午後は被害者面談1件、弁護士と打ち合わせ後、羽田空港へ。明日の那覇相談会に向け、夜から現地入りです。

 昨年から勉強のため全国各地の交通事故相談会に参加していますが、沖縄は初です。日本は全国共通の法律、交通事故でいえば、道路交通法、刑法、民法を根拠に解決を図ることになります。しかし世界ではこれは当たり前のことではありません。アメリカには州法があり、場合によっては連邦法より優位に作用することがあります。道路交通法や軽犯罪法などは量刑に州ごとにかなり差があります。また極端な例ではパキスタンのアフガニスタン国境、カイバル峠の一帯”トライバルエリア”です。この地域はパシュトゥーン族の自治地域としており、パキスタンの法律は適用外としているのです。

 さて、話が飛びましたが、日本でも日本の法律で単純にくくれない地域があります。それは米軍の基地内です。特に基地の多い沖縄では大問題です。基地内はあくまでアメリカとしても、基地の外ではアメリカ人の法的な立場が問題となります。交通事故で説明しますと自賠責保険加入は日本では車を運転する上で法的義務です。しかしアメリカ人に厳密に適用できるかが議論となります。これについて憲法に詳しい弁護士の先生に質問したところ、法的な根拠を追究すると、ここに行きつくそうです。

 日米地位協定 U.S. – Japan Status of Forces Agreement、略してSOFA、日本語では「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」
 この法律の第17条により、「合衆国の軍法に服するすべての者に対して(第17条1-a)、また米軍基地内において(第17条1-b反対解釈)、合衆国の法令のすべての刑事及び懲戒の裁判権を日本国において行使する権利を有する。」とされ、合衆国軍隊が第一次的裁判権を持つ。

 仮にアメリカ兵が基地の外で交通事故を起こし、加害者となった場合、日本の法律で裁けないの?まるで植民地の治外法権?のような解釈も成り立ちます。実際、沖縄では婦女暴行など犯罪をし、基地内に逃げ込むアメリカ人のニュースが頻繁に報道されます。
 肝心の損害賠償についてですが、この条文上、民事の規定はなされていないようです。実情、民事賠償はアメリカが国家として担ってくれるようです。しかし刑法では一次的な裁判権をアメリカが持つ以上、日本の警察、検察による証拠調べ、保全ができず、具体的に言えば交通事故の現場検証や加害者の調書がとれません。不公平な判断を引き起こしかねない懸念が付きまといます。また民事賠償もアメリカの損害賠償の基準を持ち出されては公平な交渉となるのか心配です。
 本土ではアメリカ人が基地外を自動車で走る場合、自賠責保険+任意保険の加入が一般的だそうです。しかし沖縄は本土とは様相が違います。実態がつかめませんが無保険車(無自賠責保険)が圧倒的に多いそうです。 

 アメリカ相手に損害賠償?無保険車で人身傷害を先行した場合の求償は?過失割合の判例もアメリカを使う?慰謝料の基準は日米どっちの基準?・・・一人脳内バーチャル相談会となっています。

 明日、沖縄の弁護士先生に質問攻めとなるかもしれません。東京に帰ったらまた報告したいと思います。