さて、今年を振り返る時期です。今年もたくさんの交通事故相談会を開催しました。正確な集計データは年明けに発表しますが、ざっと数えただけでも30回、一回平均12人としてもおよそ360人の被害者さんとお会いしたわけです。
  
 ほとんどの被害者に対して、何らかの解決策を講じて前へ進ませます。しかし、どうにもこうにも、らちがあかない被害者さんもいます。それは謎の症状、因果関係のはっきりしない症状を訴える患者です。この方たちのほとんどが骨折や入院などの重傷事案ではなく、むち打ちや打撲捻挫を契機として、受傷から日を追うごとに悪化し、ひどい症状に陥っています。当然、加害者側の保険会社は詐病(うその病気)、心因性(心の病気)として、冷たい対応に切り替わります。保険会社だけではなく、病院・医師からも、もてあまし気味に、さらに、自らの職場や家族にとっても困った存在になっています。
 
 そこで心因性?と疑われる、今年の被害者から「難病・奇病 年間ベスト10」を発表します。
 

1 MTBI 脳外傷の傷病名がなく、画像も意識障害もあいまいにも関わらず些細な衝撃で脳障害を訴える… 今年、堂々の1位を獲得!
不定愁訴を訴える患者はすべてMTBIと診断する医師の活躍のおかげか?この業界での勢いはAKB48並み。
2 脳脊髄液減少症 ムチ打ちで脳の髄液が漏れた! 今年、健康保険再適用となり、迷走が続くこの疾患。もはや下火か、昨年1位から脱落、MTBIに首位を譲る。また、傷病名を変えて出直しか?
3 PTSD 事故で心の病気に… 「この子、事故に遭ってから自動車を見ると泣くのです」 → そりゃある意味、普通です。
家族の愛情で治しましょう。
4 脊髄損傷 ? ムチ打ちで脊髄に微細な損傷があったのかも? 普通は動けなくなります。医師に詳しく尋ねると、「う~ん、脊髄損傷の疑いかな」とトーンダウンします。この安易・軽率・大雑把な診断名で振り回される法律家が今年も多かった。
5 高次脳機能障害 ? 脳損傷、意識障害がなく自覚症状だけのもの 「私は高次脳機能障害です。」自称者は、ほぼ違います。普通は病識(自己認識)がないはずです。
MTBIへまっしぐら!
6 CRPS
(RSD、カウザルギー)
謎の難治性疼痛症候群。激レアな疾患です。 ほぼ自己診断で「本に書いてありました!」と主張。相談会でもかなり元気です。専門医を受診すると正常間違いなし?
7 重症筋無力症 筋肉に力が入らない? 普通は歩けないほどの重症ですが…。訴える患者を筋電図などで検査するとほぼ正常です。めったにない奇病ですが、なんで医師は検査もせずに診断名をつけるのかなぁ?
8 心因性ジストニア 事故以来、腕や足が麻痺して動かなくなった・・・。 車イスで相談会に登場です。しかし、手も動かない割には腕の筋委縮がありません。寝ている間は動いている?(ボリボリお尻をかいている) 杖をついて相談会に来る方は会場を出る際、よく杖を忘れます。
9 胸郭出口症候群 腕のしびれは胸部の締め付けが原因? かつて14級フィーバーが続きましたが、やはり珍しい疾患には間違いありません。専門医の受診で改善します。12級の判決も激減しました。かつての勢いはどこへ・・・。
10 腰痛・AKA療法 すべて腰痛はこの方法で治る! 科学的には解明されたとは言い難いこの療法、根強い人気があります。下降気味ですので来年はランク外かもしれません。

 
 今年の傾向として、脳脊髄液減少症を訴える被害者さんが、MTBIに転向したケースが目立ちました。これが1位2位の入れ替えになったと思います。ジストニアはランクアップの期待、来年は上位に食い込みそう。

 ここ数年、固定気味のランキングですが、来年は新しい難病・奇病、新顔のランクインに期待です。