続けましょう。
 いよいよライプニッツ係数の話です。その前にもう一つ、遅延利息の利率変更について。遅延利息が下がったから、ライプニッツ係数が上がったのです。
 
(2)高すぎる法定利息の引き下げがそもそもの原因 

 ご存知の通り、裁判で判決となった場合、不法行為による損害賠償金に、解決までの利息を上乗せして貰えることがあります。この法定利息は長らく5%でした。賠償金1,000万円が4年後に判決された場合、1,000万円×5%×4年=200万円も利息が付くわけです。ここ20年以上続く0金利時代に、破格の利息です。

 この高すぎる利息、長らくの批判から今年の4月1日より3%に引き下げることが決定、また、2年毎に金利の見直しをすることになりました。すると、先の計算は、1,000万円×3%×4年=120万円の利息に下がることになります。
 
3)ライプニッツ係数とは? ~ まとめて将来の利益をもらうのだから、利息は差し引いてね

 さて、ようやく本題です。昨日説明しましたように、逸失利益とは将来得られるはずだった利益(収入)です。先の例のAさんは腰椎の骨折以来、腰の痛みでコルセットを着用しています。そのせいもあり、事故後、工場で重機を操作する作業ができなくなりました。作業範囲が限定・縮小されたことが作業手当てに影響し、給与が減ってしまいました。その減額は20%(年収500万円→400万円)ほどになっています。だからこそ、自身の損害として、その減額100万円を退職までの10年間、請求する権利があると主張するのです。

 では、賠償交渉で100万円×10年=1,000万円を獲れるでしょうか? 結論から言うと困難です。なぜなら毎年100万円貰えるはずの給与を、たった今、全額収入するのですから、1,000万円を預金、あるいは運用すれば利息で儲けることが可能です。公平な損害賠償額の観点上、被害者が利得することになります。だからこそ、その中間利息分を差し引く必要があるのです。

 


 

(4)値上げの言い訳 ~ ライプニッツ係数が上がったので・・・

 法定利息の引き下げに伴い、公平の観点から、ライプニッツ係数を逆に引き上げることになりました。 確かに、これまでのライプニッツ係数10年=7.7217ですと、10年 - 7.7217年 = 2.2783年分の逸失利益が差っ引かれます。この利息分も高すぎですよね。

 したがって、今春、法定利息の引き下げに伴い、ライプニッツ係数の差し引く利息分を減額しました。結果、係数を計算し直して上昇、改定後の10年は8.5302に上がりました。すると、先のAさん、もし今年の4月1日以降の事故だったら・・・

 500万円×20%×8.5302=8,530,200円です。

 昨日計算した改定前の係数(10年=7.7217)の場合は、500万円×20%×7.7217=7,721,700円 でした。

 8530200-7721700= なんと808,500円も増額します。
 
 このように、損保にとってライプニッツ係数の引き上げは、後遺障害・逸失利益の保険金支払いが増えることになるのです。 だ・か・ら、損保は値上げをしたいのでしょう。 これで理解が深まることを祈ります。