被害者さんはもちろん、医療調査、病院同行を業としている方に知ってもらいたい事を。

 骨折等、交通事故外傷で後遺障害が残った場合、その部位が関節であれば、その関節の可動域に制限が起きることがあります。その制限の程度はどのくらいか?これを「関節の用廃、関節の著しい障害、関節の障害」と3段階に重篤度を判定します。これは医師、もしくは理学療法士(PT)、作業療法士(OT)がゴニオメーターと呼ばれる分度器で計測します。この計測で保険金が決まります。この角度によって数百万円もの差が生じることがあります。したがって間違えて計測されるわけにはいかないのです。

 ← ゴニオメーター 

 しかし経験上、半分くらいが不正確な計測方法、いい加減な目見当で計測されていると思います。まさか医師や専門家が間違えるはずが・・と皆思います。しかし断言します。日本整形外科学会の基準通りに正確に計測されることは少ないのです。

 これは整形外科の医師から聞いた話ですが・・・「医大時代、さらっと見ただけでよく勉強していない。試験にも出てこない。これを専門的に勉強するのはPT、OTで医師は専門ではない」と。医師は教科書にでている計測方法を見たことがある程度で、実習をしているのはPT、OTのみです。私も仲間と練習したり、何人もの障害者を計測した「実習」の結果マスターしたのです。したがって実習経験もない医師は自己流の計測になりがちです。実際、計測方法は一つではなく、2~3種存在します。  勉強熱心な医師は、臨床の場で専門書を見ながら正確に計測する実践を積んでいます。しかしこのような医師は少数と覚悟しなければなりません。

 では専門家であるはずのPTやOTの先生なら安心でしょうか?もちろん正確な計測方法を熟知しています。資格取得の試験にもでてくる内容ですし、なにより実習を積んでるからです。しかし油断はできません。

 普段、PT、OTの先生はリハビリで患者の機能回復訓練を行っております。リハビリ室で「はい、今日は少し頑張って曲げてみましょう」と言いながら、患者の膝をぎゅーっと曲げています。これは訓練なので、患者は痛くても頑張らなければなりません。訓練、リハビリであれば当然の場面ですが、困ったことに後遺障害の計測の時においてもぎゅーっと曲げる先生がいるのです。

 後遺障害診断における計測値はエンドフィール(関節終端感覚)と呼び、痛くて「もう曲がりません!」と感じるところを限界としています。ですので機能回復訓練のように頑張って痛みに耐え、限界を超えて曲げたところではないのです。なぜなら日常生活で痛みをこらえて限界まで曲げることなど通常生じないからです。このエンドフィールが障害の生じる角度なのです。これを勘違いしている医師やPT、OTの先生も多いのです。

 計測では2つの値を測ります。

① 自動値・・・患者が自分の意志で曲げる限界点

② 他動値・・・補助者が手を添えて曲げる限界点

関節可動域制限では、機能障害は②の他動値で判定します。神経麻痺の場合、例外的に自動値で判定します。続きを読む »

<トランス・コスモス健康保険組合の発表から>

 保険者代表として参加したトランス・コスモス健康保険組合の美山博邦常任理事は、捻挫の症状で柔道整復に1年間通ったり、医師の診断よりも負傷部位が増えるなどの不自然な事例を報告した上で、「『手技』や『後療』の定義を明確にするほか、長期施術の実態について明らかにしてほしい」と訴えた。さらに、「国は、『給付は保険者の義務』としているが、払い過ぎた保険料の回収は『保険者の義務』としていて、保険者の財政が保護されない」と指摘し、国の姿勢を批判した。 JCOAの医療システム委員会の山根敏彦委員は、医業類似行為の広告の実態を報告。「交通事故治療」とうたっているケースや、雑誌に広告か記事かが分からないような形で文章が掲載されているケースなどを問題視した。山根氏は、柔道整復が広告に掲載できない例として、

(1)「各種保険取扱」をうたうこと

(2)「交通事故」「労災」「生活保護」を記載すること

(3) 料金を広告すること              などを挙げた。

 その上で「厚生労働省にも、しっかり監視するように申し入れた。違反する広告を見た場合、県の担当部局や保健所に通報するのが良いのでは」とアドバイスした。山根氏は、柔道整復師の療養費の適正化の動きが出てきたことを踏まえて、「今後はあん摩マッサージ指圧、はり・きゅう療養費が、大きく増えていく可能性がある」との危機感も示している。   <解説、意見>

 各種保険適用は×であっても、慢性的な腰痛にも親身に施術してくれる整骨院・接骨院や針鍼灸・マッサージは一定の治療機関として、その存在は欠かせません。しかし、昨年私の実家の近所に「マッサージ無料!」の広告がドンと掲示された接骨院が開業しました。チラシにも「マッサージ30分無料」とあります。それを見た父が試しに行ってみたようです。何故か健康保険証持参で。そして、お財布からは広告通りお金は払わなかったのですが、しっかり健康保険の提示を要求され、健康保険から施術料を請求したようです。(この院、後に閉院となりました)    「どこが無料やねん!」 思わず関西的な突っ込みをしてしまいました。    このような例から、柔整師の保険請求にはモラル的な問題が散見されます。とにかく柔整師の施術料請求にはトラブルが頻発しています。このエセ無料マッサージ、しかも、急性期としての治療など必要ない患者に対する施術料は、皆の健康保険の掛金から捻出されているのです。医療費の健康保険財政の問題はその支出の増大から国家の一大問題です。やはり不正・不当な請求に対しては厳しい監視が必要です。    背景には・・・「2000年から2010年にかけて柔道整復師が2万人近く増えて、5万428人となったことなどを報告。」・・・増えすぎた柔整師と競争の激化が背景にあると思います。もちろん素晴らしい技術と精神を持った先生もたくさん存在しますが、技術・モラルの低下傾向も指摘されます。それは3年間半日程度通学しただけで80%が合格する試験制度にも問題の温床があると言えます。準医療行為とはいえ、人の生命・健康にかかわる仕事なのですからそれなりの重みは必要ではないでしょうか。

 とくに交通事故受傷者で自賠責保険での施術に対しては、柔整師は医師の診断・治療を経てから指示・紹介のある患者を受けもつ・・現状、この連携体制が徹底されていないように思います。柔整師は応急処置以外では疼痛の緩和が主目的のはずです。整骨院・接骨院が医師の紹介状なしに、急性期の患者の施術(少なくとも健保、労災、自賠責を使った)をすれば罰則、にまで厳しくすべきではないでしょうか。これですべてが解決するとは思えませんが、各種保険に対して、医師の初期診断や紹介状で保険治療の判断が付与されれば、無駄な保険利用の施術には抑制が効くはずです。

 

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JCOAの自賠・労災委員会の山下仁司委員長は、医療機関と柔道整復の受診(受療)形態について、4パターンに分類しています(少し補足を加えてあります)。

(1)柔道整復にかかった後、医療機関にかかる「経過後受診」

事故と後遺症の関連性が不明なままに、患者が後遺障害診断書の依頼のために病院に再診に来るケースが「悪質」と指摘し、「施術証明書を、診断書と同様に扱う警察があるのが問題を大きくしている」と指摘。

(2)柔道整復の前後に医療機関にかかる「なか飛ばし」

 損害保険会社が推奨しているケースもあると言い、「診断書に『医業類似行為での施術には同意していない』旨を明記すればトラブルは避けられる」とした。

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【質問】  MRI検査をすべきとのご教示ありがとうございます。主治医に相談したところ、「閉所恐怖症はないですか?」と聞かれました。私は閉所恐怖症なので、検査できるか不安になりました。どうしたらよいでしょうか?

【回答】

 MRIは筒状のトンネルに入り、30分もじっとていますので、確かに苦痛です。しかし最近国産メーカーで解放感のあるマシンが開発、普及が進んでいます。日立メディコの製品で開放型と呼ばれています。ちなみに大手フィリップス社も開発・発売しています(2億円らしい)。  難しい説明を避けますが、MRIは磁気を体に通し、体の成分が磁気に反応する様子を写します。したがってトンネル型は大きい円形の磁石の中に入り、磁気の中に体を通すイメージです。対してオープン型は、より強い磁気を体の一部に放射して写しこみます。

 医師に開放型(オープン型)を導入している病院の紹介を受けるとよいです。もし探せなければ私からも紹介可能です。

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   ロキソニン、リリカにつづきトラムセットについて。トラムセットも痛みをおさえるお薬です。慢性疼痛や抜歯後の痛みに用います。私はこの3薬を勝手に「痛み止め御三家」と呼んでいます。   【適用】

 一般的な鎮痛薬では十分な効果が望めない痛み、たとえば しつこい腰痛症や変形性関節症関節リウマチ、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害性疼痛、線維筋痛症、あるいは骨削除を必要とするような難治な抜歯後などです。

 交通事故の治療では最初から服用されることは少なく、ロキソニンやリリカで効き目がない、副作用がある場合などに、交代して登場します。医師によってはその副作用から、やや敬遠される薬でもあります。   【薬理】

 2種類の有効成分からできている鎮痛薬です。第一の成分はトラマドール(トラマール)。オピオイドと呼ばれる特殊な鎮痛薬で、ふつうの鎮痛薬が効きにくい神経痛などによい効果を示すのが特徴です。麻薬系オピオイドの代表はモルヒネです。モルヒネに比べれば作用がおだやかで副作用も少ないと言われています。

 もう一つの配合成分は、昔からあるアニリン系解熱鎮痛薬のアセトアミノフェン。こちらは、痛みの神経に働きかけ、痛みに対する感受性を低下させて痛みをしずめます。必ずしも強力とはいえませんが、安全性が高く、各種の痛みに汎用される良薬です。処方薬としてはもちろん、一般薬の多くにも採用されています。

 これら2成分がいっしょに作用することで、鎮痛効果の早期発現、効果増強、作用時間の持続がはかれます。   【副作用】

 通常、1日4回、1回1錠です。服用間隔は4時間以上空ける必要があります。アスピリン喘息(鎮痛薬や解熱薬で喘息発作を誘発)のある人は使用できません。てんかん、胃潰瘍、血液の病気、肝臓病、腎臓病、心臓病、喘息など、その病状により使用できない場合があります。市販のカゼ薬や解熱鎮痛薬の多くにアセトアミノフェンが配合されています。この薬と重複することになりますので、これらとの併用は危険です。

 また、抗うつ薬と飲み合わせると、セロトニン症候群やけいれんを起こしやすくなる可能性があります。当然ですが飲酒は控えます。多量のアルコールにより、めまいや眠気、肝障害、呼吸抑制などの副作用がでやすくなります。重い副作用として、けいれんと意識消失が報告されています。めったにないと思いますが、もともと てんかんや脳に病気のある人はより注意が必要です。

 また、長期服用中に急に中止すると、イライラ、興奮、不安、不眠、震え、吐き気や嘔吐など反発的な症状が現れることがあります。モルヒネのような依存性も指摘されています。したがって、トラムセットを「麻薬系?」と呼ぶことがあります。もっとも鎮痛剤の多くは麻薬と成分が同じなのですが。  

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 一般的には神経痛をやわらげる薬として知られています。交通事故外傷では末梢性神経障害性疼痛に用い、むち打ち、外傷性頚部症候群で上肢~手指、腰痛打撲で下肢に、それぞれ痛みやしびれが生じる神経症状の緩和のために服用されます。打撲や打ち身の痛みにではなく、神経性の痛み、しびれ等に処方されるところが単なる痛み止めとの違いです。   【適用】

 神経障害性疼痛は、神経の損傷から起こる痛みです。このうち脳や脊髄以外の末梢性のものを”末梢性神経障害性疼痛”といいます。代表的なのが、帯状疱疹のあとに残る”帯状疱疹後神経痛”、糖尿病にともなう”糖尿病性神経障害”、”三叉神経痛”などです。

 そもそも、リリカ(プレガバリン)は帯状疱疹後の神経痛にのみ使用可能でした。平成22年10月に末梢性神経障害性疼痛の適応を取得したため幅広く使用できるようになったのです。   【薬理】

 過剰に興奮した興奮した神経系統において、電位依存性カルシウムチャネルの機能に対し補助的な役割をになうα2δ(アルファ2デルタ)サブユニットと強く結合します。すると、神経シナプスにおけるカルシウム流入が低下し、グルタミン酸等の興奮性神経伝達物質の放出が抑制されます。その結果、神経障害性疼痛がやわらぎます。   【副作用】

 以下の初期症状等に注意が必要です。   心不全…息苦しい、胸が苦しい、動悸、疲れやすい、むくみ、体重増加。意識消失。意識がなくなる。   横紋筋融解症…手足のしびれ・けいれん、手足に力が入らない、筋肉痛、歩行困難、赤褐色の尿。   腎不全…だるい、吐き気、むくみ、尿の濁り、血尿、尿が少ない・出ない。   血管浮腫。顔や唇、舌、喉がひどく腫れる、飲み込みにくい、息がしにくい、手足が腫れる。   低血糖…力の抜けた感じ、ふるえ、さむけ、動悸、冷や汗、強い空腹感、頭痛、不安感、吐き気、目のちらつき、イライラ、   眠気、ぼんやり。さらに重くなると、異常な言動、けいれん、昏睡(意識がなくなる)。    リリカの代表的な副作用は、眠気を催したり、めまいやふらつきです。とくに高齢の人は、それらの症状から転倒や転落につながるおそれがあります。当然、飲酒は控えるべきで、アルコールとの飲み合わせで、より眠気やめまい、ふらつきなどを起こしやすくなります。   【交通事故治療における注意】

 リリカは、カプセル25mg、リリカカプセル75mg、リリカカプセル150mgと含有量別に調節されています。濃度は医師の指示を守って服用します。少量から開始し、効果や副作用をチェックしながら1週間以上かけて増量していきます。逆に、めまいなどの副作用が強いときは濃度・回数を下げます。

 以前75mgを1か月飲み続けて「(むち打ちから3か月経っているのに)めまいがひどくなった・・・」被害者さんがいましたが、これはリリカが強すぎたことが原因と思いました。早速、医師にこれを訴えて、25mgに変更、服用の回数を減らしてもらいました。バレリュー症候群のような不定愁訴は、リリカの過剰服用が原因の場合があるのです。痛み、しびれを強く訴え続けると、医師も処方濃度・回数を減らす指示をしない(忘れる?)ことがあります。この辺に気を配るのも私達の仕事と思います。医師や薬剤師、医療従事者ではない私達は、安易な口出しを慎むべきですが、よく気づく注意点です。。  

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ロキソニン

     もはや、痛み止めの定番となりました。当然に交通事故外傷でも処方されることが多い薬です。解熱鎮痛消炎剤で、第一三共や後発医薬品として各社から発売されています。かつては劇薬で医師の処方箋を要したが、現在は劇薬指定を解除され、処方箋がなくとも後述のようにドラッグストアなどでも入手できるようになりました。一般用医薬品としてはロキソニンS錠が第一類医薬品として発売されています。

 正式名はロキソプロフェンナトリウムという、ナトリウム塩の一種。効能は炎症をしずめて、腫れや発赤、痛みなどの症状を抑制・解熱する。ただし、対症療法薬なので、熱や痛みの原因そのものを治すことはできません。 しかし、効き目は周知の通り、痛み止めの定番薬です。   ■ 適用

 変形性関節症、慢性関節リウマチ、頸肩腕症候群、肩関節周囲炎、筋肉痛、腰痛、急性上気道炎、歯痛、手術後の鎮痛など、ほぼ万能鎮痛薬です。   ■ 薬理

 簡単に説明しきれませんが・・炎症や発熱を引き起こすプロスタグランジン(PG)という物質の生合成を抑制し、プロスタグランジン(PG)の合成酵素「シクロオキシゲナーゼ(COX)」を阻害することにより効果を発揮する。   ■ 副作用

 発疹、かゆみ、皮膚障害、胃部不快感、腹痛、まれに間質性肺炎やアナフィラキシー様症状、肝障害や腎障害などが報告されている。 消化管出血、穿孔などを起こすこともあり、注意が必要です。 やはり胃への負担が大きく、痛みを我慢できず、ついつい朝昼晩と服用が多くなり、胃炎になります。通常、ムコスタなど胃潰瘍の薬と一緒に処方されることになります。    他の薬との飲み合わせに注意が必要。特に、メトトレキサート(抗リウマチ薬)、キノロン系抗菌薬、ワルファリン(抗凝血薬)、チアジド系利尿薬、糖尿病薬。その他、アルコールは肝臓、胃などへの副作用を増幅する。   

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 メチコバールは4種類あるビタミンB12の一種で、神経修復作用を持ち、活性型ビタミンB12と呼ばれています。

 ビタミンB12の中でも、体内で利用されやすく、末梢神経に直接作用します。末梢神経とは体の隅々に張り巡らされた神経で、文字通り指先など末端に伸びている神経です。感覚を伝える神経ですので、この神経が損傷すれば、痛みやしびれも伝えることになります。ビタミンB12は末梢神経に作用し、傷ついた部分を修復し、外傷後の神経症状のみならず、肩こりや腰痛のつらい痛みやしびれ感を緩和する効果があります。ビタミンB12は、主に末梢神経の構成成分であるタンパク質やリン脂質を体内で生成する働きをするからです。 

 多くのジェネリック製品が出ており、メコバラミンなど製薬会社により表記名を違えています。これらはサプリ扱いからか安価ではありますが、単なるビタミン剤の割には高価と思っています。交通事故の場合、有無を言わせず正規製品となります。どこの薬局でも置いてありますから、事故以外の受診はジェネリックが良いと思います。

 メチコバールは末梢神経のしびれ、痛み、麻痺などに使用される薬剤で、たとえば、顔面神経麻痺、坐骨神経痛、大腿神経痛、上肢、下肢のしびれ痛み、などによく処方されます。交通事故のむち打ちで手指がしびれる場合、たいてい処方されますが、劇的に効いた話は聞いたことがありません。しびれの程度にもよりますが、日常生活を阻害するほどであれば、根治療法として手術(神経縫合術、神経移植術、神経剥離術・・・文字通り切れた神経をつないだり、他から移植してつないだり、周辺を切って広げたりする手術)を検討します。手術には踏み切れないが、事故後しびれや異常感覚が続く方は、ほとんどが保存療法と併せて処方されることが多いです。ビタミン剤なので副作用も少ないのかと思います。

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 事故後こんな症状に悩まされる患者さんがいます。  頭痛、だるい、めまいや吐き気、不眠、耳鳴り、手のしびれ・震え、無気力、ぼーっした状態・・・不定愁訴です。これらは自律神経失調症の症状と重なります。交通事故のムチ打ちでたまにこのような症状を示す方がいます。整形外科での治療に加え、バレ・リュー症候群の治療を併用する必要があります。神経ブロックを試み、交感神経の暴走を抑えることにより快方へ向かわせます。

 しかし、これらの不定愁訴を訴えても、医師の診断によってはあらぬ方向へ行ってしまう患者もおります。例えばXP画像上、骨に異常がないと・・・「気のせいです」と言って、神経学的検査、MRI検査をしません。そしてしつこく症状を訴え続けると・・・「心療内科、精神科への紹介状を書きましょう」となります。精神病患者の出来上がりです。  また、大学病院で精密検査を行い、脳神経科、眼科、循環器科とどんどん検査を進めていきますが、決定的な傷病名が見つかりません。そしてめったにない奇病・珍病へ・・・MTBI、脳脊髄液減少症、RSD、重症筋無力症・・・なんで単なるムチ打ちでなんでこんな重傷・奇病になってしまうの?

 これら病院巡りしている患者さんが本当に多いのです。昨日もご指導いただいているY整形外科医とこの話題になりました。被害者をお連れしたのですが、Y医師は流れるように神経学的検査を行い、こう診断しました。「頚部から上肢にかけての過緊張がもたらすもの、そして薬の大量投与の影響」。そしてK点ブロック(硬膜外ブロック)を試み、後日ペインクリニックの専門医の診断、MRI検査の指示をしました。そして強い薬、飲んでも改善のない薬は一切やめるように言いました。極めて穏当な処置と思います。今後、K点ブロックもしくは星状神経節ブロック、K点マッサージ、指圧などの緩和処置の効果が出てくるはずです。

 患者が自らの不安で訴える症状に過度の診断名をつけてしてしまう医師がおります。もちろんこれらの医師が言う診断は「〇〇の疑い」に過ぎないのですが、患者も精神的に弱っていますので、変な傷病名にすがりついてしまうのですね。

 私も立場上、患者の自覚を指摘することが多いのですが、今日は医師についても言いたいです。「〇〇の疑い」程度で変な診断をしないでほしいと思います。その傷病名で患者の頭が一杯になり、薬の大量投与はもちろん、病名に精神的に執着してしまいます。結果、保険会社からは精神病・詐病扱い、職場での信用失墜、家族ともうまくいかなくなり、気落ちして症状も改善が進まない・・・悪い方向へ一直線です。

 Y医師のように正しい判断、処置をしてもらわないと困るのです。ペインや神経学について、より整形外科医の理解が進むことを願うばかりです。

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 先日の講義で、弁護士から医証の信頼度について質問・指摘がありました。

 私が収集した診断書、検査資料について「裁判上で、その信頼性、信憑性を問われないか?」です。つまり、法律家が深く関与した医証について、その恣意的な意思が色濃く入り込み、裁判官に疑いを持たれないかということです。

 確かに被害者と医師の間に入り、医証の作成をフォローする私たちにとって重要な指摘と思います。あまりに被害者に肩入れした結果、少しでも有利な検査資料へ誘導しがちです。これは被害者から依頼を受けた以上自然な流れですが、それを恣意的な資料と判断されては元も子もありません。    講義での私の回答を補足・整理してもう一度言及します。私たち協力行政書士が連携する医師・治療先とは、癒着した関係ではありません。それは以下のように厳しい目で医師を評価をしているからです。    ① 高度な診断力

 「様子をみましょう」と言って神経学的検査をしない、傷病名を決められない、時間がなく患者の話をよく聞いてくれない、このような医師は私たちというより患者のためになりません。まず医師としての腕、つまり適切な判断・治療ができなければ信頼はできません。   ② 高度な倫理感

 患者や私たちの意見を聞きすぎる、患者もしくは保険会社に肩入れしすぎて公平性が保てない。自由診療と健保診療で露骨に差をつける。不道徳、利益優先な医師の書く診断書はいずれメッキがはがれます。自らの揺るぎない判断、責任で診断・検査を行う医師を信頼しています。   ③ 高度な人間性

 後遺障害立証にまったく協力的ではないということは、つまり患者に対する責任感、愛情を持てない医師です。またセカンドオピニオンを推奨できないのは唯我独尊の表れです。医師に限らずどの職業も留まるところその人間性が問われます。神がったすばらしい精神を持った「先生」は全員、謙虚です。誰に対しても態度を変えず、実に礼儀正しいものです。     このように医療先確保とは終生尊敬すべき人との出会いであり、簡単ではないのです。こちらの都合で診断書を書くような 「軽薄な医師」 を探しているのではないことを強調します。    医証の信用担保とは 「信頼できる医師」 との共同作業の結果なのです。

       

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 おはようございます。今日は4年に1度の2月29日ですね。

 昨日は研修会の事後に関する挨拶や相談、問題処理に忙殺されました。来月も引き続き実り多い勉強の場にしたいものです。

 さて、既に月曜から病院まわりは続いています。今日は神奈川県藤沢市~埼玉県川越市、移動距離もけっこうなものです。その合間、移動時間に様々な事務を消化させます。日々の足を使った業務が強固な医療ネットワークを作り上げるものと思います。頑張らねば!

 先日、講義でレントゲンやMRIの画像断について解説しました。絵が下手だの不評を買いましたので、少しリベンジ。ネットでよい絵を見つけました。

←これじゃダメか・・・

    赤:矢状断     青: 冠状断    ...

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 骨折の場合、医師は当然XP(レントゲン)を写して骨折箇所を確認します。

 そして骨の癒着を観察するために定期的に撮影が続きます。

 中には無駄とも思える回数の撮影を続ける病院もあります。これは点数(医療費稼ぎ)のためとも思ってしまいますが・・・。

 さて、半年~1年後、骨の癒着がなされ、いよいよ症状固定です。しかし、痛みの残存がひどい、関節が曲がらなくなった、しびれがあって指がよく動かない・・・なにかと症状が残る場合があります。

 そこで、「医師チェック」です。

手首の骨折を例にとります。以下の回答例を参考にして下さい。

Q) 先生、痛くて手首がよくまがらないのですが・・

Bad Dr.) 骨はきれいにくっついたんだから、リハビリを頑張って

Good Dr.) 

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 器質的損傷がないとき。

 器質的損損傷とは骨折、靭帯損傷、軟骨損傷など目に見える(レントゲン、MRIに写る)ケガのことです。

 交通事故外傷ではしばしば、これら目に見えるケガがないのに痛みや痺れなど不調を起こすことがあります。そして自分しかわからない苦しみを抱え、医師の治療も効果が表れず、立ち往生してしまいます。相手の保険会社からも「嘘のケガ?」と疑われて、ますます精神的にも衰弱していきます。

 現在、医学や検査方法の進歩によって、神経麻痺や自律神経の失調など検査、診断が可能な傷病名もありますが、すべての症状が解明されたわけではありません。「私は脳脊髄液減少症、MTBI、CRPS、胸郭出口症候群なんです」・・・お医者さんでもめったに口にしない傷病名をすらすら挙げてくる被害者さんもいます。もちろん医師から確定的な診断をされたわけではありません。現実に専門医からそのような診断を受けることは稀なのです。その中には心身症、心の病気の範疇に入る方も残念ながら大勢います。

 患者が一番不安な事・・・それは原因不明の症状に悩まされ、処置の方法、改善の希望が見えないことです。だから(珍しい)傷病名にすがりつくことになります。 もちろん、原因の精査・検査、専門医の診断を仰ぐことは大事です。しかしそれでも原因を特定できないこともあるのです。

 やはりケガを克服するのは患者本人です。病院も薬もそれを助ける手段でしかありません。いつまでも「気の毒な被害者」で落ち込んでいてはいけないと思います。傷病名にすがりついて安心するより、前向きに不調と付き合い、しっかり治療をこなし、早く社会復帰してもらいたいと思います。                        

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 続いて開放骨折にについて。  

■ 開放骨折 (open fracture)

 開放骨折とは、折れた骨が外皮を突き破って飛び出ることです。説明しただけで痛そうです。初期治療では徹底的な洗浄、そして破傷風防止から抗生物質の服用が必須です。開放創からの感染に注意を払っていきます。  

ガステロ分類と感染リスク                        

   タイプ Ⅰ             タイプ ...

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 骨折シリーズ続けます・・・

(1)骨折の分類   まず学術的な分類から

1、完全骨折   

  完全に連続性が絶たれている。

2、不全骨折   

  骨梁が途絶しているが、骨全体の連続性は維持。若木骨折など。

3、病的骨折   

  骨腫瘍など局所の骨強度の低下による。

4、疲労骨折   

  健常な骨に繰り返し付加が加わり起こる。行軍骨折。 ・・・剣道部時代が懐かしいです。

5、脆弱性骨折 

  骨粗鬆症など脆弱な骨に軽微な外力が加わり生じる。・・・高齢者がリハビリ中に起こす例があります。

6、不顕性骨折 

  X線で検出できない骨折。MRI、骨シンチが有用。 ・・・立証にも力が入ります!

7、骨挫傷

  骨折に至らないが、骨内出血がみられる。MRIが有効。 ・・・器質的損壊と呼ぶには弱いです。

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 骨折と一口に言っても、その折れ方にいくつかの分類があります。

 最近の例ですが・・・圧迫骨折なのか骨挫傷なのか? 

           骨幹部骨折なのか骨顆部骨折なのか?

           複雑骨折なのか粉砕骨折なのか?   

 このよう臨床での判断を迷っているケースを見ます。

 もちろんこれらは診断した医師が判断します。しかしどっちつかずの微妙な画像所見の場合、医師の主観で左右される結果となります。その骨折具合の判定も後遺障害の認定に少なからず関わってきます。

 したがって臨床においての骨折状態を正しい後遺障害診断に結び付けるため、骨折について正確な知識が必要です。

 例えば圧迫骨折における圧壊率は等級認定上の条件に重きをなします。また関節可動域制限も骨顆部(関節の部分)の骨折では説明がつきますが、骨幹部(骨の両端を除いた幹の部分)の骨折では可動域制限の根拠になりづらいのです。

 下肢の骨、大腿骨(太もも)と脛骨(すね)で見てみましょう

骨幹部 

骨顆部 骨の末端の一方ですが心臓から遠い方は 遠位端です 骨顆部 ...

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   電話相談でたまに専門外の相談が舞い込みます。    「リンリンリン ♪」   秋葉: 「はい!秋葉行政書士事務所です」   相談者:「すみません、交通事故の相談ではないのですが・・・」    秋葉: 「?・・・人生相談ですか?」   相談者:「いえ、ケガなんですけど・・・たぶんヘルニアかも・・」   秋葉: 「お医者さんではないので、わかる範囲でいいですか ヘルニアは頚ですか腰ですか?」   相談者:「腰です。・・・あのう私ではなくて・・・うちの子なんですが・・足がもつれるようになって」   秋葉: 「子供さんでヘルニアですか・・おいくつですか?」   相談者:「いえ、子供ではなくて・・犬なんですが。」   秋葉: 「はぁ!? なんで犬の相談を私に?」   相談者:「以前、先生のHPで犬の交通事故の記事を見まして・・」   秋葉: 「・・・・・・」  ( これか?→ ワンちゃんは家族?物?)      しょうがないので調べてみました。   ■ ...

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 本日はMRI検査同行です。被害者の症状を説明することが主目的ですが、初めて伺う病院なので、ご挨拶や勉強のためでもあります。  検査前の診断にて、医師から丁寧に説明とご教示をいただきました。早速その内容、私の質問とその回答のやり取りを紹介します。  

秋葉:Q.一般に頭部を打った事故では、頭蓋骨に骨折はないか、脳に損傷はないか、をCTで検査しますが、見落とすことはありますか?

医師:A.

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 最近の相談事例から・・・

 事故で足首を痛めました。捻挫ですが、腫れと痛みがかれこれ1か月以上も続いています。主治医も初診時にレントゲンを撮り、「骨に異常はないですね」と言ったきりです。湿布による消炎と電気治療が続きます。しかし回復せず、関節もよく曲がりません。医師に相談しても、「様子をみましょう」と・・・

 さて、このまま漫然と治療を続けるとどうなるでしょう。半年後の症状固定時になっても足首の可動域は回復していません。底屈30度、背屈10度と計測し、後遺障害診断書に書いて頂きました。しかし傷病診断名は右足首捻挫です。画像もレントゲンのみ、骨に異常なしのままです。

 これでは確実に「非該当」=後遺障害はなし、です。

 この段階になって、異議申立をして、いくら関節の痛みや可動域制限を訴えてもダメです。

 骨折や靭帯損傷など器質的損壊がないもの、例えば「捻挫・打撲」は治るもの、と解釈されています。そして可動域制限があったとしても、その原因となる傷病名が診断されていなければ無視されます。

 この方は、足首の靭帯に損傷があるものと疑う必要があります。丁寧に足首の靭帯をMRIで描出する必要があります。それも受傷直後、遅くとも3か月以内に。そして「後距腓靭帯、踵腓靭帯、前距腓靭帯の損傷」のような確定診断の記入が必須です。    

 もうおわかりですね、医師の指示は絶対ではないのです。あとで泣くのは自分自身です。「おかしいな?」と思ったら、自分から医師に検査の依頼をしなければなりません。それでも「患者は医者の言うことを聞いていればいい!」と相手にしてもらえないのなら、残念ながらただちに転院です。

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