立方骨圧迫骨折(りっぽうこつあっぱくこっせつ) = くるみ割り骨折

(1)病態

 立方骨は、足の甲の真ん中から、やや外側に位置しており、前は小指と薬指の根元の中足骨、後は、かかとの骨=踵骨と連結して関節を形成しています。強い外返し捻挫により、立方骨は、踵骨と第4、5中足骨でクルミのように挟まれ、踵骨・立方骨関節面の軟骨下骨が潰されて骨折するのです。立方骨は足のアーチの要となる骨で、体重が乗ったときに、他の骨とともに衝撃を吸収する役割を果たしています。立方骨にゆがみが生じると足全体の構造が崩れ、扁平足をきたします。

 交通事故110番の相談例では、自転車やバイクVS自動車の出合い頭衝突で、複数例を経験しています。最近では、駅構内の階段を1段踏み外し、左足を外側に捻挫、くるみ割り骨折となった被害者から相談を受けました。捻挫の瞬間、ボキボキって音が足から聞こえてきたそうで、手摺にしがみついて、なんとか転倒は免れたのですが、直後は、激痛で、一歩も歩き出すことができなかったとのことです。人身傷害保険の対応ですが、骨折部の疼痛で12級13号が認められました。
 
(2)症状

 足を外側に捻って、強く捻挫したときに、足の外側部が腫れ、強く痛み、歩くことができません。捻挫と診断され、放置されることが多く、痛みが長期間、継続します。
 
(3)治療

 XPでは、踵・立方骨関節面に沿って骨折線が認められます。初期のXPで発見できないときでも、骨萎縮が始まる3週間前後のXPで確認することができます。治療は、麻酔下で徒手整復後、ギプス固定、その後、硬性アーチサポートで外側縦アーチが保持されていれば、平均的には3カ月前後で骨癒合が得られ、骨折部に疼痛を残すことも扁平足に発展することもありません。
 
 2013年9月、西武の 炭谷銀仁朗捕手は、本塁上で走者と交錯した際に左足の外側を痛め、左足立方骨亀裂骨折と診断されました。しかし、彼は1流のアスリートであり、優勝のかかった終盤戦で離脱することは困難な事情もあり、その後も捕手として休むことなく活躍しました。サッカー選手やマラソンランナーでも、立方骨の疲労骨折が複数例報告されています。疲労骨折であれば、交通事故外傷として後遺障害の対象にはなりません。主として外返し捻挫を解説してきましたが、内返し捻挫の受傷機転では、二分靭帯による立方骨剥離骨折を発症することがあります。
 
(4)後遺障害のポイント
 
Ⅰ. 立方骨圧迫骨折は、強い捻挫として見過ごされ、放置されることが多いのです。交通事故110番の経験則でも、初診段階で立方骨骨折と診断されたものは1例もなく、全てが足関節捻挫でした。足関節捻挫と診断されたものの、疼痛が続いており、歩行困難をきたしているときには、立方骨骨折、踵骨前方突起骨折を疑い、専門医を精査目的で受診しなければなりません。
 
Ⅱ. 受傷直後に、立方骨骨折が診断され、適切な治療が行われていれば、治癒します。つまり、非可逆的な骨折でもない限り、後遺障害を残さないということです。

 ところが、大きな足関節捻挫と診断され、湿布程度の処置で放置されたときは、リハビリを続けても疼痛の改善はなく、ひどい痛みの訴えに重い腰を上げ、CT撮影で立方骨骨折が発見されても、とき、すでに遅しで、手の打ちようがありません。オペが選択されることも少なく、残存症状は後遺障害の認定で決着をつけることになります。XP、CT 3Dで変形性骨癒合や扁平足を立証しなければなりません。ただ、「痛い」では、等級が認定されることはないからです。これらが丁寧に立証されると、12級13号の認定は確実なものとなります。

 扁平足は、常に関心を持って対応していますが、足部の外側縦のアーチが崩れても、それだけで扁平化することは少なく、この領域で等級が認定されたことは、現時点、弊所ではありません。
 
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