下肢切断の後遺障害・・見た通りの障害ですので、私達の立証作業は無いと言えます。「1下肢を足関節以上で失ったもの」で5級決定です。

 本件は”残ったもう一方の脚の障害”を立証すべく奔走した例です。下肢に限らず、医師は重篤な受傷部位の治療・処置に終始します。骨折箇所が多いと、ひびが入っただけの骨折、処置の必要の無い骨折、保存療法とする骨折・・これらは診断名すら残らないこともあります。

 しかし、障害を余す所なくアピールしなければ、等級を取りこぼします。そのような意味で、本件は切断肢の5級を3級に引き上げた好取組です。私達は後遺障害を常に複眼的な視点で追いかけています。
図1切断肢は近年、医療の進歩で減ったと言えますが・・

併合3級:下肢切断・足関節機能障害+足趾用廃(90代女性・千葉県)

【事案】

青信号の横断歩道を歩行中、相手自動車が右折進入し、両足をひかれた。片足は大きく損傷、そのダメージから整復不能で切断となった。もう一方の足甲も中足骨多発骨折、膝下からデグロービング損傷と重篤。

※ デグロービング損傷とは”広範囲皮膚剥脱”創のことで、皮膚が組織ごとはがれてしまった状態です。ひどいと傷口が壊死し、植皮等が必要となります。

【問題点】

事故から1年以上経過後、症状固定し、後遺障害診断書が出来てから相談に来られた。

下肢の切断については、特に立証作業はない。診断書を確認したところ、切断肢以外の傷病名として、中足骨骨折、肘骨頭骨折、デビロービング損傷、が記載されていた。

一方、切断しなかった片足の足関節の可動域は、他動値で背屈が0度、底屈が35度であったが、足関節に器質的な損傷がみられない。しかし、本件ではひどいデグロービング損傷がある。これにより皮膚が固まり、足関節の可動域制限が生じていると推測した。

また、診断書に足指5本とも用廃レベルの可動域制限があった。

このように、もう一方の脚について、精密に等級を定めなければならない。残った脚の立証作業を開始した。

【立証ポイント】

調査事務所は足関節の機能障害について、片方の足が無いゆえ、参考数値と比較の結果12級7号を認定した。理由は明記されていなかったが、こちらの推測通り、デグロービング損傷の影響から足関節の可動域制がある事を認めたのだろう。

足趾の可動域が診断書上、用廃レベルであったが、足指の骨折について、中足骨骨折以外の記載はなかった。そこで事故当初の画像を精査したところ、CT上で中足骨の骨折だけではなく、第3~5末節骨が砕けて脱臼骨折していることが確認できた。相談時にはすでに症状固定していたことから、ここで細々と診断名を加えることは躊躇われたので、改めて3DCTを医師に依頼することにした。
最新の画像からも、足指全体の不正癒合、変形、転位は明らかだった。この画像CD及び画像打出しを申請時に提出して、調査事務所に足指の用廃をアピールした。

2016073010060000片方との比較ができないので模型と比較

結果、右足趾すべての用廃で9級15号が認定された。調査事務所は診断書上に傷病名がなくても、画像から足趾の機能障害を判断した。

残った脚は前述した足関節の機能障害で12級7号、足趾の機能障害で9級15号が認定され、本来異なる系列の障害であるが、同一の系列として取り扱われて8級相当に収めることに成功した。

最終的に切断肢5級と併わせ、併合3級となった。なお、本件ではデビロービング損傷による醜状痕で12級相当が認定されており、これは併合ルールにより等級そのものは上がらないが、上記したように足関節の機能障害の立証で重要な役割を果たしたと言える。