つまり、「自身が何等級であるか」を分析する知識と、対策を講じる冷静さがないとダメなのです。まず、1.認定理由を理解し、2.不足した検査を補充し、3.新しい診断書や意見書を記載頂き、4.審査員が再調査をするに納得できる文章を書くことが必要です。この4段階をクリアする必要があります。実践的な話に移ります。
<異議申立の進め方>
① 認定理由をよく読む
残存する症状について、なぜ認められないのか、症状別に細かく書いてあるはずです。そこをしっかり読み取って下さい。
例えば、「頚部が痛い、重い」、「上肢がしびれる」、「関節が曲がらない」、「めまい、吐き気がする」・・・これらは自覚症状です。世の中の人間がすべて天使のように清純であればいいのですが、残念ながら嘘の症状、大げさな症状を訴える被害者も少なくありません。審査する側は、まず「疑ってかかっている」ことを肝に銘じて下さい。「なぜ、症状が信じてもらえなかったのか?」、足りなかった書類や検査を検討します。
② 自覚症状と他覚症状を結び付ける
調査事務所 お決まりの非該当、決め言葉 1
「同部に骨折、脱臼等の損傷が認められず ~ 自覚症状を裏付ける客観的な医学的所見に乏しいことから、自賠責保険が認める後遺障害には該当しないと判断します」
否定の理由ですが、つまり、他覚的所見が乏しいのです。これは、医師の診断、検査・画像所見の不足を指します。
・ 不足している検査はないか?
神経麻痺なら筋電図や神経伝達速度検査が必須となります。これら検査をしていなければ、等級を付けようがありません。
・ 症状を裏付ける画像は?
骨折の場合レントゲンやCTでOKですが、靭帯損傷などはMRIでないと写りません。
・ 可動域制限・・関節の角度は正しい計測か?
間違った計測の場合は測り直す必要がありまが、そもそも、骨折や靭帯損傷など、器質的損傷が伴わないのに「曲がりません」と言っても信じてもらえません。神経麻痺で曲がらない場合は、筋電図や神経伝導速度検査など、検査での異常数値が無ければ信用されません。
◆ 上記の検査結果が伴わない症状もあります。その代表がむち打ち、打撲捻挫の類です。骨折のように器質的損傷が画像に写らないものは、他覚的所見がそもそも無いに等しいのです。この場合、自賠責・調査事務所は全件を非該当とはせず、症状の一貫性や受傷機転、全体的な信憑性から14級9号認定の余地を残しています。それらを示す申請書類を揃える必要があります。
③ その症状はいつから?
調査事務所 お決まりの非該当、決め言葉 2
「これらの症状の出現時期は少なくとも受傷から約○日経過した平成○年○月○日以降と捉えます ~ したがって、本件事故との相当因果関係を有する障害と捉えることは困難なことから、自賠責保険が認める後遺障害には該当しないと判断します」
これが一番やっかいです。受傷当時に医師が見逃した為に、診断名の記載が遅れたケースです。症状の出現時期までの経過日数が長ければ長いほど、絶望度は高まります。この場合、受傷当時からのカルテを回収し、せめて自身が痛みや症状を訴えていた時期を特定し、確定診断が遅れた状況・理由を切々と説明していくしかありません。「元からある疾患や無関係の症状を事故に混ぜているのでは?」と疑われているのです。この項目がもっとも調査事務所からの信用度合が試されると思います。
④ 漏れている症状はないか?
複数のケガの場合、大きなケガの認定にスポットがあたり、見逃されている症状があります。
・ 下肢の神経麻痺の場合
足首の可動域制限だけですか? 足指の可動制限が見逃されているケースがあります。指の計測は面倒です。病院でもよくスルーされています。
・ 骨折の癒合は良好、障害はない?
関節に影響のある骨折なら、可動域制限がないか? 骨折後の変形(形が変わった)や転位(ずれてくっついた)はないか? それらがなく癒合が良好であっても、痛みや痺れ、不具合から、神経症状の14級9号認定を検討すべきです。
・ 高次脳機能障害が認定されたが、他の症状は?
体の麻痺等の症状については、脳の障害と神経系統の障害に一まとめにして等級を検討します。一方、嗅覚脱出やめまいなどを別系統の障害として認定、併合で等級が一つ繰り上がる余地があります。たまに認定を漏らしているケースを目にします。
自信がなければ専門家に依頼するのも良いと思います。明らかに困難な件は、早々に諦めて、次善策を取るべきと思います。その判断は簡単ではないので、ご相談を頂ければと思います。