膝や肘など関節部分を骨折すると高い確率で後遺障害が残ります。ざっくりと後遺障害の指針を示します。

1、骨折の癒合後の骨変形や転位(ズレてくっつく)による関節可動域制限

2、骨折が癒合しなかった場合、偽関節(骨がくっつかなかった)による動揺関節

3、骨折と併発した靭帯損傷、軟骨損傷による関節可動域制限

4、骨折と併発した、もしくは単独の靭帯断裂による動揺関節

5、骨折と併発した軟骨損傷による関節裂隙(関節の隙間)の狭小化による関節可動域制限

6、骨折が正常に癒合した後の関節硬縮や疼痛による可動域制限(14級9号止まり)

7、靭帯や半月板が損傷し、疼痛による可動域制限(14級~12級)

さて、もうお解りと思いますが、赤は関節の動きが悪くなったもの、青は関節がぐらぐらになったものです。つまり両者は同じ骨折が原因であっても障害の種類が違うのです。可動域制限は狭まった可動域から12級(ケガをした腕(膝)としない方を比べて4分の3位までしか曲がらない)、10級(半分しか曲がらない)、8級の判断(ほとんど曲がらない)とし、動揺関節は硬性補装具の使用状態から12級(たまに装着)、10級(重労働時には装着する)、8級(お風呂以外は常時装着)とします。大雑把なくくりですが、「関節可動域制限と動揺関節は並立しない!」これが基本です。また例外として茶色の神経症状の残存(痛みやしびれの継続)の余地も残します。 つまりこの基本から出発しないと後遺障害の立証が迷走します。

 例えば、骨折後、靭帯の複合損傷で動揺性が残ってしまった障害であるのに、靭帯損傷や補償具の使用頻度に触れず、関節可動域の数値が記入されている後遺障害診断書を見たことがあります。つまり青の種類の損害なのに、赤を主張している診断書です。これはズバリ的外れ。当然ながら可動域はほぼ正常なので、骨の変形や転位がなければ茶色の12級13号もしくは最悪14級9号の判断が返ってきます。

 お医者さんもその辺をよくご理解していない状態で診断書を書いてしまうことがあります。だからこそ、障害の予断が大事なのです。「このケガであればこのような障害が残りやすい」と予想し、「関節可動域制限なのか動揺性なのか」を明確に区分しておくのです。これはまさにメディカルコーディネーターの仕事です。医師の「治療」と障害の「立証」を結びつけることなのです。