高齢者の多くは、事故の衝撃から一か所の骨折で済まず、複数の骨折(多発骨折)となる傾向です。本日の例は昨日の両手首と片足を骨折した被害者と同一です。つまり、四肢の内3本、おまけに鎖骨・肋骨・骨盤も折れた。さらに、骨折は無かったが、脊椎は過伸展損傷(簡単に言うとエビぞりになってひどく痛めた)で手術となりました。

 もう、これだけ人体の破壊があれば、80歳を超える年齢から車イス脱却は大変、歩行器や杖なしの独歩はほとんど不可能です。介護等級も容易に認められました。しかし、自賠責の認定基準からは、受傷箇所にそれぞれ等級を付けて、併合○級との判断に留まります。骨折後、各機能が弱ってしまうことは二次的な障害ですから、直接因果関係を絶対条件にする自賠責は「介護」としての等級を認めません。介護等級は頭部外傷や脊髄損傷など、直接に日常生活の動作が奪われる重傷例に限られます。結局、高齢者は事故を引き金に介護状態に陥ったとしても、「年寄りはケガがなくても、いずれ介護状態になるもの」とされてしまうのです。
  
 これについては、賠償保険の限界を感じます。実態に即した介護状態と、それに至った因果関係の立証は、後の賠償交渉で実現するしかありません。連携弁護士の頑張りに期待して引き継ぎました。
 
 もう一つの論点として、過伸展損傷による機能障害の認定は珍しく、弊所で初の認定となりました。
 
一人で5人分の後遺障害です
 

12級5号:鎖骨骨折、肋骨骨折、骨盤骨折 +8級2号:胸腰椎 過伸展損傷(80代女性・神奈川県)

【事案】

歩行中、立体駐車場に入庫しようと右折してきた車に衝突され受傷した。以来、全身に渡る骨折で苦しむことに。
 
【問題点】

リハビリ病院に依頼したとされる後遺障害診断書が既に完成していたが、後方固定術の記載がなく、詳細は主たる病院に記載してもらうようにという内容だったため、救急搬送先の病院に作成依頼をしに行かなければならなかった。

(参考画像:腰椎の固定術)

また、鎖骨骨折、肋骨骨折、骨盤骨折の変形等を目視で確認したが、外見上、特に変形はなかった。 
 
【立証ポイント】

<鎖骨骨折、肋骨骨折、骨盤骨折>
後遺障害診断書上でも「変形癒合」との記載はなく、外貌写真すら添付しなかったが、レントゲン画像(レントゲンでも変形は見られなかったが・・)で判断したのか表題の3部位全てに12級5号が認定された。もっとも全身にわたって認定を受けているため、最終的な等級に変化はない。

ムチウチの”ついで認定”はよく目にするが、外貌で分かるレベルでないと認定されない変形障害について、こんなにもあっけなく認めてしまうという、なんとも不思議な案件であった。
 
<胸腰椎 過伸展損傷>
面談後、ちょうど経過観察のために主たる病院受診が予定されていることを伺い、病院同行となった。ご本人は高齢者施設に入居しているため、ケースワーカーさんと一緒に主治医と面談、後方固定術の記載を依頼した。ご本人の体調を鑑みて脊椎の可動域計測は実施しなかったが、医療照会により可動域制限も認められ8級2号が認定された。

器質的損傷がないにもかかわらず、可動域制限が認定されたケースは弊所での前例がない。もちろん、固定術をしたという点から自賠責の基準に照らしての判断であるが、本件は全身を相当程度損傷しているため、審査側の温情を思わせる認定となった。