本判決は自賠責保険の勉強に大変役立つケーススタディとなります。

(注)現在、福井地裁の判決内容を精査していませんので、推測含みな解説となることをご了承下さい。

  2、わずかでも責任がある可能性があれば賠償責任を負う?

 一見、責任がないかに見えた対向車は、「自分にまったく責任がないと証明できない限りは自賠法上、賠償責任を負うべき」と司法判断されました。

 この点、まずは自賠法第3条を復習しましょう。  

第三条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

   この条文から自賠責が支払われる3要件が規定されています。  

① 自動車の運行について過失がなかったこと   ② 被害者または第三者(運転者を除く)に故意・過失がなかったこと   ③ 自動車に欠陥がなかったこと    損害賠償を法律面で論じるなら、民法の不法行為から「被害者が立証責任を負う」こと(過失責任主義)が原則となります。つまり、「証拠は被害者が探して突きつけなければ、加害者は弁償しないで済む」ことを意味します。しかし、自賠法では逆で上の3要件=「加害者が自分に責任がないことを証明しなければ、賠償義務を負う」ことになり、立証責任が被害者から加害者へ転換されています。これは自賠責保険の理念である被害者救済の精神が反映されたもので、ほとんど無過失責任(≒無条件で責任を追う)に近いものです。

 したがって、本判決は一見、非のない対向車であっても、「クラクションやハンドル操作で衝突回避ができた可能性がまったくなかったとまでは証明できない⇒わずかながら責任の余地が存在する」と判断されたのです。   c_y_21  常識で考えると勝手にセンターラインを越えて突っ込んできた自動車に対して、「避けないほうが悪い」となれば納得のいかないものです。また、民法上も過失割合に応じた責任を負うこと(仮に回避措置の可能性があったとして、おそらく10:90程度)になり、責任は10%以下となるでしょう。しかし、自賠責保険(自賠法)では被害者を手厚く保護するのです。

 「過失減額」から如実に表れています。

  被害者の過失割合   後遺障害・死亡    傷害 7割未満 ⇒ 減額なし ⇒ 減額なし 7割以上8割未満 ⇒ 2割減額 ⇒ 2割減額 8割以上9割未満 ⇒ 3割減額 ⇒ 2割減額 9割以上10割未満 ⇒ 5割減額 ⇒ 2割減額

   実際、わずか10%程度の責任でも自賠責が支払われて助かった経験が少なくありません。

 実例⇒ほとんど自分が悪い事故ながら、自賠責保険から補償を得た

 この実例は過失減額すらなく、相手の自賠責から100%(4000万円)が支払われました。

 自賠責保険を熟知している私からすれば、福井地裁の判断は決して特異な判決ではないのです。しかし、尚、意見があります。それは次週に・・

 つづく  

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 被害者に手厚い自賠責ですが、手厚すぎる?との批判が起こりそうな判例がでました。本件、自動車保険(任意保険、自賠責保険)について、非常に勉強になる論点が含蓄されています。

 まずは以下、福井新聞の記事(引用)をご覧下さい。  

「もらい事故」でも賠償義務負う 福井地裁判決、無過失の証明ない

 車同士が衝突し、センターラインをはみ出した側の助手席の男性が死亡した事故について、直進してきた対向車側にも責任があるとして、遺族が対向車側を相手に損害賠償を求めた訴訟の判決言い渡しが13日、福井地裁であった。原島麻由裁判官は「対向車側に過失がないともあるとも認められない」とした上で、無過失が証明されなければ賠償責任があると定める自動車損害賠償保障法(自賠法)に基づき「賠償する義務を負う」と認定。対向車側に4000万円余りの損害賠償を命じた。

 遺族側の弁護士によると、同様の事故で直進対向車の責任を認めたのは全国で初めてという。

 死亡した男性は自身が所有する車の助手席に乗り、他人に運転させていた。車の任意保険は、家族以外の運転者を補償しない契約だったため、遺族への損害賠償がされない状態だった。対向車側は一方的に衝突された事故で、責任はないと主張していた。

 自賠法は、運転者が自動車の運行によって他人の生命、身体を害したときは、損害賠償するよう定めているが、責任がない場合を「注意を怠らなかったこと、第三者の故意、過失があったこと、自動車の欠陥がなかったことを証明したとき」と規定。判決では、対向車側が無過失と証明できなかったことから賠償責任を認めた。

 判決によると事故は2012年4月、福井県あわら市の国道8号で発生。死亡した男性が所有する車を運転していた大学生が、居眠りで運転操作を誤り、センターラインを越え対向車に衝突した。

 判決では「対向車の運転手が、どの時点でセンターラインを越えた車を発見できたか認定できず、過失があったと認められない」とした一方、「仮に早い段階で相手の車の動向を発見していれば、クラクションを鳴らすなどでき、前方不注視の過失がなかったはいえない」と、過失が全くないとの証明ができないとした。  (福井新聞社)

c_y_21    対向車にしてみればとばっちりの事故です。この交通事故から、保険の適用上の重要論点2つを検証します。   1、自分が契約している任意保険、自賠責保険は自分(の被害)に対して免責となるのか?

 自賠・任意ともに契約者である自分に対して賠償保険は適用となるのか?知人とはいえ、この事故の最大の責任者は運転者のはずです。運転を代わった知人は加害者となります。この自動車に付いていた任意保険及び自賠責保険は契約者自身が被害者となった場合にも適用できるのでしょうか?

 まず自賠責ですが、そもそも賠償保険は「他人」に対して償うものです。いくら加害者にとっては他人であっても、自賠責の契約者自身が被害者であれば他人性は否定されます。  また、おそらく亡くなった被害者は同乗の運転者と知人で、同じ目的地に向かっていると推測しますので運行供用者となるはずです。運行供用者は自賠責の賠償対象から外れます。

★ ...

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 自賠責の共同不法行為に関する質問です。最近はネットのみならず、治療先からもにわか知識のアドバイスで振り回される被害者が多いようです。本件はその一例です。(内容は一部脚色しています)  

Q) 後方からの追突された事故で、被害車両に同乗していました。首の痛みから接骨院で半年以上、施術を続けています。接骨院の先生から、「後方から追突してきた車両だけではなく、同乗していた車両の自賠責保険も使えるかもしれない。現在、施術料は200万円ほどですが、自賠責が2枠使えれば限度額120万円の2倍=240万円まで大丈夫ですよ!」と聞きました。この先生は先日、施術料を相手保険会社からの打切りされてしまったのですが、自賠責に請求すれば大丈夫と言っています。本当に240万円まで請求できるのでしょうか?

tutotu 二台による事故だが・・

A) 順番に整理しましょう

1、被害車両の同乗者は双方の自動車による被害者で、双方の自動車に過失がある事故であれば共同不法行為が成立します。したがって、先生の言うように傷害支払い限度額120万円×2=240万円の支払い枠を確保できます。

2、本件の場合、被追突で明らかな0:100であれば、同乗自動車の運転手にはまったく責任がないことになります。被害者救済志向が強い自賠責保険でもさすがに過失0の相手には請求できません。

3、仮に同乗車に責任が5%でもあれば有責(ただし傷害支払いは20%減額)となります。その場合、96万円+120万円=216万円の支払い枠が確保できます。

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c_g_a_5-118x300 16条請求とは自賠法(強制保険である自賠責保険のルール、被害者に有利な内容です)16条の定めによった保険請求の方法のことで、一般には「被害者請求」と呼ばれています。交通事故で後遺障害が残るようなケガの場合、被害者にとって絶対に検討すべき手続きです。最近は交通事故に力を入れている弁護士も被害者請求を推進するようになってきました。しかし、後遺障害の認定は相手の保険会社に任せる「事前認定」がまだ多くを占めています。受任しながら「事前認定」を看過している弁護士もまだ多数派です。    何度も双方のメリット・デメリットを語ってきました。

 ⇒ 事前認定 or 被害者請求

   この記事を読んでいただければ、双方のメリット、デメリットがご理解いただけると思います。被害者の立場とすれば、できれば16条請求が望ましいはずです。しかし楽なケースとやたら面倒なケースに分かれます。    治療費などを加害者側保険会社が「自由診療で一括払い」(病院に直接、自由診療の治療費で払ってくれる)してくれれば、その損保会社の担当者は自賠責に求償する必要から診断書・診療報酬明細書を病院から取得、所持しています。被害者はそれら申請に必要な診断書類、および事故証明書のコピーをもらうことによって、ほぼ書類は揃います。(画像の貸出しは微妙、拒否されることがあります)  しかし健保、労災が絡む件、一括払いを拒否された件は絶望的に面倒な手続きを強いられます。その労苦とは・・・  

1、健保、労災で治療費を確保した場合、あらためて病院に通院期間の自賠責用診断書・診療報酬明細書をお願いしなければなりません。  診療報酬明細書については病院はすでに健保・労災に発行しており、2重発行はできないと拒むケースが多くなります。診療報酬明細書とは病院にとって治療費の請求書なので、すでに健保・労災に提出して費用が精算されていれば、再び発行はできない・・・これは筋が通っています。ちなみに健保・労災は受け取ったこの明細書に従って病院に支払い後、被害者に過失がない、もしくは少なければ自賠責保険に求償することがあります。

 この書類の流れを説明できる法律家は少なく、病院の医事課の事務員や健保・労災の担当者も自分の所管する事務以外は把握していません。損保の人身担当者が一番詳しいと思います。

  2、従って、1で診療報酬明細書が入手できねば、健保・労災に診療報酬明細書の開示請求を行う必要が生じます。開示請求には開示申請、開示決定、謄写請求など、数段階の手続きが必要です。手間となにより時間がかかります。通院期間が長く、量が多いと開示決定に2~3か月待たされることがあります。  

3、病院によっては、健保・労災で治療した患者に対して、1の自賠責用の診断書の記載すら拒みます。その場合、病院の事務方、医師へ説得が必要です。  

4、画像の収集。病院によっては極度に画像の貸し出しを嫌います。またCD等の買取なら500円~2000円で済みますが、なかにはXPフィルム(レントゲン)のコピーを1枚1000円で売る病院も存在します。最近も骨折が多かった被害者さんは220枚も買わされるはめになり、22万円+消費税を支払いました。CDに焼ける設備がありながら、院内のルールだそうです。こうなると病院の悪意を感じます。

  5、これらの手続きに際し、患者本人ではない場合、同意書(しかも期限3か月以内を要求されることも!)が必要であることはもちろん、病院によっては「郵送不可」「患者本人のみ対応」「文書料金の振込み不可、窓口で現金払いのみ」など無駄に厳しいルールを盾に非協力的な対応も珍しくありません。なにより、事情をよく解っていない医事課(文書課)の事務員に説明、理解を得なければ進みません。

  

 このように書類・画像の収集が複数の病院に及べば、被害者はヘトヘトになります。交通事故被害者は複数の病院に行きやすく、先月は9か所!も通院した被害者がおりました。もしこれらの手続きを弁護士が受任したら、弁護士だけでなく事務所の事務員も事務の洪水と、病院はじめ健保、労災との折衝で消耗してしまいます。やはり「事前認定」を是認する弁護士の本音は「楽したい」ではないでしょうか?

 秋葉事務所ではこれらの手続きを弁護士から依頼され、ぶつぶつ愚痴を言いながら収集を進めています。6月はなんと病院16か所、労災開示1、健保開示2、そこから診断書、画像類で毎日大型事務所並の文章が行きかっています。(いつかその事務処理方法をマニュアルにしようと思っています。)

 医証収集のプロである以上、避けられない事務、ここで泣き言を言っては保険会社の人身担当者に笑われてしまいます。彼らも日々、自賠責への求償のため、医証の収集に忙殺されています。頑張らねばなりません!  

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 昨日は自賠責保険の請求形態を復習しました。いずれも請求者本人で手続をすることになりますが代理人による手続も可能です。つまり法的な代理権をもつ弁護士に代行してもらうことが可能です。ちなみに行政書士の代理請求も認められています(「行政書士はできない」という学説、見解もあり)。あまりケースはありませんが①保険会社の一括払い後の求償も理論的には弁護士等に委任ができます。

 さて、問題提起です。一昨日の話では委任請求は報酬の「取りっぱぐれ」を防ぐ手段であることを解説しました。もちろんこれは本音であって、建て前上は「プロによる委任請求なので安心です!」ということになります。もちろん委任された法律家の名前で保険金を受け取ることは代理権を持つ以上、不自然ではありません。が、しかし・・・請求を受けた自賠責にとっては受け取り方が違います。そもそも人身事故では請求の80%以上が①の保険会社による一括払い後の求償であって、当事者もしくはその代理人による請求は圧倒的に少なく、とても目立つのです。例えば被害者請求とした理由は「加害者側に任意保険がない」、もしくは「被害者に責任が大きい事故」である理由から加害者側保険会社の一括払いとならなったケースしかない・・・と自賠責側は思っています。したがって不自然な被害者請求は厳しくチェックされています。それが代理人によるものであれば尚更です。

 私は委任請求をまったくやならいわけではありませんが、原則しません。なぜなら後遺障害の立証を仕事をしている以上、このような自賠責側のチェックを避けたいと思っています。もちろん不正に障害を誇張したり、法的、道徳的に問題のあるような申請は絶対にしていません。しかし自賠責調査事務所は常に詐病者(うそのケガ)など不正請求や大袈裟な被害者の訴えに騙されないよう、厳しく審査しているのです。後遺障害等級を獲ってあげたい業者(からの申請)は調査事務所にとってまったく逆の立場、ある意味「敵」なのです。であれば、業者はなるべく目立たないようにする方が恣意的な審査を避けられると考えています。特に全申請の60%を超える「むち打ち」による14級は、被害者が「痛い」と言っているだけで、他覚的な症状が乏しいケースが圧倒的です。この場合、審査側は「症状の一貫性」「治療過程」等からしか判断できず、最終的には被害者の訴えている「痛い、しびれる」を”信じるか否か”で決定します。だからこそ業者による委任請求という緊張を与えず、フラットに審査していただきたいのです。  しかし被害者側に弁護士が早期に介入した事故であれば、弁護士が委任請求することはむしろ自然なので、余計な予断は与えないと思います。やはり問題なのは行政書士やその他の業者でしょう。

 昨年からむち打ちの認定は厳格化の傾向と聞きます。理由は単に業者による(認定に満たない)請求数が増えた結果かもしれません。それでも私のむち打ち認定は80%以上を確保しています。その全件、行政書士名による委任請求ではありません。委任請求を行い、私の名前を出すことで認定率が上がればそうしますが、保険会社のいらぬ予断を与える弁護士以外の委任請求は、特別な理由がなければ抑制すべきです。少なくとも保険会社出身の私はそう思っています。

 着手金無料を掲げる業者はほぼ全件、委任請求をしているはずです。しかし委任請求すべきか否かについて、案件ごとに判断する慎重さが必要かと思います。後遺障害審査で被害者の運命はほぼ決まります。決して神経質なことではないと思います。

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 昨日の話、自賠責保険の委任請求について続けたいのですが、先に請求方法について復習しましょう。

 自賠責保険の請求とは・・・自賠責保険の請求には分類すると4形態あります。申請数の多い順から説明します。教科書的な解説にならないよう、経験にもとづいた※の補足を加えています。

① 任意保険会社による一括払い後の求償

 現在およそ80%の自動車に任意保険が付保されています。多くの場合、交通事故の人身事故であれば加害者が加入している保険会社が治療費や慰謝料の話し合いや交渉を担当します。そして、示談の末、賠償金を支払うことになります。事故の解決後、あるいは途中、この任意保険会社は被害者に支払った分について、自賠責保険にこの金額を請求・回収します。入院・通院分の傷害支払限度は120万、後遺障害は4000万まで回収できます。一括払いはある意味、任意保険会社の立替え払いです。  数回通院した程度のケガであれば任意保険会社は自賠からほぼ100%回収可能です。超えた分が任意保険会社の負担分となります。

※ 被害者に相手保険の契約があるにも関わらず、自分の自動車保険の人身傷害特約から自らの治療費や慰謝料を受け取るケースもあります。多くは事故の責任が自分にあるケースでしょうか。これも同様に人身傷害特約を支払った任意保険会社が相手の自賠責保険に求償を行います。私は勝手に「16条的一括払い」と理解しています。(本文を読み進めればわかります)

② 被害者がみずから相手の自賠責保険に請求(16条請求)

 これは被害者が加害者もしくは加害者の任意保険会社に対してではなく、直接、自賠責保険に保険金の請求を行います。通常、①の一括払いのように任意保険会社が立替え払いとしてくれるので、わざわざ被害者が手続きをする必要がないとも言えます。しかし例えば相手に任意保険がない場合、また被害者の過失が大きい、責任関係がもめていて埒が明かない、そのような理由から相手の保険会社が対応してくれない場合などの場面には必要な救済方法です。

※ この被害者請求は後遺障害が残った事故の場合に私たちが推奨するやり方です。流れは通院期間の治療費や休業補償などは①の一括払いで任意保険会社にお世話になるとして、後遺障害の審査から②の被害者請求に切り替えます。これで相手保険会社と示談せずとも、後遺障害保険金の先取りが可能です。何より保険金をあまり払いたくない、利害が相反する相手の任意保険会社の手を借りずに自ら審査書類の精査・提出ができます。

③ 加害者が被害者に支払った分を請求(15条請求)

 限定的な方法ですが、典型的なケースで説明します。加害者が任意保険に未加入で被害者のケガについて治療費や慰謝料を自らのお財布から支払ったとします。その金額について自身の自動車についている自賠責保険に請求します。条件は実際に被害者や病院に支払った領収書があることです。特に慰謝料の回収は示談が完了している、つまり示談書の提出が必要です。慰謝料の金額は、あくまで自賠責基準以下を限度に加害者が支払った金額です。

※ 立替え分の回収と言えますので①の一括払いと同じことになります。任意保険会社の自賠責への回収は15条請求となります。  ちなみに③のケースについて私は保険代理店時代の20年で2度しか経験していません。いずれも加害者に任意保険がなく、加害者と被害者と間に入ってこの加害者請求にて解決させました。両件とも1ヵ月通院ほどの軽傷で治療費・休業損害・慰謝料の合計が120万円以下だったので、この加害者が先にお財布から払うことが可能でした。逆を言いますと大きい金額なら加害者の支払い能力が及ばず、結局多くの場合、被害者が②の被害者請求をすることになってしまいます。つまり加害者の経済的な理由(お金がない)、もしくは任意保険に入らない主義(このような人が素直に責任を認めるか?)、うっかり任意保険を切らした(だらしない)・・・このような加害者が誠意をもって自分のお財布から速やかに支払うことなど極めて稀なのです。

④ 仮渡金請求(17条請求)

 被害者が相手から治療費等支払いを受けられない場合、例えば相手に任意保険がない、被害者の責任が大きく相手の保険会社が一括払いをしてくれない等で、急ぎお金が必要なときに以下の表のとおり治療中でも一時金が請求できます。特徴は表の症状となる診断書さえあれば、領収証等がなくても支払われることです。言わば「予想払い」ですね。もちろんこの保険金は治療後の本請求で最終的な保険金から差し引かれます。

症状

金額

死亡

死亡された場合

290万円

重症1

脊椎の骨折で脊髄を損傷したと認められる症状を有するもの

左のいずれか

40万円

上腕または前腕の骨折で合併症を有するもの 大腿または下腿の骨折 内臓の破裂で腹膜炎を併発したもの 14日以上病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日以上のもの

重症2

脊柱の骨折

左のいずれか

20万円

上腕または前腕の骨折 内臓の破裂 病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日以上のもの 14日以上病院に入院することを要する傷害

軽傷

医師の治療を要する期間が11日以上要する傷害 (上記、死亡・重症を除く)

5万円

  ※ 最新の自賠責保険請求案内から抜粋しました。今までは要件=症状が抽象的でわかり辛かったのでしょうか、改定のたびに具体的な症状の記載が増えています。

  ※ あまり知られていませんが診断書、診療報酬明細書(なくてもOKの場合あり)、治療費の領収書があり、被害者の負担が明らかであれば治療中でも仮渡金請求ではなく本請求(16条請求)が可能です。私の場合、当座のお金が必要な被害者に対し、本請求か仮渡金か、どちらの金額が多いかで選択しています。

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人身傷害特約における休業損害のアドバンテージ

 休業損害の請求について・・・自賠責基準ではでは1日5700円の定額、それ以上の場合は収入証明(源泉徴収票、申告書)を示し19000円まで。また加害者に請求可能でそれらの保険基準を上回る場合、収入に関する証明を示した結果、加害者側(多くの場合、任意保険会社)が納得すればその額の支払いを受けられます。しかしひき逃げでは相手(相手保険)はいません。ご自身が人身傷害特約へ加入していた場合、まっさきに請求します。

 人身傷害特約の約款を読むと、休業損害は「別紙に定められた算定基準に従い算出」とあります。つまり別紙のより高ければ「個別適用」と言って収入の証明が必要になります。逆を言えば、その別紙算出基準と自分の収入を比べることからスタートです。つまり以下の年齢別平均給与と実収入の高い方を請求します。まず自身の実収入と表と見比べて下さい。 

年令別平均給与額(月額)

年令

男性

女性

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 明日は弁護士事務所でひき逃げ事案の引き継ぎです。本件は政府保障事業に申請をかけ、1年の審査の結果、ようやく高次脳機能障害5級が認定されました。今後の保険請求について、弁護士代理による保険を熟知したテクニカルな請求を遂行していくことになります。

 毎年、数多くのひき逃げや加害者が無保険の相談を受けております。ひき逃げの場合、当然ながら相手からの補償は受けられません。そうなるとご自身が加入している保険を総動員し、一番有利な支払いを受けるべく計画的に進めねばなりません。ケースによってたくさんの選択肢がありますが、まず人身傷害特約(以下、人傷)の加入がある場合とない場合で2分します。

1、治療費

<人傷がある場合>  人傷から支払いを受けられます。そして損保は安く抑えるために健保、業務中・通勤中であれば労災の使用を推奨します。通常、交通事故で相手の保険があり、自身の過失がなければ(少なければ)、病院が喜ぶので自由診療を原則とします。しかしひき逃げの場合の健保使用は病院も仕方ないと思ってくれます。したがって健保、労災の使用で大丈夫と思います。損保と病院の合意が取れれば一括払い(損保会社が病院に直接治療費を支払てくれる)も可能です。  相手がいないので求償することがでできず、損保は大変です(損保も最終的に自賠責に対して求償するように政府の保障事業に求償したいのですが、国は民間で払われるものですら控除すべきとして拒否しています。)

<人身傷害がない場合>  健保、労災の使用は必須です。そして政府の保障事業への請求を進めます。政府の保障事業とは相手がいない場合、国が肩代わりして補償してくれる制度です。自賠責保険と同じく国土交通省の管轄で、審査も自賠責調査事務所で行います。厳密に言いますと自賠責の調査・支払事務は民営化されていますが、政府の保障事業の事務は国交省の公務員が行います。  支払い内容は、自賠責保険とほぼ同じと言っていいでしょう。120万円まで治療費や休業損害、入通院慰謝料が確保できます。限度額がある以上、入通院慰謝料の額を確保するために、健保、労災を使用し治療費を圧縮する必要があります。自由診療では健保の2~3倍の費用がかかりあっという間に120万円を使い切ってしまうからです。                                     

★ まず人身傷害特約が入っているかを調べて!

 この保険の適用如何でその後の運命が分かれます。ご自身の自動車に乗っているときだけではなく、他の自動車や自転車、歩行中の交通事故にも適用できる可能性があります。多くの場合、ご自身だけではなく同居の家族、別居の未婚の子も補償対象に含まれます。

人身傷害特約の復習  ⇒ そして『無保険車傷害特約』は吸収された・・・

別居の未婚の子の復習 ⇒ 「別居の未婚の子」とは・・・

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 後遺障害の審査は厳しく、調査事務所は請求者を常に疑ってかかっている意地悪な機関と思っている被害者、法律関係者も多いと思います。しかし私の印象はそのようなステレオタイプではありません。私は自賠責保険の被害者請求を保険会社時代から何年もやってきています。たまに「なんじゃこりゃ?」ってな判定を見ることがありますが、あくまで少数例。「よく見てくれているなぁ」と感心することの方が多いのです。さらに先日の出来事から・・・

 本件の被害者さんは腰椎捻挫で症状の改善が進まず、整形外科から整骨院に転院し、さらに鍼灸院に通って治療を継続しました。当然、相手の任意保険会社は腰痛と事故の因果関係に疑いを持ち、途中で治療費を打ち切りました。仕方なく健保で治療費を払っていましたが、このままでは事故は解決しません。この時点で私が介入し、症状固定を勧めました。しかし後遺障害診断書は鍼灸院や整骨院では書けません。書いていただくために整形外科に戻り、医師に事情を説明し、なんとか診断書を書いていただきました。  しかし、治療経過を見ると、途中から最後の後遺障害診断まで、”病院への”通院は3か月ぽっかり間が空いてしまっています。「神経症状を残すもの=14級9号」は他覚的所見が乏しくとも、症状の一貫性で認めてくれる余地があります。後遺障害の審査上、整骨院や鍼灸院の治療実績は軽視されますので、この3ヵ月の治療間隔は致命傷なのです。

 仕方ないので自賠責調査事務所の担当者と電話で直談判です。事情を説明したところ、本件の調査事務所の担当者はいきさつをご理解下さり、鍼灸院の領収書にて治療の継続性を認めてくれるようで、早速提出の運びとなりました。「非該当」を避けるべく、まるで等級が認められるようにこの担当者は柔軟な判断をしてくれているのです。つまり杓子定規な審査をするのではなく、被害者の事情に耳を傾け、症状の残存を信用してくれたのです。こうなると申請側の私と立場は違えど、同じ被害者救済の仕事をする同志です。

 やはり審査をするのは「人間」。担当者がすべての被害者を疑ってかかるのか、偏見なく被害者を見抜くのか・・・。やはり14級9号の真髄は「信用してもらうこと」に尽きると同時に、担当者の裁量次第、公平なジャッジは担当者の人間性や思想で左右される時があるのでは?・・懸念は尽きません。  

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 よくある質問の一つに完璧にお答えしましょう。  

Q:「後遺障害の申請をするのですが、相手の保険会社に診断書を出して任せてしまう方がよいのでしょうか?ネットで検索すると、被害者請求の方がいいと聞きますが・・・」

 

 事前認定とは、後遺障害診断書を相手の任意保険会社の担当者に提出し、審査機関である自賠責調査事務所へ送達してもらうことです。被害者請求とは直接、自賠責保険に被害者が診断書等、必要書類を提出することです。

 どちらがいいのか?これに対して、有利・不利などの単純な優劣ではなく、論理的に回答しなければなりません。被害者が客観的な情報から選択すべきと思うからです。まずは以下の表をみて下さい。  

事前認定

被害者請求

手続き面 どちらが簡単? 楽です。相手の保険会社が書類を集積して審査先である調査事務所に送ります。 ご自身で、診断書、画像、他、集めて回らねばなりません。 審査面 全件必須ではないですが「一括社意見書」が添付されるケースがあります。被害者にとって有利・不利な情報となるかは担当者次第ですが、被害者に不利な情報があれば漏らさず伝えるでしょう。

また、何か検査が不足していても、立ち止まって親切に教えてくれません。形式上の書類さえ揃えばさっさと提出します。任意保険・担当者の業務範囲では、後遺障害の申請内容など吟味する必要ないからです。 ご自身の障害について積極的に検査や画像を集めることになります。立証上、足りない検査があれば追加します。

また、熟知した専門家に依頼すれば、間違いのない立証作業が望めます。逆を言えば、低レベルの先生に任せると、単に書類を右から左へ、わざわざ被害者請求する意味などない申請となります。 保険金 自賠責保険金は? 自賠責で認定された保険金は任意会社が提示する賠償額に合意、つまり示談するまで、手にできない。 相手と示談する前に、自賠責保険金を手にできる。結果として、その後余裕をもって賠償交渉に臨めます。つまり長期戦も可能となります。 費用面 経費は? かかりません。相手保険会社が無料でやってくれます。 ご自身で動く場合は最低限の経費で済みますが、代理人(弁護士、行政書士)に依頼する費用がかかります。

   この表を示すと被害者の80%以上が被害者請求を希望します。ご自身に弁護士費用特約がついていれば、ほぼ100%が被害者請求を選択します。問題は費用対効果(業者に依頼するか否か、業者の選定)でしょうか。ちょっと考えればわかりますよね、被害者に保険金をなるべく払いたくない相手(保険会社)にその保険金が増えるかもしれない作業を任す?・・やはり気持ちのいいものではありません。相手任意社は露骨な妨害や不正などはしないでしょうが、少なくとも被害者の利益の為には頑張らないでしょう。あくまで事務的です。

 誤解のないように言いますが、どちらの手続きかで勝負が決まるということではありません。提出・審査先は同じ自賠責調査事務所です。審査結果は提出する書類の内容および、必要書類の完備次第です。それらが同一ならば結果は同じです。

 正しい等級は「間違いや遺漏のない診断書の記載内容と必要な検査資料の完備」にて決定します。しかし、現実は・・完璧に正しい診断書、不足のない検査資料が自動的に揃うことの方が少ないのです。協力してくれるであろうお医者さんは治すことが仕事、障害の立証など興味ないからです。そして、審査上、定型書類以外の情報がまったく検討されないわけではありません。意見書の存在も気になるところでしょう。

 ならば、自らの主張を徹底すべく、自ら書類集積・申請をしたいのが人情です。もしくは、精通した先生にお願いしたいのです。

 連携先の弁護士事務所はどちらかの派に分かれていますが、経験を積むと被害者請求中心になっていくようです。なぜなら書類を集める立証過程でいち早く認定後の交渉戦略を構想しているからです。申請前から障害の全容を把握したいのでしょう。このような先生は「等級認定が最初の勝負!」と石橋を叩くように慎重になります。そして、自ら書類を精査・集積する過程を通して自然と被害者請求中心になっていくようです。

 経済的な面も無視できません。症状固定後、被害者は治療費を絶たれます。仕事に復帰できなければ休業補償もなくなります。被害者さんは賠償金を得るまで長い交渉期間を待つ身なのです。先に自賠責保険金を確保する、このような権利を使わない手はありません。

 やはり、被害者は自らの窮状を明らかにする作業を人任せにするのは心配なのです。実際、被害者請求すれば調査事務所から追加調査や不足書類の打診が直接、自分もしくは依頼している弁護士事務所に届きます。調査内容にもよりますが、事前認定では多くの場合、任意社や病院に打診されて、追加調査の内容・進行が不明となります。この医療照会で勝負が決まることが往々にしてあるのです。

 相手任せ、不透明な手続き、それで認定結果に納得できますか?  

 一方、どっちを選択しても結果は同じですよ、被害者請求は面倒なだけです。」と依頼者を説得している弁護士も少なくありません。

 私はなぜこのように考える弁護士が多いか考えてみました。そこで思い当たるのが、このような考えの弁護士はほぼ保険会社の顧問弁護士、もしくは協力弁護士の経験者ではないか?です。

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 最近の受任案件から、再度警鐘を鳴らします。

 交通事故のケガで後遺障害を残してしまうことは。人生最大級の痛恨事です。いくら加害者や保険会社を恨んでも、もう事故前には戻りません。しかるべく等級認定を受け、お金で解決するしかないのです。最初の関門である自賠責保険への等級申請について、初回申請の方と異議申立申請の方、それぞれの被害者と昨日、電話やメールで意見交換しました。

1、初回申請Aさん

 上がってきた後遺障害診断書をみると、一部不記載、関節可動域の明らかな誤計測がありました。どちらも等級の認定基準に関わることながら大勢には影響は薄いかな?と思っています。しかし初回で正当な等級にぴたっと収めるために、わずかな妥協が影響してはいけません。石橋を叩いて渡る慎重さも必要です。  症状固定後、仕事へも復帰し、再度の医師面談と診断書修正に対し、Aさんも及び腰です。しかし悔いのないように進めるために「一緒にもう一度医師面談をしましょう!」と説得しました。この病院は予約制でなかなか医師面談がかないませんので、まず医師に誠意を込めた手紙を書き、ご判断を仰ぎます。より良い診断書の完成に力は抜けません。後遺障害診断書の作成が勝負なのですから。

 初回勝負!はこちら側の事情ですが、審査する調査事務所も正確な審査をするため、正しい情報を必要としています。したがって正確な診断書を提出することは双方にとってよいことなのです。

2、異議申立てBさん

 無料相談を回りながら、ご自身で学習し、初回申請に臨みました。結果は非該当。しかし膝の痛みは受傷以来続いており、医師から手術の必要性すら示唆されています。

 この状態で私へ依頼がきたのですが、「なんでこのような重篤な症状で、きちんと検査もせず申請してしまったのですか!」と半ば怒ってしまいます。保険会社や医師に症状固定を急かされた云々・・・言い訳は続きます。厳しいことを言いますが、この被害者は交通事故賠償という戦いの初戦で「負けた」のです。勝手に自分で進めて、失敗してから専門家のドアを叩く・・・こちらとしては「私に最初から依頼しなかったのだから、最後まで自分でやって下さい」と喉まで言葉が上がってきます。

 Bさんはじめ異議申し立ての被害者は、この「負け」を認めることから再スタートです。中には「認定されなかったこと」を保険会社に対する恨みつらみに変えて、自身を悲劇の主人公のように思っている被害者さんもいます。このような方は冷静さを欠きますので、単なる自覚症状を羅列した感情的な異議申立文章になりがちです。新たな医証すら得ていないのに、延々と愚痴を並べても話になりません。これから数年、異議申立の連続となります。

 「負け」を「リベンジ」するためには、周到な準備と現実的な戦略が必要です。そしてある程度妥協も必要です。

 そのような事情から異議申立ては積極的に受任しません。Aさんのような初回申請の方を助けるために、日々全力疾走しているからです。幸い異議申立てを積極的に受任している専門家さんも多数ネットでみられるので、心配ないと思っています。

 交通事故賠償も「戦い」である以上、「先んずれば人を制す」の格言のとおりです。受傷から早期の相談をお待ちしています。  

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 毎回被害者さんに説明しています、「自賠責保険における後遺障害申請の流れ」を復習しましょう。    自賠責保険の契約手続きは通販を除く、任意保険会社と交わします。多くの場合、自動車購入時、車検時に自動的に契約しますので、任意保険ほど「契約した!」感はありません。

 交通事故の被害者が後遺障害を負った場合、相手の自賠責保険にまず等級の申請を行います。

 申請ルートは相手の任意保険会社を介した「事前認定」、被害者側で行う「被害者請求」に大別されます(稀に「加害者請求」、「仮渡金請求」もあります)。この申請書類は自賠責保険の引受会社・担当窓口に送られます。そこで提出書類のチェックを行い、不足・不備がなければ、「損害保険料算出機構」の下部組織である「自賠責損害調査事務所」に送致、そこで審査されます。

 そして結果は窓口である自賠責保険会社に戻り、そこから申請した被害者に通知がなされます。この通知は自賠法 16 条の 4 で「文章回答」が義務付けられています。

 自賠責側から見ますと、以下4段階となります。

 契約事務→保険金請求受付事務→審査は別機関→支払、認定結果通知事務

 自賠責保険は平成14年4月に国土交通省の管理運営を外れ、民営化されました。しかし昔も今も調査・審査業務は調査事務所です。上記の流れの通り、窓口業務を民間=損保会社が行うシステムの整備がなされた事、これが民営化の実質的な内容です。

   明日から実際の「文章回答」を載せます。今日の日誌はそのシリーズのプレリュードのつもりで書きました。被害者はもちろん、この業界の皆さんも興味津々、自賠責保険の回答パターンを特集します。一緒に考察しましょう。

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 つまり「自身が何等級であるか」分析する冷静さがないとダメなんです。そして認定理由を理解し、第3者が納得できる文章を書く国語力が必要です。  実践的な話に移ります。  

■ 異議申立の進め方

① 認定理由をよく読む  残存する症状についてなぜ認められないか、症状別に細かく書いてあるはずです。そこをしっかり読み取って下さい。

 例えば、「頚部が痛い、重い」 「腕がしびれる」 「関節が曲がらない」 「めまい、吐き気がする」 ・・・これらは自覚症状です。世の中の人間がすべて天使のように清純であればいいのですが、残念ながら嘘の症状、大げさな症状を訴える被害者も少なくないのです。審査する側はまず疑ってかかっていることを肝に銘じて下さい。つまり「どの主張が信じてもらえなかったのか?」を抽出します。

② 自覚症状と他覚症状を結び付ける

調査事務所 お決まりの非該当決め言葉 1 「同部に骨折、脱臼等の損傷が認められず ~ 自覚症状を裏付ける客観的な医学的所見に乏しいことから、自賠責保険が認める後遺障害には該当しないと判断します」      否定の理由はようするに他覚的見地が乏しいのです。これはずばり医師の診断、検査・画像所見の不足を指します。

 ・ 不足している検査はないか    神経麻痺なら筋電図や神経伝達速度検査が行われていたか。

 ・ 症状を裏付ける画像は      骨折の場合レントゲンでOKですが、筋損傷はMRIじゃないと写りません。

 ・ 可動域制限が正しい計測か   間違った計測は測り直す必要がありますが、そもそも器質的損傷が伴わないのに「曲がりません」と言っても信じてもらえません。

③ その症状はいつから?

調査事務所 お決まりの非該当決め言葉 2 「これらの症状の出現時期は少なくとも受傷から約○日経過した平成○年○月○日以降と捉えます ~ したがって本件事故との相当因果関係を有する障害と捉えることは困難なことから、自賠責保険が認める後遺障害には該当しないと判断します」    これが一番やっかいです。受傷当時に医師が見逃した為に症状の発見が遅れたケースです。最近頻発しています。  症状の出現時期までの経過日数が長ければ長いほど絶望度は高まります。この場合、受傷当時からのカルテを回収し、せめて自身が痛みや症状を訴えていた時期を特定し、切々と確定診断が遅れた状況・理由を説明していくしかありません。  この項目がもっとも調査事務所からの信用度合が試されると思います。

④ 漏れている症状はないか

 複数のケガの場合、大きなケガの認定にスポットがあたり、見逃されている症状があります

 ・ 神経麻痺の場合   足首の可動制限だけか?足指の可動制限が見逃されているケースがあります。

 ・ 前腕骨の骨折で癒合良好    しかし痺れ、手首の可動制限が残っている場合、橈骨神経麻痺を精査します。

 ・ 高次脳機能障害が認定      体の麻痺等の症状をすべて高次脳の等級に含めますが、嗅覚脱出やめまいなどを別系統として併合する余地あります。  

 自信がなければ専門家に依頼するのも良いと思います。特に異議申立てに熱心な事務所も存在します。異議申立ての成功率も7割を超える優れた先生もいるそうです。

 最後に、 原則 異議申立ては受任しません。 続きを読む »

 原則 異議申立ては受任しません。

 しかしどうしてもやらざるを得ない気の毒な被害者さんも存在します。極めて限定的ですがお引き受けすることもあります。私たち協力行政書士や連携弁護士は仕事の基本を、「受傷から解決までを間違いなく案内する船頭たるべし」としているからです。    ご自身で動き、つまづきがあった結果、かなり厳しい状態からのスタートになります。幸い異議申立てに積極的な事務所も多いので、そちらへご紹介していこうと考えています。

 さて、それでも今年数件の異議申立て、再異議申立て、自賠責紛争機構への異議申立てといくつか手がけました。作業として最初に「なぜこの等級が認められなかったのか?」を分析します。そこで失敗続きの原因が浮き彫りになります。そして決まりきった失敗パターンの存在に気づきます。  

■ 異議申立てが不調となる理由

・ 非該当もしくは認定された等級の理由書をよく読んでいない。

 自賠責保険調査事務所は必ず「理由」を明示しています。自賠法16条の4および5 (最下段参照)で決められているからです。ですからその理由に対しての反論が必要です。それなのに「なぜ私のケガが○級なのか!非該当はおかしいのではないでしょうか!まったく理解できません!審査に納得がいきません、どうしてなんでしょうか?」・・・単に怒っている、愚痴をいっていっている、文句を言っている、再質問をしている類の文章が多いです。理由を理解しない被害者です。これでは会話になりません。

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部位別解説 保険の百科事典 後遺障害等級認定実績(初回申請) 後遺障害等級認定実績(異議申立)

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