基準を知らなければ、的外れな診断書が頻発することになります。私達もこれで苦労しているわけです。

 やはり、死亡診断書は重要かつ特殊な書類なのでしょう。マニュアルの記載と医師法に沿って確認してみましょう。     (1)死亡診断書、2つの意義

1、人間の死亡を医学的・法律的に証明するため

 客観的な証明書類でなければなりません。人の死亡を証明するに、証明者(医師)による偏見的・独創的な視点では困るわけです。

2、日本の死因統計作成の資料とする

 行政側にとって重要な統計データになります。国が記載方法を指示する理由はここにあります。医師法上も、死亡に限らず診断書の記載はまず、医師の義務であることがわかります。  

第19条2 診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。

  (2)死亡診断書と死体検案書の使い分け

 死亡診断書と死体検案書、名前が違いますが、書式名もそれぞれ併記され、書式は全く同じです。では、どのように使い分けるのか?

○ 死亡診断書

 診療経過中の患者が亡くなり、そしてその死に立ち会った場合。

○ 死体検案書

 ・医師自らが診察していても死亡に立ち会わなかった場合

 ・医師が診察していた時の病気とは関係ない原因による場合

 ・医師自らが診療していなかった患者の死亡の場合続きを読む »

 脳が収まった頭蓋骨と顔面部の境に薄い骨があります。下図の赤い線の部分です。この頭蓋底骨は、頭部への強い衝撃で穴が開く(多くはひびが入る、亀裂骨折)ことがあります。ビール瓶で殴っても折れる可能性があるようです。

 頭蓋骨の底面である頭蓋底は、ちょうど眼の下に位置して、でこぼこで厚さの違う骨で構成され、 多くの孔が開き、視神経、嗅神経、聴神経、血管が走行している複雑な構造となっています。 したがって、この骨折によって、これらの神経の損傷が併発することがあります。

 交通事故受傷後のめまい、失調、平衡機能障害、眼では、視力や調整力の低下などの症状ですが、 傷病名が頚椎捻挫であれば、バレ・リュー症候群として、つまり、頚部神経症状として後遺障害が審査されます。先の諸症状を訴えても、多くは、14級9号が限界となります。視覚、嗅覚、聴覚の障害が交通事故の後遺障害として審査されるには器質的損傷、つまり、骨折があることを立証しなければなりません。ここで発生する最大の問題点が、頭蓋底骨折の見落としです。 続きを読む »

 違いが曖昧な用語について整理したいと思います。知っているつもりが、具体的な説明に窮してしまう専門用語はいっぱいあります。立ち止まって勉強する毎日です。  

脳死と植物状態

 脳死とは、呼吸・循環機能の調節や意識の伝達など、生きていくために必要な働きを司る脳幹を含む、脳全体の機能が失われた状態です。事故や脳卒中などが原因で脳幹が機能しなくなると、回復する可能性はなく二度と元に戻りません。薬剤や人工呼吸器などによってしばらくは心臓を動かし続けることはできますが、やがて(多くは数日以内)心臓も停止してしまいます(心停止までに、長時間を要する例も報告されています)。植物状態は、脳幹の機能が残っていて、自ら呼吸できる場合が多く、回復する可能性もあります。脳死と植物状態は、根本的に全く違うものなのです。

 ←脳全体  続きを読む »

 非器質性精神障害とは、脳神経に外傷がない精神的な障害を指します。その代表的な傷病名であるPTSD(心的外傷後ストレス障害)は一般的に知られるようになってきました。現代人の4人に1人は日常や仕事に強いストレスを感じており、心療内科の診断・カウンセリングを受けている人も20人に1人との統計データを目にします。もはや、心の病気は国民病の様相です。当然ですが、交通事故を契機に重度な症状に陥る方もおります。

 交通事故の被害にあえば、誰もがブルーになります。ケガの痛み、治療の苦労、保険会社との折衝でイライラ、その他、労災やら健保やらが絡んで・・まさにストレスの大洪水です。夜も眠れず、事故の場面が常に頭から離れない・・これでは皆、程度の差こそあれ、鬱になってしまうでしょう。

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 しかし、それが治らないもの=後遺症として、日常生活や仕事に深刻な支障をきたし、専門医の継続的な治療が必要な疾病と認められるには、一定の基準が存在します。それがタイトルの2大ポイントです。加えて、症状の程度や既往症(事故前からの心身症治療歴)も検討されます。自賠責保険では、とくに事故との因果関係を重視します。

 専門的な解説ではなく、わかりやすい実例から説明しましょう。    1、死を意識するような事故状況であったのか?   ○ 多重衝突で潰れた車に長時間、閉じ込められて、ガソリンが漏れている中、救出されるまでの恐怖で・・。   ○ 自動車が壁に衝突し、脱出できないまま、血だるまとなった隣の家族が息を引き取るまで見届けた・・。   続きを読む »

 毎度、ムチ打ちでの認定でお世話になっている14級9号、骨折など器質的損傷がなくとも、受傷~症状固定までの経緯から、後遺症の存在を推定して認定となります。

 それは自然に認定されるものではありません。あるべき治療経過を辿り、丹念に症状を説明することによって信憑性を高め、認定を勝ち取らねばなりません。

 本件の場合はくも膜下出血が軽微で、その後、脳挫傷の痕や脳萎縮など器質的な変化がありません。それでも慢性的な頭痛と結びつけて説明をしました。    私達プロは、常に正しい軌道に被害者さんを乗せることを考えています。  

14級9号:外傷性くも膜下出血・頭痛(40代男性・千葉県)

【事案】 原動機付自転車搭乗中、側道から出てきた自転車を避けようとして転倒したもの。CTでくも膜下出血の診断となる。幸い、出血は微小で、数日後には消失した。   【問題点】

相手は無保険の自転車であり、非接触事故ゆえ、責任関係が争いに。また、3ヶ月前にも事故に遭っており、その時のケガと切り分けて障害を立証する必要があった。   【立証ポイント】

加害自転車との争いを避け、治療費は労災でまかない、その他補償も人身傷害に請求する形で進める。

後遺症は前回事故と被らないよう、くも膜下出血を機点とする頭痛に的を絞った。

結果、先事故の鎖骨骨折、併合11級認定とは別に、頭痛で14級9号の認定を得て、人身傷害からの支払いにて解決させた。 tc1_search_naver_jp続きを読む »

 本日の病院同行は、脳外傷で意識が回復しない被害者さまです。眼球運動はややあるものの、動くこと、話すこと、表情を表すことがまったくできません。意思疎通不能、完全介護状態です。最近は使われていない言葉ですが、植物人間の状態になります。  df7df77d

 事故受傷からもうすぐ3ヶ月、急性期治療はもはや成すすべもなく・・現時点の所見を主治医にご家族と共に伺いました。主治医は「意識が戻るなど、少しでも改善する可能性は0ではないが、ほぼ例がない」と断言しました。それでも家族は「はい、そうですか」と簡単に受け入れることはできません。「なんとか・・わずかでも・・可能性があれば・・どんなことでもします・・お父さんの意識を戻すことはできませんか」何度も何度も医師に食い下がります。医師はその言葉を一つ一つ丁寧に受け止めますが、やはり答えは限りなくNOなのです。家族の顔に疲労と絶望が入り混じった陰が差します。

 映画「レナードの朝」のような奇跡が起きればよいのですが、奇跡はあくまで奇跡です。最近ではミハエル・シューマッハが覚醒した例(脳損傷による昏睡状態からおよそ5ヶ月で覚醒した)が有名です。

 続いて、私は転院の打合せ、必要な診断書、その他必要な事務について医師や事務方に働きかけて現場の調整を図りました。家族だけでこの難局を乗り切るのは相当にヘビィです。

 そして、帰りに被害者さんへ直接、挨拶をしました。ご家族と共に大声でしっかりと話しかけます。聞こえているかどうかはわかりません。しかし、漫画のブラックジャックで、”植物状態の患者の心が生きていて、実は周囲の会話をすべて理解していた”話がありました。私はそれがどうしても頭から離れないのです。

  「お父さん、秋葉と申します。色々とお手伝いさせていただいています。長いお付き合いとなりますが、今度ともよろしくお願いします!」 さらに、

「もし、聞こえていたらまばたきを2回して下さい!」

   すると、なんとなくまぶたが動いたような(!!!)偶然かもしれません、しかし、それだけでも家族にとっては希望です。これからもこのような声がけをご家族は続けていくと思います。

  (追補)  勉強のため随行した今月入所の新人(補助者)にはよいOJT、いえ、人生経験になったと思います。言葉は要りません、これがMC(メディカルコーディネーター)の仕事なのです。  

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