先月の研修・通信の内容が好評でした。今回の保険料の値上がりは全国の損保代理店様にとって喫緊の問題です。業務日誌にも掲載しましょう。
  
 今年、自動車保険(任意保険)各社、値上げを発表しております。各社一斉の値上げは約5年ぶりで、大手4社、東京海上日動さん、損J日興さん、三井住友さん、あいおいニッセイ同和さんの発表によると、値上げ幅は0.9~2.5%とのこと。理由は昨年10月~消費税増税による経費の上昇と、本年のライプニッツ係数の上昇が挙げられています。

 いずれにしても、交通事故件数の下降に伴い自賠責保険が値下がりする中、顧客様への説明に代理店様もさぞ窮していると思います。そこで、値上げの言い訳の一つでもある、ライプニッツ係数を日本一易しい解説に挑戦します。まずは、逸失利益の話からはじめなければなりません。
 
(1)逸失利益が最大の戦場? 

 逸失利益(Lost profit)とは? ・・・本来得られるべきであるにもかかわらず、 債務不履行や不法行為が生じたことによって得られなくなった利益を指します。得べかりし利益(うべかりしりえき)とも言われます。

 この逸失利益は、後遺障害が認められる場合に発生します。もし、後遺症がなければ100%のパフォーマンスで働けたはずが、後遺症のおかげで労働力が○%下がった=収入が下がった分を失われた利益額とします。

 損害項目の中で、相手損保との交渉幅がもっとも大きいものは逸失利益ではないでしょうか。賠償交渉の実際、慰謝料の増額交渉より激戦区と言えます。治療費は病院からの請求額で(過剰医療や不正受診でもない限り)ほぼ決まり、休業損害は証明書の数字から動かし難く、慰謝料は相場があり定額化しています。それらと違い、逸失利益は増減の幅が大きく、多くのケースで最も高額な賠償金となります。計算式は以下の通り。
 
事故前年の年収 × 喪失率 × ライプニッツ係数(喪失年数-中間利息)=逸失利益
 
 57歳会社員のAさんのケースで試算してみましょう。Aさんは交通事故で腰椎を骨折、後遺症が残りました。事故前年の年収は500万円でした。後遺障害は11級が認定され、その喪失率は20%です。57歳なので喪失年数は67歳までの10年間、10年間のライプニッツ係数は(旧)7.7217です。

 すると、逸失利益の満額は・・・500万円×20%×7.7217=7,721,700円となります。

 ここで、相手損保は減額交渉を開始、「現在、復職して問題なく働いていますので、喪失率は10%程度で勘案しました」、「骨折の癒合に問題ありませんので、喪失期間は5年程で算定しました」など、主に喪失率と喪失期間を減らす事によって、簡単に半額程度に下げてしまうのです。もちろん、損保担当者の“勘案や算定根拠”は正しいことがありますが、黙っていれば逸失利益の7,721,700円が、半分の3,860,850円にされてしまいます。

 被害者はこの部分で戦わなければならないのです。つまり、交渉上、双方の差額が絶大となる逸失利益こそ、賠償交渉最大の戦場たる所以なのです。 (つづく)
 

 捕らぬ狸の皮算用?