ある日、交通事故の被害に遭い、日常生活は一変、以後、大変な苦難の日々が続きます。特に頚椎捻挫、腰椎捻挫の被害者さんは「たかが、むち打ちで?」と、その長期にわたる通院に対し、冷めた目で見られがちです。また、相手の保険会社の執拗な治療費打ち切り攻勢に、精神的にも参ってしまいます。事故受傷と関係性の薄い持病が再発し、鬱にもなってきます。とにかく、あらゆる不調が発生してしまうのです。

 しかし、それらを”すべて事故のせい”として治療を進めると、後遺障害認定から離れていきます。方々の治療科を受診して、どんどん診断名が増える、ころころ診断名が変わる、結果として一貫性が疑われるのです。

 だからと言って、諸々必要な治療を諦めることではありません。事故受傷と直接する症状と間接的な症状を切り分け、直接的な傷病だけは、初診時から一貫して治療を続け、後遺症の審査に備えればよいのです。

 「治療」は被害者の努めです。しかし、長期になるであろう治療費の確保の為にも、後遺障害認定を視野にすえて治療を進める必要があります。間違った方向へ進まないためにも、受傷時の直接的なケガとその治療だけは堅持して下さい。

 

併合14級:頚椎・腰椎捻挫(40代男性・東京都)

【事案】

自動車搭乗中、信号待ちの為一時停車中、自動車が追突し、衝突した。直後から頚部痛・手の痺れ、腰痛、足の痺れの神経症状に悩まされる。

【問題点】

頚椎、腰椎捻挫の診断を受けていたが、メインの整形外科だけではなく、他の整形外科で頸髄浮腫?の診断を受けており、また心療内科や接骨院にも通っていた。

【立証ポイント】

相談された日ではすでに事故から1年7カ月目であったことから、症状固定を急いだ。病院、診療科を複数通っており、一部の病院では頸髄浮腫?、うつ病の診断を受けていた。うつ病は事故受傷と直接つながり辛く、また、頸髄浮腫は内在的(病的)な所見であり、自賠責上の後遺障害としての立証は困難である。仮に症状のみ認められたとしても、それぞれ14級9号が関の山。

そこで、事故当初から一貫している頚椎・腰椎捻挫に絞り、主治医にも頚部痛・手の痺れ、腰痛、足の痺れの各症状及び神経学的所見をまとめて頂いた。

被害者請求後も調査事務所から心因性を疑われ、医療照会をかけられたが、症状の一貫性が評価されて、併合14級が認められた