今更、改定前の約款を読解しても意味はありません。昨日の記事は、専門家としての筋を通すために書きました。では、今年から改正、名称を変更し、補償を3区分した三井住友さんの弁護士費用特約を解説します。   (旧)弁護士費用特約 ⇒

 ① 弁護士費用(自動車・日常生活事故型)特約   (旧)自動車事故弁護士費用特約 ⇒

 ② 弁護士費用(自動車事故型)特約   (新設) ③ 弁護士費用(自動車・自転車事故型)特約

 新約款を読みこんだ結果、ポイントは以下の通りです。

1、改定前の(旧)弁護士費用特約(=「日常型」)でしか補償範囲とならなかった”加害者が自転車の場合の被害事故”を、(旧)自動車事故弁護士費用特約に含めた中間型=③を新設した。

 自転車による加害事故が加わることで選択の幅が広がり、より実用的な特約になったと思います。自転車型の弁特は、他社ではあいおいニッセイ同和さんが採用しています。また、AU損保さんは自転車専用商品に付帯しています。   2、(旧)自動車事故弁護士費用特約で、不合理と断じた補償範囲の制限が撤廃され、従来から馴染みの補償範囲である「家族の自動車1台に特約がついていれば、家族内所有すべての自動車・バイクに弁特が適用」できるようになった。

 補償範囲が今まで馴染んだ自動車保険のルールに戻ったので、契約者の理解は容易ですし、代理店さんの設計ミスも防げると思います。    3、掛金が若干上がった? 三井住友さんに限らず、ここ数年各社、値上げ傾向です。     ★ これで、三井住友さんの弁特は無敵となったでしょうか。惜しむらくは損保ジャパン日本興亜が唯一採用している「刑事弁護士費用」を加えれば最強かと思います。

 損保ジャパン日本興亜の新型・弁護士費用特約   ★ ...

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 8年前から三井住友さんの弁護士費用特約(以後、略して弁特)について、ウォッチしてきました。このシリーズ、”弁護士費用特約にまつわるエトセトラ”は、以下に説明する三井住友さんの約款の不合理を指摘することからスタートしたと言えます。まったく重箱の隅をつつく様な細かい話ではあります。しかし、決して安くない掛金を負担している契約者さんにとって、交通事故で助けてほしい時に当然でると思っていた保険が、「約款上、免責です」とは・・・がっかりを通り越して、保険会社への不信感を一気に高めることになります。次の更新では「通販型もいいわね」となるのは必定です。  三井住友さんは、10年も前、業界に先がけて交通事故に限らない「日常型」の弁特を発売しました。交通事故に限らず、日常の被害事故を補償範囲に含むグレードアップした「弁護士費用特約」に改造したのはよいとして、従来の交通事故に限定した弁特を「自動車事故弁護士費用特約」として新設しました。名前の通り補償は交通事故に限定するものですが、保険の対象となる自動車の範囲に差をつけるためか、対象は契約車両のみで、家族所有の車両を適用外=免責にしました。以後、代理店でさえ、事故が起きてからではないと免責と気付かない問題が頻発したと想像します。

 前編では、当時の自動車事故弁護士費用特約で、どのようなケースが免責となったのかを説明します。まず前提として、従来の自動車保険の被保険者の範囲は、契約者(お父さんとして)と配偶者、同居の親族、別居の未婚の子と、生計を同じくする家族全員が対象となるものが多く、当然、弁護士費用特約もお父さんの一台につけていれば、家族全員対象となるものです。これはどこの保険会社でも共通のルールで、三井住友さんの日常事故を加えた「弁護士費用特約」でも、そのルールは変わりません。

 しかし、補償を限定した「自動車事故弁護費用特約」は、契約車両の絡む事故だけにしか補償が及びません。家族が所有している自動車・バイクは免責となりますから、それぞれの車両に特約を付保しなければならないのです。(例外的に契約者あるいは記銘被保険者であるお父さんだけは、家族所有以外の他の自動車搭乗中の被害事故であれば弁特の対象となります)。最悪のケースは以下の過去記事をご覧下さい。   最悪例 ⇒ 弁護士費用特約にまつわるエトセトラ ①    これは、息子さんが原付バイクを買い足したので、お父さんの自動車保険にファミリーバイク特約を追加したのはいいが、弁特の補償が及ばないことに事故が起きてから気付いたケースです。この場合、既に付保していた自動車事故弁護士費用特約を、普通の(一般型である)弁護士費用特約に、同時に変更すべきだったのです。代理店さんの手続きミスに恨みが残ります。今年からの約款改定は、この指摘が三井住友さんの耳に届いた影響とは思いませんが、やはり、数年に渡り各地でトラブルが起きたと思います。

 では、補償が制限された当時の「自動車事故・弁護士費用特約」、核心となる約款の第4条(保険金を支払わない場合)の⑥を抜粋します。この一節が今年の改正・改名された「弁護士費用特約(自動車型)」から抹消されました。そもそも被保険者の範囲を生計を同じくする家族としながら、この条文で被保険車両を限定しているものですから非常に難解です。解釈の問題すら生じさせる約款と言えます。

 今更、改定前の約款を検証してもせん無き事ですが、これも一度、悪約款と非難した者の務め、該当条項の前段・後段をそれぞれ赤字で翻訳・解説しましょう。   第4条(保険金を払わない場合)

⑥ 被保険者が親族等所有自動車に搭乗している場合に生じた自動車被害事故による損害。  続きを読む »

前回 ⇒ 診断書さえ書いてもらえば治療費がでる?~被害者に対する無責任なアドバイスについて ③     被害者さんは、交通事故による不法行為の損害を回復するために、(完全に支払ってくれるかどうかわからない)加害者に請求しなければならない、大変に不利な立場です。加害者や相手保険担当者を怒鳴りつけても、相手が容易にお財布を開いてくれるものではありません。むしろ、意地悪されるかもしれません。不正な書類ではない公正な証拠書類を揃え、クールに交渉、実利ある解決を目指すべきです。このシリーズは被害者さん達への警鐘です。耳の痛い話であってもお付き合い下さい。    さて、保険会社を怒らせる請求の中で、最も悪意が込められているもの一つとして休業損害を挙げます。サラリーマンで源泉徴収票がでる方の不正はほとんどありません。大手の会社の書く休業損害証明も信用されます。およそ、高収入の会社員がむち打ち程度の軽傷で、高収入を捨ててまで、むしろキャリアを損ねてまで長期間休むことはないと推論されるからです。つまり、会社規模や収入の多寡で信用度が変わると言えます。

 やはり、自営業者さんの提出する収入証明書類は常に問題となります。基本、税務署への申告書の提出が公的な証明になります。しかしながら、多くの自営業者さんは経費を大きく積み上げますから、実態収入はもっとあるだろうに申告書の利益(年収)はかなり少ない。休業損害の請求に際して「実際はもっと多い、実はこれだけある」と主張しても、保険会社側が飲むはずがありません。そこは支払う側として、杓子定規に書類通り計算するしかありません。

 あまりにも少ない利益=収入額をここで正確に計算し直します。テナントの家賃や水道光熱費、自動車・火災保険などの損害保険料、これら交通事故での休業が無くても待ったなしにかかる経費は利益に戻し入れます。このように一部経費の合算で正確な年収を割り出すことが基本です。

 さらに余すところなく正確な年収を提示する場合は、通帳や領収書他収支の書類を全て揃え、総勘定元帳を作成します。実際は、どんぶり勘定の自営業者がこれらを作成・集積することはハードルが高いものです。そもそも収入を過少申告している場合(つまり脱税という犯罪)は書類を偽造するしかなく、そこまでやると保険金詐欺と言う犯罪になります。

 中小企業、家族経営の会社はお手盛りの収入証明書類を常に警戒されます。「なんでこんなに高収入で申告していない?」例を何度も目にしました。恐らく社長とグルで、賃金台帳を改ざん、大盛り収入にしたのでしょう。「こんなの提出しちゃだめ!」と、かつて被害者を叱ったことがあります。

 また、申告すらしていない一人親方、自由業の方も往々にして難儀します。申告書がなければ納税証明書になりますが、そもそも納税もしていないのでは話になりません。よくあるケースですが、自由業の人がノートに自分で書き上げた収入表を提出してきます。第3者の証明のない「The お手盛り」など信用されるわけがありません。保険会社は証明なく払える自賠責の限度額である5700円しか認めないでしょう。

 これらのやり取りを通して、被害者さんの信用は致命傷となります。証明書の無い被害者さんの提示する収入額は大抵、盛り盛りです。保険担当者も正直な申告額など、見たことがないのではないかと思います。「俺は被害者(様)だぞ」という歪んだ権利意識がそうさせるのでしょうか。しかし、この盛った提示額によって、保険会社からの信用は0になります。今後、治療費含め何を請求しても疑いの目で見られます。最終的にも厳しい賠償金提示が予想されます。それで文句を言えば、保険会社はためらい無く弁護士対応としてくるはずです。

 いくらかわいそうな被害者であっても不正請求は許されません。休業損害の請求では、会社や自営業者などのちょい悪気分のほう助(不正・犯罪を助ける)によって、無責任なアドバイスを超えた十字架を被害者に背負わすことになります。公正に戦わなければ、ゴルゴダを丘を登らされるような保険会社の厳しい対応が続きます。  

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 学生時代、警備会社でバイトしていました

職業別の賠償保険を調べてみました。警備業社賠責は、施設賠償責任保険がベースとなっているようです。   警備業者賠償責任保険とは、警備業務の遂行により、(1)事故で他人の身体に障害を加えてしまった場合、(2)事故で財物を損壊・紛失したり、窃取・詐取されたりした場合、それぞれで発生した損害を担保する保険です。

この保険は、警備業者(会社)が入る保険です。基本的な仕組みとしては、まず、賠償責任保険条項に施設賠償責任保険の特約を付して、そこからさらに、警備業者補償用の特約を組み込むことになります。

通常の支払い対象の例として、以下のものがあげられます。

(1)事故で他人の身体に障害を加えてしまった場合の例

・花火等のイベント開催中、警備員の誘導ミスによって通行人が将棋倒しとなり、けが人が出てしまった場合。

・要人の身辺警備(ボディーガード)を行っていた警備員の誤認で、無関係の人を取り押さえてしまい、ケガを負わせてしまった場合。

(2)事故で財物を損壊・紛失したり、窃取・詐取されたりした場合の例

・警備員の不注意で、火災の発生に気づかず、建物が全焼してしまった場合。

・警備会社が設置した火災警報器が、正常に作動しなかったため、火災発生を感知できず建物が全焼してしまった場合。

これらの損害は、警備員・警備会社の過失によるものである場合に保険金が支払われますが、故意・重過失(わずかな注意でもしていれば損害等の結果が発生してしまうことがわかっていたのに見過ごすこと)の場合には支払われません。

また、火薬や医療用の器具(放射性物質を含む)等の危険物の警備についての事故や、現金や美術品を移送中に、紛失したり、落として壊してしまった場合の事故等は、基本的に支払い対象外です。

保険会社によっては補償対象にできる特約を別に付けることも可能なので、警備会社は業務拡大を目指す場合、保険内容を十分に確認してから業務を請け負う必要があります。

※ 最近の花火大会の中止が相次いでいるようですが、主な原因の一つとして、警備の必要性が高くなっていること、警備員の人件費が高額になってしまうこと、があるようです。警備員の数が少ないと、イベント開催中の警備という激務中、常に気を張って注意し続けるというのは大変酷だと思います。

多くの損害が補償されている保険、特約に入り、少しでも業務中のリスクを軽減できればよいのですが、他方で警備会社の保険料の負担も大きくなりそうです。保険販売を専門としている信頼できる代理店さんによく相談して、業務範囲内で必要な保険と必要な特約をよく吟味する必要があります。  

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 人身傷害保険や無保険者傷害特約の請求では、非常に難しい約款解釈の問題があります。興味のある方は昨日の記事のリンク先を熟読して下さい。    昨日の内容を簡単に解説します。

 相手が無保険かつ回収も絶望的な件では、通常、自身加入の人身傷害保険の請求で諦めることになります。人身傷害を支払った保険会社は、一応、加害者に求償(払った保険金を加害者に請求)しますが、自賠責保険分程度が関の山、なかなか回収は難しいようです。

 すると、回収の難しい相手に対して、弁護士報酬を払ってまで訴えるものでしょうか。人身傷害に請求すれば、裁判基準ほどの額ではないにしろ、人身傷害基準での保険金支払いで直ちに解決となります。ところが、この理屈を捻じ曲げるのが「弁護士費用特約」(以後、略して弁特)なのです。なにせ、只で弁護士を雇えます。しかし、ここで弁護士の道徳心と能力によって、被害者さんの運命は激変することになります。

 昨日の宮佐古弁護士は、「依頼者の利益=人身傷害保険への回収など知らん」と、”加害者に対する損害賠償”までの仕事で終わらせました。確かに違法ではありませんし、契約上もそうなっているはずです。しかし、これでは弁護士だけが利益を確保(しかも、おいしい事件)できますが、多村さんはおろか吉本海上保険も損するだけです。宮佐古弁護士は「加害者Iさんに賠償金を払わせる目的の依頼(訴訟)ですし、加害者が判決額を払えないのは結果論ですから・・」と言い訳するかもしれません。もちろん本心とは思えません。回収困難な相手に無駄に訴訟?弁特があったからでしょ?・・被害者救済などどこ吹く風です。

 これも新たな弁護士費用特約の悪用例に加えたいと思います。

 それでは、本件事故の解決はどうすべきだったのでしょうか。手前味噌になりますが、私どもの連携弁護士であれば、人身傷害保険への請求まで責任を持って交渉します。なぜなら、人身傷害保険の約款に精通していますから、本件の結果(結局、人身傷害基準での回収)は最初から読めています。本件のポイントは相手への訴訟ではなく、人身傷害保険への請求がクライマックスなのです。被害者の利益を考え、以下の選択肢から慎重に進めます。   A:スピード解決・消極案

最初から裁判などせす、人身傷害保険の請求で終わらす。 保険会社によって約款に違いがありますが、上限規定を設けている会社の場合、相手無保険かつ0:100の事故で総損害額を積算すれば、裁判基準での回収は困難です。その金額の多寡から、約款の上限規定に屈して我慢することも一つの案です。少なくとも無駄な時間と保険会社の無駄な弁特支出は避けられます。   B:裁判基準の回収にチャレンジ

① 宮佐古弁護士に同じく、回収は困難であろうと相手を訴えて判決額を確定させ、その額を人身傷害社(人身傷害保険、無保険車傷害保険)に請求します。これを私達は宮尾メソッドと呼んでいます。

② 恐らく、人身傷害社は約款の上限規定から、「弊社が支払えるのは人身傷害基準の満額までです」と回答がくる。

③ 対して、「約款では裁判での判決額を総損害額と認めつつ、上限規定で否定するとは、2重併記でおかしい!」と反論。「保険金請求訴訟するぞ!」との勢いで人身傷害社の妥協を引き出す。    今年、類似ケース(相手無保険、死亡事案)にて、この方法で人身傷害保険(無保険車傷害特約)から、裁判・判決額のほぼ満額の回収に成功しています。弁護士がリアルに人身傷害保険へ判決額の回収を迫れば、人身傷害社は最初「約款の規定ですから」と回答するも、折れてくることもあるのです。この約款問題を裁判で公に争いたくない保険会社の立場が浮き彫りとなります。

 平成24年2月最高裁の「裁判基準差額説」の判決以来、各社、人身傷害の約款にかなり神経質になっていると思います。万が一、この保険金請求訴訟で負ければ、裁判基準差額説判決の悪夢が蘇ります。全社、再び約款改定をしなければならなくなるのです。リスクある裁判を避けたい保険会社は、約款を曲げて支払う英断をします。つまり「約款は絶対ではない」のです。B案は人身傷害の約款の性質を熟知している弁護士だけがなせる技です。 続きを読む »

 弁特エトセトラはかなり長い期間シリーズにしています。

 前回の巻 ⇒ 弁護士費用特約にまつわるエトセトラ ⑮ 労災免責について、研修会に追補します。    さて、今回取り上げるテーマは、民事の紛争で付き物である回収の問題です。民事事件のなかでも、不法行為に対する賠償金請求を行うケースで常に問題になるのが、「相手から実際に賠償金を取れるのか?」です。賠償金請求に応じない加害者に対し、弁護士に報酬を払って依頼したとして、仮に裁判に勝っても「相手が払わない」、あるいは「相手にお金がない」、「相手に強制執行(財産の差押え)をかけようにも対象となる財産もない」、ついに「相手が行方をくらました」・・・つまり、交渉がまとまろうが、裁判に勝とうが、賠償金が回収できるとは限らない現実があります。私達は加害者について、”お金を持っていない奴が最強”と思っています。

 無い袖は、

 したがって、相談を受けた弁護士は「争えば勝てますが、回収できないかもしれない」と、受任に慎重になるのが普通です。弁護士に道徳心あれば、依頼者の無駄な報酬支出を考え、回収困難な事件は引き受けないものです。しかし、ここでも弁護士費用特約を応用した儲けを画策する弁護士がおりました。実例から説明します。   1、多村さん(仮名)はバイク走行中、外国人(自称空手家Iさん)が運転する無保険車の衝突被害に遭って受傷、腕を骨折して12級6号の後遺障害となった。   2、相手から何ら補償得られず、自身加入の吉本海上保険㈱の人身傷害保険で治療費等を確保した。   続きを読む »

 過去記事:たくさん通えば慰謝料が増える?~被害者に対する無責任なアドバイスについて ②、その第三弾を書きます。

 前回は、「3ヶ月以内の通院なら、慰謝料は毎日通院しても2日に1回以上増えない。」ことを解説しました。今回は掲題について検証します。  交通事故被害にあってケガをした場合、入院や通院の費用を加害者に請求することになります。支払いは多くの場合、加害者加入の保険会社になりますが、その費用が妥当か否か、つまり、過大請求ではないかを当然に検証します。その検証すべき根拠は第一に診断書になります。細かい費用項目は診療報酬明細書を確認します。これらの診断内容から支払いに移りますが、素直に支払われないことが往々にあります。

 医師は患者の状態を診察して診断書を記載します。それは、交通事故の届出の為に警察へ、あるいは休業届けの為に職場へ、そして治療費請求の為に相手保険会社へ提出します。医師はあくまで患者の状態から判断・記載しますが、さらに踏み込んだ「事故との因果関係を証明して下さい」とのリクエストには常に慎重です。例えば、むち打ちで首を痛めたことは記載しますが、事故の衝撃など計りようもなく、原因には深く言及せず、その時の患者の訴えや症状から診断します。

 対して、保険会社は事故の衝撃によってある程度、症状を推測します。自動車の追突事故では、コツンとぶつけられた程度、修理費が10~20万、保険会社の査定で「小破」と判断されるもの、これらの衝撃から軽傷が限度、長期の通院になるような重傷とは思いません。回りくどい言い方が続きますが、要するに、「その程度の事故・衝撃でそんなに症状が重いのか?」と疑りの目を持つのです。もちろん、”事故で少し痛めて心配だから数日通った”程度では疑りません。数ヶ月も通院が続くような場合や、むち打ち程度で即入院する被害者さんに対して、です。

 軽度の衝突で病院通い? 治療費を支払う側は「大げさな!」と思うのはごく自然なことです。そのような場合、被害者さん達は医師の書いた診断書を盾に、治療費・その他費用の支払いを要求することになります。確かに診断書は専門家の証明書ですから、第1級の証拠に違いありません。それでも保険会社を甘くみないことです。保険会社は医師の書いた診断書など無視して、支払を拒絶することがあります。そして、争いが激化すれば、保険会社は弁護士を立ててきます(一応、加害者が雇った体で)。その弁護士は文章で、「これからは私どもが窓口です」、次いで、「これ以上、治療費が欲しくば、法廷で待とう(債務不存在確認訴訟)」と。

 その攻勢に、診断書一枚で対抗できるでしょうか? 追加的に、主治医に「100%事故のせいで、働けなくなったと証明して下さい!」とお願いしても無駄でしょう。そのような証明など医学上限界があり、何より、裁判沙汰・紛争となった場合、巻き込まれたくない医師は逃げの一手です。それでも法廷で戦った場合、追突事故で自動車の修理費が10万円ちょっと・・その程度の衝撃で、入院した、何ヶ月も通院した、半年も仕事を休んだと訴えても、裁判官は”診断書”だけで、被害者の訴えを認めるでしょうか。やはり、常識的に考えて「大げさ」と判断し、保険会社の反論を支持して被害者の負けとするはずです。医学的・科学的に症状をいくら立証しようと、常識が勝つ場面です。

 どこまで行っても、資本主義では”払う側”が強いのです。ごく稀に、軽度の衝撃で重い症状となってしまった被害者さんは、(大げさと判断されるであろう)常識を越える立証が課されれます。それは、絶望的とは言わないまでも、大変な苦労を覚悟しなければなりません。時には、ある程度の治療費・慰謝料で手を打つべきかもしれません。そのような判断の為にも、早期に弁護士など専門家に相談すべきです。巷の無責任なアドバイスに乗って、非常識な請求をすべきではありません。「この請求は非常識か否か」、この判断を間違えると、保険会社との大戦争が待っています。    

弁護士による交通事故慰謝料の増額は、後遺障害の等級で決まります

 

【実績】後遺障害 初回認定率84% 【実績】異議申立の認定率55%(全国平均5%)

 

後遺障害を立証する方法を下記ページで一度お読みください →交通事故被害者の皆さまへ

 

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 自転車による加害事故は交通事故が全般的に低下傾向の中、微増との統計があります。他県ではすでに義務化が増えており、以下、産経新聞さま記事より引用。最後の関連記事も併せてお読み下さい。

多発する自転車事故 東京都が保険加入義務化へ

   東京都内で発生する自転車事故が近年、増加傾向にある中、都は自転車を利用する都民に損害賠償保険の加入を義務付ける方針だ。9月の都議会定例会に「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」の改正案を提出する。可決成立すれば、施行は来春になる見通し。自転車事故をめぐっては近年、大きな被害や多額の損害賠償が生じることもあり、都の担当者は「保険加入率アップを期待したい」と話す。

 自転車損害賠償保険などについては、現在は加入が「努力義務」とされているが、都の平成30年度の調査によると、加入率は53・5%。

 他自治体では義務化により、加入率が7割に上昇した事例があり、都の専門家会議も7月9日、「自転車は車両だという意識が高まり、安全利用の推進につながる」などとして、加入義務化の必要性を指摘する報告書を作成していた。

 条例改正案では、自転車の利用者に損賠保険(個人賠償責任保険を指す)の加入を義務化。ただ、義務違反に対する罰則などは盛り込まれていない。

 このほか、企業は通勤時に自転車を利用する従業員に対して、自転車販売店は顧客に対して、それぞれ保険加入の有無を確認する努力義務があるとされている。改正案は既に公表されており、8月2日まで一般から意見を公募をしている。

 警視庁などの調査によると、都内の自転車関連事故は30年で1万1771件。前年の1万949件より822件増、一昨年の1万417件より1354件増と多発傾向にある。交通事故全体に占める自転車関連事故(30年)の割合も36・1%を占め、全国平均の19・9%の約2倍に上る。

 自転車事故をめぐっては、神戸地裁で25年7月、歩行者の60代女性を自転車ではねて、重篤な状態にさせた当時小学5年の男子児童の母親に対し、約9500万円の支払いを命じる判決が出るなど、多額の賠償金を求める事例が続出している。   関連記事 ⇒ ...

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 過去記事:被害者の矜持について、反響がありましたので、その第二弾を書きます。

 前回は、保険会社と過度にやり合う愚を説きました。今回は掲題の通り、慰謝料の積み上げに関する勘違いについて検証します。    最初に言いますが、本来、治療日数・頻度は治療効果から検討すべきで、医師等の指導が第一です。慰謝料の増額を期しての通院など、はしたないことです。ところが先日、整骨院に通っていた軽傷の被害者さんが、整骨院の先生(柔道整復師)さんから、「毎日通うと慰謝料が増えるよ」と言われたそうです。単純にそうとは言い切れません。毎日通わせて儲かるのは整骨院です。治療者としての資質を疑いますね。

基本計算

 総治療日数の範囲内で、実治療日数× 2 × 4200 円

  ・総治療日数・・・初診日から、治癒・中止(症状固定日を含む)・死亡までの日数

・実治療日数・・・入院日数+実際に病院に通院した日数。 午前・午後にそれぞれ2回、ダブルヘッダーで通院しても1日とします。    これは自賠責保険の慰謝料の計算式です。3ヶ月以内の治療期間では、任意保険も約款上この計算結果とほぼ同じです。したがって、3ヶ月程度の治療期間の場合で考えてみましょう。    ・総治療期間はちょうど3ヶ月=90日。

・実治療日数は、2日に1回のペースで通ったとして45日。

 先の計算式の通り、総治療期間90日の範囲内で、実治療日数45日×2=90日ですから、結局45日以上通っても90日で頭打ちとなります。    「たくさん通うと慰謝料が増えるよ」とのアドバイスで毎日通っても、隔日通院=2日に1回以上通っても慰謝料は増えないことになります。    では、3ヶ月(90日)を超えるような通院期間の場合ですが、任意保険は慰謝料計算の対象日数を徐々に逓減させる計算(総治療期間に応じて→75%、45%、25%、15%)に切替えます。2日に1回ペース以上に慰謝料の対象日数は減っていくのです。以下、損保ジャパン日本興亜さんの約款から抜粋。

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私が解説しましょう    保険会社や弁護士は逸失利益を計算する際、ライプニッツ係数を適用します(他にも新ホフマン係数というものがありますが、主流はライプニッツ係数です)。その数値が来年から改定されることになりました。皆様も自動車保険(任意保険)に介入していれば、保険会社からそのお知らせの通知が届く頃と思います。   1、ライプニッツ係数とは

 交通事故で障害を負わなかったら得られたはずの利益(逸失利益)を請求・受領する場合、その利息分を控除するための計算で適用される数値です(中間利息控除)。

2、なぜ中間利息分を控除する必要があるのか。

 本来、その未来の利益=収入は毎年毎月ごとに収入があるはずです。それを示談時や判決時に喪失期間分まとめて全額を収入することになるため、まとめて先にもらう分について利息が発生することになります。

※ 民法上の考え方ではお金を持っていれば、その分利息が発生することになると考えます(他人に貸したり、投資したりして利益を得られるからです)。

 このことから、その期間分の利息を控除しないと、被害者はその間の利息分の利益を別途得ることになり、不公平となります。そこで、利息分を逸失利益から控除する必要があります。

3、なぜ改定するのか

 このように、ライプニッツ係数は利息分の控除を根底に置いていることから、法定利息を基準に作成されます。法定利息とは、交通事故などの賠償金を請求する際、事故日や症状固定日に払われるべき賠償金について、「解決(判決)時までの間、待たされた分、利息が発生する」として、賠償金に加算する考え方です、(示談や裁判上の和解では、特別な加算や調整金などの加算は検討されますが、直接には発生しないとされます。)

 この点、2020年に民法が改正され、法定利息はこれまで5%だったのが、3%となります。 

 0金利時代に5%とは、確かに「利息高すぎ!」との声が続いていました。

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 これは保険会社のSC(支払部門)での格言で、正確には「重傷者の場合、物損の支払いで渋るな。渋ると、弁護士を入れられ、後の人身の支払いが増大してしまうよ」との意味です。保険会社にいた頃に指導を受けました。

 物損、多くは車やバイクの修理費を指します。その修理費や全損額、過失割合・・通常、保険会社はこれらで厳しい提示をしてきます。しかし、それは物損のみの被害、あるいはむち打ち等の軽傷者の場合です。対物賠償の支払増大は、直接に任意保険会社の懐を傷めます。対して、軽傷の場合の人身損害の支払い分は、自賠責保険からほとんど回収できます。そのような事情から、物損は厳しいが、人損(3ヶ月以内の通院や慰謝料)については寛容と言えます。

 それが、複数の骨折や重度の障害など、後遺障害認定が見込まれる重傷者(死亡も)であれば逆となります。もちろん、保険会社は後遺障害の支払い額も自賠責内でほとんどの支払額を回収する予定ですが、弁護士を入れられたらそれが一変、2倍3倍、あるいはそれ以上の賠償金支払いを覚悟しなければなりません。だからこそ、車の修理費や過失割合でケンカを避けたいのです。仮に修理費が50万円として、過失割合について、20:80の争いの場合を想定します。10%はたった5万円です。ここから15:85に5%譲歩したとしても、保険会社にとって25000円の支払い増に過ぎません。全損の評価額も、被害者が納得してくれるなら、5万や10万負けてあげても高が知れています。

 もし、この物損交渉で強硬姿勢をとれば・・・被害者さんは弁護士を入れてきて、その代理人弁護士から「後遺障害は12級だから慰謝料290万円頂戴ね」と請求が来ます。100万円程度で示談を目論んでいた担当者の計画が頓挫します。(下表を参照)  

後遺障害部分の慰謝料 単位万円

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 ※ 自賠責では、何故か(物損と思われる)メガネ、義肢、歯科補てつ、眼鏡、コンタクト、補聴器、松葉杖などが対象となります。  

(解答)

 1、治療費  60000円

2、休業損害 5700円×24日(入院2+通院10+8+4)= 136800円

3、入院雑費 1100円×2日= 2200 円

4、通院交通費 

 ・ タクシー:2460円

 ・マイカー: 15円×(2km×2往復)=60円×22日=1320円

  2460円+1320円 ...

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 保険会社・代理店時代は様々な研修を受けたものです。本日の研修では、当時の事故処理研修でも定番の自賠責保険の積算を特集しました。私も久々に復習です。

 レジュメから演習問題を掲載します。興味のある方は計算してみて下さい。一部間違いがあり、参加された代理店さまの方から、ご指摘を頂きました。よくぞお気づき下さいました。ありがとうございます。反省と感謝を込めて、明日の解答版にて修正させて頂きます。

<演習問題>

 私は58歳の主婦ですが、28年8月1日に横断歩道を横断中、信号無視の自動車に衝突されて、負傷しました、救急搬送され、レントゲンをとったところ、幸い骨には異常ありませんでした。ところが、相手は任意保険に未加入で、仕方なく相手の自賠責に被害者請求をしました。

・治療費は健康保険を使ったので、自己負担は合計6万円ですみました。

・交通費は退院日だけタクシーを使い2460円、その後の通院は自家用車を使用しました。家から整形外科までおよそ2kmです。

・眼鏡が割れて、修理代が8000円でした。

・書類にもお金がかかり、診断書代で5400円、事故証明書の取得に600円、印鑑証明書で200円かかりました。

・8月1日から市民病院に2日間入院し、退院後は近隣の整形外科に8月3日から10月30日まで3ヶ月通院しました。実際に通院した日は、8月は合計10日間で、9月は合計8日間、10月は4日間でした。

 私は自賠責保険からいくらいただけるのでしょうか?  

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 今朝のニュースから・・自動車保険の復習をしましょう。  

 高速道路にカツオ散乱 トラック扉開き次々落下<阪和道>

   4日午前9時5分ごろ、堺市美原区の阪和道上り線の美原南インターチェンジ付近で「カツオが路上に散乱している」と、通行していた車の男性から110番通報があった。大阪府警などによると、大型トラックが積んでいた冷凍カツオが約300~500メートルにわたって散乱した。西日本高速道路によると、最大で約6キロの渋滞が起きたという。

 府警高速道路交通警察隊によると、片側3車線の中央を走っていた大型トラックの保冷庫の扉が開き、カツオが次々と落下したという。大型トラックは約15トンの冷凍カツオを積載し、鹿児島県から静岡県へ向かっていたという。約2時間後に撤去されたという。

 府警はトラックを運転していた40代の男性から詳しく事情を聴いている。 (朝日新聞さまより引用)

   物損事故に関するご相談で、「道路の落下物にぶつかった場合は?」・・過去にいくつかの事例を経験しています。

 原則、その落下物を避けることが出来なかったと証明すれば、物を落とした側の責任が100%となります。しかし、衝突した側に過失が問われるケースもあります。落としてからしばらく経てば、「避けることができたかどうか」の程度で、過失を10~30%程度から50%も取られたケースがありました。その程度ですが、高速道路ともなれば、高速ですので避けることが難しくなり、過失は0に近づくと思います。

 より危険な高速道路では、急いで落下物を撤去しなければなりません。実は高速道路での落下物は半端なく多く、管理側、道路公団の悩みの種です。

 物を落とした相手が特定できれば、その相手に損害を請求することになります。相手が保険(対物賠償)に入っていれば回収できると思います。ただし、相手が特定できない落下物も多く、この場合、自身加入の車両保険を使うことになります。空中に飛来した物がぶつかった場合、「他物の衝突」なので、一般車両保険は当然として、エコノミー+A特約も補償範囲になります。そして、保険を使ったことによる無事故等級ダウンは1つで済みます(数年前は”据え置き事故”として等級ダウンはありませんでした)。ただし、落下物が地面に落ちて、しばらくしてからこれを踏んだ場合は単なる自爆事故扱いとなります。エコノミー+Aの車両保険では免責です。一般車両保険は有責ですが、、無事故等級は3つダウンです(痛)!    運命の分かれる「自爆事故か他物の衝突か」・・毎度、その境界線を保険金を支払う保険会社・担当者は検討しています。      宜しければこちらの記事も併せてお読みください。   👉 詐欺シリーズ ~ ノンフリート等級・すえ置き事故    飛び石や飛来物で窓ガラスが破損などで保険金を利用。据え置き事故詐欺例です。  

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先日、ご相談に来られた方がこんなことを仰っていました。    「自賠責の被害者請求を弁護士に任せていたのですが、ずっと放置されていたようです。そのことを問い合わせると、まず先に労災の後遺障害申請をしてきてくださいと言われました。言われた通りに労働基準監督署に行くと、担当者から「まずは自賠責の申請からと最高裁の判断で決まりましたので。」と、半笑いで門前払いされてしまいました。」    確かに後遺障害については、労災に申請後、「自賠責の結果が出てからでないと…。」と言われて結果を待たされていました。特段の事情がない限りは支給調整の関係からか前述のような対応が日常茶飯事です。しかしながら、最高裁が「自賠責と労災の請求順序」など判断したのでしょうか? 気になって調べてみました。    平成30年9月27日の判決です。

 事例としては、被害者Aが中型貨物自動車運転中、加害者Bのセンターラインオーバーによって正面衝突し、肩腱板損傷等の重傷を負いました。労災にて治療を継続しましたが、可動域制限が残り、後遺障害等級12級6号の認定(おそらく自賠責・労災ともに)がおりました。尚、Bの車両には自賠責保険加入がありましたが、任意保険はなかったものと思われます。(詳細が記載されておりませんので、推測でしかありませんが…。)

 今回はBによって起こされた第三者行為による労災事故のため、Aへの治療費や休業損害等を支払った国(労災)が、自賠責への求償権を手に入れます。第三者行為届を提出する際に、念書兼同意書を添付するのですが、その中に求償についても記されております。

 この点が今回の裁判でのポイントのようです。今回の自賠責の支払金額は、傷害部分120万円限度と後遺障害部分224万円があるのですが、労災の求償とは按分せずに「Aが自賠責へ、自身の補償(慰謝料・逸失利益)を請求・受領することが優先される」という判断がなされたのです。つまり、既に労災が支給した治療費や休業損害など、実費的なものの求償は後回しとなる、被害者により優しい判断がされたというわけですね。

 結論として、本件の判決は、自賠責と労災の申請自体の順番が確定したわけではありませんでした。念書兼同意書に記載があるように、「自賠責と両方請求する場合には、重複している場合、自賠責の方(任意保険会社がいる場合にも含む)で全て終わってからでないと支給しませんよ」と、被っている請求項目について、支給の順序があることに変わりありません。本判決は別の話しで、自賠責に対する本人の補償請求(労災先行支払いの治療費や休業給付と被らない慰謝料など)と、労災の求償(既払いの治療費・休業給付)が競合した場合、被害者救済=本人への支給が優先するという司法判断です。

 それにしても交通事故に労災が絡むとややこしいですね(汗)

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   <Case2 ケンカはダメ、ゼッタイ!>

 Bさんは、自動車搭乗中に追突され、「頚椎捻挫」の診断を受けました。救急搬送された後、近隣の整形外科にて3ヶ月治療しましたが、牽引やホットパックばかりの治療方針に不満を感じたので、転院を決意します。転院先は、理学療法と注射による治療をしてくれるので、大変気に入りました。主治医から「このプログラムを1年間実施すれば、ほとんどの人が回復しているから頑張りましょう。」と言われ、1年間通院することにしました。しかし、1年経過しても、痛みと痺れは収まらなかったので、そのことを主治医に伝えると、主治医が不機嫌になり、治療終了となってしまったようです。その後、後遺障害診断書を依頼しに行くと、ぶつぶつ言いながらも後遺障害診断書は記載してくれたようですが、それ以来通院を拒否されてしまったのです。  

 さて、Bさんの場合、なにがいけなかったのでしょうか。    これで14級9号が認定されればなにも問題なかったのですが、結果は「非該当」でした。提出書類を精査したところ、まず「後遺障害診断書」の内容に問題があったのです。記載内容はとても良かったのですが、ケンカをしたせいなのか「(約1年の加療により、大部軽減した)」との不要な記載によって、医療調査が入ったようです。受傷から3ヶ月の整形外科と1年間通院した整形外科の2ヵ所へ「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について、神経学的所見の推移について」依頼があり、審査にも時間を要したようです。2ヵ所の整形外科から送付された書類には、「症状が軽減、消失された」との記載ばかりで、認定票にもそのことが書かれていました。

 どうしても異議申立手続きをしたいという希望があったため、手続きを実施することになりました。しかし、全ての書類が提出されており、両整形外科との関係が悪化しているため、新たな医証が見つかりません。症状固定以来、整形外科への通院はおろか接骨院への通院もありませんでした。なんとか、全ての病院の画像と画像分析書を添付し、提出したのですが、医療照会にて提出された書類の「症状の消失」というところを突かれ、再度撃沈。「再度の非該当」は分かりきっていたものの、わずか40日で結果が出ることとなり、虚しい作業となりました。    医者を敵に回して、いい事はひとつもありません。嫌なことがあっても、かわいい患者を演じなければ、14級9号認定は遠ざかってしまうのです!    続く。  

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 久々の投稿です(汗)    さて、最近は異議申立ての案件も増えてきたように感じます。異議申立てからお引き受けすることがどれだけ困難か、今回は失敗事例も含めて記載していきます。

<Case1 勝手に治療を終了!?>

 Aさんは自動車搭乗中に追突され、「頚椎捻挫」の診断を受けました。受傷直後から病院にて治療努力を続けましたが、自身で「これ以上はよくならない。」と判断したため、4ヶ月で治療を終了してしまいました。翌月に再度受診し、MRI検査を受けたのち、受傷から5ヶ月半で症状固定となりました。その診断書を保険会社に渡して事前認定の手続きをしてもらいましたが、結果は非該当でした。

 Aさんの認定を覆す可能性は、非常に低いと分かっていたものの、本人たっての希望により異議申立手続きを実施しました。結果は残念ながら予想通り「非該当」でした。しかし、審査に約3ヶ月かかったため、調査事務所も認定を覆すかどうか検討してくれたようです。    さて、Aさんの場合、なにがいけなかったのでしょうか?    やはり、何と言っても「治療の終了」ですね。治療を終了するまではいいペースでリハビリをされていたので、そのまま継続していれば可能性は上がっていたかもしれません。次に考え得るのは、症状固定日です、5ヶ月半なので、そこまでシビアではないかもしれませんが、「事故から半年経過」ということは見過ごせません。  その他にも「物損の修理費が安価」であったこと、症状固定後にリハビリを全くしていないことも複合的な要素としてあったかもしれません。

 続く。  

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 本日は代理業協会の研修会の講師を拝命、初夏の陽気に汗ばみながらの2時間、みっちり交通事故・後遺障害を特集しました。当地での開催は初、今まで何故かご縁がなかったのです。

 3メガ損保+1社の地域の支社長・次席の参席を得て、緊張感のあるセミナーとなりました。保険会社批判ともとれる内容も含みますので、それなりにスリリングです。”歯に衣着せず”は”言い過ぎ”の危険と背中合わせなのです。逆に配慮が過ぎて、当たり障りのない内容となってもつまらない研修となります。そこは、保険会社の垣根を越えた代協さんです、是々非々の精神でお聞き下さったと思います。

 お招き頂きましたS支部長、そして開催に奔走下さったT様、ありがとうございました。  

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 各種存在する障害申請の中でも「お金」の多寡にもっとも影響する3大申請は、    自賠責保険、労働災害保険、障害年金 ではないでしょうか。    交通事故で重い後遺障害を負った場合、それも通勤中であれば労災も絡み、その3つに申請を行うことになります。一番細かくシビアであるのは自賠責だと思います。もちろん、傷病名や障害の類別によって、労災の方がシビアであったり、障害年金も油断できない部位があります。それぞれの審査基準には違いがあるので、一概に言えないかもしれません。

 大事なことは、必要な検査を実施して、医師に漏らさず診断書に落とし込んで頂くことです。不足・不正確・不明瞭の診断書であっても、以後、客観的に証明された証拠として、一人歩きを始めます。これは審査上に悪影響をもたらし、その後の賠償交渉や裁判で正すことは絶望的に難しくなってしまうのです。今までも診断書の修正が最大の焦点となった件、覆せなかった悲劇を何度もみてきました。遺漏なき申請書類、とくに診断書が事故解決の趨勢を決するのです。

 経験上、医師が障害申請に熱心に取組み、万全の診断書を作成してくれたことは、非常に少ないものです。医師は治す事が仕事で、治しきれなかった患者など、関心は薄れます。保険会社も役所の窓口も基本、事務的です。むしろ、限られた財源からの支払増大を懸念してか、厳しく判断されていると考えるべきです。もちろん、好意的な判断もありますし、好悪両面において、審査員は良く見ているなぁと感心することもしばしばです。

 しかし、希少な障害の場合や、障害の箇所が複数に及び、本人・家族ですら把握しきれない症状を克明に主張することはそれなりに難しいものです。審査側が親切に不足書類や追加検査を指示してくれれば良いのですが、これも限定的なことと覚悟すべきです。多数の審査案件を抱えた担当者にとって、追加的な調査業務は負担になると思います。その審査員に対して、自分の親兄弟や子供をみるように熱心に審査してもらうなど、過剰な期待と言えます。

 重度の障害を追った被害者さん達にとって、障害○級の認定は今後の人生にとって命綱なのです。各申請はその緊張感をもって望むべきですし、そのお助けをしている私達を是非とも活用して頂きたいのです。できれば、診断書の記載をする前の段階で、周到な準備と十分な打合せをしたいと思います。私達の報酬は決して安いとは言えませんが、被害者さんの命綱を繋ぐべく、相応の働きをする覚悟です。  

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 今までも数々の障害年金の請求フォローを行ってきました。ただし、代理請求はもちろん、障害年金の諸事務を有償で行うには、社会保険労務士の資格が必要と聞いています。それでも、自賠責保険請求を目的として行った医療調査の諸事務、収集した書類・画像はそのまま、労災や障害年金の請求に転用できますし、何と言っても、私達は被害者さんの後遺症の全容を一番把握していることになります。

 多くの交通事故案件の場合、障害年金請求は最後の作業になります。それまでに豊富に揃った診断書・画像を基に、障害年金専用の診断書を医師に記載依頼し、必要な添付書類を指示し、その他の書類記載は年金の相談窓口に頼ればOKです。別途、手間賃や報酬を頂くまでもありません。私達にとって、行きがけの駄賃のような事務です。添付書類には、自賠責や労災の認定結果なども含めます。それらは当然、障害年金の審査基準と異なるものですが、今まで真逆の判断などなく、結果は安定したものでした。自賠責や労災の結果にも、参考程度にそれなりに目を通していると推測しています。

 ところが、昨年、自賠責の審査結果がでる前に障害年金を申請した件で、思わしくない結果が返ってきました。その依頼者さまは独力で申請を行ったのですが、再申請をしなければならなくなりました。そこで、障害年金申請を業務としている社労士先生、数件に相談を持ちかけたそうです。そこでのアドバイスで多く指摘されたことは、専用診断書に「別紙の通り」と記載したことがNGだそうです。社労士先生が揃って言うには、「障害年金は診断書に書いてあることのみで判断するから、別紙など見ない」そうです。診断書に到底書ききれない、検査結果や症状の説明は無視されるのでしょうか? 自賠責に比べると、審査精度が低いように感じてしまいます。そのような意見を聞くと、近年の「消えた年金」「労災の未払い」など、厚生労働省の杜撰な体制を思い出させられます。

 すると、「自賠責請求に際して細心の注意・緊張を持って完璧な申請と結果を出したのだから、後の障害年金など楽勝!」と思っていた、今までの姿勢を改める必要があります。最近も、障害年金の診断書に障害等級を左右する程の重要な記載漏れを発見、医師に追記をお願いする件がでてきました。まったく最後まで油断できません。

 私達もできれば専門の社労士先生を頼りたいと考えています。餅は餅屋のはずです。今までも社労士先生に連携の呼びかけを行う際、色々とお話を伺う機会がありました。ところが、書類の手続きに精通する先生も、医学的な知識が絶望的に弱いと知りました。例え手続きのプロであっても、肝心の中身=医療はハードルが高いようです。医学的な知識・経験は、あらゆる障害申請において最重要ポイントのはずです。障害年金を主業としている社労士先生と言えど、その受任数が年間30件ほどであれば、10年でやっと300件、経験すら不十分ではないでしょうか。書類の記載等手続きなどは、年金窓口でそれはそれは丁寧に教えてくれます。もし、社労士先生に依頼する場合は、何人かにあたって慎重に判断すべきです。これはどの業務においても、士業者に依頼する場合の鉄則です。

例えば、各関節の用廃を見極めるには、関節可動域の測定ができることが絶対です。 秋葉事務所は全員がマスターしています。専門は理学療法士でしょうか。  しかし、これを専門外である社労士、行政書士や弁護士に求めることは酷です。

   今後は、障害年金についてより勉強し、個別対策を練る事が望まれます。それでも、保険医療に精通している者なら、自賠責保険請求で精密に固めた書類と、その審査結果を一緒に提出するか、その内容をベースに診断書を作成することが有効かと思います。医師には、事前にそれら診断書の内容をスライドして専用診断書に記載頂く事が安全です。とくに珍しい傷病名や難しい後遺症などは必須で、障害年金の審査員は他の結果を踏襲しないまでも、意識すると思います。良くも悪くも横並び意識は、お役所体質に合致すると思うからです。    未だ、被害者さんを安心して任せられる社労士先生にめぐり合えていません。交通事故に限定すれば、わざわざ社労士先生に依頼するより、秋葉がフォローする方が適切だと思っています。  

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