おはようございます。先週はGW明けで激務の1週間でした。休暇の代償を感じた次第です。
先週よりの神経心理学検査について続けていきます。
■ 言語機能に関する検査
事故以来言葉をスムーズに発っせなくなった、極端にゆっくり話すようになった、こちらの言うことに対する理解が遅く会話が滞りがちになった…これらは一般に失語症となりますが、高次脳機能障害の場合、以下の2種が代表的です。
1、運動性失語 左前頭のブローカ領域の損傷。話し言葉の流暢性が失われます。
2、感覚性失語 左側頭に位置するウェルニッケ領域の損傷。流暢性は保つものの言い
間違いが多く、発言量の割に内容も乏しくなります。
くも膜下出血で倒れた人が左脳の出血と損傷によって、言葉に障害が残ってしまったケースと似ています。しかし高次脳機能障害は程度の軽重に差があるため、軽い失語症は事故のショックのせい?と周囲も安易にみてしまいます。もっとも右側頭葉のみにダメージを受けた患者さんは、「会話・発言・読み書き」に関して以前と変わらないことも多いようです。
失語症に絞った専門的な検査がありますので挙げます。
① 標準失語症検査 (SLTA)
失語症の有無、重症度、タイプの鑑別を行います。短文やまんがなど26項目についてそれぞれ読ませ、後に説明させます。正答から誤答まで6段階で評価します。リハビリ計画の策定の為に行われることが多く、リハビリ施設では定番の検査です。
② WAB失語症検査
言語機能の総合的な検査(8項目、全38検査)を行います。自発語、復唱、読み、書字について0~10(自発語のみ20)点の得点を計ります。失語症の分類・軽重を明らかにします。全失語(重度の失語)、ブローカ失語(運動性失語、流暢性の喪失)、ウェルニッケ失語(感覚性失語、内容の乏しい発言)、健忘性失語(言葉のど忘れがひどい)と4段階の評価をします。
言語に関する障害は「意志疎通能力」の低下として重要視されています。ただし言語聴覚士を擁する脳神経外科でもこれらの検査設備をもたないようです。この分野は失語症のリハビリ検査であると理解されているからです。
高次脳機能障害の失語症は、認知障害、記憶障害、右半身麻痺などの症状と重なって生じます。しかし失語障害の度合いが強い患者の場合で、認知障害、記憶障害などの程度が軽く、それらが検査で顕著に出ないと認定等級も低くなってしまいます。失語は意思疎通能力にとって重要なマイナス要素であると思います。このようなケースの場合、立証の補強として採用したいと考えています。