障害部位が多い!!・・治療も大変ですが障害の立証・申請作業も膨大です。余すところなく丁寧に検査を進め、完璧な後遺障害診断書を作成し、漏れなく申請書類を揃える必要があります。一方、治療の現場では手術やリハビリの優先順位があり、それを把握した上て立証計画を立てなければなりません。

 本件は四肢中、両上肢・片下肢の重傷ですので気の抜けない作業となりました。幸い受傷初期からの受任でしたから、的確に病院同行・医師面談を重ね、検査を追加し、当初の予想を超える障害数の認定に導くことができました。私も大変でしたが、審査側の皆様も通常の3倍の作業量だったと思います。ご苦労さまでした。

下肢の認定はまた後日に
  

9級相当:左橈尺骨遠位端骨折(40代男性・埼玉県)

【事案】

通勤でバイク運転中、交差点で左方からの一時停止無視の自動車と衝突したもの。両手首は粉砕骨折し、左股関節の後方脱臼を伴う骨折、さらに左高原骨折・内側側副靱帯損傷も重なり、まともな四肢は右脚のみとなった。長期のリハビリを余儀なくされた。

【問題点】

当初から相手保険会社との関係が悪化、その後、弁護士対応とされる。早期から私達と連携弁護士が介入、症状固定まで密着して進めることになる。治療面では、4肢中3つの部位に手術が及び、治療・リハビリの長期化が懸念された。

【立証ポイント】

まず、労災の申請を急ぎ、相手保険会社と相手弁護士に対して治療費面での安心を促す。続いて、リハビリを進めつつ可動域の計測に余念なく注意を払い、1年9ヶ月目で症状固定に誘導した。

手関節は左右共に受傷のため、日本整形外科学会の標準値との比較になる。主治医と面談を重ね、症状固定時の計測に立会った。左手関節は屈曲・伸展位で10級の基準である1/2にやや及ばずも、橈屈・尺屈の参考数値で10級10号に繰り上げを確認した。ギリギリの数値の場合、計測に立ち会うことが絶対に必要である。

非常に盛りだくさんの障害が認定されたが、手関節の高等級認定の決め手は両親指のIP関節の用廃「10級7号」が部分併合された(結果、左手は9級相当)ことがあげられる。
 

9級相当:右橈骨遠位端骨折 12級8号:右尺骨茎状突起骨折(40代男性・埼玉県)

【立証ポイント】

手関節は左右共に受傷のため、日本整形外科学会の標準値との比較になる。主治医と面談を重ね、症状固定時の計測に立会った。右手関節は屈曲・伸展位で標準値の3/4以下を示し、問題なく12級7号となった。ちなみに回内・回外は1/2に至らず、認定はなかった。計測に際して、事前に被害者側で数値を計測し、何級となるかを整理しておくことが、誤計測を防ぐことになる。
  
非常に盛りだくさんの障害が認定されたが、手関節の高等級認定の決め手は両親指のIP関節の用廃「10級7号」が部分併合された(結果、右手も9級相当)ことがあげられる。

また、数年前の実績・経験から、尺骨茎状突起骨折が偽関節、つまり癒合していないこと(12級8号)も認定に加えた。もっとも、これ以上障害認定が増えても、最終的な等級は変わらず併合8級に留まる。