寝落ち、皆様もご経験の”お酒を飲んで帰宅してバタンキュー”とは違います。前触れの無い、突然の寝落ちです。
 

 
(1)病態・症状
 
 ナルコレプシー(Narcolepsy)とは、日中、突如として眠り込む、寝落ちする睡眠発作です。夢遊病、眠れない等、睡眠障害とは逆の症状です。以下に整理します。
 
◆ 睡眠障害(パラソムニア

 寝相が悪いどころではなく睡眠中に起き上がって歩き回る、寝言どころではない大声を出す、いわゆる夢遊病(睡眠時随伴症)はパラソムニアの最悪例です。ノンレム睡眠と呼ばれる深い眠りのときに生じる睡眠障害で、 脳が部分的に覚醒しているため、まるで目が覚めているかにベッドから起き上がって歩き回る症状で、様々な問題を引き起こします。映画や小説のネタに多く取り上げられています。

◆ 不眠症(インソムニア

 不眠は、ムチ打ちはじめ、交通事故のショックから訴える被害者が多いものです。多くは心因性ですので、服薬による回復を期待します。また、頭部外傷による不眠症も少数見られました。眠れない症状は、正確には「入眠障害」と呼ばれ、眠りが浅く何度も目が覚める「中途覚醒」、朝早くに目が覚めてしまう「早朝覚醒」、ぐっすりと眠れたという満足感が得られない「熟眠障害」などに細分されます。これら睡眠に関する問題が1か月以上続き、日中に倦怠感、意欲低下、集中力低下、食欲低下など、様々な体調不良を起こします。
 
 不眠症の薬 👉 新・薬シリーズ(2)不眠症 ① ハルシオン ② レンドルミン ③ ロヒプノール ④ マイスリー 
 
 ナルコレプシーに話を戻します。日常生活において、突如、耐え難い睡魔に襲われ、椅子に座っていても、突如、眠り込んでしまう、ときには、金縛りのような状態で、幻覚などの症状が出現することもあります。自動車を運転中に、この睡眠発作が起こると重大事故の原因となり、大変危険です。

 頭部外傷を原因として発症するナルコレプシーを外傷性ナルコレプシーと言います。高次脳機能障害の症状の1つとして、易疲労性(いひろうせい)があります。肉体的な疲労ではなく、脳が疲れやすくなって、注意力や集中力が低下すると考えられているのですが、重度の症状が外傷性ナルコレプシーです。かつて、交通事故110番の無料相談会で、今まで普通に話していた被害者さんがなんの前触れもなく眠り込んでしまったことがありました。
 
 ナルコレプシーの原因は、オレキシンという神経伝達物質、神経ペプチドが不足していることです。オレキシンは、視床下部から分泌され、覚醒、起きている状態を維持する働きがあります。頭部外傷により、視床下部のオレキシンを作る神経細胞が損傷、破壊されると、外傷性ナルコレプシーを発症すると考えられているのです。
 
(2)治療と検査
 
 治療は、中枢神経刺激薬といわれる目を醒ます薬が処方される薬物療法となります。治療に使用されている薬は、リタリン、ベタナミン、モディオダールの3種類で、共通してドーパミン神経伝達系を増強して、脳を賦活化する作用を持っています。
 
Ⅰ. 治療先は、医大系病院の精神神経科、神経内科となりますが、ナルコレプシーは専門医が限られます。事前に、ネット検索で専門外来を調べて受診してください。
 
Ⅱ. 以下の3つの検査で確定診断されますが、治療先で1泊2日を過ごすことになります。

① PSG、終夜睡眠ポリグラフ検査

 夜間の睡眠中に何らかの異常がないかどうかを確認する検査です。

② MSLT、睡眠潜時反復検査

 日中の眠気の強さを測定するもので、2時間ごとに1日4回、30分づつ、脳波上、つまり医学的に眠気の強さや入眠を測定する検査です。

 PSG検査において、睡眠時無呼吸症候群ではなく、痙攣もない、眠りの深さは十分で、入眠も早いとなれば、病気は否定され、その上、夜間の不眠が原因でないこと、睡眠の持続力不足もなく、心理的要因でもないなど異常が認められず、MSLT検査で、日中の睡眠発作が立証されていれば、外傷性ナルコレプシーが確定診断されます。

③ 補助検査として、髄液オレキシン計測があります。脳脊髄液を採取し、オレキシン量を測定し、オレキシンの免疫活性値が、健常者で得られる値の3分の1以下、または110pg/ml以下で、上記の①②を満たせば、外傷性ナルコレプシーと診断されます。
 
Ⅲ.  投薬による治療は、発作を止め、回数を減らしているに過ぎず、根本的な治療ではありません。したがって、投薬をずっと続ける必要があり、このことが後遺障害につながります。
 
(3)後遺障害のポイント
 
 高次脳機能障害で、症状がナルコレプシー・睡眠障害・不眠症に限定されることはありません。仮に単体の症状として後遺障害を判断するのであれば、12級13号に該当します。多くは、他の諸症状と一括して障害程度を計り、総合的に等級が認定されます。

 脳に器質的損傷があり、意識障害が伴えば、易疲労性やナルコレプシーは訴えだけで信用されます。したがって、前述(2)のような検査が立証上の手間暇に見合うか・・考えてしまいます。
 
 以下は、睡眠障害に係わる高次脳機能障害の認定例です。
 
 易疲労性 👉 実績投稿:重傷案件の結果が続々と ④ 高次脳機能障害~未経験の症状

 疲労感強く、日中も寝落ちを含め、寝ることが多くなりました。そして、摂食障害(食欲なくご飯を食べない)まで発展しました。その後、体力の消耗が限界を迎え、残念ながらお亡くなりになりました。
 

 不眠 👉 実績投稿:重傷案件の結果が続々と ② 高次脳機能障害~とくに易疲労性、遂行能力

 眠れない、すぐ目が覚める症状に苦しんでいました。ただし、不眠症が被害者さんの最大の苦しみながら、高次脳機能障害の評価上は重きを成しません。症状の一つに加えた感じです。