「自動車保険の更新、ちょっと待って! もっと安くなるかもしれませんよ!」

 通販型自動車保険の宣伝、その決め文句ですが、毎年自動車保険の更新について細かく検討している人は少ないと思います。何と言っても分かり辛い。字が小さい。どこも同じでしょ・・・そんな印象からじっくり証券やパンフレットを見ることは少ないと思います。そして「昨年と同じでいいです」と更新します。しかし私たちのように交通事故、自動車保険に深く関わる仕事をしていますと、保険内容の細部にまで注目しています。

 昨年の更新で保険証券に若干の変化がありました。以下保険証券から抜粋した『人身傷害特約』の欄をご覧下さい。


(クリックするとはっきり見ることができます)

『無保険車傷害』⇒ 注:『人身傷害で補償されます』

   …ん、これはどういうことでしょうか?

 さりげなく書かれていますが、これは被害者にとって隠れた大問題です。
 

 まずは『無保険車傷害特約』からおさらいしましょう。これは保険に入っていない、支払い能力のない加害者にケガをさせられた時、もしくはひき逃げ被害などで相手から補償が受けられない分を自分の自動車保険で補償してくれる有難い特約です。あまり馴染みのない保険ですね。もう少し説明を加えましょう。

 ある時、自動車事故に遭って大ケガをしました。死亡事故はもちろん、後遺障害を負うようなケガとなると賠償金は大金になります。また車の修理費を相手はちゃんと補償してくれるでしょうか?「相手の保険から払ってもらうので大丈夫では」・・このように考える方も多いと思います。しかし、相手が任意保険に加入していなかった場合、相手はすんなり自身のお財布からお金を払ってくれるでしょうか?任意保険に入らない精神の持ち主ですよ。もしくは掛け金が払えない経済状態?・・このような人からお金を取ることは絶望的です。

 それでは、任意保険に加入せずに走っている自動車はどのくらいあるのでしょうか?

 任意保険の加入車は各社の統計で容易に割り出せます。そして全登録車を分母にすれば、大まかな加入率が割り出せます。最新の統計を見てみましょう。

 全保有台数78660773台の内、対人・対物賠償の加入率の全国平均は73.4%です。(平成23年3月末 損害保険算出機構データ)

 使用していない自動車を差し引く必要がありますが、約80%が保険加入車と想像できます。そうなると任意保険に加入しないで走っている自動車は2割ほどということになります…。5台に1台、けっこう多いと思いませんか。

 「自賠責保険(強制保険)があるから大丈夫」、このような反論もあるかと思います。多くの方が誤解していますが、強制保険は補償が非常に限定されたものです。死亡の場合3000万円、後遺障害の場合4000万円、加えてケガの補償は120万までです。大ケガの場合、当然足りなくなります。そして対人賠償限定なので、車の修理費など物の損害はでません。
 このような場合、ケガをしたご自身が自動車任意保険に加入していれば、『人身傷害特約』もしくは『無保険車傷害特約』で補てんすることが可能です。ちなみに車の損害の場合は『車両保険』です。自分が悪くない事故の時に自分の保険を使うのは理不尽ですが、これにより一定の救済が図れますので、「入っていてよかった~」ことになります。

  
 ちなみにゴールデンウィークに『無保険車傷害特約』を取り上げましたところ大変な反響を頂きました。 (時間のある方→ GW特集 自動車保険の 「隠れ特約①」 )

 保険関係者でさえ目に鱗、無保険車による被害者さんもようやくこの特約の仕組みが理解できたとの感想でした。それに気を良くしたわけではないのですが、言い足りない事を続けたいと思います。それは保険制度の理念に関わる問題でもあります。

 なんとなく加入している自動車保険ですが、よく知られていない部分も多く、実際に事故が起きてみないとその効果がわかりません。また、新しい特約を作るからこそ様々な矛盾・問題点が生まれます。保険会社もそれを感じているからこそ適時、約款改定の必要に追われています。

 今日から数回、自動車任意保険の約款改定について続けます。そして近年、もっとも悩ましい『人身傷害特約』と『無保険車傷害特約』の関係調整を取り上げます。

 ついに自動車保険・最大のタブーについて切り込みます。乞うご期待!
 

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