続けて人身傷害補償条項も整備しました。支払いルールは以前と同じですが、求償のルールが加わりました。あまりにも難解で、弁護士先生ですら「なんのこっちゃ理解できない」と言っています。今日も飛ばしてOkです。
 

第8条 支払保険金の計算

 
(1) 第6条の規定(当社が別紙に定める算定基準)により決定される損害額+その他費用が支払い限度です。(かなり略しました)

(2) 次の①から⑥までのいずれかに該当するもの(以下この(3)において、「回収金等」といいます。)がある場合において、回収金等の合計額が保険金請求権者の自己負担額(注2)を超過するときは、当会社は(1)に定める保険金の額からその超過額を差し引いて保険金を支払います。

 なお、賠償義務者があり、かつ、判決または裁判上の和解において、賠償義務者が負担すべき損害賠償額が算定基準と異なる基準により算出された場合であって、その基準が社会通念上妥当であると認められるときは、自己負担額(注2)の算定にあたっては、その基準により算出された額を損害額とします。

 ただし、訴訟費用、弁護士報酬、その他権利の保全または行使に必要な手続きをするために要した費用および遅延損害金は損害額に含みません。

(注2)自己負担額
 損害額および前条の費用のうち実際に発生した額の合計額から(1)に定める保険金の額を差し引いた額をいいます。

 以下①~⑥は簡略に言い直します。

① 自賠責保険からの回収金
② 加害者側に保険会社があり、その対人賠償保険金
③ 加害者からの賠償金
④ 労災の給付
⑤ 第3者(他の加害者・責任者等)からの賠償金
⑥ その他、取得した金額。(傷害保険等は除く)

 

この文章の(2)が解読できれば天才です。約款は外国語と割り切って、以下訳しました。

{訳}
(1)人身傷害の支払い保険金は当社が計算して決めます。

(2)先に人身傷害保険金を払いました。

  次に加害者側から賠償金がでました(労災も含む)。

  先に払った保険金をそこから返してもらいたい。

  返してもらう額(求償額)の計算は、

既払保険金-{賠償金-(総損害額-既払保険金)}= 算定された保険金額

既払保険金 - 算定された保険金額 = 求償額

 

 kagokasai  差額説計算4保険会社 加護
500万円 - {800万円 -(1000万円 - 500万円)}= 200万円 「算定保険金」

  kagokasai - 200万円 = 300万円
これにて加護火災は既払保険金500万円から算定保険金額200万円を引いた額300万円が求償額となります

「これなら1000万円の全額が確保できるわね」  20140508_8

 主要損保各社は類似の条項を人身傷害の約款に補足しました。要するに差額説採用の説明です。この条項の追加は、支払いルールと求償ルールの差別化・明確化が狙いと思います。

 後で気づいたのですが、損保ジャパンはじめいくつかの損保はこの条項により、もう一つの論点である「人身基準差額説」と「訴訟基準差額説」の答えを準備していたように思います。それは、「損害の総額は(1)の通り、原則自社の算定基準としますが、裁判となった場合は8条の後段「なお~」以下の条項で裁判基準とする」と規定したことです。「差額説」の精神「被保険者または保険金請求権者の権利を害さない範囲内で」は裁判が前提となるのか? 裁判が前提というこの解釈は各社の約款はもちろん、事件ごとに揺れまくり、人身傷害の問題をより複雑化しました。もっとも、この巧妙な約款改定を違う場面で思い知らされることになりますが・・。

 明日から尚残る問題について、て矢口さんの例に戻って、進めていきます。

 つづく