本文は社長さんからよくある質問に対しての回答になります。労務災害に際し、会社側がとるべき対応を時系列で解説します。
第3話 労災が円満解決・紛争化の分岐点
(1)まずは、労災適用
(建設業を除く)中小企業は、掛金のことを考える必要はほとんどのケースでありません。速やかに、ケガをした従業員に労災適用を進め、労働者保護の姿勢を打ち出すべきです。労災では、治療費全額、最初の3日を除いた休業補償が適用されます。後に後遺症となった場合の障害給付も続きます。つまり、手厚いのです。ここで、変にぐずぐず労災適用を遅らせると・・・被災者は労基にたれ込むか、弁護士に相談する可能性があります。
(2)会社の責任は?
労災事故、会社側に責任はあったのか・・・もちろん、会社側に明らかなミスがあれば、被災者から追及される立場です。しかし、前述(1)の通り、労災が適切に被災者を保護すれば、責任追及はぼやけることが多いようです。会社に明らかな問題があってもなくても、「安全配慮義務違反」が問われます。
この「安全配慮義務違反」は、判例をみてもケースバイケースで、労災事故のすべてにあると言えばある、取って付けたように問われるものです。実際は、このような法的判断を持ち出すまでもなく、労使間で穏便に済ませたいところです。
(3)労災の障害給付こそ、円満か紛争かの分岐点
労災を含め適切な対応を進めてきた会社側であっても、被災者から更なる要求があった場合、それは金銭要求に他なりませんが、会社vs社員の構図は決定的です。労使間に対立が生じてしまえば、もう、この社員は会社に残ることはないでしょう。その決断のタイミングこそ、軽傷者であれば速やかな労災適用であり、重傷者の場合は、続く障害給付の提示でしょうか。これまでも、障害給付を手切れ金として退職、労使間の決着を付けてきました。仏の対応は労災提示までです。
労災の障害給付の提示が、まさに分岐点と思っています。弁護士を使うにも、使用者賠償責任保険に加入しておけば安心です。それほど掛金は高くありません。
(4) 被災した社員を雇い続けること・・・
善良な会社、温情のある社長こそ、障害を負った社員であっても、便宜を図って雇い続けてくれます。しかし、秋葉の経験では、結局は会社との関係が壊れて辞めるケースが多かったように思います。定年近く、会社との人間関係が強い古参社員であれば、あと数年なので上手くいきますが、若い社員に対して、障害を負わせた負い目を持ったまま雇い続ける・・・どうも上手くいかないのです。他の社員に対しての公平さを欠くことや、一度被災者となる社員は、今後も何かとケガをして休む、何度も被災する傾向だからです。社長さんは、残念ながら、そのような将来像を考える必要があると思います。
つづく ⇒