続いて開放骨折にについて。
■ 開放骨折 (open fracture)
開放骨折とは、折れた骨が外皮を突き破って飛び出ることです。説明しただけで痛そうです。初期治療では徹底的な洗浄、そして破傷風防止から抗生物質の服用が必須です。開放創からの感染に注意を払っていきます。
タイプ Ⅰ タイプ ...
続いて開放骨折にについて。
■ 開放骨折 (open fracture)
開放骨折とは、折れた骨が外皮を突き破って飛び出ることです。説明しただけで痛そうです。初期治療では徹底的な洗浄、そして破傷風防止から抗生物質の服用が必須です。開放創からの感染に注意を払っていきます。
タイプ Ⅰ タイプ ...
骨折シリーズ続けます・・・
(1)骨折の分類 まず学術的な分類から
1、完全骨折
完全に連続性が絶たれている。
2、不全骨折
骨梁が途絶しているが、骨全体の連続性は維持。若木骨折など。
3、病的骨折
骨腫瘍など局所の骨強度の低下による。
4、疲労骨折
健常な骨に繰り返し付加が加わり起こる。行軍骨折。 ・・・剣道部時代が懐かしいです。
5、脆弱性骨折
骨粗鬆症など脆弱な骨に軽微な外力が加わり生じる。・・・高齢者がリハビリ中に起こす例があります。
6、不顕性骨折
X線で検出できない骨折。MRI、骨シンチが有用。 ・・・立証にも力が入ります!
7、骨挫傷
骨折に至らないが、骨内出血がみられる。MRIが有効。 ・・・器質的損壊と呼ぶには弱いです。
骨折と一口に言っても、その折れ方にいくつかの分類があります。
最近の例ですが・・・圧迫骨折なのか骨挫傷なのか?
骨幹部骨折なのか骨顆部骨折なのか?
複雑骨折なのか粉砕骨折なのか?
このよう臨床での判断を迷っているケースを見ます。
もちろんこれらは診断した医師が判断します。しかしどっちつかずの微妙な画像所見の場合、医師の主観で左右される結果となります。その骨折具合の判定も後遺障害の認定に少なからず関わってきます。
したがって臨床においての骨折状態を正しい後遺障害診断に結び付けるため、骨折について正確な知識が必要です。
例えば圧迫骨折における圧壊率は等級認定上の条件に重きをなします。また関節可動域制限も骨顆部(関節の部分)の骨折では説明がつきますが、骨幹部(骨の両端を除いた幹の部分)の骨折では可動域制限の根拠になりづらいのです。
下肢の骨、大腿骨(太もも)と脛骨(すね)で見てみましょう
骨幹部
骨顆部 骨の末端の一方ですが心臓から遠い方は 遠位端です 骨顆部 ...
最近の相談事例から・・・
事故で足首を痛めました。捻挫ですが、腫れと痛みがかれこれ1か月以上も続いています。主治医も初診時にレントゲンを撮り、「骨に異常はないですね」と言ったきりです。湿布による消炎と電気治療が続きます。しかし回復せず、関節もよく曲がりません。医師に相談しても、「様子をみましょう」と・・・
さて、このまま漫然と治療を続けるとどうなるでしょう。半年後の症状固定時になっても足首の可動域は回復していません。底屈30度、背屈10度と計測し、後遺障害診断書に書いて頂きました。しかし傷病診断名は右足首捻挫です。画像もレントゲンのみ、骨に異常なしのままです。
これでは確実に「非該当」=後遺障害はなし、です。
この段階になって、異議申立をして、いくら関節の痛みや可動域制限を訴えてもダメです。
骨折や靭帯損傷など器質的損壊がないもの、例えば「捻挫・打撲」は治るもの、と解釈されています。そして可動域制限があったとしても、その原因となる傷病名が診断されていなければ無視されます。
この方は、足首の靭帯に損傷があるものと疑う必要があります。丁寧に足首の靭帯をMRIで描出する必要があります。それも受傷直後、遅くとも3か月以内に。そして「後距腓靭帯、踵腓靭帯、前距腓靭帯の損傷」のような確定診断の記入が必須です。
もうおわかりですね、医師の指示は絶対ではないのです。あとで泣くのは自分自身です。「おかしいな?」と思ったら、自分から医師に検査の依頼をしなければなりません。それでも「患者は医者の言うことを聞いていればいい!」と相手にしてもらえないのなら、残念ながらただちに転院です。
悪いタクシー会社の運転手は事故にあうと、必ず懇意にしている病院で「温泉治療が必要」との診断書を書いてもらい、長期休暇=湯治に出かけました。・・・保険会社在籍時、事故処理課(社内ではサービスセンターと呼びます)で研修をしていた時、人身事故担当者からよく聞いた話です。 悪名高い「温泉治療」、当然、ケガの程度からすれば単なる詐病者のバカンスかもしれません。しかし昔から日本人は「湯治」により、自然治療や自己回復を図ってきました。もっと踏み込んで言えば、骨折、靭帯損傷、関節拘縮や神経麻痺、挫傷・・・ほとんどのケガの治療に温泉は一定の効果が認められています。ただ西洋医学との比較の中で、「療養」の位置づけに抑え込まれています。 大事なことは専門医による診断を伴った、効能と目的が合致した温泉治療の確立です。草津をはじめ、いくつかの温泉地では病院を併設し、診断と温泉をリンクしています。今後、温泉専門医と専用病院がすべての温泉地に常設できれば、交通事故外傷の治療としてもっと陽の当たる分野となるはずです。 温泉好きとしては、正しい形での温泉治療について、及ばずながら啓蒙活動をしていきたいと思います。ネタのない日は温泉治療について散発的に取り上げます。今日はプレリュードという事で・・。
昨日は「腓骨神経麻痺」の疑いのある被害者さんと主治医面談でした。足首が完全に動かないわけではないのですが、背屈(足首を上にそらす)が不能なので「不全麻痺」が正確な表現でしょうか。しかしその可動域の制限だけでは後遺障害の認定は得られません。それを裏付ける検査数値と確定診断が必要です。そこで主治医先生にタイトルの検査依頼となるわけです。
中には「なんで治療が終わったのに検査するの?必要ないよ」、「保険請求のため?それは医者の仕事じゃないよ(・・めんどうだなぁ)」という対応の医師もいます。ましてや、「むち打ち」ごときでは、通常、医師の協力は得られません。
医師の言う事もごもっともと思いますが、後遺障害を残した患者にとっては切実な問題なのです。毎度苦労させられますが、昨日の医師は検査の必要性に御理解をいただき、誠実に対応して頂けました。本当にありがたいです。 では針筋電図について・・・ ■ 筋電図とは
筋線維が興奮する際に生じる電気活動を記録することで、末梢神経や筋肉の疾患の有無を調べる検査です。筋電図検査といった場合には,筋肉の活動状態を調べる針筋電図と筋肉・末梢神経の機能や神経筋接合部を検査することができる誘発筋電図の両者を含める場合もあります。 ■ 脊髄損傷に対しては
脊髄にある前角細胞と呼ばれる運動神経以下の運動神経と筋肉の異常を検出するために行われます。これらの部位に疾患がある場合には,その障害がある部位や,疾患の重症度などを評価することもあります。異常を示す筋肉が限局している場合には,その分布により末梢神経が原因か脊髄が原因かなどをある程度推定することができます。 ■ 顔面神経麻痺に対しては
表面筋電図検査は四肢や顔面などに不随意に起こる運動が見られる場合に時として有用です。この検査の利点は、針電極や電気刺激を用いないので、疼痛を伴わないことです。
MRI・・・磁気と電波だけを利用して体の内部を画像化する検査装置です。放射線を一切利用しないため被ばくせず、からだにやさしい検査ができます。
後遺障害の立証に画像所見は重要な資料となります。肩が上がらない、痛い、痺れが残っている等、その原因を明らかにする時に画像は動かぬ証拠になります。 医師は初診時、まず骨に異常がないかレントゲンを撮ります。骨折を見逃したとあれば医師の責任問題だからです。しかしレントゲンに写りづらい腱板損傷、軟骨損傷、ヘルニアの突出や写らない脳幹部の点状出血などを確認するにはMRIが必須です。なるべく早いうちに体の異常を訴え、MRI検査をしてもらう必要があります。医師に「骨に異常はないから打撲です。湿布を出しときましょう」と言われた場合でも「おかしいな」と思ったらMRI検査をお願いしてみましょう。
そのMRIにも種類と性能差があります。現在は1.5テスラが主流になりつつあります。このテスラが高いほど画像の解像度が上がります。繊細な損傷を見逃さず、細かく観るためにはより高テスラが有利です。 特に頭蓋底骨折が疑われる場合、最新鋭3.0テスラのマシンで「眼窩部を3mmスライスで」、とお願いします。地方の町営病院の0.5テスラで撮っても小さい損傷は写らないからです。そもそも頭蓋骨の外側に骨折がないかだけを調べますので頭蓋底骨折は見逃されやすいのです。 この3.0テスラマシンのある病院はまだ少数です。
種類は
1、T1 ・・・穏やかなコントラストで移ります。脳梗塞のあった部分の新旧の判別によく用いられます。
2、T2 ・・・ターミネーター2ではありません。「高輝度所見によると・・」のセリフで登場します。水分の反応が白く光って写り、出血、水たまり、病変部と骨や筋などの組織とコントラストがはっきりします。腱や軟骨、脊髄の損傷を発見できます。
3、FLAIR ・・・前記T2の水分を逆に黒く映します。脳溝や脳室に接する病変の診断に特に有効です。
4、DWI ・・・細胞内の水分子の動きを画像化し、腫瘍や炎症などを知るために使用します。正常な細胞は水分子の運動が活発ですが腫瘍・梗塞・炎症など病変した細胞はこの運動が小さくなります。がん検診ではPETに替わる注目の技術です。
5、MRA ・・・頭部の血管の様子を詳しく立体画像化します。脳動脈の狭窄や閉塞動脈りゅうなどを発見できます。正常な速さで流れる血管は真っ白く映ります。脳挫傷や脳委縮のあった部分は血管の流れが悪くなるので黒ずんできます。
他にMR拡散テンソル画像(MR Diffusion Tensor Imaging)もあります。神経線維を画像化することにより神経線維の減少や異常を証明できます。高次脳機能障害案件で先日採用しました。脳挫傷が軽度で脳委縮がない場合などに望ましい画像です。
MRIからの診断は医師も慎重です。同じMRI画像を3人の医師に見せた場合それぞれ意見が分かれることがあります。それだけに素人判断は慎み、経験を積んだ専門医の診断に早い時期に漕ぎつけることを目標にしています。
医師・・・交通事故被害者の命を救い治療に全力を尽くす「被害者救済」最初のプロフェッショナルです。毎日秒刻みで医療の現場に向かい合っている先生方には頭の下がる思いです。
医師の技術と熱意で被害者が回復へ向かいます。やがて治療も半年を超え、後遺障害の診断となります。症状を余すところなく正確に記述した後遺障害診断書を書いて頂く、はずです。しかし次の患者の治療に全力を尽くさなければならない医師にとって、診断書作成は不毛な作業になります。なぜなら治療の完了にて医師の仕事は終わりで、直せなかった証明(後遺障害診断書)を書く事は医師の仕事にあらず、と考える医師が多いからです。これは正論かもしれません。
結果申し訳程度に1行だけポツリと記入・・・
かくして自身の障害を主張するたった一枚の紙を巡って茨の道が始まります。 保険会社の解釈は・・ 「被害者の訴える症状が診断書に克明に記載されていない=後遺障害とは認められない」です。
冷たいようですが保険会社の言い分ももっともです。もし診断書に書かれてもいない本人の言う症状をすべて信じていたら詐病者がどっと押し寄せます。実際、保険金詐欺をする人、実際より大袈裟な症状を訴える人はたくさんいるのです。
日頃私が取り組んでいること、それは医師とのコミュニケーションです。医師に被害者がどれだけ立証で苦労するか、保険の査定がいかに厳しいか、後遺障害立証の困難をご理解いただき協力をお願いしています。これは交通事故業務をする行政書士に課せられた使命、とまで考えているのです。