舟状骨裂離骨折(しゅうじょうこつれつりこっせつ)


 
(1)病態

 足の舟状骨は、足の内側にあって、土踏まずの頂点に位置し、体重を支え、足の踏み出しでは重要な役目を担っています。

緑のカーブは、足の縦のアーチであり、その頂点には舟状骨があり、アーチを支えています。
そして、舟状骨には、内側の縦アーチを形成するオレンジ色の後𦙾骨筋腱が付着しています。

後𦙾骨筋腱が強く収縮することにより舟状骨が剥離骨折しています。
舟状骨裂離骨折とは、舟状骨に付着している後脛骨筋腱が剥がれる、
つまり、舟状骨が剥離骨折していることです。

 
(2)症状

 激痛で、歩くことができません。直後から腫れが大きくなり、皮下出血が見られます。
 
(3)治療

 舟状骨の剥離骨折は、MRIで確定診断されています。現在では、保存療法よりも、アンカーボルトで締結する積極的な固定術が主流となっています。
 
(4)後遺障害のポイント

 舟状骨裂離骨折の単独損傷で、早期に固定されたものは、完治し、後遺障害を残しません。合併する傷病名の経過を観察し、後遺障害を立証していくことになります。
 
(5)交通事故110番の経験則

 52歳の男性会社員が、大阪の交通事故無料相談会に参加されました。犬の散歩中に、高校生が運転する自転車の衝突を受け、土手下に転落した事故発生状況で、傷病名は、右足関節の両果骨折です。骨折は、保存的にギプス固定されたのですが、4カ月を経過しているのに、疼痛が続いており、交通事故110番のホームページに掲載されている有痛性外脛骨を疑って、相談に来られたのです。診断書に記載されていない傷病名ですが、被害者自身が疑って、相談会に参加されることはよくあることで、この相談をきっかけに、腓骨神経麻痺を発見したこともあるのです。

 早速、チーム110のスタッフが同行し、懇意にしている専門医の診察を受けました。専門医は、触診だけで外脛骨は認められず、したがって有痛性外脛骨はあり得ないと診断しました。その後のMRI撮影で、舟状骨が剥離骨折しているのが確認され、舟状骨裂離骨折の傷病名が確定、受傷から4カ月を経過しての確定診断であり、剥離された骨片は大きく移動しています。そこで、アンカーボルトによる内固定術が行われました。アンカーボルトは、そのまま留置することにして、受傷から7カ月目に症状固定としました。

 専門医に後遺障害診断を依頼し、右足関節の内・外果骨折による関節の機能障害で10級11号が認定されました。
 
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