昨年の高次脳機能障害の受任数は5件と少なく、ここ5年間で最低でした。少なからず、弁護士など、他事務所にご依頼されたのかも知れません。できれば、より専門性の強い私達を頼ってもらいたいところです。それは、私達の実績ページを開けば、ご納得頂けると思います。
 
 さて、10年前に比べ、高次脳機能障害に対する理解が広がったと思いますが、まだ、現場では本件のようなことが頻発しています。

 脳外傷を負った被害者さんは当然、脳神経外科での受診となります。患者さんの多くは脳溢血で倒れた高齢者と言えます。意識回復後、あるいは手術後、後遺症が残らぬようリハビリ訓練となりますが、命に別状なく、言語障害や高度な麻痺がなければ、「後遺症が軽くて良かったですね、では、明日退院でいいですよ」と判断されます。高齢者の場合はとくに、ある程度の症状は高齢による衰えとされ、その後は認知症と混ぜられてしまい、交通事故による後遺障害がぼやけてしまうのです。

 本件は、弊所の医療ネットワークから専門医の診断を仰ぎ、事なきを得ました。世の中には高次脳機能障害が見逃されてしまう高齢者がたくさんいるのではないか、そのような危惧を持っています。困っているご家族がこのHPにたどり着くことを祈っています。

医療ネットワークがなければ絶望的でした
 

7級4号:高次脳機能障害(70代男性・埼玉県)

【事案】

横断歩道歩行中、対抗右折自動車が衝突、受傷した。意識不明のまま救急搬送され、外傷性クモ膜下出血の診断となった。

(参考画像)

意識が回復後、外科的な処置が済むとリハビリの為、転院となった。幸い、記銘力(記憶力)は深刻な問題はなかったが、注意能力、同時処理能力がそれぞれ低下がみられた。また、歩行は可能だが、軽度の半身麻痺も残存してした。

【問題点】

退院後、続けてリハビリ通院を希望も、主治医の判断は「必要なし」。また、後遺障害診断書の作成についても打診したが、これも拒否される。紹介元である救急搬送先の病院の主治医に戻って、後遺障害の診断を求めたところ、ここでも神経心理学的検査の実施、及び後遺障害診断書の記載に否定的であった。

つまり、2箇所の治療先共々、高次脳機能障害の認識がない。

【立証ポイント】

やむを得ず、主治医に紹介状を書いて頂き、高次脳機能障害の専門院にお連れした。ここでようやく、リハビリ治療の継続と神経心理学的検査の実施をして頂けることになった。そして、一定の治療後に後遺障害診断書を作成して頂いた。

また、家族から退院後、本人が日常生活を送る上で現れた症状のエピソードをメモに残して頂き、最後に日常生活状況報告書に詳細にまとめた。

被害者請求の結果、高次脳機能障害で7級4号が認定された。なお、半身麻痺は高次脳機能障害の症状の一つに含まれての評価であった。