MTBIについて力説してしまいました。あと、2つのテーマを取り上げます。
 障害の把握について細かな配慮を指摘しています。
 

【小児、高齢者の留意点】

 一般に成人では、急速な急性期の症状回復が進んだあとは、目立った回復が見られなくなることが多い。したがって、受傷後1年以上を経てから症状固定の後遺障害診断書が作成されることが妥当である。 しかし、小児の場合は、暦年齢によって、受傷後1年を経過した時期でも、後遺障害等級の判定が困難なことがある。後遺障害等級が1~2級の重度障害であれば、判定は比較 的容易であるが、3級より軽度である場合、幼稚園、学校での生活への適応困難の程度を的確に判断するには、適切な時期まで経過観察が必要になる場合が多い
 小児が成長したときにどの程度の適応困難を示すかについては、脳損傷の重症度だけでなく、脳の成長と精神機能の発達とによる影響が大きい。ところが小児事例で受傷から1年以内であっても後遺障害の審査請求が提出される事案が散見される。これは事故に伴って起きたさまざまな事柄に早期の決着をつけたいと希望する親の意向も反映されることが一因と考える。障害を負った小児は、こうした判断を自力で行うことができない。したがって親の判断に基づいて障害認定が進められることになるが、障害を負った小児が正当な社会的補償を得るために、医学的に充分な考察に基づく障害固定時期の判断について、より広く理解されるべきである。すなわち、学校などにおける集団生活への適応困難の有無を知ってからであれば、成人後の自立した社会生活や就労能力をより正確に判断できる可能性がある。
 したがって、適切な経過観察期間、例えば、乳児の場合は幼稚園などで集団生活を開始する時期まで、幼児では就学期まで、後遺障害等級認定を待つ考え方も尊重されるべきである。
た、高齢者の場合は、障害認定後しばらく時間が経過してから認知能力や身体能力のさらなる低下に対して、再審査請求がなされる場合がある。このような場合、当該脳外傷以外に疾病などの原因がないか、加齢による認知障害の進行が原因でないかなどを、慎重に検討することが必要になる。

<解説>
 簡単に言いますと、「乳幼児が脳損傷を受けた場合、ある程度成長しないと障害の具合がわからない」ということです。
 今年も赤ちゃんが頭部にケガをし、障害の可能性のある案件の相談が一件ありまあした。仕事としての受任にはならなかったのですが、数年にわたる家族の観察と専門医の見守りが必要なケースです。
 まず、家族とくに母親が子の成長日記をつけて、つぶさに成長と障害の有無、程度を記録していく必要があります。その間、適時専門医による神経心理学検査を続け、知能、認知、記憶などを成長に沿って把握します。最後に就学時を迎えた後、社会性、適合性など性格に関わる観察を加えます。このように就学期までの観察・検査を総合評価しなければ、正確な障害の判断ができません。
 神経心理学検査では、一般成人と区別した知能検査があります。
 
① WPPSI(ウィプシイ)、WISC-Ⅲ(ウィスク) 

おなじみのWAIS-Ⅲ(ウェイス)の子供版です。ウェクスラー式知能検査それぞれ年齢別に数種類あります。WPPSI(幼児用 3歳10ヶ月~7歳1ヶ月 45分)、WISC(児童生徒用 5歳~16歳11ヶ月 60分)、そして成人用がWAIS(成人用 16歳~74歳 60~90分)です。知能を精密に診断し,知能構造を明らかにします。全体的知能水準に加え,言語性,動作性という個人内差で知能構造を明らかにします。WISC-Ⅲとは児童生徒用検査の第3版のことです。
 
② K-ABC
 
  Kaufman Assessment Battery for Children をK-ABCと略して呼んでいます。1983年に作成されました。日本では,1993年に標準化されK-ABC心理・教育アセスメントバッテリーとしています。特徴は,子どもの知的能力を,認知処理過程と知識・技能の習得度の両面から評価し,得意な認知処理様式を見つけ,それを子どもの指導・教育に活かすことを目的としています。適用年齢は,2歳6ヶ月から12歳11ヶ月。
 
③ 新K式発達検査
 
特徴は「姿勢・運動」「認知・適応」「言語・社会」の3分野に分け数値を出します。内容は 形ハメ(○△□・箱に積み木をはめて落とす)、積み木積み上げ、積み木模倣しての作成(車・トンネル)、 お絵かき、紙製の形合わせ、指さし(靴はどれ?)、神経衰弱のような物(隠してどこにあるか当てる)、 大~小の器を重ねる…等です。適用年齢は0カ月~14歳。

これらの知能検査は主に発達障害の検査に用いられますが、成長期の外傷性脳障害の把握に応用しています。現在、脳神経外科でも乳幼児について専門的な症例把握と検査体制を持つ病院は非常に限られています。当方でも紹介できる病院はわずか一か所です。
 
 幼児の高次脳機能障害・・・長く厳しい立証の道となりますが、回復への期待が強いが為、安易に症状固定してしまうことがないよう祈る気持ちです。今年、神戸の佐井先生が相談が受けた案件も一例として記憶しています。子供時代、数年前の事故ですが、大人になってから社会適合、遂行能力の障害に悩まされている案件です。やり直しの立証には家族もためらいがあり、結局そのままになってしまうことが多いのです。
    

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