今更ですが、高次脳機能障害認定の3要件は、

 1.画像所見 2.意識障害 3.診断名 です。
 
 特に画像所見はCT、MRIで描出されていることが条件です。診断名が脳挫傷、硬膜下血腫、硬膜外血腫、くも膜下血腫、脳内血腫 等、局在性の損傷であれば、受傷部がCT、MRIで明確に描出されるでしょう。

 しかし、脳障害が疑われる患者すべてにその損傷が視認できるとは限りません。例えば、びまん性軸索損傷(DAI:deffuse axonal injury)のように、脳の神経線維の断裂は損傷が微細で、MRIでも描出が難しくなることがあります。その場合、多くのDAI患者は意識障害が伴いますので、意識障害にて脳障害を推定することになります。しかし、意識障害がない、もしくは軽度の場合、やはり画像所見を追求する必要があります。

 まずは、画像所見のおさらいをします。
 
【井田医師の意見陳述】
 
 現在の画像診断の主役はCT、MRIであるが、画像診断において重要なことは、適切な時期にきちんとした検査が行われるということである。(中略)
 拡散テンソル画像は脳内の神経線維に沿った水分子の拡散の動きを見ることによって神経線維の状態を推定しようとするものであり、病変の位置が特定できている場合には脳機能と病変の関係を見ることについて有益である。ただし、形態学的に異常がない微細な脳損傷の有無を拡散テンソルだけで判断することはできない。

過去記事から ⇒ 23年3月「高次脳機能障害認定システムの充実」から井田医師の意見

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 このように、MRI、CTに写らなければお手上げです。そして写り難い、びまん性の損傷を描出するには急性期のDWIが望ましく、また、陳旧性の病変を確認するには点状出血(痕)をT2スターで明らかとする・・これが基本となります。

 したがって、スペクト、PET、テンソルは「今の」病態を確認するに留まり、それが交通事故外傷による損壊なのか、つまり、外力による器質的損傷とまでは明言できないと自賠責は考えています。CTやMRIでは確認できず、PETやテンソルで異常が確認できたとしても、それは内在的な理由、つまり、病気の可能性も否定できないのです。このように、臨床上で高次脳機能障害と診断されても、事故との因果関係から否定されたケースを何例もみてきました。
 
 明日から、拡散テンソルを始め、自賠責や労災では画像所見として確立していない検査について、最新臨床結果を踏まえて解説したいと思います。テンソル、PET、スペクト、fMRIは弁護士先生が訴訟で高次脳機能障害の有無を争う上で、注目の検査です。以前から弊事務所にも質問、問い合わせが多く、議論の的となっていました。

 尚、本シリーズはある高名な医師から示唆された論点を動機に記事にしました。
 
 つづく
 

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