日本心身医学会で津田教授(川崎医科大学)によって報告されたレポートによると・・・
 
 「初診患者2000人の内742人(約36%)が心身医学患者で、病気の中で最も多い風邪の2倍である。病状の内訳でみると、肉体的には全く異常がないのに、腹痛や頭痛や手足の痛みや視力の低下を訴えた人が547人 残る195人は、下痢や吐き気がする過敏性腸症候群など、心の状態(病気ではなく、健康度が低下した状態)=心身症だった。」


 
 このように程度の差はありますが心を病んでいる人は多く、3人に1人という臨床上の統計データが存在します。実数のカウントが非常に難しい疾病ですが、通院や薬を服用するほどでもない、軽度の鬱やノイローゼの人は確かに多いようです。

 心身症、これも交通事故外傷と無関係ではありません。例えば自分に何も落ち度がないのにある日、交通事故でケガを負って日常生活に多大な損害を受けます。痛みなどの苦しみに加えて、加害者、病院、保険会社、職場、あらゆる第三者が関係してくることになります。まさにストレスの洪水が押し寄せるのです。先の統計数値では3人に1人が心身症患者です。事故で心の病が発症、もしくは増悪することは想像に難くありません。

 「この患者(被害者)の症状が長引くのは心の病のせいでは?」、対応する医師や保険会社担当者が被害者に対して、このような偏見をもっても無理はありません。誰も自分の苦しみを分かってくれない・・・確かに辛いと思います。しかし、このような状態で相談会にやってきても私たちのできることは限られています。私たちの仕事は交通事故外傷の適正な評価を進め、後に弁護士によりしかるべき賠償金を確保する。つまり、「お金をたくさん取ることです」。身も蓋もない物言いですが、実利ある解決のお手伝いに尽きます。したがって心身症の対応、治療は心療内科の先生の仕事であって、私達には解決できない問題なのです。
  

先日のむち打ち被害者と会話

Aさん:「事故のせいで寝れなくなったので、心療内科で睡眠薬を処方してもらいました。これから心療内科にも通います。」
 
秋葉:「辛いのはわかりますが、後遺障害はあきらめますか?」
 
Aさん:「どうしてですか、事故で精神的におかしくなってしまったのですよ!」
 
秋葉:「半年後、『むち打ちで痛みが残った』と症状を訴えても、Aさんはこれから心身症患者になりますので、症状も心因性、つまり、心の病気のせいとされますよ。心を病んでいる人の訴える『痛い』など、審査側に信用されると思いますか?」
 
Aさん:「そんな・・・」
 
秋葉:「Aさん、お気持ちはわかりますが、弱々しい精神では交通事故賠償の戦いは勝てませんよ」
 
 一定数の被害者さんは、心療内科に通った方が損害賠償で有利になると思っている節があります。このような方には、上記のように叱咤激励することがあります。本当に心身症患者になってしまう場合もありますが、それでも損害賠償は厳しくなります。打撲・捻挫程度の事故、そのストレスで眠れなくなった、鬱になった位では、PTSDの認定など不可能です。治療面では、整形外科よりむしろ心療内科の先生にお任せすることになります。
 
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