ここ数年、各社、人身傷害の約款が整備され、平成24年2月最高裁「裁判基準差額説」を前提とした支払基準になってます。それでも、現場では裁判基準の満額を認めない、人身傷害基準での支払いを甘受するケースが多いものです。私は未だこの問題は未解決だと思っています。賠償社と人傷社が並存する過失案件では、今でもくすぶり続けている問題なのです。   参照 過去記事 ⇒ 人身傷害の約款改悪シリーズ 人身傷害保険の支払限度は結局、人傷基準 ①    そこで頼りになるのは、事故の解決を依頼した弁護士先生です。当然に加害者側保険会社と交渉してくれます。自身に弁護士費用特約の付保があれば、尚更、依頼しやすくなります。しかし、ここ数年の相談例では、既に弁護士に依頼中の被害者さんから以下の疑問・疑念、そして失望を聞くことが少なくありません。   ・「交渉の結果、自分にも過失があり、賠償金から20%の過失分を引かれるのは仕方ないと思いますが、その20%を人身傷害保険に請求したところ、0円回答でした。何故でしょうか?」

  ⇒ 弁護士:『???』   ・「なんとか人身傷害から満額の回収をしたいのですが・・・」

  ⇒ 弁護士:『約款で決められているので仕方ありません』    ・「先生、自分の保険会社にも交渉をお願いしたのですが・・・」

  ⇒ 弁護士:『それはご自身でやって下さい』       このようなやり取りから、「私では手に負えません」と被害者さんが駆け込んでくるのです。    つまり、相手(相手保険会社)との賠償交渉は受け持つが、自身加入の保険会社への代理請求はしない方針です。理由は、その代理交渉分には弁護士費用特約が使えません。この特約は「賠償請求行為」に適用されるもので、保険金請求行為はそもそも適用外です。また、弁護士への委任契約の契約書に目を通しても、保険金請求行為は入っていません。この弁護士への契約内容では、交通事故被害の完全回復が果たせないのです。

 契約だから仕方ない?そんなわけにはいきません。被害者自身の過失割合が大きい場合は、むしろ相手との賠償交渉より、人身傷害への請求こそ解決の本丸となります。

 やはり、交通事故被害者救済を謳う弁護士であれば、人身傷害への請求を含めた、総合的な解決プランを実行してもらいたいと思います。東海日動、損J、三井住友、これら3メガ損保の人身傷害約款の支払基準は違います。少なくとも3パターンに応じた対策が必要です。過失案件において、相手保険会社との交渉だけの弁護士(契約)では、まったくに片手落ちなのです。これらを熟知し、実行できる弁護士先生に依頼しないと、先の疑問・失望が待っています。

 手前味噌ですが、私達の連携弁護士さん達は常にグループで人身傷害対策について情報共有し、3メガ損保に対応したプランを実行しています。もちろん、依頼者さんを最後に突き離すような契約ではありません。

 賠償交渉のプロ? いえ、それ以上に求められるのは保険金請求のプロではないでしょうか。    

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   (旧会社名)東京海上さんが平成23年に、続いて損保ジャパンさんも翌年の約款改定で交通乗用具(への補償)を廃止しました。24年内に、各社も続きました。しかし、三井住友さん、あいおいさん、日新さん、AIG(富士火災時代から)、全労災までも(?)が、何故か堅持しています。

 このシリーズの冒頭にも言いましたが、廃止の理由はリザルト(損害率=支払保険金/掛金)の悪化とされます。では、堅持してる会社はそれが保てているのでしょうか?

 某保険会社の社内資料、「交通乗用具廃止のお知らせ」には、より詳しく説明されています。それは、「人身傷害の自転車単独事故での支払が増えたこと、それも、事故状況に疑いが残るものが大半」とのことです。私も、廃止の真の理由は、偽装請求が多発したことが大きいと思っています。その、某保険会社が以下のように例示しています(注意すべき情報の為、事故内容は脚色します)。   ○ 詐欺が疑われる手口   (例1)自転車走行中に転倒、アキレス腱を断裂しました

Aさん、休日に自転車でテニスに行って、その帰宅中に自転車が転倒して受傷、病院に入院しました。診断はアキレス腱の断裂で、治療費(手術費用・入院費用含む)と、休業損害、該当期間の慰謝料を請求、保険会社はAさんが加入する自動車保険の人身傷害(交通乗用具)で支払いました。事故に関する証明は、診断書と本人記載の事故状況説明書のみです。

しかし、担当者は疑惑を持っています。本当に自転車の転倒なのか? 自転車転倒の目撃者はいません。また、この契約者さんは過去に、テニスでアキレス腱を何度か痛めたことがあるそうです。本件事故の当日もテニスに行っています。ゲーム中にケガをしたのでは?とも考えられます。友人とのゲームですから(友人が口裏を合わせれば)第三者的な目撃者もいません。結局、Aさんを信じるしかありません。   (例2)歩行中、自転車と接触・転倒、手首を骨折(橈骨にひび)しました

Bさんは会社の昼休み、お弁当を買いに行く際、路上で自転車がすれ違いざまに接触して転倒、右手をついて骨折しました。レントゲンを撮ったところ、亀裂骨折がありました。病院ではシーネで固定を行い、3ヶ月の通院となりました。これも同じく治療費と、1ヶ月の休業補償、該当期間の慰謝料を請求、保険会社はBさんが加入する自動車保険の人身傷害(交通乗用具)で支払いました。事故に関する証明は、診断書と本人記載の事故状況説明書のみです。

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 人身傷害保険はその補償範囲の面で、ぱっくり二つのグループに分かれます。

 交通乗用具を人身傷害の補償範囲から廃止した会社と、残している会社です。

 飛行機や船、またはエレベーターや人力車での事故は、それなりにレアケースです。やはり、自転車単独事故、自転車同士の事故でも人身傷害が適用される、(以下、赤字で示した)日新、全労災、三井住友、あいおい、AIGの会社の優位性が引立ちます(この保険の収支も赤字にならないとよいのですが)。

 とくに、ご主人が自転車通勤をしている、子供さんが自転車を乗り回している・・・このようなご家族は、絶対に日新、全労災、三井住友、あいおい、AIGを選ぶべきです。乗合代理店さんにとって、お客様にお勧めする保険会社を選ぶ際には重要ポイントと思います。   ○ 交通乗用具を廃止した会社、対象外の会社

東京海上日動 損保ジャパン日本興亜 朝日火災 セコム損害 セゾン火災 ソニー損保 そんぽ24 イーデザイン 続きを読む »

 あからさまな詐欺事件に限らず、保険会社が「怪しいぞ?」と感じつつ保険金支払を行い、それが結局、約款改訂で補償対象から外れる・・このようなことは珍しくありません。前日に続き、その代表的な例を挙げましょう。

 今から8年前に、人身傷害保険(特約)の補償範囲である「交通乗用具」について、東京海上、損保ジャパン(当時の会社名)が相次いで、補償範囲から外しました。理由は、毎度のことですが、「リザルトの悪化」です。つまり、掛金に対して支払保険金が多すぎる状態です。

 例によって、保険内容の説明からですので、前置きが長くなります。    (1)人身傷害保険(特約)とは?     (念のため人身傷害について ⇒ 人身傷害特約について ご存知の方はクリックするまでもないと思います)       ○ 対象となる乗り物

 自動車保険ですから、契約自動車、契約バイクに搭乗中は当然に補償対象です。

  

 また、保険契約者が他の自動車搭乗中(タクシーも含む)の事故、また、歩行中・自転車走行中に他の自動車やバイクにぶつけられた場合は、「車外事故特約(損保ジャパン日本興亜での名称)」を付けておけば補償されます。

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ファミバイについておさらいです

 ファミリーバイク特約とは、自動車にかけている保険に、被保険者やその同居家族が125CC以下のバイク(以下スクーター等)を搭乗中に事故をした場合にも適用できるようにする特約です。

 例えば、一家に一台、自動車はありますが、普段の買い物等で奥様が、または学生のお子さんが通勤等で、それぞれスクーター等を利用することがあります。このような場合、本来、バイクを運転する場合、そのバイクに保険をかけるものですが、一台一台保険をかけていると、その分保険料金がかかることになり、負担が大きくなっていきます。

 また、専業主婦や学生の場合、独自の収入がない可能性があり、すべてに保険をかけるのは現実的ではありません。

 そこで、自動車にかけている保険にファミリーバイク特約を付帯しておくことで、仮に、上記家族がスクーター等に乗ったときに事故に遭ったとしても、自動車保険で対応できるようになります。

 

 このファミリーバイク特約は2種類あります。一つは、自損型といい、もう一つは人身型と、それぞれ一般的に呼びます。

 前者の自損型とは、スクーター等に搭乗中で、相手方がいない自爆事故や、相手方に過失がまったくない事故(こちらが過失100%の加害者)で相手方の保険で補償が受けられない場合の、いわゆる自損事故の場合に定額の保険金を出して頂けるものです。

 これに対し、後者の人身型とは、上記自損事故以外の事故も対象になり、自動車保険でかけられている人身傷害補償特約が内蔵され、その保険金の範囲内で実際にかかった治療費等の費用分の保険金を出して頂けるものです。

 また、スクーター等で事故して相手方(加害者やその任意保険会社)と治療費や後遺障害で争った場合、自動車保険に弁護士費用特約が適用されており、かつ、ファミリーバイク特約も付帯していれば、弁護士費用特約も利用できます。

 スクーター等の購入を考えている方は、ご自宅に自動車があれば是非ご検討ください。そして、もし可能であれば、人身型をおすすめしたいと思います。  

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 今回の問題点は、後遺障害の立証ではありません。交通事故双方が同じ損保会社のところ、賠償交渉もせずに、被害者側が加入している人身傷害保険で丸め込まれそうになった例です。

 ご存知の通り、交通事故の賠償金の基準は裁判等で認められる金額に対し、保険会社は著しく低い基準で示談を迫ってきます。民事上、双方が同意すれば、いくらで示談しようと問題ありません。しかし、純朴で知識のない人を相手に、保険会社基準をだますように押し付ける姿勢は、違法ではありませんが、反道徳的であると思います。本例は、ほとんど0:100の事故であるので、自分の加入している人身傷害を使う場面はなく、相手保険会社の対人賠償一本で交渉するのが普通です。しかし、自身の契約者を説得(丸め込む)為に人身傷害から(賠償金ではなく)保険金が提示され、それで解決を計ろうと、双方の担当者が裏で絵を書いたと思います。双方の損保が同じ会社であれば、どちらから払っても損得はありません。

 近年、このような人身傷害提示をよく目にするようになりました。つまり、対人賠償保険を使えば、保険会社の安い基準を押し付けても、被害者は紛争センターの利用や弁護士委任で、増額交渉をする余地を持ったままです。対して、人身傷害保険での交渉解決は、裁判でもしない限り、あくまで「保険会社基準」で押し切れます。それで、被害者が納得して保険金を手にすれば、被害者は承諾書にサインをすることになり、「相手への損害賠償請求権」を人身傷害社に譲ることになります。今後、相手への賠償交渉はできなくなるのです。

 つまり、双方の保険会社が一緒なら、加害者(側の保険会社)との交渉などすっ飛ばして、人身傷害のみに請求すれば、安易に安価に解決が計れるのです。これも、新たな保険会社の”被害者囲い込みの策”と思います。違法ではありませんが、かなり汚いやり方です。 

 保険会社は対人賠償と人身傷害がかぶる場合、まず、人身傷害を押し出してくる傾向です。本件、相談会に参加された被害者さんは、自身の保険会社から、「相手と交渉しても、当社の人身傷害に請求しても同じ額ですよ」と笑顔で説明を受けたそうです。本当かなぁ・・念のため、その提案書を相談会に持参くださってよかった。この提案書には自身加入の傷害一時金や費用保険金(合わせて14万円)までも合算されて100万円ほどになっていますが、これだけの重傷ながら後遺障害を申請もせずに、さっさと実質90万円位での解決を意図する悪質なものでした。

 もちろん、このような保険会社の企てを連携弁護士が蹴飛ばし、私達は真っ先に12級を申請して、まず224万円をゲットです。そして、続く賠償交渉で最終的な賠償金は700万円までにも膨らむでしょう。

    被害者の純粋な人柄や知識の無さにつけこむ・・・怒らなければなりません  

12級13号:距骨骨折(50代女性・福島県)

【事案】

自動車搭乗中、センターラインオーバーの対抗車に衝突され、足(距骨)を骨折した。

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 ここまで毎度のごとく、人身傷害をディスってきました。裏を返せば、発売当時、保険に関わる者すべてが「本当にいい保険がでたものだなぁ」と大歓迎の保険だったのです。  

「夢の全額補償」 と 「安心の実額補償」

   「夢の全額補償」とは、自身の過失に関わらず、損害の全額が支払われる、しかも、相手との示談を待たず、支払ってくれる・・保険の常識を覆すものです。三井住友さん、あいおいニッセイ同和さんはこれを捨て去りましたけど。

 「安心の実額補償」とは、死亡で○○万円、通院1日あたり○○円と、保険金額が決定している状態で契約する従来の保険ではなく、治療費や休業損害を実費で支払うことです。これによって、充実した補償が得られるはずですが、問題は、慰謝料や逸失利益といったものまで保険会社の基準で計算されてしまう点です。

 人身傷害は元々、アメリカのNo Fault保険をベースに日本版を開発したものです。訴訟社会のアメリカでは、交通事故も当然に長い争いとなり、少なからず訴訟に発展します。No Fault保険は、相手との示談を待たずに、当面の補償が得られる画期的な保険なのです。ただし、No Fault保険には慰謝料や逸失利益は含まれません。この部分は簡単に決まるものではなく、多くは交渉や訴訟の末に決まるものです。その金額も人によって差が莫大です。よって、保険会社が安易に自社基準で決定するに馴染まないのです。ところが、日本の人身傷害は、これらを入れてしまった・・これが、支払保険金算定の問題(訴訟基準差額説、人身傷害基準差額説)として残ってしまったのです。

 私は、人身傷害はその商品開発自体に問題があったと思っています。

 実は、保険会社の立場も理解できるのです。保険会社はそもそも人身傷害を補償保険として売りたかった、ところが勢い余ってか、慰謝料や逸失利益など賠償保険と重なる項目を混ぜてしまった・・。

 それでも、事故の責任が100%自分にある事故や自爆事故の場合、今までは補償保険である自損事故保険のみ、あとは、自身で加入している傷害保険や共済しか頼れなかったところ、人身傷害で治療費や休業損害が実額で確保でき、さらに、自分が悪いのにも関わらず、慰謝料や逸失利益など賠償的なものまで払ってくれる・・これは画期的なことです。

 また、事故の加害者が無保険で(あるいは、最悪の無自賠)あっても、人身傷害で保障されるのです。無保険の加害者はたいてい支払能力がありません。今までは相手の自賠責、あるいは政府の保障事業への請求が残された手段でした。被害者は苦労して、その手続きをするしかなかった・・しかし、人身傷害が(裁判で勝ち取る額より低いとはいえ)慰謝料や逸失利益を払ってくれるのです。

 つまり、この2ケースの場合、人身傷害は被害者を助ける新たなセーフティーネットになったのです。その大恩ある保険会社さんに向かって、「慰謝料・逸失利益を裁判基準で払って」は、図々しいにも程があると思います。

 私が提唱しているのは契約者・保険者(保険会社)双方にフェアな契約、納得のいく支払基準にして欲しいことです。

 やはり、加害者が存在する場合、相手が無保険の場合、自損事故の場合、支払基準を分けるわけにはいかないでしょうか。

 それは、以前の記事 ⇒ 人身傷害特約 支払い基準の変遷 ⑱ 最終回 誰がために金は成る?  

第6条 損害額の決定(理想)

(1)損害の総額は当社の基準で算定します。

(2)相手からの回収金、もしくは相手との交渉で決まった総損額が(1)の金額を上回る場合、弊社と協議の上、(1)の規定に関わらず、その金額を総損害額とみなします。 ...

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 現在、人身傷害の支払基準は各社、一応の落ち着きをみせたようです。

 平成24年2月の最高裁判決「裁判基準差額説」を受けて、敗訴となったあいおいさんがいち早く約款を現在に近い内容に改定し、各社もそれぞれ知恵を絞って(?)、人身傷害基準での支払で済ますように工夫した結果です。他の2グループを復習します。   ○ 東京海上日動さん

なお、賠償義務者があり、かつ、判決又は裁判上の和解において、賠償義務者が負担すべき損害賠償額がこの人身傷害条項の別紙の規定と異なる基準により算定された場合、であって、その基準が社会通念上妥当であると認められるときは、自己負担額(被害者の過失分)の算定にあたっては、その基準により算定された額を(2)の規定(=人身傷害の支払保険金)により決定された損害額とみなします。    私が読んだ保険約款でもっとも難解な文章です。弁護士先生も理解に苦しんでいます。

 この条項で、「人身傷害を先行し、後に裁判で勝ち取った額から返す分は、裁判で決まった総額を基に計算します」と、裁判基準差額説に適応させましたが、判決で宮川判事が宿題とした・・「人傷か賠償か、請求の順番で被害者が得る保険金が変わるのはおかしい」という問題は解決していません。完全にスルーされています。事実、この数年間、連携弁護士はがいくつかの事案で、賠償先行の末、人身傷害に被害者の過失分を請求したところ、「上の規定は求償の場合であって、賠償先行し、そこで決まった裁判基準額を丸々払う規定など約款のどこにもありません」とはねつけられています。約款解釈ではそうなりますが、これは約款の不作為であって、納得できないものです。   ○ 三井住友さん

第5条(損害額の決定)

(2)賠償義務者がある場合には、保険金請求権者は、(1)の区分(=傷害、後遺障害、死亡)ごとに<別紙)(=人身傷害支払基準)に定める基準により計算された金額のうち、賠償義務者に損害賠償請求すべき損害に係る額を除いた金額のみを当社が人身傷害保険金を支払うべき損害の額として、当社に請求することができます。

 太字は、つまり、自身の過失分を指します。私達はこの条項を「過失分限定払い」と呼んでいます。この条項によって、人身傷害に先に請求しても、人身傷害発売以来の売りだった「夢の(過失減額のない)全額補償」はダメになったのです。三井住友さんやあいおいニッセイ同和さんは、人身傷害そのものを改悪させたと言っていいでしょう。さらに、

① 当社と保険金請求者との間の協議

②  ①の協議が成立しない場合は、当社と保険金請求者との間における訴訟、裁判上の和解または調停。    支払保険金はこの2行で決定すると・・つまり、「加害者との裁判で決まった額を認める」とはしていません。まず、協議、そして、まとまらなければ、「うちに保険金請求訴訟を起してね」と居直り約款で締めくくっています。なんとしてでも裁判基準では払いたくない強い信念を感じます。この点のみでは、損J日興は潔いと思います。    そして、両グループとも、無保険車傷害保険は人身傷害に組み込まれ、支払基準を同じくしています。

 つづく  

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 昨日の約款条項を、損保ジャパン日本興亜さん(平成30年1月版)から確認してみましょう。

第6条(損害額の決定)

(3)(1)および(2)の規定にかかわらず、賠償義務者があり、かつ、賠償義務者が負担すべき法律上の損害賠償責任の額を決定するにあたって、判決または裁判上の和解において(1)および(2)の規定により決定される損害額を超える損害額が認められた場合に限り、賠償義務者が負担すべき法律上の損害賠償責任の額を決定するにあたって認められた損害額をこの人身損害条項における損害額とみなします。 ただし、その損害額が社会通念上妥当であると認められる場合に限ります。

※ 緑字は弊社が定める損害算定基準に従い算定された金額=人傷基準 を指しています。    普通なら、ここで、「あぁ、ついに裁判基準を認めてくれたのだな」と思ってしまいます。    ところが、以下の8条で、「ただし、限度額があります。それも人身傷害の基準額です」と・・   第8条 (支払保険金の計算)

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毎度お馴染み、人身傷害ウォッチャーの秋葉です。 久々にこのシリーズを続けます。    以前まで・・・人身傷害の約款改悪シリーズ 夢の全額補償が破壊された ①    今回の問題ですが、以前から損保ジャパン日本興亜のグループは賠償先行でも人傷先行でも、裁判となれば、その基準を総損害額とみなす規定であることを評価して、「24年2月最高裁判例に応じた約款改定をして、潔い」としました。しかし、ある約款条文を見落としていました。これは既に、あいおいニッセイ同和さんが採用していた、上限規定です。これについては過去記事をご覧下さい。    人身傷害の約款改悪シリーズ 夢の全額補償が破壊された ③    この③で指摘していることは・・・「人身傷害の損害額について、裁判で決まった額を総損害額と認めますが、支払う人身傷害保険金は限度があり、その限度額は人身傷害基準で計算された額です」との条項によって、以下の不都合が起きることです。

 自身に過失が大きい場合、例えば80:20ですと、裁判で相手から20%を回収し、次いで自契約の人身傷害に80%を請求しても、人身傷害の限度額規定によって、この裁判基準の80%は確保できない、つまり、総損害額の全額確保はできない問題です。

 これが、損保ジャパン日本興亜の約款にも含まれていたのです。書き方が巧妙で、気付くのが遅れました。この条項は、日本興亜と合併を機とした約款改定(平成26年7月1日~27年9月30日)から確認できます。この約款によって、裁判基準額で人身傷害(無保険車傷害)を回収する方法が潰されています。具体的に説明します。

 加害者が無保険で過失割合は0:100、相手が一方的に悪い事故です。この場合、相手からの回収は諦め、自契約の人身傷害に請求することが、残念ながら普通のことでした。多くの交通事故相談でも、そのように回答しているようです。しかし、私達が以前から推奨してきた策は、「まず、相手と裁判して、(すんなり回収できれば解決ですが)、相手の支払可能の有無に関わらず、判決額を確保します。

 そして、その額を人身傷害、あるいは無保険車傷害に請求するものです。

 この、いわゆる宮尾メソッドを全国の弁護士に流布してきました。

 人身傷害の約款では裁判基準で支払うか否か、長い間、不明瞭な記載が続きました。これが平成24年2月の最高裁判例で定まったのですが、定まったのはあくまで、人身傷害の先行請求後の求償額についてです。これを受けて、各社、約款改定しましたが、どうもスッキリしません。東海のグループは求償規定のみで、賠償先行については記述無し(つまり、無視?)、三井住友のグループは「協議」で逃げて(?)います。

 また、無保険車傷害保険が人身傷害に併存しており、その支払基準は、そもそも「まず、保険会社基準で計算しますが、裁判となればその額を支払う」としていましたので、支払基準のダブルスタンダード状態だったのです。

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山本さんイラストsj連日の登板!

 後遺障害等級の等級を決めるためには、基本的には自賠責調査事務所に申請をする必要があります。この自賠責調査事務所の申請先は、交通事故の加害者が加入している保険会社(共済)が窓口となります。申請先が知りたい場合、事故証明書で確認できます。

 自賠責保険(共済)は、自動車 やバイクを運転する際に、自動車損害賠償保障法によって加入が義務づけられている強制保険です。よって、滅多なことでは自賠責調査事務所に後遺障害等級の申請ができないということは生じません。しかし、例外的に自賠責調査事務所に申請ができないことがあります。

 例えば、そもそも加害者がいないような事故であることはもちろんですが、加害者がいても、ひき逃げ等で見つからなかった場合や、加害者の車検切れで自賠責保険(共済)切れにもなり、その後加入されていないような場合、自転車による事故等があげられます。

 後遺障害の審査は別として、保険未加入でも加害者に賠償金を請求できますが、大抵、そのような加害者はお金を持っていません。    ない袖は、c_y_56  そのような場合、被害者ご自身の保険会社(任意保険)の人身傷害特約や無保険者傷害特約への請求をしている場合があります。もしこのような任意保険の保険もない場合には、政府の保障事業を利用できる場合があります。

 政府の保障事業で治療をしている場合には、審査は自賠責調査事務所にすることになりますが、任意保険の場合、後遺障害等級の申請は、自社認定となります。自社認定とは、端的に言えば、自賠責に出さずに任意保険会社で等級を決定する方法です。よって、任意保険会社に後遺障害診断書や画像、診断書・レセプトをすべてそろえた上で提出することになります。

 ある相談者から指摘がありましたが、自社認定の場合、自賠責調査事務所のような第三者的(客観的)に等級を判断する機関ではなく、あくまで支払う側がする審査なので、公平に審査して頂けるのか不安があるとのことです。任意保険会社の担当者も専門的な判断が要求される場合、やはり、慎重になります。そこで、そのような場合には自賠責に諮問をかけます。

 自賠責に諮問をかけ、その意見によって等級が決まりますので、自社認定であっても、主治医にしっかりとまとめて頂いた後遺障害診断書や画像、必要な検査をした場合には、その検査表、診断書・レセプト等、自賠責調査事務所に申請をする場合と同じように書類等をそろえる必要があります。

 結局は遺漏なき提出書類の完備と、それに付随する十分な医療調査が必要です。どこで審査されようと、被害者側が損害を立証する基本は変わりません。  

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佐藤イラストsj佐藤です 意外なケースでした

 先日、弁護士さんから驚きの解決に至った事案の報告を受けたので、記事にさせていただきます。

c_y_164 本件の事案を簡単にご説明いたします。Aさんが営業車で外回り中に一時不停止の加害車両に側面衝突され、頚椎腰椎捻挫となりました。通常であれば、相手の任意保険会社に治療費を出してもらい、通院。リハビリに励み完全復活を目指し、症状が残るようであれば後遺症の申請?といったところでしょうか。

 しかし、今回は相手が無保険のため、任意保険会社がありません。運よく?Aさんは業務中であったため、会社から労災適用を許可してもらい、通院を続けました。

 その後、Aさんの自賠責と労災で後遺症申請をサポートし、両方とも14級が認定されました。危ういポイントがいくつもあったのですが、なんとか第一段階突破です。Aさんは仕事以外で車を使わない為、保険には加入していませんでした。幸い会社の保険があったので、上司を説得して、なんとか保険を使わせてもらえることになりました。「よかったぁ、これで無保険車傷害特約を使ってAさんにも慰謝料等がたくさん入り、いい解決になるなぁ。」と安心して弁護士さんにAさんをご紹介したのですが…。

 後日、弁護士さんから連絡がありました。「Aさんの件ですが、保険会社に確認したところ今回は無保険車傷害特約が使えないみたいですよ。」弁護士さんから資料をいただき、加入保険内容と約款を精査することに。なんと会社の保険には「傷害従業員就業中対象外特約」!!に加入していたのです。すぐにAさんに連絡して今回の報告をすると、「大事なときに使えない保険って意味あるのでしょうか。」・・確かにその通りです。本来であれば、人身傷害がない場合は「無保険車傷害特約」が付帯されているため、弊所も安心していたのですが、まさかこんな落とし穴が待っているとは…。

 しかし、気落ちしていてもしょうがありません。弁護士さん、Aさんと再度打合せを重ね、だめ元で加害者に直接請求をしてみることにしました。内容証明を打ち、しばらく様子を見ることに。すると1週間もしないうちに請求した金額を全額振り込んできたのです。弁護士さん曰く、「このようなことはあまり経験がない」との事でした。なにはともあれAさんは本件事故で満額の回収ができたので、Aさん、弁護士さんともに大満足の結果となりました。(請求額を満額払えるようであれば、任意保険に入ってくださいね。)  

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 続いて、JA(農協)、マイカー共済(全労災)の共済2社、通販社を見てみましょう。    内容的には国内社のBタイプとほぼ同じです。しかし、家族限定に関しては特約を設定していない会社(ソニー、チューリヒ)もあります。年齢条件不適用特約はあくまでイレギュラーな救済措置です。約款のどこにあるのか、探すのに一苦労でした。  

会社名

約款

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新たな請求漏れが起きる仕組みを解説します。まず、改定(搭乗者傷害が人身傷害に吸収される)前後の約款を比べてみましょう。

(前の記事:請求漏れの危険性①

25損J証券  損保ジャパン「ONE STEP」 平成25年証券

 搭乗者傷害が人身傷害に吸収された ↓

26損J証券  損保ジャパン「THE クルマの保険」 平成26年証券 ...

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自動車保険でありがちの請求漏れは、搭乗者傷害です。人身傷害保険が発売される前から多かったと思います。

25損J証券  損保ジャパン「ONE STEP」 平成25年証券

とくに、自動車対自動車の事故で負傷し、0:100で相手が一方的に悪く、相手の加入している任意保険会社から100%の賠償が得られた場合です。

この場合、相手から全額補償されたので、自分の保険を使わずに済んだ!、で済んでしまいがちです。しかし、搭乗者傷害保険は相手からの賠償金の支払いに関係なく、重複して支払われます。別個に自分が掛金を払って加入している傷害保険だからです。

その後、人身傷害特約(保険)の登場で、補償がダブることになりました。

契約車 搭乗中 他車 搭乗中 歩行中 自転車 他の交通機関 保険金 計算方法 重複 払い 人身傷害保険 〇 △ (特約で選択) △ (特約で選択) 実額 × 無保険車傷害 特約 〇 〇 〇 実額 × 自損事故特約 〇 〇 × 定額 × 搭乗者傷害保険 〇 × × 定額 〇

人身傷害の登場で、やや混乱しました。そこで、各社はここ数年の間、このダブりを解消するため、人身傷害の約款に、無保険車傷害と自損事故、搭乗者傷害を組み込む約款改定を進めてきました。

損保ジャパンも「旧ONE STEP」から「THE クルマの保険」に変更する際、細かな統合・修正を加えて約款をすっきりさせました。

しかし、冒頭の搭乗者傷害の請求漏れは無くならず、別の理由で加速したようです。理由は人身傷害が実額補償であることに端を発します。つまり、0:100事故で、相手からの賠償金にて被害の全額が回収できた場合は、多くの場合、人身傷害の支払いは発生しません。「自分の保険を使わずに済んで良かった」までは、いつものパターンです。しかし、以下の証券ではどうでしょう?

26損J証券

人身傷害の欄、「人身傷害 死亡・後遺障害 定額給付金」に注目して下さい。

これは、旧搭乗者傷害保険が吸収されたもの・・と理解している代理店さんが多いようです。私もそう理解していました。

この特約から最近、3件うっかり請求漏れする場面に出くわしました。ここに、歴戦の代理店さんですら気付かない落とし穴があったのです。

♪  I ...

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 このシリーズで訴えていること=「人身傷害を先に請求する場合、過失分だけですよ」に対して、もの申してしるわけですが・・細かいことを指摘しているなぁ、と印象を持たれている方もいらっしゃるでしょう。しかし、長らく自動車保険に関わってきた者として、いかにアンフェアな改定なのか、憤りをもってしまうのです。車両保険を例に改めて問題を浮き彫りにしたいと思います。  

「車両先行」・・車両保険を例にとります。

   車両保険はご存知の通り、契約している自身の自動車の修理費を支払うものです。事故で相手がおり、それぞれに責任があった場合、相手から差し引かれる自己の過失割合分を支払うことになります。

 この過失相殺の交渉は、事故状況の食い違いや、双方の意識の違いから、長期化することが少なくありません。そこで、車両保険に加入している契約者は、相手からの回収を待たずに、自身が加入している車両保険に修理費全額の補償を先行して請求します。これを業界では「車両先行」と呼んでいます。

 これで修理工場も安心して修理に取り掛かれます。そして、長い交渉、示談を待たずに、修理完了した自動車が自宅に戻ってきます。車両保険の安心感を実感する瞬間です。

 その後、全額の車両保険を支払った保険会社はいずれ交渉をまとめ、相手から過失分を回収することになります。 c_y_42相手がなかなか修理費をくれないことが・・

 ここまで説明すればお解かりでしょう。人身傷害の先行支払いは、そもそもこの安心感をもたらすものだったのです。それが、「過失分だけ、協議の上で払います?」となりました。これを、車両保険の例に当てはめれば、いかに、安心感を損なう約款改定か理解できます。「車両先行は全額OK」、「人傷先行は全額NG」と物損事故と人身事故の扱いに差別が生じたのです。人身傷害は発売以来、賠償交渉を待たず、過失分関係なく全額払われる、”夢の全額補償”が売りだったはずです。

 自動車の修理費に裁判基準、保険会社基準など、複数の基準はありません。しかし、人間の慰謝料や逸失利益には保険会社と裁判の二つの基準が存在します。そもそも問題の根源はこの2つの支払基準があまりにも乖離でしていることでしょう。保険会社も苦しい約款改定と自認しているはずです。   c_y_98    それにしても、損J日興、朝日、セコム、ソニー、そんぽ24、セゾンさん達のように、「賠償先行か人傷先行か、請求の順番に関係なく、裁判で決まった総額なら認める」といった潔い約款に比べて、東京海上日動のグループは執念深く、自社基準を押し通そうとします。

 あいおいさんは賠償先行の場合、裁判での金額は認めるとしていますので、この点は損J日興のグループに同じです。しかし、支払い限度を自社基準額とする地雷が埋まっています。また、人身先行では何かと「自社との協議」で値切りそうです。仮に、人身傷害に自身の過失分を人傷基準で先に請求・受領、後に賠償社から賠償金を受け取ったとして、その賠償金が裁判で決定したなら、ようやく不足分を裁判基準で追加請求することが可能となります。理屈ではそうですが、実際はうやむやになりそうです。

 三井住友さんは、臆病にも最初から「自社との協議」で支払いの抑制を図っています。これは賠償、人傷の請求の順番に関係ないので、最もこの問題から距離を置いた約款と言えます。これらは契約者に対して、アンフェアでいびつなルールとのそしりを受けるでしょう。    問題は”そしる”機会が少ないことです。”そしる機会”は実際にこの問題に直面する契約者さんに限定します。契約の際にここまで細かく他社と比較することなどないこと、頼るべき弁護士先生が保険に精通していないケースが多いこと・・、結局、保険会社はこれら契約者にとっての難題を承知なのでしょう。この問題は水面下の落とし穴なのです。  

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 なぜ、三井さん、あいおいさん、AIG、大同さん、イーデザインさん、SBIさんは契約者の「人傷先行」請求に対して、支払金額を”契約者の過失分だけ”(以下、過失分限定払い)にしたいのでしょうか?    普通に人身傷害を加害者・被害者双方の話し合いで賠償額を決める”償い”の保険ではなく、”予め決められた弊社の基準で支払う定額の”傷害保険としたいことは間違いないでしょう。しかし、それだけに留まらず、「人傷先行」によって、総損害額を裁判基準で持っていこうとする、契約者もしくは弁護士への対抗策ではないかと思っています。 teresasanma

 難解な話ですが、お付き合い下さい。

過失分限定払いは「人傷先行」策 潰し?

 相手から賠償金を受け取る前に人身傷害保険を先行して、損害額の全額を受け取り、後に相手から賠償金を受け取り、「契約者の権利を害さない範囲、つまり、裁判で決まった損害額の全額をオーバーする金額についてのみ、先に人身傷害を支払った保険会社は返してもらう」との規定が、平成24年2月の最高裁判例「差額説」で定まり、各社、約款をこれに対応させました。

 詳しくは ⇒ 「絶対説」と「差額説」

 以降、人身傷害に精通した弁護士さんが、この差額説判決をもとに、先に人身傷害保険に対して、人身傷害基準であろうと過失減額無しで全額を受け取り、続いて、相手に対して賠償額を裁判基準で獲得することにより、裁判基準で総額を確保しました。この、損害総額を保険会社基準ではなく、裁判基準に引き上げるといった、いわゆる「人傷先行」の作戦をとるようになったのです。

「人傷先行」策

 「差額説」判決の根拠となった、代位(求償)の規定、続きを読む »

 続いて、「賠償先行」の支払い保険金の算定方法をみてみましょう。これは(5)の部分です。その前に(4)ですが・・これは前項で、「人傷先行」の場合は契約者の過失分しか払わんよ、とした為、「代位」=求償の規定に例外規定を設けたようです。これも、人身傷害の先行払いについて、支払い抑制?の準備をしているようで・・あまり気分の良いものではありません。

 

(4)本条(2)の場合には、当社が人身傷害保険金を支払った場合であっても、第11条「代位」の規定にかかわらず、当社は、保険金請求権者が賠償義務者に対して有する権利については、これを取得しません。

  <翻訳>  これは、元々、人傷先行の場合、普通に11条「代位」で、「払った保険金は私どもが相手から返してもらいます」と、相手に対する求償権をうたっているところ、「(2)人傷先行にて、自社との協議や裁判で先に過失分を決めて支払う」ので、支払った過失分につき、求償分が発生しないとを予定している一文と解します。

 だからこそ、「被害者(契約者)の過失分を少なめに判断(?)して払うだろうな」とゲスの勘繰りをしてしまいます。  

(5)賠償義務者からの損害賠償金の支払いを先行した後に、保険金請求権者が人身傷害保険金を請求した場合であって、賠償義務者との間で判決または裁判上の和解において損害の額が確定し、その基準が社会通念上妥当であると認められるきは、当社は、その基準により算出された額を本条(1)の損害の額とみなして、第4条「お支払いする保険金の計算」(2)に規定する計算式を適用します。 ただし、これにより算出される額は、本条(1)の人身傷害条項損害額基準に基づき算定された損害の額を限度とします。

<翻訳>  「賠償先行なら、裁判での金額を認めます」との裁判基準差額説の説明ですので問題ないと思います。これは、損保ジャパン日本興亜と同じくフェアなルール設定です。  (詳しくは ⇒ 損JNKのルール

 ただし、ここにも人身傷害基準を盾とする毒が潜んでいます。(5)の後段、「ただし、」以下の一文です。 続きを読む »

 それでは、該当の約款を見てみましょう。

 各社、記述に違いがありますが、比較的、容易なあいおいさんを確認します。 とにかく、人身傷害の約款は難解で、弁護士先生すら悩ませています。契約者が正確に読解することはほとんど不可能に近いと思います。  

第5条 損害の額の決定 (1) 当社が人身傷害保険金を支払うべき損害の額は、被保険者が人身傷害事故の直接の結果として、次の①~③のいずれかに該当した場合に、その区分ごとに、それぞれ別紙に定める人身傷害条項損害額基準により算定された金額の合計額とします。 ただし、賠償義務者がある場合において、区分ごとに算定された額が自賠責保険等によって支払われる金額(自賠責保険等がない場合、または自動車損害賠償保障法に基づく自動車損害賠償保障事業により支払われる金額がある場合は、自賠責保険等によって支払われる金額に相当する金額をいいます。以下この(1)において同様とします。)を下回る場合には、自賠責保険等によって支払われる金額とします。 ①傷害 治療が必要と認められる場合 ②後遺障害 後遺障害が生じた場合 ③死亡 死亡した場合 (2)賠償義務者がある場合には、保険金請求権者は、本条(1)によるほか、次の算式によって算出される金額のみを、当社が人身傷害保険金を支払うべき損害の額として請求することができます。 損害の額=本条(1)の各区分ごとに算定された金額の合計額-賠償義務者が保険金請求権者に対して法律上の損害賠償責任を負担するものと認められる部分 (3)本条(2)の「賠償義務者が保険金請求権者に対して法律上の損害賠償責任を負担するものと認められる部分」とは、本条(1)の各区分ごとに算定された金額に対し、次の手続きに基づいて決定した賠償義務者の責任割合を乗じた額(この額が自賠責保険等によって支払われる金額を下回る場合には、自賠責保険等によって支払われる金額とします。)の合計額をいいます。 ①当社と保険金請求権者との間の協議 続きを読む »

 度々、テーマにしてまいりました、人身傷害ですが、近時の約款改定で各社、様々な変更を進めています。    今夏の弁護士研修でも取り上げた、不合理な約款の一つを挙げます。これは些末な改定ではすまない内容です。何せ、発売以来、最大の売りにしてきた、「自分の過失分を引くことなく、損害の全額が補償される」=夢の保険が壊れたからです。以下の表の国内社、及び通販系ではアクサ、SBI、チューリッヒが類似の約款としています。

 加害者に賠償金を請求する前に、人身傷害保険で自己の慰謝料や休業損害を先に受け取ることができます。そして、後遺障害が残れば、その慰謝料と逸失利益も相手と示談して賠償金を得る前に全額が受け取れる、非常に安心感に溢れる保険でした。   c_y_101  しかし、以下の会社は、「相手がいる場合、(相手からその責任分をいずれ受け取れるのだから)自己の過失分しか払いません」としました。相手に任意保険がある場合、いずれ、相手から相手の過失分に相当する賠償金を受け取れるとは思いますが、先行して全額の補償が得られないことになります。

 下表は「賠償先行」、「人傷先行」の場合、それぞれ裁判基準か人傷基準かを一覧表にしたものです。

 何のことやらわからない方は、こちらで復習を ⇒ 人身傷害特約 支払い基準の変遷

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