労災と加害者側の賠償金(自賠責保険・任意保険)がかぶる場合、労災の障害給付は一時金でも年金であっても、「支給調整」を行います。ここが、皆様の知りたい核心ではないでしょうか。

○ 障害給付の支給調整

 第三者行為災害における損害賠償請求額と労災保険の給付の支給調整方法については、「求償」と「控除」の2種類があります。
 
○「求償」とは、被災者等が第三者に対して有する損害賠償請求権を、政府が保険 給付の支給と引換えに代位取得し、この政府が取得した損害賠償請求権を第三者
や保険会社などに直接行使することをいいます。
 
○「控除」とは、第三者の損害賠償(自動車事故の場合自賠責保険等)が労災保険の 給付より先に行われていた場合であって、当該第三者から同一の事由につき損害
賠償を受けたときは、政府は、その価格の限度で労災保険の給付をしないことを いいます。
 
① 労災の支給調整の対象は「逸失利益」

 逸失利益とは・・・本来得られるべきであるにもかかわらず、債務不履行や不法行為が生じたことによって得られなくなった利益を指します。得べかりし利益(うべかりしりえき)とも言われます。逸失利益の算定では果たしてどこまでが本来得られるべきであった利益か、その確定は容易でなく訴訟などでもよく争点となります。

 自賠責保険ではこの逸失利益の限度額を明確に定めており、限度額を下回る80歳超の高齢者を除いては、ほとんど限度額で頭打ちとなります。これは弁護士さんにも多いのですが、自賠責保険の後遺障害保険金を定額の慰謝料と読み違えています。自賠責保険金額はあくまで、定額の慰謝料+計算された逸失利益(限度有)の合計です。

 障害給付金は一定の治療後、後遺症による将来に向けた補償ですから、逸失利益と性質が同じものとされます。したがって、逸失利益と二重に支払われることなく、逸失利益を超えた金額を給付することになります。逆に、労災先行で労災を全額支給した場合、後に自賠責に求償することになります。

 尚、賠償金の内の慰謝料は「精神的損害」ですから、民事上の「償い」であるところ、公共の補償と相殺すべきではなく、別物と考えられます。
 
 つづく(いずれ、計算例をUPします)