昨日の開放骨折に関連しますが、脛(すね)にそんなひどい骨折があれば、周辺の神経が損傷され、腓骨神経麻痺が強く疑われます。

(骨折シリーズはちょっと中断、今後散発的に取り上げていこうと思います。)

 今日の医師面談の目的はまさにこれ。数年前の事故ですが、すでに腓骨神経麻痺の後遺障害を取得している被害者さんの再検査の依頼です。

 腓骨神経麻痺で足首の可動に制限が残ってしまった方ですが、同時に足指にも制限が残っています。同じ神経で結ばれていますので足首、足指ともに障害を残すケースが多いのです。前回の検査では足首の可動域のみ計測されていましたが、足指は計測されていません。実際に症状を訊ねると案の定、動きが悪いのです。

 上図のように2本の腓骨神経、浅腓骨神経(腓骨の外側)と深腓骨神経(腓骨の内側)は足指までつながっています。

 上図のように2本の腓骨神経はそれぞれ内側足底神経、外側足底神経につながっています。

・内側足底神経は短母指屈筋、母指外転筋、短指屈筋を支配 ⇒ つまり親指の動きに影響

・外側足底神経は小指対立筋、短小指屈筋、小指外転筋を支配 ⇒ 小指の動きに影響

・中央の虫様筋、背側骨間筋は人差指、中指、薬指の動きに影響します

 したがって足首が動かなくなるような麻痺では、足指への影響が濃厚です。

 
<親指> MP関節(指の根本)とIP関節(第2関節)を計測します。

    

部位

MP 関節主要運動

IP 関節主要運動

母趾

屈曲

伸展

合計

屈曲

伸展

合計

正常値

35 °

60 °

95 °

60 °

0 °

60 °

用廃

20 °

30 °

50 °

30 °

0 °

30 °

用廃であれば12級12号が認められます。

 
<その他の指> MP関節(指の根本)とPIP関節(第2関節)を計測します。

      

部位

MP 関節主要運動

PIP 関節主要運動

足趾

屈曲

伸展

合計

屈曲

伸展

合計

正常値

35 °

40 °

75 °

35 °

0 °

35 °

用廃

20 °

20 °

40 °

20 °

0 °

20 °

 
 親指は正常でも親指以外の4本すべてに用廃があれば12級12号が認められます。 

 この足指の等級は、足首の可動域制限12級(4分の3制限)、10級(2分の1制限)、もしくは8級(用廃)に併合されます。同系列の障害と捉え併合等級を相当とします。結果、それぞれ11、9、7級と、等級が一つ上がるのです。

 
 実は先月も別件で同じような追加検査をしたばかりです。そもそも神経麻痺は全般的に見落としされやすい障害なのです。
 
 以前のエピソード → 腓骨神経麻痺と名医
 
 医師が見落とせば、当然「存在しない症状」となります。保険会社も親切に教えてくれるはずもありません。そしてほとんどの法律家も診断書に書かれていることを疑わず、さっさと提出して進めてしまいます。結果として賠償金を数百万円単位で失います。

 このように「気づくセンス」が我々に求められます。