(1)病態

 リスフラン関節部分を詳しく見ると、靱帯が、それぞれの骨をシッカリと締結しています。オレンジ色の靭帯が、リスフラン靭帯です。

 水色で囲んだ靭帯は、隣り合う骨どうしを互いに締結していますが、リスフラン靭帯だけは斜めに走行し、斜め下の第2中足骨と楔状骨を連結しています。


 足の骨を横から見ると、リスフラン関節部分の頂点部は、足のアーチの頂点と一致しており、足部に体重がかかったときに、この関節がクッションの役目を果たしていることが分かります。
 
(2)症状

 直後は、痛みが強く、歩行が困難となります。リスフラン靭帯が損傷すると、つなぎ止めていた骨同士の連結が無くなり、矢印の様に骨の間の隙間が開くようになり、このことを、中足・楔状骨間離開と言います。つまり、靭帯が切れて、骨どうしをつなぎ止めることができないので、 リスフラン関節部分が不安定な状態になり、アーチ構造が崩れて、体重をかけたときに痛みを生じるのです。
 
(3)治療

 体重をかけた状態で、健・患側のXP撮影を行います。リスフラン関節が断裂しているときは、中足・楔状骨間離開がハッキリと確認できます。

 XPで、左右差がハッキリしないものは、離開部分を寄せてギブス固定が行われています。およそ1カ月後にギプス固定を解除し、足底板を装用させ、リハビリを続ければ、改善が得られます。

 離開の大きなものは手術の適応です。手術治療では、スクリューやワイヤーで整復固定が行われます。慢性化したものには、関節固定術で対応されています。最近では、靭帯再建術を実施している治療先も見られます。
 
(4)後遺障害のポイント
 
Ⅰ. 専門医が確定診断し、早期に、適切な治療が行われたものでは、後遺障害を残しません。
 
Ⅱ. リスフラン関節の脱臼骨折では、一般的には、ほとんど後遺障害を残すことはないと解説しました。しかし、それは、あくまでも一般論で、交通事故で加わる外力は、スポーツの比ではなく、さらに、被害者の身体能力も、それほど鍛えられていないことがほとんどです。

 痛みを残していれば、3DCTで骨癒合状況を、靱帯損傷はMRIで立証することにより、神経症状による14級9号12級13号のいずれかの認定を視野に入れます。両者の違いは、画像上、明瞭に変性が残ったか否かです。

 近時の認定例では、初回申請で「変性が見みられない」と非該当になった件がありました。それに対し、異議申立を敢行、画像や医師の意見書で立証しましたが、14級が精一杯でした。理由はやはり、画像上の変性が、手術をするほど明確ではなかった点です。明確な転位や変性があれば、歩行に支障をきたします。前述の通り、改善させることが普通なのです。実際の痛みや不具合の程度からも、14級を飲むことにしました。(現在、訴訟に係累しています。解決後に実績をUPします)
 
Ⅲ. もう1つは、陳旧性、古傷化したものがMRIで発見されたときの対応です。
 
 これは、交通事故110番:無料相談会での経験則(5)から解説します。
 
(5)相談会での経験則
 
 素足にクロックスを履いた男性、30代前半が、東京の無料相談会に参加されました。秋葉の向いに着席しましたが、歩行は至って普通でした。訴えは、足の甲の部分を押さえると激痛が走り、歩行時の痛みが強いとことです。足の甲が、ほんの少し、腫れぼったく、第1中足骨近位端部を軽く押すと、痛みを訴えます。ただし、激痛ほどではありません。

 事故後、8カ月を経過して撮影されたMRIで、僅かな中足・楔状骨間離開が認められました。ほぼ、リスフラン靱帯損傷の状況ですが、診断書の傷病名は、足関節の打撲・捻挫となっています。その後、治療先のカルテを取り寄せて検証しましたが、リスフラン靱帯部の痛みの記載はありません。

 損保から打ち切りを打診され、納得できないので受診した医大系の病院でMRI撮影を受け、靱帯損傷の可能性を指摘されたのですが、事前認定の結果は非該当で、憤慨しています。代表の宮尾氏は、治療先のカルテに、事故直後から症状の訴えの記載がなく、本件事故との因果関係を立証することが不可能であると結論しました。 受傷直後に、リスフラン靱帯損傷と診断されていることが理想ですが、主治医の診断力次第です。専門医でなければ、ほとんどで、足関節捻挫と診断されている現状です。

 傷病名の診断がなくても、足の甲部分に激痛と歩行時の痛みなどの自覚症状があり、それらがカルテに記載されていれば、その後に傷病名が確定しても、なんとか、滑り込みセーフで14級9号でしょうか。被害者の本音は、偶然、医大系の病院で靱帯損傷の可能性を指摘されたので、これを根拠として後遺障害の獲得を画策しているように見えるのです。素足にクロックスで相談会に参加しているのですから、訴える痛みも、あやふやです。この期に及んでの救済は困難なのです。
 
 よく似た例に、肩腱板損傷があります。追突事故の頚部捻挫に多いのですが、肩の痛みが改善しないので、MRI撮影を受けたところ、腱板部に炎症反応が認められたことを根拠として、やや大袈裟に症状を訴えます。やはり、事前認定では、非該当とされています。交通事故受傷で、右肩腱板損傷を発症したときは、激痛で腕を動かすことはできません。顔面も蒼白で、事故現場から救急搬送されるのですが、非該当例では、ほとんどが、自車を運転して病院に行き、その後、自宅に戻っているのです。つまり、年齢変性による肩腱板損傷が、たまたまMRIに映し出されただけなのです。納得してもらうのに時間が掛かりますが、なんと頑張っても、等級認定はあり得ないのです。画像所見が得られていても、非該当はあり得るのです。
 
 交通事故外傷のセオリーとも言えます 👉 肩腱板損傷の認定、過去記事から 発端編
 
 次回 ⇒ 第1楔状骨々折