整形外科医は痛みを訴える部位に対し、必ずXP(レントゲン)を撮ります。骨折を見逃すことは、二次的に重大な病変を引き起こし、医療過誤の問題に発展する可能性があるからです。しかし、残念ながら医師でも見落とすことがあります。私は医師の見逃した骨折を発見したことが過去4回ほどあります。これは私の読影力を自慢しているのではありません。多忙な医師は軽傷(と見える)患者のXPを長々と診ている時間がありませんが、逆に私は「骨折はないかね~後遺障害はないかね~」と常に血眼になって画像とにらめっこだからです。

 本例は医師が「踵骨骨折」と診断し、それに私も調査事務所も振り回された案件です。その顛末を。

 

14級9号:骨折はあったのか?

【事案】

T字路で自動車停車中、右方より自動車が左折してきたため正面衝突した。その際、ペダルに掛けていた右足を骨折した。

【問題点】

骨折の診断だが、私から見ても骨折部が見当たらない。骨挫傷レベルも皆無。自覚症状も踵に体重をかけると痛む程度。

【立証ポイント】

CT検査も検討したが、骨折がないという「逆証明」をしてしまうようで怖い。また、MRIを撮れば内部に骨傷を発見できるかもしれない。でも、それならただ事じゃない痛みとなるはず。もやもやっとしたまま主治医の診断名と、残存する症状を丁寧に説明した診断書で申請をかけた。案の定、調査事務所の方から「骨折はどこ?」の問い合わせがきた。そこで、主治医に再度、レントゲンに骨折箇所をペンで記載(〇印)頂き、追加提出する。そして調査事務所の方と電話で、「まぁ、よくわからないけど14級をお願いできないかな?」と談判し、「しょうがないですね・・」と認定。
残存する症状にウソがなければ、推測で認めてくれるのが14級9号。でも、むち打ちではこのような談判は通用しませんよ。

 
 私は骨折があったとは思っていません。それでも医師が診断し、本人がそれなりに痛みを抱えているのですから・・