最近鎖骨の脱臼、亜脱臼の相談が続いています。多くは胸鎖関節ではなく肩鎖関節の脱臼です。

今日の病院同行もGradeⅡの被害者さんです。まずこのGradeとは

 

 

分類

肩鎖関節の脱臼は3段階に分けられます。これをtossy分類とよびます。

Grade1 靱帯の軽度の損傷のみで捻挫と同様、明らかな脱臼はない。
Grade2 肩鎖靱帯の損傷があり、亜脱臼位 を呈する。
Grade3 肩鎖靱帯損傷に烏口鎖骨靱帯の損傷が加わり、完全脱臼位を呈する。

 
 いずれもひどい痛みと炎症を伴います。肩鎖靭帯(けんさじんたい)と烏口肩鎖靭帯鎖骨(うこうけんさじんたい)は鎖骨を肩関節に固定する役割をしています。これらの靭帯が引っ張られる(切れる)と鎖骨は上方に跳ね上がる、つまり脱臼するのです。

 これは鎖骨と肩甲骨をつなぐ靭帯が切れた、または伸びて緩んでしまったために鎖骨がポコッと飛び出てしまっている状態です(上方転位)です。外見からピアノキーサインなどとも呼ばれます。  

受傷契機

 バイクで前方に衝突し、ハンドルを握ったままで前方から強い衝撃を受けた時に好発します。これは肩関節が後方(背側)に引っ張られ、脱臼、亜脱臼するので、肩鎖靭帯が千切れます。
 また車に跳ね飛ばされて肩から路面に転倒した際、肩関節が前方(胸側)に押し付けられて脱臼、亜脱臼した場合、烏口肩鎖靭帯に負担がかかります。
 このように受傷状況から損傷する靭帯が分かれる傾向があります。もっとも、ひどい脱臼ですと両方の靭帯がやられます。

病態と治療

 Grade3は肩鎖靭帯、烏口肩鎖靭帯が断裂している状態です。これを修復するために手術は必至です。
 Grade2は肩鎖靭帯の損傷が不全断裂、部分断裂なので関節が外れっぱなしの完全脱臼に至りません。亜脱臼が正しい診断です。クラビクルバンドやバストバンドで固定し、保存療法とすることがほとんどです。
 Grade1はほぼ消炎鎮痛処置に留まります。

 痛み、炎症が強いときは痛み止めの注射をします。ステロイド剤が効きますが、最近は副作用の少ないヒアルロン酸も流行っています。
 
昔は三角巾で吊っていましたがクラビクルバンドという便利なものができました。

立証

 脱臼は単純レントゲンで明らかとなりますが、ストレスXPでより明瞭となります。しかしウェイトをかけてまでストレスXPをするのは痛いので、MRIで肩鎖靭帯、鳥口肩鎖靭帯の損傷を描出させれば十分です。
 そして大事なのは外貌写真です。「裸体で確認できる」、これは鎖骨、肋骨の骨折でもお馴染みです。肩鎖関節の脱臼では肩上にポコッと鎖骨の遠位端(肩側)が上方転位(上にずれる)しますので視認可能なのです。相談会では上を脱いで頂くこともあります。そして申請時には写真を必ず添付します。

後遺障害

12級5号 鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの 裸体で確認できるほどの転位が確認できる場合です。手術で整復されたGrade3も12級に落ち着くことが多いです。
14級9号 局部に神経症状を残すもの 肩鎖靭帯の損傷により疼痛が残存した場合、14級9号の認定もあります。便利な9号です。

 
 
 さらに肩関節に可動域制限をきたす場合、鎖骨変形と等級を併合するケースもあります。併合するか否かは相当の可動域制限が起きていると思われる状態、つまり画像で判断しているようです。例えば肩甲骨や上腕骨の骨頭骨折、肩腱板損傷を併発した場合、併合しやすくなります。肩鎖関節のG1レベルの単独脱臼では当然ながら肩関節の可動域制限は否定されます。また8級のような高度な可動域制限は肩鎖関節の脱臼ではおこりません。
     

部位

主要運動

参考運動

肩関節

屈曲

外転

内転

合計

伸展

外旋

内旋

正常値

180 ° 180 ° 0 ° 360 ° 50 ° 60 ° 80 °

8 級 6 号

20 ° 20 ° 0 ° 40 °      

10 級 10 号

90 ° 90 ° 0 ° 180 ° 25 ° 30 ° 40 °

12 級 6 号

135 ° 135 ° 0 ° 270 ° 40 ° 45 °

60 °

 
 経験では鎖骨骨折の方がかえって治りが良く、脱臼・亜脱臼は意外と痛みが長引いたり、変形が残るような気がします。

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