数年前、自動車保険(バイク)のお客さんが高速道路で車へ追突する事故を起こしました。ケガは鎖骨骨折です。命に別条なく、骨折なのでくっつきさえすれば大丈夫と思っていました。その時は後遺障害についての勉強も浅く、損保の研修でも「骨折は後遺障害にならない=プレート固定等の手術が進歩しており治るもの」と教わっていたような気がします。しかし癒合部分の鎖骨が盛りあがってしまい、それが外見上からも確認できます。結果的に鎖骨の変形癒合で12級6号が認定されました。「後遺障害の審査は厳しいものなので審査の結果に期待しないで下さい」、とこのお客さんには説明していましたが、割とすんなり認定となってホッとした事が思い出されます。
鎖骨は、胸鎖乳突筋により上方に引っ張られているため、骨折すると骨折部内側が上方へズレやすいのです。プレートやワイヤーで固定する手術がとられますが、完全に元通りに修復されず変形を残しやすい骨といえます。
5、鎖骨骨折・脱臼
■ 病体
1、鎖骨遠位端骨折
※ 骨折部分の呼び方
・遠位端 ・・・ 心臓から遠い部分。 鎖骨の場合、肩よりの方。
・近位端 ・・・ 心臓に近い部分。 鎖骨の場合、首よりの方。
・骨幹部 ・・・ 骨の中心部分。
ひびが入った程度では保存療法。しかし鳥口鎖骨靭帯損傷を伴う場合、手術が必要となります。そして肩の可動域に制限が残りやすくなります。
さらに怖いのは関節内骨折です。肩鎖骨節(鎖骨と肩関節の結合部)にひびが入るケースで、レントゲンでも見逃されやすい部分です。自然癒合せず関節症変化となると決定的に可動制限が残ります。
※ 肩鎖骨節 ・・・ 鎖骨と肩関節の結合部。鎖骨は肩甲骨の肩峰と鳥口突起に挟まれ、肩鎖靭帯、鳥口鎖骨靭帯で結合されています。
2、鎖骨骨幹部骨折
冒頭の例のあるとおり、上方へ転位(ズレる)しやすく、ひどいと骨折部が皮を突き破り、飛び出す(開放骨折)こともあります。その為手術による整復が後の癒合具合を左右します。また神経血管損傷も伴うケースもあり、上腕神経叢麻痺のチェックも必要です。
3、肩鎖骨関節脱臼
肩を下にした転倒により発生します。肩鎖靭帯のみの損傷で亜脱臼、鳥口鎖骨靭帯も損傷すると完全脱臼です。完全脱臼の整復位保持には手術が必要ですが、脱臼が残存しても機能障害はほとんどないとされています。
この肩シリーズ、文章の説明だけでは限界を感じます。肩は人体で最も可動域が広く、複雑な関節と言えます。近日模型写真やイラストを挿入してよりわかりやすい内容に改編したいと思います。