【事案】

農作物の出荷場で作業中、フォークリフトのリフトが足指に下ろされて受傷、小指の先、末節骨の剥離骨折となった。剥離(はがれた)骨折は通常の骨折より、実は癒合が悪い。

さらに、痛みは軽減するどころか増悪し、ついに半年後、「痛みの外来」、つまり、専門医によるCRPSとしての治療に切り替った。久々に真正CRPSである。   参考 👉 CRPSについて 概論と近況   【問題点】

ところが、相手損保はCRPS?など奇病・珍病の類は認めない。治療費打ち切り攻勢に。この時点での相談・受任となった。健康保険に切り替えて、相手損保との摩擦を避け、専門医の治療を継続させた。このまま症状が収まればよいが、1年経過をみて後遺障害申請の勝負にでた。

CRPSの認定基準上、皮膚温度の低下、骨委縮、関節拘縮などが認定条件であるるが、足の小指ゆえにサーモグラフィーに左右差がでずらく、末節骨はそもそも委縮しているような骨である。専門医の治療が継続していること、第5足趾ゆえの特殊性を訴えたが・・・温度差の左右差がわずかであること、骨委縮や関節拘縮がないことを理由に初回申請は非該当の回答。

より詳細に神経症状を専用の診断書に記載の上、実態上CRPSに陥っていることを再請求で訴えたが、上部審査での判断はまたしても同じく「基準外」で非該当。いつもの自賠責であれば、「CRPS特有の治療(疼痛コントロール)が10か月も継続され、アロデニア(異常疼痛)が続いていること」から、症状の一貫性と信憑性により14級9号でお茶を濁すはず。担当者の悪意すら感じる結果が続いた。   【立証ポイント】

審査員を変える必要がある。確かに基準は絶対かもしれないが、本件の場合、自賠責の判断はあまりにも硬直に過ぎる。粛々と自賠責共済紛争処理機構に上げて結果を待った。

今度は、CRPSの基準に完全に満たないものの、症状が信用されて最低限の14級9号の回答。困窮の程度から、12級13号を得たかったが、基準の壁から訴訟認定も困難と考え、連携弁護士の賠償交渉へ進めた。悔しいが一矢報いたと思う。

(令和5年3月)  

続きを読む »