橈骨・尺骨 骨幹部骨折 (とうこつ・しゃくこつ こつかんぶこっせつ)

(1)病態

 上腕骨は、1本の長管骨ですが、前腕骨は橈骨と尺骨の2本で構成されています。親指側にある骨を橈骨、小指側にある骨を尺骨と記憶しておくと便利です。交通事故では、直接、前腕を強打したり、飛ばされたりして手を地面についた際、前腕に捻れの力が加わり、橈骨および尺骨が骨折します。

 捻れにより橈・尺骨が骨折を起こしたときは、骨折部位は異なりますが、外力により両骨が骨折を起こしたときは、両骨の骨折部位は同一部位となる傾向があります。下の写真は、橈・尺骨の両方が骨折しています。激痛と腫脹があり、前腕の中央部は大きく変形し、ブラブラになってしまっている状態です。

 単純XP撮影で容易に診断が可能で、両骨の骨折では、かなり強い衝撃が外力として強制されており、大きな転位が認められるものがほとんどです。   (2)治療

 昭和の時代、骨折の70~75%は徒手整復+ギプス固定による治療でした。尺骨や橈骨の骨幹部は、両端に比較すると最近では、AOプレートとスクリューによる固定が常識とされており、偽関節化が少なくなっています。AOプレートとスクリューによる固定が常識とされており、その進歩と執刀医の技術の向上から、偽関節化が少なくなっています。   (3)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 橈骨頭・頚部骨折 (とうこっとう・けいぶこっせつ)   (1)病態

 肘関節周囲骨折では最も多い骨折であり、交通事故では、腕を真っ直ぐに伸ばしてバイクを運転中の事故受傷で発生しています。

 この部位だけの骨折は稀で、多くで上腕骨内上顆骨折、尺骨近位端骨折、尺側側副靭帯損傷を合併します。 成人では骨頭骨折となり、小児では頚部骨折となることを特徴としています。

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 自動車の衝突の際、シートベルトのテンションがかかり、人体をシートに保持します。それで、フロントガラスへぶつかることなく人体を守ります。一方、ベルトの締め付けから、胸に青あざが残ることがあります。また、女性に多いのですが、ベルトの締め付けで鎖骨や肋骨、胸骨が折れることもあります。

 本例もベルトによる受傷と思いましたが、ご本人の説明ではエアバックは開かず、ハンドルに胸を強打したとのことです。本件の被害者さんは小柄の為、シートをかなり前方にしており、ハンドルと体の間がわずかだったことがその理由です。

 胸骨自体は、亀裂骨折程度なら、保存療法で癒合を待つのみです。ただし、胸骨が折れるほどの衝撃から、胸部の痛み、軽い呼吸困難が続きました。14級が認定されてしかるべき案件でした。

胸骨での認定は少ないものです  

14級9号:胸骨骨折(70代女性・静岡県)

【事案】

業務で自動車を走行中、細いカーブにて対向車が目測を誤り、当方に寄ってきて正面衝突したもの。衝突角度からかエアバックは開かず、胸部をハンドルに打ち付け、胸骨の骨折となった。胸骨は保存療法とされたが、頚部・腰部を含め胸部の激痛からリハビリを継続することになった。   【問題点】

過失割合に争いがあり、相手損保は30(当方):70(相手)の主張。過失減額を考慮して労災治療とした。また、治療先の医師との関係が上手くいかず、医師から早期の打切りを宣告された。   【立証ポイント】

病院に同行して、再三病院側を説得した。なんとかリハビリを継続させ、6カ月目で自賠責、労災共に申請に漕ぎつけた。

結果、胸部、頚部、腰部にそれぞれ14級9号がついた。もちろん労災からも14級で特別給付8万円を確保、自車の保険からは特別給付金が支払われ、最終的には、弁護士の交渉で過失割合を10:90程に修正、追加で200万円余りを追加獲得した。

医師に嫌われると等級は取れません。つまり、200万円を失うところだったのです。東京からわざわざ病院同行する意味があるのです。  

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 肘内側側副靱帯損傷 (ひじないそくそくふくじんたいそんしょう)   (1)病態

 肘関節は、上腕と前腕を連結しており、上腕骨、橈骨、尺骨の3本の骨で構成されています。前腕部の内側、小指側に尺骨、外側、親指側に位置するのが橈骨です。肘関節の両側には、肘関節が横方向に曲がらないように制御している側副靭帯があります。内側側副靱帯は、上腕骨と前腕の内側にある尺骨を、外側側副靱帯は、上腕骨と前腕の外側にある橈骨をそれぞれ連結しています。

 交通事故では、自転車、バイクからの転落で手をついたときの衝撃が肘に作用して、内側側副靱帯を損傷しており、肘関節脱臼に伴うものと単独損傷の2種類があります。内側側副靭帯損傷の症状は、受傷直後から肘の激痛と腫れが出現し、激痛のため、肘関節を動かすことができなくなります。

 上腕骨内側上顆の下端に圧痛が認められ、外反位で疼痛が増強し、不安定性が認められます。XPでは判別が難しく、MRI、エコー検査で確定診断がなされています。   (2)治療

 治療は、2、3週間ギプス固定が行われ、その後は、ギプスをカットし、リハビリ運動が始まります。外側側副靭帯損傷は、肘関節の脱臼に伴うものがほとんどですが、受傷後、時間が経過してから、肘の引っかかり感、外れそうになる感じ等が問題となります。

 後外側回旋不安定テストを行い、肘が外れそうな感じ、クリック音を調べます。小児の上腕骨外側上顆剥離骨折を伴う外側側副靭帯損傷では、骨片の整復固定術が必要です。

 陳旧性の外側側副靭帯損傷に対しては、靭帯再建術が実施されています。内側側副靭帯損傷は、野球の投球動作の反復によっても生じます。ボールを投げるとき、特に加速をつけるときは、肘の内側を伸ばす不自然な動作を行います。それに伴って、内側々副靱帯は引き伸ばされることになります。投球動作の反復により、内側々副靱帯は引き伸ばされ続け、肘に対する負担が大きくなり、側副靱帯が部分断裂するのです。ピッチャーにとっての職業病と言えます。   ◆ トミー・ジョン手術とは?

 大谷選手やダルビッシュ選手が実施したことで、日本でも有名な術式になっています。1974年、フランク・ジョーブ博士が、ドジャースのピッチャー、トミー・ジョン選手の内側側副靱帯の断裂に対して行った術式が、名前の由来です。この手術後、トミー・ジョン選手は、170勝し、年間20勝以上を2回、果たしました。現在、TJ術は、アメリカスポーツ医学研究所のジェームズ・アンドリュース医師が第一人者です。TJ術とは、部分断裂した内側側副靱帯を摘出し、長掌筋腱を移植する術式です。

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 変形性肘関節症 (へんけいせいちゅうかんせつしょう)   (1)病態

 上肢には、肩関節、肘関節、手関節の3大関節があり、どの関節でも、交通事故による脱臼や骨折を原因として、二次性の変形性関節症が予想されます。

 肘関節は、上腕骨、橈骨、尺骨の3つの骨で構成されているのですが、見た目の印象では、上腕骨と尺骨で肘関節が形成されています。医学的には、上腕骨遠位と橈骨頭との腕橈関節、上腕骨遠位と尺骨との腕尺関節、橈骨と尺骨の近位橈尺関節で3つの関節を形成していると説明されていますが、橈骨頭は寄り添っているだけです。

 肘関節の外傷では、肘関節脱臼、上腕骨顆上骨折、上腕骨外顆骨折、橈骨頚部骨折、肘頭骨折などを原因として、変形性肘関節症に発展することがあります。肘関節の変形が進行するにしたがって、肘部に痛みを発症し、また関節の動きが制限され、肘の曲げ伸ばしが困難となり、食事、洗顔、洗髪、衣服を着る、お尻を拭くなど、日常生活で大きな支障が発生します。変形に伴って、肘の内側部で尺骨神経が圧迫され、手の力が入りにくくなったり、小指と薬指にしびれなどが生じたりする尺骨神経麻痺も十分に予想されます。

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 尺骨鉤状突起骨折(しゃくこつこうじょうとっきこっせつ)

(1)病態

 上腕骨遠位端部を尺骨が受け入れる形状で、肘関節は構成されています。交通事故では、転倒した時に手をついて、尺骨の鉤状突起骨折を発症することが多いのです。尺骨鉤状突起骨折は、主として肘の脱臼に合併、若しくは肘関節を脱臼するほどの外力を受けた際に上腕骨の関節面=上腕骨滑車と尺骨の鉤状突起が衝突して骨折したものです。   Grade Ⅰ  鉤状突起先端部の剥離骨折   Grade Ⅱ 25%以上50%以下、骨片に関節包と上腕筋の一部が剥がれたもの   続きを読む »

 肘頭骨折(ちゅうとうこっせつ)   (1)病態

 転倒の際、肘を路面に強打した時に頻発します。痛みや腫れが生じ、肘の可動域制限と異常可動がみられ、単純XP撮影で骨折が認められます。

   肘への衝撃により骨折が生じますが、肘頭骨折とは、橈骨ではなく、尺骨の近位端部の骨折です。また、肘頭は、上腕三頭筋により上方へ引っ張られているので、骨折により転位が生じます。

   (2)治療    骨折した肘頭の骨の欠片が多数のときは、AOプレートを用いて固定されています。転位の少ないものは肘関節を90°曲げた状態で4週間程度のギプス固定が行われ、転位の大きなもの、粉砕骨折では、手術が適用になります。

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 肘関節脱臼 (ちゅうかんせつだっきゅう)

  (1)病態

 外傷性の脱臼では肩関節に次いで発症します。交通事故では、自転車やバイクを運転中、手をつくように転倒した際に発症しています。

 大部分は肘の後ろに抜ける後方脱臼です。後方脱臼では尺骨が上腕骨の後方に脱臼し、強い痛み、肘の曲げ伸ばしができなくなります。XPでチェックできるのですが、外見からでも尺骨が後方に飛び出していることが確認できます。

 前方脱臼は肘を曲げた状態で肘をぶつけたときなどに発症することが多く、上腕骨の先端が飛び出し、肘頭の骨折を合併することがほとんどです。脱臼に骨折を合併するときは、動揺関節や可動域制限などの後遺障害を残します。

  (2)治療

 治療は、全身麻酔下に徒手整復、肘関節を90°に曲げた状態で3週間程度のギプス固定がなされ、このレベルでは、後遺障害を残すことなく改善が得られます。

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 テニス肘とは通称で、正確な診断名は、上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)か、上腕骨内側上顆炎 (じょうわんこつないそくじょうかえん)のどちらかか、両方です。

  (1)病態

 本来のテニス肘には、バックハンドストロークで肘の外側を傷める外側上顆炎と、フォアハンドストロークで肘の内側を傷める内側上顆炎の2種類があります。いずれも、ボールがラケットに当たる衝撃が、手首を動かす筋肉の肘付着部に繰り返し加わることによって、微小断裂や損傷をきたし、炎症を発生するものです。

 前者では手首を背屈する筋肉がついている上腕骨外側上顆、肘の外側のでっぱりに、後者では手首を掌屈する筋肉の付着部、上腕骨内側上顆に発生するため、それぞれ上腕骨外側上顆炎、上腕骨内側上顆炎ともいわれます。

    テニス以外でも、包丁を握る調理師や手首を酷使する仕事で発症します。長時間のPC操作の繰り返しによっても、テニス肘は発症します。手首と肘の力を繰り返し酷使することで、筋や腱の変性や骨膜の炎症が引き起こされるのです。当然ながら、変性は、加齢によっても起こります。

 症状は、手首を曲げる、回内・外の動作で、肘に痛みが走ります。そして、雑巾を絞る、ドアノブを回す、ペットボトルのキャップを回すなどが、痛みでできなくなります。抵抗を加えた状態で手首を背屈させるトムセンテスト、肘と手指を伸ばし、中指を押さえる中指伸展テスト、肘を伸ばし、椅子を持ち上げるチェアーテストといった検査で、上腕骨外側・内側上顆部に痛みが誘発されます。炎症所見は、MRI、エコー検査で確認することができます。

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肘から腕、肘関節と手関節、橈骨と尺骨の仕組みを理解しましょう。

(1)肘関節・手関節の仕組み    肘部では、上腕骨の遠位端部が尺骨に受け止められるように肘関節を形成しており、橈骨は、イメージとして尺骨に寄り添っているだけです。ところが、手部となると、橈骨の遠位端部が、舟状骨、月状骨、三角骨と手関節を形成しており、尺骨は、それに寄り添っているだけなのです。

 肘関節では橈骨が、手関節では尺骨が、かなり不安定な構造となっています。肘は、肩関節で方向づけられた手が、人体周辺のあらゆる空間で機能できるような働き、つまり、肘関節は、上肢の長さを調節することで、手を最適に配置する役割を果たしているのです。前腕部には、橈骨と尺骨という長管骨が2本あり、手のひらを上に向けた状態では、前腕の親指側(外側)に橈骨、小指側(内側)に尺骨が位置しています。

 手のひらの回内・回外運動は、肘関節特有のものです。肘を曲げ、手のひらを上に向けた状態から下に向ける動作を回内、反対の動作を回外といいます。回内では、橈骨と尺骨が交差して×印を形成します。逆に回外で、手のひらを上に向けると橈骨と尺骨は平行に並びます。

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(1)病態

 小児の上腕骨顆上骨折で、重大かつ深刻な合併症として発生しています。骨折に伴う腫脹により、動脈の血流障害を生じ、前腕屈筋や正中神経・尺骨神経麻痺などをきたす病態で、見逃すと、筋肉の変性や神経麻痺が残り、大きな後遺障害を残します。初期症状として有名な5つのPを注意深く観察しなければなりません。   ① Pain(疼痛)

② Pallor(蒼白)

③ Paresthesia(知覚障害)

④ Paralysis(運動麻痺)

⑤ Pulselessness(脈拍消失)    小児に多く発症します。上腕骨顆上骨折の手術後、お子さんが骨折部のひどい痛みを訴え、手指が蒼白で、手首で脈がとれないときは、自宅に戻っていても、治療先に急がなければなりません。元の治療先が頼りなければ、近隣の医大系の総合病院に駆け込むのです。動脈閉鎖後、6~8時間でフォルクマン拘縮が生じるので、この時間内に対処しないと、取り返しのつかないことになります。    (2)治療

 治療先は、骨折の整復やギプスで圧迫などの阻血の要因を除去します。これでも、改善が得られないときは、緊急的に筋膜切開を行い、内圧を減少させます。

 積極的な治療は早いに越したことはありません。「様子を見ましょう」と手をこまねいていると、拘縮は治らなくなります。町の整形外科では、この症例に対処できません。一早く専門医を受診しなければなりません。

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 上腕骨遠位端骨折 (じょうわんこつえんいたんこっせつ)    上腕骨の遠位端部は、前腕の尺骨と橈骨とで肘関節を形成しています。    より細かく診断名をつけると、上腕骨顆上骨折、上腕骨外顆骨折と呼ばれることもあります。     (1)病態と治療    遠位端骨折は、骨折部位によって診断名がより細かく付けられます。主要2つを説明します。   続きを読む »

 上腕骨骨幹部骨折 (じょうわんこつこつかんぶこっせつ)    上腕部、長管骨の中央部付近の骨折を骨幹部骨折といいます。簡単に言いますと、二の腕の骨折です。  

(1)病態

 交通事故では、バイクの転倒で手や肘をついたとき、転落などで直接に上腕の中央部に外力が加わって発生しています。このような直達外力で骨折したときは、横骨折が多く、外力が大きいと粉砕骨折になります。手をついて倒れたときは、螺旋骨折や斜骨折となります。肩や肘関節に遠く、一般的に関節の機能障害を伴わないことが大半ですが、上腕骨骨幹部骨折では、橈骨神経麻痺を合併することが高頻度であり、見落とされやすい障害と言えます。

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 上腕骨近位端骨折 (じょうわんこつきんいたんこっせつ)

(1)病態

 上腕とは、肩関節からぶら下がる二の腕のことで、上腕骨近位端とは、肩関節近くの部位です。上腕骨近位端骨折は、骨折の部位と骨片の数で、重傷度や予後、治療法が決まります。下記イラストは、骨折の部位と骨片の数による分類を示しています。臨床上、この骨折は、骨頭、大結節、小結節、骨幹部の4つに区分されています。   続きを読む »

(3)後遺障害のポイント   Ⅰ. 外傷後の変形性肩関節症は、以下①~③による二次的な診断名になることが多数です。   ① 外傷後、肩関節面の整復が不十分で変形治癒となったもの   ② 衝撃により、肩軟骨損傷をきたしたもの   ③ 大きな腱板断裂が放置されたもの    これらを原因として、変形性肩関節症に発展しています。①~③が画像上明らかで、医師の診断が残っているものは良いとして、数年後になって変形を訴えても、画像上、不明瞭なケースが多いものです。したがって、変形性肩関節症から直接の等級認定は少なく、中々に立証が難しい症例と思っています。   Ⅰ.

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(1)病態

 XP上、正常な肩関節には軟骨が存在するための隙間がありますが、変形性肩関節症に至ると、隙間が消失し、骨と骨がぶつかって白く変化し、周囲に骨棘という棘状のでっぱりが出現します。肩関節を形成する上腕骨と肩甲骨の表面は軟骨で覆われ、クッションの役割を果たしています。この軟骨が、すり減ってくると、肩を動かすことで関節に負荷がかかり、炎症や骨変形をきたします。外傷後の二次的障害ですが、これを、変形性肩関節症と呼んでいます。

(左)正常   (右)変形

   交通事故における変形性肩関節症では、3つの原因が想定されます。   ① 外傷後の関節面の不適合

 関節内骨折であって、整復が不十分で元の位置に戻っておらず、ズレを残しての症状固定では、将来的に関節面の不適合をきたし、一部の関節軟骨面に圧力がかかることになります。これを原因として、関節軟骨損傷に発展すると、変形性関節症となるのです。   ② 外傷による軟骨損傷

 交通事故による転落や正面衝突など、非常に大きな外力を肩関節面に受けると、関節軟骨を損傷することが予想されます。軟骨細胞を壊すのに必要な圧力は、骨折を起こすのに必要な力よりもずっと少ないと考えられているのですが、骨折手前で、MRIのみで確認できる骨挫傷でも、複数例の軟骨損傷があります。関節軟骨の細胞=硝子軟骨は、血流に乏しく、損傷を受けると、修復、再生されることはありません。肩関節の脱臼では、変形性肩関節症の発症率が有意に高くなると報告されています。   ③ 大きな腱板断裂が放置されると、腱板による上腕骨頭の抑えが効かなくなり、上腕骨頭が上に転位することで、肩を動かすと上腕骨頭は肩峰と衝突し、擦れ合うことになります。この繰り返しにより、肩関節に変形が進行していくことがあります。

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(1)病態

 肩関節周囲炎、いわゆる五十肩は、50代を中心とした中年以降に、肩関節周囲組織の年齢性変化を基盤として明らかな原因なしに発症するもので、肩関節の痛みと運動障害(こわばりなど)を認める症候群と定義されています。肩関節の動きをよくする袋=肩峰下滑液包や関節を包む袋=関節包が癒着すると、より肩関節の動きが悪くなります。この状態を凍結肩と呼びます。

 肩関節は上腕骨、肩甲骨、鎖骨の3つの骨で支えられており、肩を大きく動かす必要から、肩甲骨関節窩に上腕骨頭が浅くはまった不安定な構造となっています。構造的に不安定なところを関節包や発達した腱板などで強度を高めているのですが、肩の酷使などによってこれらの部分に炎症や損傷が起きて、痛み、可動域の制限が起こると考えられています。    (2)治療

 一般的には、消炎鎮痛処置だけ、あとは保存療法です。また、関節拘縮が進まないよう、徒手で可動範囲を広げます。具体的には、薬物療法・運動療法・理学療法です。薬物療法では消炎鎮痛剤やテープ状の外用薬の処方です。痛みが強い場合には、ステロイド剤と局所麻酔剤を混ぜた「高分子ヒアルロン酸ナトリウム」などの注射が施行されます。これらによって改善しない場合は、手術が検討されることもありますが、多くは痛みが治まるまで待つことになります。   (3)後遺障害のポイント

 いわゆる五十肩は、一般的に加齢とともに訪れるものですから、これをもって後遺障害が認定されることは困難です。

 しかしながら、「交通事故以前には肩の痛みを感じることはなかった」ということであれば、スポーツ外来、肩関節外来を設置している整形外科を受診されることをお勧めします。MRIやエコー検査等を実施し、専門医により肩の器質的損傷、つまり、腱板損傷、関節唇損傷や肩関節の後方脱臼等と診断されれば、これはもはや加齢による五十肩ではなく、交通事故に基づく障害と言えます。

 適切な検査と診察が行われたにもかかわらず、肩関節の痛みや運動障害の原因が不明のときは、後遺障害認定は難しいと言わざるを得ません。それでも、事故前に何ら症状なく、事故で肩関節に相当のダメージがあり、それを契機に痛みを発症し、その後、症状の一貫性があれば、14級9号の余地を残します。    その実例 👉 14級9号:外傷性肩関節周囲炎(30代男性・神奈川県)    治療先発行の診断書に、肩関節周囲炎と記載されていれば、「あなたが訴える肩の痛みは、いわゆる五十肩です」との烙印が押されたことになります。結論として、ケガではなく病気(老化現象)なので、通常は後遺障害から外れます。    次回 ⇒ 変形性肩関節症    

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 反復性肩関節脱臼(はんぷくせいかたかんせつだっきゅう)    読んで字のごとく、繰り返す脱臼です。脱臼ぐせとも言います、体操選手などアスリートに多く、力士では千代の富士を苦しめた症例です。   (1)病態

 肩関節は、肩甲骨の浅いソケットに、上腕骨がぶら下がっている頼りのないもので、関節部には骨の連結がなく、大きな可動域を有しているます。そのため、脱臼しやすい構造となっています。10・20代の若年者の外傷性肩関節脱臼では、とくに反復性を予想しておかなければなりません。つまり、若年者では初回脱臼後、これを繰り返す、つまり反復性に移行する確率が高いことが注目されています。体操選手も一度脱臼すると、脱臼ぐせが残る方がいるそうです。    縄抜けの術? 👉 肩の後遺障害 4 肩関節の脱臼    肩関節は、肩甲骨面に吸盤の役割をしている2つの関節唇という軟骨に、靭帯と関節の袋である関節包が付着し、これが上腕骨頭を覆うことによって安定化しています。脱臼時に関節唇が肩甲骨面から剝離し、これが治癒しないと、脱臼する道ができてしまっているため、再び脱臼するような力が加わると脱臼を繰り返すことになるのです。極端な例では、背伸びの運動でも肩関節が外れてしまうことがあります。

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 肩関節は、肩甲骨の浅いソケットに、上腕骨がぶら下がっているだけの頼りのないものです。関節部には骨の連結がなく、大きな可動域を有しているのですが、そのことが原因で脱臼しやすい構造となっています。   (1)病態

 バイクや自転車を運転中の衝突等で、転倒した際に体を支えようとした腕が、横後ろや上方に無理に動かされたときに、上腕骨頭が不安定となり、関節面を滑って脱臼となります。

 また、転倒した際に、肩の外側を強く打ったときや腕を横後ろに持っていかれたときなどにも生じます。肩関節脱臼の90%以上は、上腕骨頭が身体の前面に移動する前方脱臼です。

 前方脱臼以外にも、転倒した際に、体の前方に腕を突っ張ったとき、肩の前方を強く打撲したときに生じる後方脱臼、上腕を横方向から上に無理に動かされたときに生じる下方脱臼があります。   (2)治療

 関節を戻すのは力業です。医師数名がかりで関節を戻します。激痛を伴うので、あらかじめ麻酔を打つことになります。関節を元に戻した後は、外旋位固定が3週間続けられるのが一般的です。

 保存療法では、腕を固定して剥離した関節唇を圧着させて自然回復を待ちます。固定法にもいくつか種類があり、患者さんの状態や医師の治療方針を考慮して適切な方法を選んでいきます。肩関節脱臼を起こさないようにするためには、リハビリテーションによるインナーマッスルの強化も有効です   (3)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 肩甲骨骨折(けんこうこつこっせつ)

 肩甲骨は、背中側の肩の部分についており、骨の中でも比較的薄い板状骨です。他の骨とは、関節を形成しておらず、他のどの骨よりも自由に動かすことのできる骨です。外力に弱い構造ですが、多くの筋肉群に囲まれて補強されています。   (1)病態

 以下、3つの兆候が揃うと、ほぼ骨折しています。

① 肩の後方部分に、経験したことのない激痛が走る

② 肩の後方部分が青黒く変色している

③ 肩・肘を全く動かすことができない    交通事故外傷では、交通事故では、地面に肩から叩きつけられる、肩甲骨に直接的な打撃を受けるなどして、骨折します。多くは、肩甲骨体部の横骨折か、縦骨折ですが、直接に打撃を受けたときは、鎖骨骨折、肋骨骨折、肩鎖靱帯の脱臼骨折を合併することが多いです。その他、肩峰や烏口突起部の骨折も経験しています。     肩峰骨折の例 👉 12級5号:肩峰骨折・肩鎖関節脱臼(10代男性・千葉県)     ひびが入った(亀裂骨折)程度では、町医者のレントゲンで見落とす可能性があります。レントゲンの正面像では、肋骨の裏側に隠れて肩甲骨が写りません。上記の①~③があれば、迷うことなく、総合病院でCT検査(↓3DCT)を実施して下さい

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