ケガの損害保険は、その支払い方で大きく二つに分かれます。

 傷害保険 と 賠償保険 です。 前者はお馴染みの、死亡○円、入院・通院1日○円の定額払いです。自分の為に掛金を払って加入することが普通です。賠償保険は、治療費や休業損害などの実費、さらに、慰謝料や逸失利益など実額から計算、あるいは交渉で決まる支払い方法です。この保険加入の目的は、人に迷惑をかけた場合に備えるものです。個人賠償責任保険がその代表です。両方をセットプランとしたものは、ご存知「ゴルファー保険」です。

 企業の場合も同じく、両方に契約することが一般的です。とくに、遊園地やスポーツ施設ですと、お客様(入場者)のケガに備える賠償保険だけではなく、親切にも傷害保険を重ねてかけています。ゴルフ場の場合は「ゴルフ場入場者保険」、お祭りやイベントでは「レクレーション保険」が該当します。本来、ビジターや入場者へは、賠償保険だけで足りると思いますが、どうして、両方をセットして契約するのでしょうか?     詳しくは 👉 なぜ、企業の保険は、賠償保険と傷害保険の両方を保険設計するのでしょうか?    秋葉は、保険の性質、保険会社の思惑を熟知していますから、連携弁護士と共に、両者への請求を試みました。結果は、以下実績の通りです。本件は交渉解決でしたので、丸々二つの保険から獲得しましたが、訴訟となった場合はそうもいきません。企業が掛金を負担している傷害保険、その支払い保険金は、賠償保険で支払う賠償金に算入される傾向です。もちろん、個人で掛金を払って加入している傷害保険は、賠償金とは別腹です。

保険会社の思惑を知る必要があります  

施設賠償14級9号:脛骨高原骨折(60代男性・静岡県)

【事案】

ゴルフ場で無人カートの衝突を受けて受傷、膝部のプラトー骨折となった。プレート固定後、リハビリを続けた。膝関節の可動域は回復傾向。

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【事案】

ゴルフ場で無人カートの衝突を受けて受傷、膝部のプラトー骨折となった。プレート固定後、リハビリを続けた。膝関節の可動域は回復傾向。

  【問題点】

ゴルフ場は責任を認めるのか否か曖昧であったが、傷害保険での支払いを約束した。具体的な後遺症や賠償金の話はなく、入院・通院の保険金での解決を提示してきた段階で、弊所に相談が入った。

この傷害保険は受け取るとして、後遺障害の評価がされていないこと、休業損害や慰謝料、逸失利益など実額損害の評価がされないまま、定額の保険金での解決は飲めない。懸念点は傷害保険金が賠償金の一部とされることか。   【立証ポイント】

病院同行の上、後遺障害診断書を記載頂き、痛みや不具合の14級9号の提示とした。連携弁護士から改めて、損害賠償金の積算を行い、ゴルフ場に提示した。ようやく、ゴルフ場が契約しているであろう、施設賠償責任保険と、相手の代理人弁護士が登場、ここで初めて示談交渉となった。

賠償保険と傷害保険を切り分ける為に、先に傷害保険の入院・通院、そして後遺障害保険金を受け取った。次いで、賠償交渉の結果、14級9号の慰謝料は承諾、その他損害項目も出揃った。ただし、過失減額はシビアな回答、それでも、傷害保険金とは”別枠で”多額の賠償金の獲得に至った。このような施設での事故では、傷害保険金のみで、なんとなく解決している例が多いと思う。

(令和6年2月)  

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