真の恐怖に触れる
 
 
 
 

恐怖 双子の老婆

 一卵性双生児ですから、私も子供の頃はよく母と伯母を間違えました。当たり前にそっくりでした。母姉妹の小さい頃や学生時代はおそろいの制服で、写真の通り、それは可愛かったと思います。しかし、月日を重ね、共に老婆と呼ばれるようになりました。かつて、全国的人気の双子のお婆さん、きんさん・ぎんさん(※1)を覚えているでしょうか。仲の良い二人、老いてもそこはかとなく可愛さを感じるものがありました。これが人気の理由だと思います。

 しかし、母姉妹はきんさん・ぎんさんタイプとは別物です。母姉妹は仲が悪いのです。お産の時、母が後に分娩されたので妹となっています。伯母が姉ぶると、負けん気の強い母は、「(生まれた時は、)あたしがあんた(姉)を先に蹴り出したんだ」と言っていました。子宮の中からすでに戦いが始まっていたとは恐ろしい。気の強い5人姉妹の中でたも、母と双子の姉はまさに竜虎、気性の激しさは2トップと言えます。常に熾烈なセンター争いの、前田 敦子と大島 優子(※2)、それどころか、名勝負数え歌、藤波 辰巳と長州力(※3)だったのです。

※1 双子姉妹のタレント、成田 きん(なりた きん)及び蟹江 ぎん(かにえ ぎん)の愛称。100歳を過ぎても元気であったことからマスメディアに注目され、その後、テレビ出演やCDデビューを果たした。その姿は「理想の老後像」と言われ、1990年代の日本において国民的な人気を誇った。(ウィキペディアより)

※2 前田 敦子と大島 優子…AKB48の代表的なセンター。少し古い例えですみません。

※3 藤波 辰巳と長州力…レスラー。新日本プロレスでのライバル。猪木の後継者を巡る名勝負を繰り広げた。すごく古い例えですみません。
  
 他の双子さんを詳しく観察する機会はありませんが、双子は一心同体だからこその近親憎悪もあるのでしょう。実際の関係性など余人には測りがたいものです。母が存命なら今年80歳、その二人が80歳になって、仲良くちょこんと床の間の前に和装で並んで座っている姿を想像して下さい。

 
 

 それこそ、横溝 正史の世界です。

 
 
 

ご存じ、映画『八つ墓村』から、小竹さん小梅さん双子姉妹

 

母姉妹の場合、もっと似ていますから、ドラマ版で一人二役で演じた岸田 今日子さんに近い

 大変失礼なことを言いますが、(役者冥利に感じて頂ければ幸いです)
 

 幽霊よりも怖い。

 
 実際、小さい甥っ子はこれを観て泣きました(正確には、いとこの子ですから従甥、母姉妹からすれば姪の子で又甥)。この子たちも双子ですから泣き声×2、おまけに失禁、これも2倍。数年前、母の実家にてお正月の集まりの際、DVDで流れた八つ墓村(※4)のおかげで居間は阿鼻叫喚、この子たちのトラウマは決定的です。

 ちなみにお年玉も2倍となります。子供の頃に散々伯母達からもらったのですから、これは恩返しです。最近の表現にすると、「受けた恩は返す、(双子だから)倍返しだっ!」。私にとってはお財布の恐怖なのです。

 八つ墓村を流した罰として、私も床の雑巾がけとなりました。母からすれば又甥となるこの又甥と又姪ら、すでに3組も双子が発生しています。母方は遺伝的に双子家系なのです。この事件から、この子達もそれぞれ距離をとるようになるでしょう。
 
 ここでようやく、私は母と伯母、双子姉妹の呪い、否、思いがわかりました。

 集まりの際に並んで座らなかったことを。

  
※4 八つ墓村…横溝 正史 原作の怪奇推理小説。実際の事件、津山三十人殺し(1938年(昭和13年))をモチーフにした、『犬神家の一族』と並ぶ同氏の代表作。映画やドラマ化は当然で、最近まで数々リメイクされている。後述の金田一 耕助とは、一連のシリーズの探偵、説明はいらないと思います。ただし、初映画化の金田一 耕助役が寅さん(渥美 清)のミスキャストは緊張感台無し、かなり痛かった。

 
 母姉妹が顔を合わす場面はおよそ冠婚葬祭に限られています。子供の頃の距離感はさらに広がって、成人以降は意識的にお互い距離を取っていたようです。てっきり、接近するとケンカになるからと思っていました。今まで、この深い意味に誰も気付かなかったのです。

 時を経て、母の逝去でようやくですが、わずかに接近する場面が納棺時に訪れました。母の棺に足元から対峙した叔母は合わせ鏡のようです、思わず「幽体離脱~」とザ・タッチ(※5)のネタを心の中でつぶやきました。

不謹慎ですみません

※5 ザ・タッチ…双子の漫才師。このネタについて、霊能者からこっぴどく叱られたそう。タッチのコンビ名の由来は、高校野球を舞台とした双子の兄弟を描く名作漫画『タッチ』から。序盤に双子の弟が交通事故で亡くなった。

 
 私は、今回の事件から幽霊の謎だけではなく、双子家系の一族にまつわる謎、母と伯母の思いに踏み込むことがてきました。それは、週末探偵の終了と同時に、当たり前の日常が戻ったことを意味します。しかし、それだけではないようです。秘めた故人の心情に触れたことで、言い尽くせぬ感慨を胸に残すことになったのです。
 
 
 
 この原稿を書き終えると、ちょうど、『犬神家の一族のテーマ・愛のバラード』が携帯から流れてきました。偶然にも双子の叔母からの電話です。今年のお盆についてですが、コロナ渦中、後にしましょうとのことです。「(写真嫌いの)伯母さんにもしものことがあったら、母の遺影を貸しますよ」と、冗談の一つでも言いたかったのですが、それより今は横溝ワールドです。犬神家の着信を設定しておいて良かった。まさに映画のエンディングです。金田一 耕助になりきって、秋葉家の亡霊事件を解決した気分に浸ることができました。 

 
 あと、たった今思い出しました。幽霊の正体を近所へ報告していませんでした。 申し訳ないことに山口さんへも! ・・まぁ、幽霊のままでいいか(無責任な金田一)。

  

 先日、呆け顔の父が急にまともな面立ちになって、「母さん、昨日帰ってきたよ。祐二によろしくって」と。認知症患者は一瞬、素に戻ることがあるそうです。何より、伯母は確実にこの3か月実家に来ていないことを確認済です。・・・・・いや、もう探偵ごっこはやめよう。

 幽霊だろうと何だろうと、もはや我が家では存在していることに決めました。 
    
 終劇
 
 長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

 皆様も良い夏休みを。そして、感染対策を徹底できれば、是非ともお墓参りや親孝行を。
 

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