これから自動車保険の深部に踏み込みますが、まず自動車保険の基本的な理解が必要と思います。今更ながらですが、少しお付き合い下さい。

 自動車保険は<賠償保険>と<補償保険>そして<特約>の3つから構成されています。

<賠償保険>

■ 対人賠償責任保険  

 自動車を運転していて誰かをケガさせた。その金銭的償いと代理交渉をします。

■ 対物賠償責任保険

 自動車を運転していて誰かの物(自動車をぶつけて)壊した。その金銭的償いと代理交渉 をします。

<補償保険>

■ 人身傷害保険

① 運転者、同乗者が契約している自動車に乗っているときにケガをした場合、実際にかかった金銭の補償をします。

② 契約者とその同居の親族が歩行中や自転車走行中に他の自動車と事故になったとき、他の自動車に乗っているときにケガをした場合、実際にかかった金銭の補償をします。

③ 契約者とその同居の親族が自転車や他の乗り物(電車、バス、飛行機等、主に公共交通機関)に乗っているときにケガをした場合、実際にかかった金銭の補償をします。

★ ①②③すべて含むのが原則ですが、①のみ選択した契約も可能です。また③は各社廃止の傾向です。

■ 搭乗者傷害保険

A: 運転者、同乗者が契約している自動車に乗っているときにケガをした場合、死亡の場合、死亡金額、後遺障害の場合その等級による金額、入通院の場合、部位や重さにしたがって定額でお金がおります。

B:運転者、同乗者が自動車に乗っているときにケガをした場合、死亡の場合、死亡金額、後遺障害の場合、その等級による金額、入院や通院の場合、その日数×保険日額で計算してお金がおります。

★ 契約の際、AかBの選択となります。またAのみ販売の会社が多くなっています。またAの死亡・後遺障害を含めない契約も増えています。
              

<車両保険>

自分の車が事故で壊れた、いたずらにあった、水没したなどの場合、修理費を支払います。修理費が車の価値(契約金額)を超えたら全損となり、契約金額全額がおります。
                    

<特約>

 たくさんあるので、自分のケガについて補償される特約だけ挙げます。これらは各社ほぼ共通の内容で自動的に保険に含みます。

■無保険車傷害特約 

 保険に入っていない、保険が足りない、支払い能力のない加害者やひき逃げ等で相手が不明の場合、自ら加入の保険が代わりに支払います。契約自動車に乗っていても、歩行中や自転車、他の車(任意保険に入っていない)に搭乗中でも適用されます。
 死亡、後遺障害の場合に限定されます。会社によって最高2億円、もしくは無制限となっており、実際にかかった金銭の補償をします。

■自損事故特約

 読んで字のごとく、自爆事故や100%自分の責任で事故を起こし、ケガをした場合に死亡1500万円、後遺障害は等級に応じた所定額(1500万円限度)、介護費用200万円、入院6000円/1日、通院4000円/1日の保険金がでます。

 さて、以上から気づいたと思いますが、だぶって支払われる保険・特約と、どちらか選択すべき保険・特約があります。「人身傷害保険」と「搭乗者傷害保険」の補償内容は最初から選択して契約することができます。「搭乗者傷害保険」は完全に別枠で重ねて支払われる為、問題はありません。しかし自動的組み込まれている「無保険車傷害特約」と「自損事故特約」は「人身傷害保険」と自動的にだぶってしまいます。

 どっちの保険から支払うのか?どっちの基準が優先されるのか?

 これが悩ましい問題の発端なのです。

そもそも自動車保険の基本構成(昔はPAPと呼びました)は、

 対人賠償 (無保険車傷害特約 自損事故特約を自動的に含む)
   +
 対物賠償
   +
 搭乗者傷害保険

 このようになっており、人身傷害保険が存在しなかったのです。

 「人身傷害特約」、これは平成10年10月、東京海上火災保険(株)によって発売され、瞬く間にすべての自動車保険に定着しました。 鳴り物入り、アメリカから輸入、夢の特約の販売です。

 自動車保険業界の黒船、リア・ディゾンとなったのか?(古い例えです(^^;)

                                               つづく