骨折と一口に言っても、その折れ方にいくつかの分類があります。

 最近の例ですが・・・圧迫骨折なのか骨挫傷なのか? 

           骨幹部骨折なのか骨顆部骨折なのか?

           複雑骨折なのか粉砕骨折なのか?   

 このよう臨床での判断を迷っているケースを見ます。

 もちろんこれらは診断した医師が判断します。しかしどっちつかずの微妙な画像所見の場合、医師の主観で左右される結果となります。その骨折具合の判定も後遺障害の認定に少なからず関わってきます。

 したがって臨床においての骨折状態を正しい後遺障害診断に結び付けるため、骨折について正確な知識が必要です。

 例えば圧迫骨折における圧壊率は等級認定上の条件に重きをなします。また関節可動域制限も骨顆部(関節の部分)の骨折では説明がつきますが、骨幹部(骨の両端を除いた幹の部分)の骨折では可動域制限の根拠になりづらいのです。

 下肢の骨、大腿骨(太もも)と脛骨(すね)で見てみましょう

骨幹部 

骨顆部 骨の末端の一方ですが心臓から遠い方は 遠位端です 骨顆部 続きを読む »

 恒例、国保の無料健康診断です。期限が11月10日までとなってしまいました。毎日のように病院に行っているのですが、自分の事となると面倒です。なるべく空いている病院がいいので、評判悪い?病院を選らんで受けてきました。           

 いやぁ~運動不足、不摂生、食事の偏り・・・これほど人生において不健康な毎日を送っているのは初めてです。結果が怖い怖い。

 少し余裕を見つけて運動とダイエットしたいところです。そんなわけで今朝は健康第一の宣言と反省で業務日誌を埋めました。

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 昨日の相談者を通じて実感しました。ご自身加入の自動車保険はもちろんですが、他にご契約の傷害保険、生命保険、共済も精査することです。

 その被害者さんの場合、職場でなんとなく団体加入していたSJ社の傷害保険を精査した結果、通院90日で99万円(日数協定 ※ がありそう)、後遺障害14級認定の場合、78万円にもなります。事故相手の保険会社に対して、苦労して賠償金を獲得することがメインの仕事ですが、ご自身の保険会社には診断書を郵送するだけで177万もらえるのです。

 この辺のアドバイスは保険業20年の私にとって「餅は餅屋」なのです。

 やはり事故解決には相手の保険会社はもちろん、自身契約の保険会社も密接な存在です。

 まず「使える保険を洗いだす」ことが基本ですよ!

  ※ 日数協定

 保険のパンフレットに 通院一日あたり 3000円 なんて記載があっても、約款の表現は少し異なります。一日あたり3000円は目安であって、症状の度合い・既往症の有無・ケガの部位・年齢 等で調整しますと書いてあります。つまり保険会社独自の判断が加味されるのです。したがって実務上では90日全日通院しても7割の63日分の保険金しか支払われない事があります。

 パンフレットにも小さく

 「ただし平常の業務または生活に支障がいない程度に回復したとき以降の通院はお支払いの対象になりません」 とあります。 また「頚部症(むち打ち)、腰痛などで医学的他覚的所見のないもの」も日数協定の対象です。

 なんか話と違うぞ、と思いますが、以下の実例を踏まえるとやや納得です。  

<実例>  例えば30才でバリバリ働いている営業マンのAさん、交通事故で足を骨折しても会社を休むわけにはいきません。足をギブス固定、松葉杖をつきながら仕事は休まず、合間に通院です。したがって通院合計30日続きを読む »

 交通事故で医療立証をする際、意外と軽視されている「受傷機転」について。

 医師が診断書に書くことは当然、ケガの具合や治療内容、画像所見、残存する障害等になります。しかし交通事故外傷とそれら症状・障害を結び付けるのは事故・受傷の状況です。

 例えば追突されてムチウチや頚部症となることは容易に想像できます。しかし ・・

① 「追突されて、肩腱板を損傷しました」

② 「追突されて、嗅覚がなくなりました」

・・・こう説明されても審査する者は 「?」 です。「なんで追突のショックでそうなるのよ?」と思うのが自然です。医師の診断書では客観的に医学的見地を証明しますが、そのケガに至った状況と合理的な説明が曖昧では入り口でつまづきです。せっかくの医学的所見も疑われてしまうのです。

 実際、先月の相談・受任でこのようなケースが2つありました。

 対応としては、 ①の場合、追突のショックで肩がダッシュボード附近に打撃する様子を写真を使って解説し、状況説明書の補助資料として後遺障害の申請に添付します。

②の場合は、すでに書きあがった診断書に受傷機転として、追突の反動で後頭部がバックレストに強く打ち付けられた様子を(脳神経の損傷に結び付いたとして)補記していただく予定です。  おそらく医師は「事故状況は診断とは関係ないのでは・・・」と難色を示すと思います。それに対してはきちんと必要性を説明し、ご納得いただきます。このやり取りが我々協力行政書士の腕の見せ所と自負しています。

                  

 後遺障害診断書を漫然と書いてもらうだけでは心配です。被害者の後遺障害を立証することは「一つの物語を紡ぐ」ことに似ています。ストーリー(もちろんノンフィクション=事実です)を描くことで客観的な判断(調査事務所の審査)に結び付けることが大事です。

 後遺障害診断書を書いてもらう前にご相談を! ぎりぎりで間に合いますよ

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電話相談でたまに専門外の相談が舞い込みます。

< リンリンリン ♪

  私   「はい!秋葉行政書士事務所です」

相談者 「すみません、交通事故の相談ではないのですが・・・」

  私   「?・・・人生相談ですか?」

相談者 「いえ、ケガなんですけど・・・たぶんヘルニアかも・・」

  私 ...

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 5回にわたって交通事故業務に関わる、弁護士、行政書士、保険会社について解説してきました。自分をアジテーターとは思っていませんが、それぞれの深部に踏み込む意見になったと思います。

 そろそろまとめに入らなければなりません。やはり語りたいのは交通事故業務に取り組む者の矜持です。

 交通事故を生業とする者にとっても、まず自身・家族の生活や事務所経営、営利追求が仕事のベースであることは言うまでもありません。しかしある日突然事故に遭い、理不尽な生活を強いられた被害者にとっては弁護士も行政書士も、そして保険会社も頼るべき・すがるべき存在です。その被害者にとって最適な方策でそれに答えることこそ、フェアな取引であり、誠実な契約であると思います。(それができないのなら他へ紹介しましょう。だから連携体制やネットワークが重要なのです。)

 昨日も書いたように、「皆それぞれの立場、それぞれの都合」を優先させてしまったら被害者は浮かばれません。

 例えば行政書士が、なんとしてでも賠償交渉を業務の中心として取組たいのなら、司法試験をパスして弁護士になればいいのです。代理交渉ができない行政書士が代理権獲得や業務拡張を大義名分に、業務のグレーゾーンに勇み足をするべきではありません。業務拡大や他士業との業界調整は行政書士会(団体)で運動するべきテーマであって、実際の業務上で被害者を弁護士との業界争いに巻き込む道理はないはずです。

 そして藁をもつかむ思いの被害者のみなさんにも警鐘します。盲目的に誰彼かまわず相談することで安心するのではなく、厳しく相談者を見極めていただきたいと思います。まったく自分に非のない事故に遭った悲劇の被害者だからと言って、自動的には誰も助けてくれません。事故と向き合って克服していくのは自らの行動からです。誰が一番自分に合った解決方法を提示してくれるのか?誰がパートナーとして一緒に戦えるのか?これを決めるのは被害者自身です。

 そして私たちが目指すところは・・・

 あらゆる交通事故解決の総合コーディネイトです。  昨日までの考察で示す通り、弁護士も行政書士も部分の専門家であり、その部分での活躍を生かすべきです。そして保険会社は敵対する壁ではなく、加害者に代わり、急場の助けと最低限の補償をしてくれる大事な存在です。  それらを有機的に結び付け、被害者にとって間違いのない道順を示すことが総合コーディネートです。

 具体的には、

1、事故直後、治療費、休業損害について相手保険会社との調整を図り、最適の治療環境に落ち着かせること。

2、事故状況、警察の届け出内容のチェック。物損事故扱いの場合で通院が長期にわたるなら人身事故扱いへ切替え。

3、労災や健康保険等、公的保険、その他加入保険や救済制度の吟味。

4、物の損害やその他被害の確認と請求。過失割合に争いがあるなら刑事記録や証拠、資料の取り寄せ。

5、病院の治療内容や検査内容が合わなければ転院を考慮する。

6、後遺障害診断に向けての検査計画の立案。間違いのない診断書の作成に漕ぎ着けさせる。

7、自賠責保険に被害者請求を行い、後遺障害等級を確定させる。

8、最適な賠償交渉について手段選定 → 直接交渉か代理人交渉か?示談か紛争センターの斡旋か裁判か?

これらについて道順を示し、適時修正するコーディネーターたることが必要と思います。この過程で弁護士や行政書士、病院、専門医、保険会社、お役所がそれぞれの役割を果たしてくれればOKです。多くの弁護士は1~7、行政書士は1~6までは場当たり的なアドバイスのみで何もしないのが現状です。

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 昔おばあちゃんに言われた言葉・・・「人のふり見て我がふり直せ」。私自身が昨日まで語ったような問題のある業務をしていないか?常に自問自答しながら業務にあたっています。自分の立場や都合優先で業務をしないよう、より勉強、経験を積む事はもちろん、上記のような総合コーディネートが可能なネットワーク作りに勤しむ毎日です。

   来週は都内で行われる弁護士勉強会に参加します。最近は研修、講習の機会が増えています。きっと志を同じくする先生に出会えると思います。                 

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問題のある業務シリーズとなってしまいました。今日はケーススタディで考察を進めます。

  <実例 3> 保険会社との直接交渉は有効か?

 交通事故の保険・賠償金の基準は大きく分けて以下3分します。

 自賠責保険基準 < 任意保険基準 < 裁判基準 ① 自賠責保険の支払基準については定額がほぼ明示されています。

② 任意保険基準は平成10年の保険料率の自由化以降、各社独自基準となっています。しかし各社大差なく旧基準を準用しているようです。

③ 裁判基準と呼べるような明確な基準はありませんが、弁護士会の「赤い本」「青い本」などが有名で、実際に用いられています。

 保険会社は当然、任意保険基準で提示してきます。しかし3か月以内の通院のケガではほぼ自賠責保険の基準と変わりがありません。単なるムチウチやちょっとした捻挫、打撲がこれにあたります。自賠責保険の範囲で支払が完了すれば、実質保険会社の支払は0円です。なるべくこの0円で押さえたいのが営利企業の本音です。  しかし後遺障害を残すケガなど賠償金がかさむ場合、会社の持ち出しが増えるので減額に必死となります。この理屈が被害者への低額な賠償提示となるわけです。  

 では保険会社と交渉する3者を見てみましょう・・・ (1) 交渉事に長けた被害者Gさん

  保険会社にあの手この手で理屈を持ち込み、賠償額の引き上げ交渉を本人が直接したとします。しかし保険会社の内部的な運用規定(代理店はおろか部外の社員でさえ見せてくれなかったです)で若干上乗せするにとどまります。裁判基準と同じ額を求めても例外(特殊事情です、例えば大型代理店やスポンサーの圧力、ヤクザ)などを除いてほとんど跳ねつけられます。裁判基準レベルは望むべくもありません。

 車屋さんで新車購入の際、「粘りに粘って(最初からある)値引き枠を引き出して満足!」と似ています。     (2) 次に交通事故専門をうたう行政書士のH先生

 この先生は自ら作った渾身の賠償請求書や判例、資料を持ち込んで交渉してみます。この分野には弁護士より精密に勉強をしている強者が存在します。素晴らしくよくできた賠償提示を行って成果を上げているようです。しかしその額が裁判や紛争センターの斡旋案を上回るものではありません。保険会社もこの交渉に応じる理由は、紛争センターに持ち込まれて裁判基準に近い額を取られるなら、その7~8割程度で手を打とう、といった時間短縮のための打算です。

  したがって、このH先生は被害者に保険会社との示談は裁判や紛争センターと比べ、2~3割少ないことを被害者に明示しなければなりません。紛争センターでは解決まで平均4か月を要します。この失った賠償金と4か月を天秤にかける相談が必要です。裁判の場合は半年~数年です。

 しかし、裁判になっては弁護士先生に報酬が発生するので、行政書士自身としては自らの報酬が減ります。ですので被害者に「早期解決」を説いて保険会社と示談し、増額した分から報酬を受け取ります。もしくは昨日の実例(交通事故業務について考察 4)のように、陰で紛争センターに介入、増額分から報酬請求します。

 はぁ~(ため息)。誠実に仕事している先生の方が少ないような・・・  

(3) 今度は弁護士法人のJ大手事務所が乗り出します

 全国組織で大勢の被害者を救っています。後遺障害等級が高ければいいのですが、14~12級程度に数か月もかけていられません。スピード解決&大量処理が命です。ですので被害者が保険会社と争いたくて門をたたいたにも関わらず、この保険会社と裁判基準の7~8割で妥協的示談をしてしまいます。スピード解決=被害者の利益ですが、もらいそこなった賠償額を被害者に明示したのか疑問が残ります。

 法律屋さんどころか法律ディスカウントショップのようです。このやり方も一概に問題とはいえず、紛争処理の一形態として社会的に有用かもしれません。あまりに合理的ではありますが・・・。      どうでしょう?結論を急ぐわけではありませんが、

 すべてそれぞれの立場で、それぞれの都合で事故が処理されていませんか?  

 もちろん、裁判や紛争センターを利用せず、保険会社との交渉がベストのケースもあります。最近の例では相手保険会社の担当者が何を血迷ったのか高齢者に高めの逸失利益や介護費用を提示したケースがあります。これは裁判で厳しく審議されては大幅に減る危険性のある項目です。また公務員で休業補償や傷病手当をたくさんもらった方に保険担当者が休業損害をまともに提示したケースです。これも裁判では賠償金から間違いなく引かれる項目です。・・・つまりお粗末な保険担当者により、裁判を避けることも得策となることがあります。

 その辺の臨機応変な判断がプロには望まれます。  

 明日はいよいよ結論です。

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前回は弁護士の実例でした。今度は行政書士の実例について触れたいと思います。

 行政書士で後遺障害の立証から賠償交渉まで、事故の解決までトータルな活動をしている先生がおります。2年前はその取組について実際に研修を受けたり、執筆された書籍を熟読したり、またその先生と直接お話をしたり・・。

 しかし、一抹の疑問、腑に落ちない点が澱のように心に残ったこともありました。

 それは行政書士が交通事故を解決するのは限定的な部分であって、賠償交渉に出しゃばり過ぎるのではないか?結果として被害者にとって最適な選択とはなってないのではないか?です。また実例で説明します。  

<実例1> 紛争センターに介入したおかげで・・

  後遺障害の認定12級を取れたFさん。それまで適切なアドバイスと自賠責保険の請求手続きをしてくれた行政書士Gさんに感謝しきりです。そして最終的に保険会社に赤本(弁護士会が編集している裁判判例から割り出した支払基準)で賠償金額を計算し、Fさんに賠償金請求書を持たせました。「これを紛争センターに持って行って、○×△こう交渉しなさい」とアドバイス。そしてFさん、月に1回合計3回の出席で斡旋案が提示され、無事交渉は成立しました。

 ただしその際、紛争センターの斡旋弁護士から「この書類誰に作ってもらったの?行政書士?いくら報酬を払うの?」と怪訝な顔で聞かれたそうです。そしてその斡旋弁護士はこう締めくくりました。「僕が苦労してあなたのために保険会社から弁護士基準の賠償金を交渉してあげているのに、なんでその行政書士に何十万も払うの?その報酬は払う必要はないよ!」。そう言われたFさんもびっくりです。

 確かに斡旋弁護士さんは「保険会社の基準で決まっていますから」と言いビタ一文賠償金を上げてくれない保険担当者相手によく話をまとめてくれました。行政書士の持たせた賠償金請求書と関連する証拠書類のおかげで話が早く進んだことは認めますが、それによって賠償金が上がった実感はありません。なぜなら斡旋の手順は斡旋弁護士が赤本の基準で斡旋案を計算し、減額主張をする保険会社との調整をする、といった流れだからです。  中には保険会社寄り?のような斡旋弁護士もおりますが、正義感や被害者救済意識の高い弁護士先生もたくさんおられます。このような先生にはいつも感謝しております。

 もうおわかりですね。書類を作って持たせたことで劇的に賠償金が上がったわけではないのです。紛争センターに同席して交渉をしてくれるならまだしも、紛争センターの廊下までの付き添い?・・・情けないと思わないのでしょうか。

 これは弁護士と違って代理権を持たない行政書士の限界を表します。代理権がないから同席して直接交渉ができない。したがって中途半端な賠償交渉を行う。これは行政書士法と弁護士法の間隙(グレーゾーン)でなんとか仕事しようとしているに過ぎません。

 もちろん中には紛争センターに行って独自に解決を図りたい被害者もおります。そして相場が知りたくて行政書士に書類作成を依頼することもありうることです。問題は斡旋弁護士の言うように、あたかも自分の仕事で賠償金を吊り上げたように姑息に報酬を得ることです。  これでは被害者さんも行政書士に騙された気分になってしまいます。事実そのような話を頻繁に聞きます。

 現在、東京の紛争センターでは行政書士立ち入り禁止が徹底されています。また利用者に対し「行政書士へ依頼していないか」と厳しく聞いています。

 交通事故業務から行政書士を排除する・・・このような流れを作ったのは紛争センター介入型の行政書士本人なのです。

   明日も実例を重ねます。

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 昨日までの話・・

1、行政書士も交通事故を業務とするものがいます。まだ認知度は低いと言えます。

2、交通事故のほとんどが 保険会社vs被害者 の構図となっています。しかし被害者は苦戦必至です。

● では、被害者に代わって保険会社と対するは・・・もちろん弁護士です

 「いざとなったらやはり弁護士」、この認識は十分に行きわたっています。しかし同じ弁護士でも「交通事故業務が実務上できる弁護士」と「資格があるから法律上可能な弁護士」に2分すると思います。そして前者はかなり少数です。

 興味深いデータがあります・・・    昭和48年に7000件を超えた交通事故損害賠償請求訴訟ですが、昭和49年3月に示談交渉つき保険が発売されるや、翌年には訴訟件数が1000件を切りました。以後示談は保険会社vs被害者本人 の構図が主流となったのです。

 つまり保険会社は、抜群の商品開発力で様々な保障・特約を作り上げ、弁護士から交通事故の経験則を奪い取りました。  近年、訴訟件数も5000件超に回復していますが、全国の弁護士の数からすると、めったに交通事故訴訟は扱わない?といった結果になります。もちろんほんの小数である交通事故業務に特化した事務所がこの多くを受任していますので、ほとんどの弁護士は交通事故訴訟の経験が得られない状況です。交通事故に不慣れな個人事務所が知人から交通事故裁判を持ちかけられも、本来は断るべきなのです。

 実例を挙げます。

<実例1> 和解するくらいなら・・・

被害者Aさんは交差点で車同士で衝突、大ケガを負いました。脛骨、腓骨(すね)の骨折です。後遺障害は11級が認められました。  しかし自分にも過失があり、相手の保険会社が提示する賠償額は30%減額されたものです。

 提示額は・・・既払い額を除いた損害額は約1000万円、過失割合は 自分30:相手70 なので受取額は1000万円×70%で700万円です。

Aさんは悔しくて訴訟をしようと弁護士を探しました。そして知人の紹介でB弁護士に依頼しました。その弁護士は交通事故を年2~3回扱っているようです。

B弁護士は受任し、過失割合について裁判で20:80の主張を展開しました。請求額は約3000万です。

 相手保険会社も顧問弁護士をたてて、類似判例をドーンとだしてきて過失割合の正当性はもちろん、顧問医の意見書で医療上の見解を展開、さらにAさんの収入面について厳しく指摘が続きます。対するB弁護士も昨夜一生懸命勉強した資料を提出して応戦します。

 そして裁判所から慰謝料を少し上乗せした和解案が提示されました。それからB弁護士は何故かAさんに「私の尽力で賠償額を2倍にしました!これ以上争っても時間がかかるので和解しましょう」と説得を始めました。Aさんも自分の弁護士が言うのだからその方がいいのだろうと和解に応じました。

 結果、和解の賠償額は2000万円、過失割合は変わらず2000万円 × 70% で Aさんの受取額は1400万円です。 しかしここから弁護士報酬が支払われます。すでに着手金で100万円を支払い、報酬で140万円です。

 元々保険会社の提示で示談だったら700万円です。裁判で1400万円になりましたが、弁護士費用を差し引くと1160万円です。なんか釈然としないAさんですが、一応460万円増えたので良かった結果になります。

 しかしこの業務は問題山盛りです。

① 過失割合は30:70から変わらないので、争点から言ったら負けです。徹底的に争う気がないのなら最初から20:80は困難と説明すべきです。最初から和解ありきで20:80の気鋭を上げただけ?のように感じてしまいます。

② これは後遺障害11級のケースです。過失割合を徹底的に争わないのなら、交通事故紛争センターの利用も考慮すべきです。和解で用いられた基準同様の赤本基準でざっと計算するとやはり損害額は2000万円位なり、紛争センターの斡旋案が仮に赤本の8割程度の1600万円で、ここから過失分30%を引かれても1120万円になります。そうです、和解案と大差ないのです。紛争センターの無料斡旋弁護士の方が、よりいい数字を引きだす可能性すら感じます。

③ 脛骨・腓骨の骨折で11級が妥当だったのでしょうか?後でわかったのですが、この方は完治後も足首と足指の曲がりが悪く、リハビリしても改善しません。軽度ですが腓骨神経麻痺の可能性大です。この場合足首10級、足指12級で併合9級の芽がありました。 過失割合ばかりに目が行って、争点を間違えています。11級→9級となると受取額は1000万円程増えます。過失分10%の200万円程度を争っている場合ではないのです。医療立証を行い、異議申立→裁判、という道筋を取るべきだったのです。

④ あと、最低これだけは説明すべきです。判決まで争った場合、相手から弁護士費用、賠償額の10%程度が認められます。(最近は和解でも若干認定されるようになりました)。さらに事故日からの遅延利息金、賠償額の年利5%(この低金利の世の中で!)が加算されます。Aさんにこの説明をした上で和解と決めたのでしょうか?

 これは特異な例ではありません。保険代理業20年を通じて経験した交通事故裁判は全件 和解でした。判決まで争う例は極めて少数なのです。このB弁護士も勝ち目がないのを承知で、報酬の為に和解前提で受任したのでは?と疑ってしまいます。そして当然ながら百戦錬磨の保険会社の担当者や顧問弁護士、顧問医と戦えるだけの経験則を持っていません。                      続きを読む »

 相変わらずコンピューターと格闘中です。一部システムの不具合に苦戦しています。  昨日からの続きです。  

● 交通事故のほとんどは保険会社と被害者の交渉・示談で解決している事実があります。

 これは社会的にみて、紛争の拡大を未然に防ぐという良識のもとに保険会社が大活躍しているわけです。その行為は「示談代理」ではなく、「示談代行」をしているという解釈にもとづくものです。報酬を得て代理交渉ができるのは弁護士のみと弁護士法72条規定されていますがその例外でしょうか。

 しかしこの交渉ですが、交通事故を専門とする会社組織 vs 初めて事故に遭った一般人 ではあまりにも力量に差があります。ご自身で必死に勉強して交渉している方もおりますが、ケガで体力的・精神的に弱っている被害者には酷な現実です。   さらにこの交渉は被害者にハンデが大きいといえます。それはそもそもお金を握っているのは加害者側保険会社です。一生懸命交渉しても、保険会社が「それは払えません」と言えば交渉はどん詰まりです。そこから保険会社の内部規定の範囲で譲歩を引き出しても、裁判での判例や弁護士会の基準から程遠い額です。

 最近の質問にも、「どうやったら裁判に近い額をゲットできますか?」が多く寄せられます。

 これは保険会社の回答のままお答しています。

 「弁護士を立てるか交通事故紛争センターを利用して下さい」。

 やはり一般人との交渉額はここまで、それ以上は弁護士が介入しないと応じない、又は紛争センターにて渋々歩み寄り・・・保険会社の実に割り切った判断が存在します。  

● 何がなんでも裁判基準ではない?    物損事故や軽微なケガ、通院3か月程度の場合・・・ご自身で保険会社と交渉して保険会社の基準で解決したとします。それが裁判基準より低い額であったとしてもその差は莫大ではありません。その差額の請求の為に法律家を有償で雇っても実利は低いと思います。さらに早期解決&即入金といったメリットもあります。印鑑を押せば保険会社は実に素早く支払ってくれます。払えなくて夜逃げ、行方を眩ます、なんてことはしません。これは加害者本人との示談では起こりうる話です。

 そのような意味では保険会社さまさまです。足を向けて寝れません。  

 さらに明日へ 

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 丸一日コンピューターと格闘中です。記事だしが甘い日々が続きます。  

 交通事故業務について少々・・

● 行政書士と交通事故業務

 現在お役所にて行う証明・届出・許可・申請手続きもシステム化が進んでいます。行政側も簡単な手続きは自宅のパソコンからネット上でダイレクト申請を行うことに取り組み中です。審査が厳しいものは窓口対応が絶対ですが、簡便な営業許可、建築許可は今後ネット申請が主流化すると思われます。

 行政書士の仕事の70%はこの許可申請の代理です。その他、相続、離婚、交通事故など民事も業務に加わります。許可申請も民事もすべて行う事務所が多いですが、私のように交通事故のみに特化した事務所は少数派かもしれません。それでもここ数年、交通事故や離婚を専門に扱う事務所も増えたようですが・・

 アピール不足か行政書士による民事業務はあまり知られていません。

 そもそも代理権を持たない行政書士ができることは限定的です。弁護士と違い、依頼者に代わって相手と交渉ができないのです。しかし弁護士が積極的にやらないので、社会的な需要から行政書士が受け皿となっていたようです。特に相続の分野は行政書士が活躍しやすい業務と言えます。それは相続の97%が訴訟とならず、協議で解決しているからです。「相続手続きは行政書士へ」との社会的認識がより広まるとよいと思います。

 しかし「交通事故は行政書士へ」と言うには多少言葉が詰まります。何故なら交通事故の94%は被害者と保険会社との交渉・示談で解決しているという保険会社のデータが存在します。

 つまり、ほとんどの事故は保険会社の提示する基準で(円満かな?)解決されている、ということです。

 明日は保険会社を中心に話を進めます・・・システム変更は今週いっぱいかかると思われます      ← 埼玉県会の交通事故業務アピール用ポスター

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  新しいパソコンを導入、昨日から事務所のシステムを大幅に改造中です。

 複数のパソコンを目的別にコントロールするシステムを作っています。なかなか手ごわい作業が続いています。

所詮パソコンは仕事の道具ですが、依存度が高い為、数日間格闘することも珍しくありません。

毎度悩まされるコンピューターですが、しつけ(システム)さえしっかりすれば、よく働いてくれます。

明日の朝までにはシステム完成させます。今日は少し手抜きの日誌でした。

                               

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 現在、高次脳機能障害案件を4件担当しています。    これから立証作業に入るもの、非該当から異議申立を行うもの、それぞれ受任の出発点は違いますが、この障害の立証に共通する出発点について解説します。   ※ 今年4月からの新基準となり、いくつか変更がありますが、この旧基準を基本条件と見てください。後日、新基準の解説を行います。     

■ 高次脳機能障害認定の3要件

 

① 傷病名が以下のように確定診断されていること   ・脳挫傷

・びまん性軸策損傷

・びまん性脳損傷

・急性硬膜外血腫

・急性硬膜下血腫

・外傷性くも膜下出血

・脳室出血

・骨折後の脂肪塞栓で呼吸障害を発症し脳に供給される酸素が激減した低酸素脳症  

② 画像所見(①の傷病名がわかる)    ・XP ・・・頭蓋骨骨折とそれに伴う脳損傷を確認できます。

 

・CT ・・・冠状断といって、輪切りにスライスした画像を確認します。連続した画像は脳委縮の確認が容易です。

 

・MRI ・・・T2スターで点状出血、フレアーで脳委縮、病変部を確認します。 

 

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 銀座・・・それは弁護士はもちろん、すべての士業にとってあこがれの地です。

 銀座で事務所を開設したらもう、権威抜群です。

 昨日は弁護士事務所に被害者と共に打合せでした。正確に言うと銀座ではなく隣の日比谷ですが、一等地のビルはゴージャスでした。窓から皇居のお堀も見えます。

 都内にも活動拠点欲しいよなぁ~

 しかし貧乏書士には恐ろしいまでの銀座テナント料は払えません。

        

 埼玉~都内~神奈川の往復はしばらく続きそうです。

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 今朝は6時30分に事務所を出たため、日誌のUPが遅れました。鎌倉方面で、大船からモノレールに乗りました。

 さて、ADRの続きです。弁護士会や保険会社や地方自治体が主催するもの以外に行政書士会のADRがあります。

 裁判をする程ではない些細な紛争ついて、行政書士が解決のお手伝いをすることがよくあります。簡易裁判所の代理権をもつ司法書士は当然に140万までの訴額に対し代理解決が可能です。また労使間のトラブルでは社労士などが実質仲介を行って解決しています。正式な代理権をもたない士業が代理を行う、仲裁に乗り出すことが事実上存在しています。もちろん非弁行為で違法です。しかし弁護士過疎地である田舎では必要悪として仕方ない、暗黙の了解?とされているのでしょうか。

 そこで行政書士会はADR機関を主催し、「ADRの範囲内で当事者の代理人として、行政書士に代理・弁護をさせること」を目標として、紛争代理行為の合法化を計画しています。民事上一定範囲の代理権を取得するという、行政書士の宿願に近づくためです。  行政書士の業務範囲拡大と社会的地位の向上はすばらしいことです。反対する行政書士はいないと思います。

 しかし、私は若干の不安を感じています。それは制度を作る事を目的として、その機関や権利が誰の為であるかを置き去りにしていないか?です。 それはADRによる解決がそれほど実効力を持たないのではないか、と思っているからです。

 例えば簡易裁判所の調停の成立率ですが、民事調停に限定すると30%に満たない地域がほとんどです。調停が成立しない=第3者を交えた話し合いでも解決できなかった・・・。これはつまり仲裁・斡旋の失敗です。裁判所がやっても調停をまとめるのは大変難しいのです。    では交通事故の場合、おなじみの紛争センターでは・・・

 平成22年度の集計で、依頼件数8666件中 → 和解成立7036件 =成立率81.2% 

 調停成立率30%との差はなんでしょうか?

 簡単です。それは紛争センターには斡旋者である嘱託弁護士の斡旋案に一定の拘束力があるからです。  保険会社は斡旋案を尊重することになっています。被害者寄りの斡旋案でもイスを蹴る事はしません。渋々ですが歩み寄ります。これは保険会社と紛争センターが被害者救済を実践している事実として賛辞すべきです。

 しかし、調停では 仲裁する裁判官=あくまで話し合いの仲介者 で、当事者のどちらか一方が斡旋案を蹴ったらおしまいです。  

 斡旋・仲裁機関は裁判ほどの強制力を持たないとしても、一定の拘束力がなければ、もめごとをまとめる力は乏しいのです。    話を戻します。私はADRの成功はこの拘束力にかかっていると思います。

 紛争中の方が当事者同志の話し合いで解決できないので、ADRを利用したとします。しかし和解成立率が2割ではどうでしょう? 調停員を交えて話し合ったとしても、「相手がイスを蹴ったら終わり」だったら・・・利用者をがっかりさせるだけです。調停の民間版では社会に根付く制度には成りえないのではないかと思います。

 将来、弁護士・司法書士・行政書士がローヤー(法律家)として一つの職種に統一する構想があります。その前置としてADRの代理権獲得を推進することは、「まず形を作る」ことを急務としているように思えます。  しかし利用者の利便、社会的存在意義、紛争当事者救済 の志がないと、「とりあえず制度ありき」になってしまいます。

 「仏像彫って魂入れず」 とならない事を願っています。  

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 最近「ADR」ってよく目にしませんか

 民事上のもめごと、たとえば相続分割、離婚、貸金回収、契約トラブル、傷害事件などが起きた時、どうやって解決を図っているのでしょうか?

 ほとんどは裁判とならず、当事者同士の話し合いである示談で解決が図られています。もちろん交通事故もその範疇で、保険会社との示談が圧倒的です。「全交通事故の94%は保険会社が解決しています!」と保険会社の社員から聞いたことがあります。

 示談はあくまで当事者同士で完結します。そこに第3者が仲介・斡旋を行うと、これを紛争処理機構と呼ぶことになります。

 紛争処理は裁判所が主催する調停がよく知られています。当事者に裁判官を交えて話し合いをするものです。ちなみに離婚裁判は調停前置が条件です。(調停前置とは、「裁判を起こす条件は、まず調停をやってから」です。)  交通事故では「財団法人 紛争処理センター」がお馴染みです。他に「日本損害保険協会 そんぽADRセンター」、「日弁連 交通事故相談センター」、自治体が主催する交通事故相談・斡旋窓口も存在します。

 それらは広くADRのカテゴリーに入ると思います。ではADRとは何か・・・

 ADRとは Alternative Dispute Resolution の略で、訳すると 「裁判外紛争解決手続き」です。訴訟手続によらない紛争解決方法を広く指すもので、紛争解決の手続きとしては、「当事者間による交渉」と、「裁判所による法律に基づいた裁断」との中間に位置します。   ADRは相手が合意しなければ行うことはできず、仲裁合意をしている場合以外は解決案を拒否することも出来きます。アメリカ合衆国で訴訟の多発を受けてできた制度で、アメリカから日本に輸入された制度です。  紛争が多発し、裁判が追い付かないアメリカならではの制度ですが、日本でも裁判によらない細かな紛争のスピード処理に期待を込めて続々と出現しています。

 行政書士会でもADRの認可が目下最大の取り組み課題のようです。町の法律家である行政書士が斡旋機関を主催し、もめごとを解決します。将来的にはこのADRの中での弁護士になるべく、ADR代理権の獲得を視野に入れています。  

 ADRやこれら紛争処理機構について少し意見展開したいと思います。明日に続きます。 

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先週土曜日は月例の相談会で赤坂に。

今回も飛び入りも含め、16名程だったでしょうか。遠方は神戸からいらした方もおります。 無料相談会の一つの心配として、「とりあえずタダだから来てみよう」といった軽薄な相談者が増えるかも?がありました。しかしそれはまったく紀優です。皆真剣に解決を模索しています。そして事故から3か月以内の早期相談者の占める割合が伸びています 「交通事故の実利ある解決は受傷から計画的に進めるもの!・・・かなり浸透してきています。

今回の案件で気になった事をいくつか挙げます。

1、味覚、嗅覚の障害は残ったけど、その原因となる外傷・傷病名が希薄。

味覚・嗅覚等の神経がやられるような衝撃と器質的損傷(骨折等)が前提です。これがはっきりしなければ、障害そのものが認められません。苦しい立証作業になります。

2、高次脳機能障害の診断で交代した主治医が否定的。

医師によって診断は当然に変わってきます。否定的な医師のもとでは立証は不可能です。医療ネットワークにより最適な病院、検査先を選定しなければなりません。

3、可動域制限はその原因となる外傷・器質的損傷がないと、説明つかない。

捻挫や打撲で関節が曲がらなく程の機能障害は常識的に起きません。骨折や靭帯損傷が前提です。そしてしっかりとした画像所見が必要です。

4、間違った説明をしてる専門家は困る・・

すでに他で相談や契約をしている方もおりますが、そこで受けた説明にかなり大きな間違いがありました。これらも早めに修正しなければなりません。

5、事前予約をしっかりして欲しい。

無料だからといって気軽に来られては困ります。他の相談者は事前に予約をしています。スケジュール通りに進まないと他の相談者に迷惑になります。また、短時間での打合せなので、事前に事故の詳細をメールしていただくと、問題の抽出が容易になります。 ほとんどの方はアドバイスに沿って順調に解決まで進めていきます。アドバイスのみなら無償ですが、どうしても専門家に頼らざるを得ない方もおります。そのような方は最適な専門家が追って有償対応しますが、できればお金をかけずに解決が図れるよう誘導して差し上げたいものです。

ボランティアと紙一重ですが、歯をくいしばって継続していきます!

さぁ今週も頑張りましょう!!!

   

       

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 定例相談会も告知の甲斐があり、問い合わせが多くなりました。「まずどこに相談したらいいのか?」、ご相談の予約をされた皆さんはそれを見極めた上での参加と思います。

 巷には市町村・自治体、弁護士の無料相談が散見されます。しかし多くの相談者はモヤモヤが解消されず、すごすごと帰ります。そして有料の相談へシフトします。ここでも交通事故の専門外である弁護士に相談したり、専門であるけど賠償交渉まではやらない行政書士へ行ったり・・・つまり確実な窓口にたどり着くまで大変な労力と時間を費やしてしまうのです。  どうして入口で迷ってしまうのか・・・それはどの窓口も交通事故の全般に通じているわけではなく、事故の一部分の専門家に過ぎないからと思います。

 例を挙げますと・・・

〇 市の無料相談で、おじいちゃん職員に相談。

 元警察官なら経験があるので事故調査や過失割合には明るい部分があります。しかし民法、保険、その他知識はありません。また「お互いよく話し合って」と解決にならない回答をするおじいちゃんが普通です。公務員は民事賠償請求の専門家ではないのです。

〇 保険会社の事故相談

 これから保険会社を相手に賠償請求するのに保険会社を頼っても、その保険会社の規定以上の支払基準や請求方法について教えてくれるはずがありません。それらの規定や基準は自由化で撤廃されたとは言え、どの会社も護送船団方式(全社同じ掛け金、同じ支払い基準)の名残りで各社大差はないのです。

〇 後遺障害の認定に手こずっているのに、その立証作業をやらない(できない)弁護士に相談。

 賠償交渉は等級が取れて、すべての損害が明らかになってからです。時期が早すぎるので弁護士も手をこまねいてしまいます。したがって、「等級が取れたらまた来て下さい」と相談料だけ取られて帰されます。

〇 裁判を避ける、裁判でも和解ばっかり、そもそも交通事故訴訟の経験が年間数件の弁護士先生に相談。

 弁護士先生といえど万能ではありません。それぞれ扱い分野が異なります。交通事故を専門としていない先生は当然ながら避けるべきです。  また賠償交渉においても、赤本(裁判基準)の70%位で保険会社と話をつけて、スピード解決&大量処理をしている事務所があります。スピード解決が依頼者のニーズであろうと、最低でも慰謝料くらいは赤本満額を果たすべきです。紛争センターの斡旋案より低い解決額では弁護士バッチが泣きます・・。

〇 交通事故専門を売り物にしている行政書士に相談。

 弁護士の手が及ばない損害立証のプロたるべきです。交通事故賠償に精通し、後遺障害にしっかり取り組んでいる勉強家の先生も増えました。しかし実際多くの行政書士は賠償請求を主たる仕事に据えています。その手法は代理交渉ができないので賠償請求書を代書し、陰で書類交渉を進めるのです。これで被害者の利益最大化が図れれば問題ありません。しかし当然ですが多くは弁護士の直接交渉や紛争センター介入、訴訟より低い賠償金しか得られません。自身が弁護士のマネごとをして報酬を得たいだけで、被害者の利益最大化が置き去りです。  紛争センターへの賠償計算書を作成して高額な報酬を請求する先生は、いずれマーケットから退場すると予想します。

 「立証をできない・やらない弁護士」と「中途半端な賠償交渉をやりたがる行政書士」・・・これが被害者を路頭に迷わす原因かもしれません。                                  

〇 手前味噌ですが・・・

  労災、健保、任意保険、自賠責保険、裁判判例、医療知識、病院情報、民事、道路交通法、刑事・・・事故の解決には多くの分野を網羅する必要があります。  首都圏相談会では、業界No.1の被害者救済NPO法人、後遺障害立証専門・行政書士、交通事故専門・弁護士、保険特級資格のプロ代理店、さらに専門医ネットワークを駆使するメディカルコーディネーターがスクラムを組んで待機しています。それぞれの専門家が被害者の利益最大化を目標に動くのです。

     これらを読んで「ドキッ」とした被害者さんは、しっかり相談窓口を選定して下さい。

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続きます・・  

■ 治療

 1995年に雑誌『Spine』に発表された、ある論文があります。ケベックむち打ち症関連障害特別調査団の治療に関する知見、という長い題名の論文ですが、この論文が頚椎捻挫の治療に与えた影響は大きいと思います。

 この論文によれば、

(1) ほとんどの頚椎捻挫は自然経過が良好で、かつ現在行われている治療法のほとんどは、その有効性が科学的に評価されていない。

(2) 頚椎捻挫受傷後安静を保つ意味はなく、頚椎カラーは有用でない。頚椎を固定するような治療を長期間行うことは症状を長引かせ労働不能な状態を長期間持続させる。

 この論文以降多くの研究論文が発表され、やはり受傷後早期から活動性を維持することが有用である可能性が高いとされています。今でも漫画やドラマなどでは交通事故の患者が頚椎カラーをまいている描写をたまに見かけるかもしれませんが、現実にはそのような治療が行われることはほとんどありません。   固定をするよりも、動くこと。仕事や日常生活を制限するのではなく、出来ることは積極的に行っていくことが、早期回復、早期社会復帰には重要といえます。

← 安静がダメ?   ■ 予後

 交通事故における頚椎捻挫では、長期間症状が持続し仕事や日常生活に復帰できない人達が一定数存在するという問題があります。そして、そのような人達の多くは追突などをされた被害者というのが自分の印象ですが、いかがでしょうか。自損事故などはほとんど見かけません。画像検査で器質的異常を認めないにもかかわらず遷延化する交通事故被害者の疼痛、社会復帰不能期間の長期化の影には組織の損傷といった生物学的要因だけではなく、心理社会的因子が密接に関わっている可能性があります。

 リトアニアやギリシャでは追突事故被害者に対する補償が行われていないそうですが、それらの国で行われた研究によれば、交通事故が原因で生じた症状は全て回復し、症状が長期化した例は一例もなかったと結論づけられています。

 長期化する痛みの原因のすべてを補償問題などの疾病利得や、加害者への他罰的意識に結びつけるつもりはありませんが、治療時には考慮しておかなければいけない問題だと思います。  

<私的感想>

 否定論であっても、専門医の研究結果や数的データは拝聴に値します。客観的な考察も立証の現場では大いに役に立つものです。  しかし否定論文がすべての臨床、つまり現場で実際に起きていることを否定するほどの説得力はありません。外傷性頚部症候群の患者は、外傷的な衝撃を契機として、痛みやこりのみならず、今まで経験したことのないような手指のしびれ、めまい・吐き気・不眠の自律神経失調症状を起こします。これらは必ずしも器質的変化を伴ったものではなく、画像所見が乏しいものが圧倒的です。実際に画像上の変性がなくとも、神経検査等で数値化する作業を現場の医師は行っています。その医師も常に確定的な診断結果を導くことに苦労しています。つまり神経症状の客観化は常態的な問題なのです。  今後、研究も肯定・否定とブレながら進んでいくと思います。結論を急ぐ必要はないと思います。

 理論や研究結果が前提であっても、現場の事実とは必ず一致しないことは多いものです。医療の世界はまさにこれが当てはまるのではないでしょうか。

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 交通事故外傷で最大の勢力は「ムチウチ」の俗称でおなじみの「外傷性頚部症候群」です。

 外傷性について因果関係の争いが絶えない症状です。被害者は追突されても側突されても、それが軽い接触でもとりあえず「くび(頚部)を痛めた」と訴えます。詐病?心身症?の疑いのある相談者も存在しますが、事故を契機に神経症状に悩まされる患者が後を絶ちません。

 私達は被害者の利益追求のみで働く商売人ではありません。法律家を名乗る以上、倫理感を持って業務にあたっています。具体的には面談時、被害者の病態の見極めを最重要と考えています。それは被害者の訴えている症状を客観的に観察することです。「本当に訴える症状と診断名が一致しているのか?画像や検査の所見で説明できるのか?」・・・医師ではない私達にとって限界がありますが、細心の注意をはらっています。

 話が長くなりました・・・保険会社は頚椎捻挫・頚部症について、事故の外傷であることに否定的な論文を根拠とし、保険支払いに消極的です。しかし事故外傷を立証する立場の私達も、それら否定的な論文のチェックを怠りません。全否定vs全肯定の単純な図式とは思っていないからです。  否定的論文で比較的新しいものがありますので、掲載します。         【頚椎捻挫 最新の医学的知見】   整形外科医 北村 大也 先生

■ 病態

 頚椎捻挫の主な病態は筋や筋膜、靭帯、椎間板、関節包などの頚椎支持軟部組織の損傷で骨折は伴いません。症状としては頚部痛と可動域制限以外にも頭痛、めまい、視力低下、しびれ、上肢痛など多彩な症状を示すこともあります。しかし、その多くは原因としての器質的異常を見つけることが出来ません。

■ 検査

 器質的な異常が存在しないかどうかを調べることは大事です。主に用いられる検査はレントゲンとMRIです。

〇 レントゲン

 レントゲンでは骨傷がなければ頚椎捻挫の診断になります。しかしそれ以外にも、加齢による骨棘の形成や靭帯の骨化、側面像での湾曲の異常がみられることが多くあります。一般的には前弯消失(ストレートネック)や局所的な後弯変形は軟部組織損傷による一過性のものと考えられていますが、事実は違うようです。慶応大学の松本先生らは、健常者と頚椎捻挫患者のレントゲンを比較して、両者とも湾曲異常は同程度にみられたと報告しています。

〇 MRI

 MRI検査は骨以外の軟部組織の描出に非常に有用な検査です。麻痺や知覚鈍麻などがあり、神経症状を疑う場合には必須の検査になります。しかし頚椎捻挫の主病変と思われる軟部組織損傷を描出することはほとんど出来ません。また、レントゲンと同様に加齢による変化も多くみられます。椎間板変性や後方への突出、それらに伴う脊髄の圧迫などです。慶応大学の松本先生らは健常者と急性期頚椎捻挫患者(それぞれ約500名)のMRIを撮影し比較した結果を報告しています。それによると、MRIで前出の異常を認める頻度は両群とも変わりなく、患者の自覚症状とMRIの異常所見に関連性はありませんでした。また10年後の所見も両群で変わりはありませんでした。

 ・・・明日に続きます。

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