昨日も担当する被害者と病院へ同行しました。神経心理学検査の結果を聞くためです。
 高次脳機能障害の程度を判定するには、大きく分けて4つの能力の低下を計ります。

1、意思疎通能力 (記銘・記憶力、認知力、言語力) 
2、問題解決能力 (理解力、判断能力)
3、遂行能力 (作業負荷に対する持続力・持久能力)
4、社会行動能力 (社会適合性、協調性)

 これら4能力について6段階評価をして障害等級を判定します。したがってこれらの設備をもち、言語聴覚士等専門家のいる病院にて検査をする必要があります。 診断書に「高次脳機能障害」、「脳神経障害」、「認知障害」と書かれているだけではなんの判定もできません。残念ながらこの神経心理学が可能な病院は非常に限られています。「治療」と「障害立証」は別であることを強く認識して下さい。

 たくさんある検査の中から実際に見学もしくは体験?した検査を挙げてみます。今日から数回シリーズにします。
 

■ 知能テスト

ミニメンタルステート検査(MMSE)
長谷川式簡易痴呆スケール(HDS-R)

 見当識、注意力、言語、模写などの認知、計算などを観察します。「今日は何月何日ですか?」「ここは何県ですか?」など簡単な質問に答えてもらいます。10分程度でできる簡単な検査なので受傷後即実施できます。正常な人であれば30点満点でほぼ満点近くになります。
 この二つの検査はセットで行うことが多く、受傷初期に診断名を認知障害、高次脳機能障害と確定するために行っているようです。本格的な検査は③以降です。

ウェクスラー成人知能検査 (WAIS-R)

 世界で最もポピュラーな知能検査です。内容は上記ミニメンタル、長谷川式の豪華版で、一般に知能検査、IQと呼ばれているのはこれです。言語性(VIQ)と動作性(PIQ)に分けて測定します。

  言語性項目   動作性項目
知識 一般的時効の知識量 絵画完成 注意配分
集中力
単語 言語発達水準
社会的関心
絵画配列 時間的順序や概念の理解
出来ごとの流れと結果の
予想
数唱 即時再生
注意覚醒状態
情報処理能力
積木 構成能力
分析能力
視空間認知
算数 計算力
注意維持
言語理解能力
組合 構成能力
視覚イメージと
操作視空間認知
理解 常識的行動知識
社会的成熟度
過去の経験についての
評価と利用
符号 注意維持配分
処理速度
学習能力
類似 論理的範疇的抽象的
思考
   

 このように幅広く測定するので2時間ほどかかり、高齢者や障害者には大変辛い検査です。私も正直キツかったです。飽きてきて「IQ低くてもいいや」という気分になります。
 現在は改訂版WAIS-Ⅲが主流です。

 次回は言語と記憶に及びます。