相手保険会社が治療費を負担してくれるのは、義務ではありません。彼らはいつでも治療費の一括払いを切ることが出来ます。これは裁判判例で決着していることです。

 では、治療費や休業損害が、自賠責保険の限度額120万はもちろん、保険会社の定める基準を越えた場合は・・? なんとか面倒を見てくれるよう、交渉することになりますが、保険会社としては、「後遺障害を含めた賠償金を支払いますから、早く症状固定して下さい」と、解決を急かします。しかし、本件のように感染症となった場合、骨癒合は大幅に遅れますし、症状固定は数年先に遠のきます。

 「公的保険の知識と実務に長けた事務所にめぐり合うか否か」で、被害者の運命は変わります。本件は幸い、依頼した連携弁護士から相談が入りましたので、以下の通り、労災の活用で解決までの道筋を作りました。多くのケースでは、依頼した弁護士も手をこまねき、松葉杖で片足を引き摺っている被害者自身ですべての労災手続きをしています。自身でできる被害者さんはまだ幸運です。相手保険会社ともめて、労働局とも平行線、会社の担当者からも疎まれて・・・窮した被害者さんは「明日の100万円より、今日の10万円」・・・泣く泣く、安い示談金を手にして解決することも少なくないのです。

 交通事故業務は弁護士の”賠償交渉”のみにあらず、公的保険を含めたあらゆる手段を用いる”被害者救済業務”なのです。      うちはそれが出来る事務所です  

併合5級:大腿骨・脛骨・腓骨多発骨折(20代女性・埼玉県)

【事案】

自転車通勤で交差点を横断中、後方からの左折自動車の巻き込みにあい受傷。左脚は大腿骨遠位端・脛骨骨幹部開放・腓骨を骨折、右足は鐘骨骨折、その他骨盤骨折も重なり、とくに左脛骨は開放骨折によって感染症を発症、10回ものデブリ洗浄で脚を切開した。多くの骨折箇所から骨のプレート・スクリュー固定、癒合不良箇所への骨移植・骨採取、皮膚採取・形成術を含めると、実に合計21回の手術を行ったことになる。結果として、症状固定まで4年を要することになった。

【問題点】

治療期間が長期になったことが最大の問題。相手損保に休業損害は当然として慰謝料の先払いを求めた結果、「もう過払いなので・・」と初期に支払いを切られてしまった。では、今後の治療をどうするのか? 感染症を発症していることから、長期の治療は避けられない。自賠責の後遺障害保険金入金もずっと先となる。

また、1下肢・下腿の後遺障害で最大等級は、「 1下肢を足関節以上で失ったもの」=5級5号である。本件の場合、膝から下だけで6級相当まで引き上げたい。その為には骨折の無い足指の用廃を得る必要があった。

【立証ポイント】

ここは、何としても労災の使用である。早速、管轄の労働基準局はじめ会社の担当者に働きかけ、労災を適用させて治療費と休業給付を確保した。この一連の調整は弊所の得意とするところ。以後、労基と会社との連絡・手続きを3年半担当、症状固定まで漕ぎ着けた。

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 平成31年も連日の過酷な業務に早くもバテ気味。

 先ほど、浜松から戻りました。これからサッカー・アジアカップを見ます。しかし、最後まで観る自信がありません。気がつくと薄明るくなっているでしょう。

 ちなみに、話題の「カメラを止めるな!」のブルーレイを買ったのは良いのですが、最初の30分しか持ちません。2度も観ましたが、毎度30分以降寝落ち、何が話題のゾンビ映画なのか、未だにわかりません。カメラを止めない意味がありません。眠気を止めてくれ!

リビングデッドのように働きたい

 

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 労災請求の問題点から支給調整まで、労災びっしりの2時間でした。実務上、距離のあるテーマと感じた方も多かったのではないかと思います。それでも、熱心に聴講頂きました。

 今年も様々な土地で、色々なテーマで、頑張りたいと思います。レジュメの作成時点ですでに、私も大変勉強になっています。セミナー講師をこなす事で、実力UPを実感しています。

 ご参加の皆様、お疲れ様でした。 明日は、遠州・浜松に参上します。よろしくお願いします。   

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 会社は労災の請求に消極的です。

 また、社員も労災を請求したのですが、会社の顔色をうかがって遠慮してしまいます。使われている側なので仕方ありません。

 問題は、会社側に正しい知識がないことです。とくに、「労災を使うと、掛金が上がるから・・」、これについて、調べました。

   以下に該当する会社については、一定規模の基準によって労災掛金が±40%の範囲で増減します。   ○ 100人以上の労働者を使用する会社   ○ 建設業等で労災保険料が年間100万円の会社   ○ 20人以上100人未満の労働者を使用し、災害度係数が0.4以上の会社    災害度係数とは{社員数×(業種ごとの労災保険料率-非業務災害率)}で算出します。この非業務災害率は現在0.06%となっております。

 従業員数80名の飲食業の場合、上記の計算式にあてはめると・・・ 80名×(0.3%-0.06%)=0.192≦0.4

 ・・・災害度係数は0.4未満となり、基準を満たさないため労災保険料が高くなることはありません。    つまり、労災保険料率が0.4%を超えない会社については、建設業(掛金100万超)を除き、100人未満であれば労災保険料率が高くなることはありません。20人未満の会社は当然に関係ありません。    また、通勤災害は、被害者・社員か、加害者が悪いのであって、会社にまったく責任がありません。労災側の調査によっては、労災掛金に影響ありません。  

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 労災と加害者側の賠償金(自賠責保険・任意保険)がかぶる場合、労災の障害給付は一時金でも年金であっても、「支給調整」を行います。ここが、皆様の知りたい核心ではないでしょうか。

○ 障害給付の支給調整

 第三者行為災害における損害賠償請求額と労災保険の給付の支給調整方法については、「求償」と「控除」の2種類があります。   ○「求償」とは、被災者等が第三者に対して有する損害賠償請求権を、政府が保険 給付の支給と引換えに代位取得し、この政府が取得した損害賠償請求権を第三者 や保険会社などに直接行使することをいいます。   ○「控除」とは、第三者の損害賠償(自動車事故の場合自賠責保険等)が労災保険の 給付より先に行われていた場合であって、当該第三者から同一の事由につき損害 賠償を受けたときは、政府は、その価格の限度で労災保険の給付をしないことを いいます。   ① 労災の支給調整の対象は「逸失利益」

 逸失利益とは・・・本来得られるべきであるにもかかわらず、債務不履行や不法行為が生じたことによって得られなくなった利益を指します。得べかりし利益(うべかりしりえき)とも言われます。逸失利益の算定では果たしてどこまでが本来得られるべきであった利益か、その確定は容易でなく訴訟などでもよく争点となります。

 自賠責保険ではこの逸失利益の限度額を明確に定めており、限度額を下回る80歳超の高齢者を除いては、ほとんど限度額で頭打ちとなります。これは弁護士さんにも多いのですが、自賠責保険の後遺障害保険金を定額の慰謝料と読み違えています。自賠責保険金額はあくまで、定額の慰謝料+計算された逸失利益(限度有)の合計です。

 障害給付金は一定の治療後、後遺症による将来に向けた補償ですから、逸失利益と性質が同じものとされます。したがって、逸失利益と二重に支払われることなく、逸失利益を超えた金額を給付することになります。逆に、労災先行で労災を全額支給した場合、後に自賠責に求償することになります。

 尚、賠償金の内の慰謝料は「精神的損害」ですから、民事上の「償い」であるところ、公共の補償と相殺すべきではなく、別物と考えられます。    つづく(いずれ、計算例をUPします)  

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 交通事故の場合、真っ先に請求する相手は、通常、加害者の保険会社ではないでしょうか。

 それは通勤災害、業務災害の場面でも同じかと思います。まず、加害者が補償するのが筋です。多くの場合、労災適用など気にせずにスルー、相手の任意保険、その加入がない場合は自賠責保険に請求に留まることが多くを占めます。実際、労基に問い合わせも、「労災は、自賠責を使い切ってからですよ」と内規で制限しているような対応です。社会保障制度ですから、じゃぶじゃぶ使われるなど困ります。加害者に支払い能力、つまり何らかの保険がある場合は、そちらを優先させ、支払いを抑制しなければならないことは理解できます。

  

 しかし、労災の法律を紐解くと、健康保険に同じく、「使うか否か」、「その順番」でさえも、請求者の意思が第一です。とくに法律の規制などしていません。したがって、自己に過失がある場合の事故や、重傷で治療費が莫大となるケースは労災も併用すべきと思います。そして、最大の動機は、休業給付と障害給付で、相手からの賠償金とは別腹の「特別給付」がもらえることです。  さらに、再発申請やアフターケア制度もあります。至れり尽くせり、原則、労災使うべきと断言します。

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 そんなわけはありません。年金制度は国と国民の信用の根幹、これが反故にされたら、もはや国民国家ではありません。

 とは、言いたいものの、12年前、日本中を震撼させた「消えた年金問題」・・ミスで相当数の記録が消されました。昨年9月にも、労災の休業給付のデータがミスで抹消され、大幅な支給遅れとなったことは記憶に新しいと思います。

 亡くなった私の祖父は年金に関する疑念が強く、自営でしたがとうとう国民年金に加入せず、老後は年金がありませんでした。当時、戦争(報道)で国に騙されたと思った世代は、国家・行政への信頼が薄いのでしょうか。「消えた年金問題」とは、その疑念が本当になってしまった事件です。決して間違ってはいけない行政の制度ですが、所詮人のやること、ミスはどうしてもでてしまうものです。いつも思うのですが、何故か間違って多く払ってしまったケースが少ないことです。それはともかく、再発防止の努力と迅速なリカバリーをお願いしたいと思います。

 また、昨日の記事の通り、当時、私もたった12年前の厚生年金記録を消された1人です。「昔の手書きデータを電子化する際に漏れた」との言い訳が利かない年数です。今回の労災記録抹消も、何故バックアップしていなかったのか不思議に思います。やはり、国のやることであっても万全の信頼を置くことなく、自らがチェックすることが必要ではないかと思います。記録を修正してもらうことは当然ですが、責任を追及する手間はそれなりに大変です。ここで行政側のミスを責めても、苦言を呈しても、問題提議しても、何の得にもなりません。何事も取引は相互確認が大切です。それは、買い物をして、お釣りを確認する作業に等しいものかもしれません。  

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 少し古いニュースですが、昨年秋に厚労省から掲題のミスが報告されました。ちょうど、労災セミナーのレジュメを作成していましたので、改めて取り上げたいと思います。

 かつて、「消えた年金」が大問題になったことがありますが、当然、労災でもさもありなん、と思います。私も3年分の厚生年金の加入記録を見事に消されました(怒)。

 実際、労災請求の現場では、従前から「労災はできるだけ使わないように」と会社側が労災請求に消極的な姿勢を感じています。使われている側・社員も、会社に逆らってまで請求はできません。それが、パート・アルバイト、契約社員なら尚更です。構造的に労災はアンタッチャブルなのです。では、手続きを助けてくれる業者や士業の先生が望まれますが・・肝心の社労士先生は会社側から顧問料をもらっている、言わば会社側の立場です。会社の意向に逆らって従業員を助けるわけがありません。もちろん、福利厚生に理解ある社長、つまり、従業員を大切にしている企業であれば、顧問の社労士先生にお願いしていただけます。しかし、このような企業は少数ではないかと思っています。

 今回、問題となった休業給付の手続きも、まぁ面倒なもので、特別給付を知らない人も多い。一部上場企業ならまだしも、会社側の事務員が不慣れな書類作成に右往左往、社労士の先生の多くも会社の要請無くば、まして無償では手伝いません。そして、昭和のお役所体質は改善したとはいえ、厚労省職員の信じられない電子的なミス・・・やはり、誰かが、手続き面で目を光らせる必要があります。今のところ、交通事故絡みならば私達がそれを担っていますが・・。

 人は基本的にミスをするものです。二重三重にチェックをする必要があり、請求側=民間の自助努力として、労災事故で苦しむ被害者を救済する体制も望まれると思う次第です。、  

休業補償27億円、処理ミスで1.1万人分支給遅れ 厚労省

  厚生労働省は7日、休業中の賃金を補償する労災保険の休業給付と休業特別支給金について、約1万1千人分(総額約27億8千万円)の支払いが遅れていると発表した。職員のシステムの誤操作が原因。同省は14日までの支払いを目指すとしている。

休業給付と休業特別支給金は労働者災害補償保険法に基づき、業務上の負傷などで労働ができない場合、休業4日目から支給される。支給額は休業1日につき賃金相当額の8割程度。

同省によると、6日に担当職員が会計システム上で支給に関係ない事務処理をしていたところ、誤操作で支給に関するデータを消去。本来は7日または10日に支給予定だったが、ほとんどが復元できず、予定通りの支払いができなくなった。

会計システムの操作は通常、複数人でチェックする体制だった。同省は誤操作の理由を検証し、再発防止策を検討する。

これまでに支給の申請者から支払いの遅れに関する問い合わせの電話が100件以上寄せられているといい、ホームページに問い合わせ先を公表するなどして対応している。同省担当者は「発表が遅れ、多大なご迷惑をおかけして申し訳ない。適切に対処していきたい」としている。 <日本経済新聞 平成30年9月7日>  

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 今月末、行政書士試験の発表があります。秋葉事務所のスタッフさんや内定者さんの結果がでます。悲喜こもごもと言ったところでしょうか。

 私も10年前の平成21年1月に資格を取得しました。登録して事務所を開設したのはその年の6月でした。当時はまだ保険代理業が主業で、初年度は行政書士業としての売上はほとんど無く、保険業の域をでない事務所でした。その後数年を経て、保険代理店を地元の仲間に任せ、行政書士事務所に専念することになりました。都内に事務所を移転した頃です。では、完全に行政書士単独事務所になったかと言うと、そうでもありません。交通事故業務一本で突っ走っておりますので、他の行政書士業務、例えば許認可の代理申請は業務経験なしです。行政書士事務所を名乗りながら、行政手続きに連なる業務の経験は10年間数えるほどです。行政手続き以外ですと、昨年1年間ではわずかに相続2件、契約書作成1件程度でした。業務は交通事故に関する医療調査と保険手続き、これで10年間食べてきたと言っても過言ではありません。

 それでも、事務所を構えて10年、人並みの感慨を持つものです。今後は、私の手を離れて独立する後進の成長が楽しみでもあります。それはまだ数年先になりそうですが・・。

 基礎作りの10年を終えましたが、次の10年の目標を目指し、チーム一丸で取組んでいきたいと思います。6月にはささやかですが、10周年の会でも催そうかと思います。

 旧越谷事務所のプレート(現在も東京事務所に掲げています)

 

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 おかげさまで、年初から社員・バイトさん共に面接が続いております。この数年、あまりに求人が実らないことから、業を煮やしたハローワークさんや求人会社さんから、待遇面など広告の表記について色々とアドバイスを頂きました。それはとても参考になる意見で、なるほどと思うことばかりです。しかしながらですが、弊所の仕事は世間にそれほど周知されたものではなく、採用の第一条件は「この仕事をしたい」といった動機面です。

 これまでも、動機面から門を叩いてきた面接者しか採用できなかったと思っています。その方達は共通して、条件面など見ていないに等しく、業務内容”被害者側の医療調査”に興味を示してきました。逆に、行政書士に受かった、もしくは勉強中で行政書士事務所の求人を探している方達は、勘違いの応募に思えました。行政書士での実務経験を積むため・・これは弊所ではかないません。行政書士の主業である許認可などやっていないからです。それは、HP上に表記しています。

 行政書士事務所の求人は全国でも数件レベル、ほとんど無きに等しいものです。行政書士試験の合格者は実務経験なく、直ちに独立独歩を迫られます。これは業界全体の特徴でもありますが、行政書士は医師や弁護士のような修習制度がありません。理由は、業務の難易度はもちろん、その責任の重さも含め、軽易な職種だからと思います。行政書士の一般的な業務はマニュアル・雛形を購入すれば、ほとんど事足ります。(もちろん、歴戦の書士ならではのプロフェッショナルな技術は別物ではありますが。)一般的に資格合格=即、独立事務所開業なのです。

 もし、親戚に建設会社がある、前職の繋がりで仕事を確保できるなど、コネをバックに独立ならば生計の目処が立ちますが、それ以外の合格者が行政書士事務所を構えて食べて行くのは、相当のリスクが伴います。恐らく、裸一貫でベンチャー企業を立ち上げる覚悟と才能がなければ無理かと思います。およそ90%の行政書士は自宅外に事務所を持たず、家の応接間に電話1本、事務員は奥さん、このような体制が普通なのです。自宅外事務所を持ち、事務員を雇用できる書士の多くは、司法書士や税理士、社労士事務所と併設です。これは他士業に付帯して仕事が発生する、行政書士ならではのメリットを活かした結果です。それだけ、行政書士業を主業として生計を立てることは大変なのだと思います。専門学校、通信教育、出版会社等、あまたの資格産業が「行政書士で独立開業!」「行政書士で年収1000万!」「誰でも努力次第で成功!」などと、(行政書士を目指す人達の出費を煽って)甘い夢を喧伝していることに気付くべきです。

 弊所についても、医療調査・保険手続きを主業としていますので、併設事務所の形に近いと思っております。行政書士は余るほどおりますが、交通事故被害者の調査業、被害者救済業はかなりニッチな存在です。何度も繰り返し書きましたが、弁護士事務所だけでは手の及ばない救済業務が山ほどあるのです。一部の弁護士先生の理解から、その業務の委託を受けておりますが、まだまだ世間一般に浸透したものとは言い難いものです。したがって、入所希望者の皆様に対しては、新しい仕事を開拓する気概を要求したいのです。現在、弁護士の影を恐れつつ、こっそり賠償交渉に手を出して、裏で小ずるく報酬をせしめる従来の非弁・交通事故行政書士が死滅しつつあります。このような環境下、新しいメンバーとは、弁護士法に触れずむしろ弁護士から歓迎され、被害者救済に不可欠な存在を目指し、業界の10年20年先へ視線を共にしたいと考えています。  

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 これはどの業種・仕事にも言えますが、そこそこ経験を積んで自信を持つと、つい、結果を見切ってしまうことがあります。もちろん、経験に裏打ちされた「読み」から仕事の判断をすることは必要です。しかし、私達の仕事の結果は審査側の判断に委ねられるのですから、「読み」はあくまで予想に過ぎません。本件の認定は最初から難しいと思っていました。当然、再請求も結果は厳しいと覚悟しました。しかし、予想に反して後遺障害が認定されました。このような読み違いが最も生じる申請は、ずばり、神経症状の14級9号です。

 打撲捻挫で治療が長引いた場合、その多くは被害者感情からくる「大げさ」、保険金狙いの「詐病」、あるいは「心身症」による症状の遷延化が疑われます。これらを排除した真の症状に苦しむ被害者を、自賠責は症状の一貫性・信憑性から判断します。骨折のように明確な画像もなく、医師の診断が数値化できない、このような審査に自賠責保険の調査事務所の判断もぶれると思うのです。その点、もっとも読みづらい後遺障害と言えます。

 私達も年に数件、認定等級の予想を外すことがあります。その度に、経験や知識だけで軽率に判断してはいけないことを再確認させられます。

 本件は、抜群の戦功から今年、二階級特進(つまり昇給)の佐藤が担当しました。

   私、佐藤も4年目、仕事に自信がでてきましたが・・ゆえの慢心を戒めなければなりません  

非該当⇒併合14級:頚椎・腰椎捻挫(50代女性・千葉県)

【事案】

自動車に搭乗中、急な右折で専用レーンに割り込んできた車に衝突される。直後から頚腰部痛のみならず、手足の痺れ、頭痛、めまい等、強烈な神経症状に悩まされる。

【問題点】

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 受任する何年も前で、事故とは無関係であっても、既に負った後遺障害(既存傷害)、これも十分に検証する必要があります。

 なぜなら、自賠責保険の後遺障害審査では、事故で生じた後遺症から、既存の後遺症が差し引いて等級認定をします。この判断を加重障害と呼びます。当然、事故前の障害は、後の賠償交渉で相手側の主要な反論材料にされます。当該事故による障害(賠償金)から、元々の障害分を差し引く・・大変難しい判断になりますが、ある意味、自賠責の加重障害のルールで明確化できます。賠償問題の解決に一定の合理的な考え方として重宝されるのです。

 本件の場合、事前の調査で既存障害の実態を把握したつもりでしたが、加重障害を想定できませんでした。結果は、政府の保障事業(引き逃げや無保険車による被害者を国が補償)の等級認定があったことが加重障害判断の決め手になりました。その点、依頼者様にはもちろん、自賠責保険・調査事務所に長い期間の調査負担をかけてしまったと反省しています。

政府の保障事業だったとは・・  

3級3号・加重障害:高次脳機能障害(80代男性・埼玉県)

【事案】

歩行中、自動車に衝突される。頭部を強打し、意識不明の状態で救急搬送、急性硬膜下血腫、脳挫傷の診断が下された。

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 続いて、1下肢における足関節の機能障害と変形障害の二つを立証した件です。

 弊所の実績ページをご覧になればおわかりと思いますが、下肢のあらゆる骨折の経験が蓄積されています。経験上、診断名から等級の予想がつきます。本件でも併合11級に収めるべく、「何をどうすべきか」計画的作業はお手の物です。とくに、腓骨の癒合不良は医師も歩行・日常生活に深刻な後遺症を残すものではないと、治療上軽視します。自賠責保険でも多少の変形では等級を認めませんが、それでも骨が癒合しない偽関節となれば、「長官骨の変形」=12級8号に合致します。

 本件のように骨折が複数に及ぶ場合、自賠責のアドバンテージを活かし、等級を一つ引き上げることが望まれます。これこそ経験の差がでるところではないかと思います。    多発骨折の場合、多くの被害者さんが等級を見逃していると思います  

12級7号:足関節内顆開放脱臼骨折、12級8号:腓骨遠位端粉砕骨折(50代女性・埼玉県)

【事案】

歩行中、バイクに衝突される。全身を強く打ち、下肢の多発骨折。救急搬送され他の地、すぐに手術が施行され、2ヶ月以上の入院を余儀なくされた。

【問題点】

足関節は抜釘手術を行わないことが決まっていた為、主治医は立証作業にそこまで協力的ではなかった。また、治療努力の成果もあり、可動域もどんどん回復していった。 対して、腓骨は癒合進まなかった。

【立証ポイント】

骨癒合も進んだ頃合いで病院同行し、まず、足関節の3DCTと両足関節が比較できるよう、同時に写るようなXP撮影の依頼を行った。その後、後遺障害診断では、可動域計測に立ち会い、12級の基準値であることを見届けた。後遺障害診断書が完成したが、診断名と可動域数値に不備があった為、修正依頼を実施して完璧な状態に仕上げてから申請した結果、狙い通り12級7号認定となった。

一方、腓骨はレントゲン画像をみたところ、骨折部にわずかの空隙があり、偽関節(くっつかなかった)となっていた。プレート固定している為、安定性は確保されており、医療的なアクションを起こすことはないが、医師に丁寧に説明して長管骨の変形欄に追記いただいた。過去の経験から自賠責は腓骨変形に関する等級認定に厳しい印象だか、偽関節の画像打出しを添付してアピールしたことから、こちらも狙い通り12級8号認定となった。結果、併合11級に収めて、連携弁護士に引き継いだ。

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 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。    さて、昨年も多くの認定結果が蓄積されました。年始からシリーズで、30年中の未投稿案件を紹介したいと思います。

 最初は醜状痕です。ご存知の通り、書面審査を原則とする自賠責保険では、その例外として面接による審査が行われます。弊所で事前に計測していますのでほとんど等級は読めていますが、やはり、人が審査するもの、微妙なジャッジで左右されることもしばしば。本件は明らかに被害者寄りの計測・認定をして下さいました。醜状痕の判定に関しては、「自賠責は優しいな」と感じることがあります。 私も面接に立ち会ました

9級16号:顔面線状痕、14級5号:下肢醜状痕(50代女性・埼玉県)

【事案】

歩行中、バイクに衝突される。全身を強く打ち、多発骨折、顔面にも傷を負った。 続きを読む »

 今年の御用納はおでんでした。八丁堀界隈にも小粋なおでん屋さんがあります。席数わずかなので予約必至です。今年も社員のおごりでした。ごっつあんです。

   今年は色々と精神的に消耗する仕事が多かったように思います。他事務所から難しい案件が集中しました。例え弁護士であっても、すべての先生が後遺障害の調査・立証に精通しているわけではなく、被害者さんから経験不足を見抜かれてしまったようです。結果として、他事務所が手をこまねいていた、もしくは既契約先を見限って、一定数の被害者さんが秋葉事務所に辿りつきました。わざわざお切替え頂いたことは、技術・実力が評価されたのですから名誉なことだと思います。

 しかし、経営面からみれば激しい消耗戦にさらされることになります。難しい問題のない平易な案件は、それ程交通事故の経験がない事務所であっても、まぁ合格点の解決まで進めることができます。一方、重大・重傷事故、立証が困難なケガを伴う事故の場合、成果より経営効率を優先する事務所では限界があり、それこそ事務所・担当者の経験と技術の差が如実となります。それらは大変に手間がかかり、神経をすり減らす業務になります。つまり、費用対効果の低下は、事務所の体力を奪うことになるのです。

 来年からは労働法の改正があり、「働き方改革」が叫ばれています。諸々の改定を簡単に言えば、「働く時間を減らせ!」でしょうか。昭和から平成への一番の変化は、右肩上がりの経済の終焉と言われています。今後、日本全体において劇的な経済発展が見込めないことから、個々の労働時間を減らしてワークシェアリング、賃金も物価も上昇せず、結果として安定的な経済力の後退を見据えているように思います。かつての栄華を誇った西欧諸国は日本のGDPより低く、労働時間も突出した日本より少ないものです。諸々の意識調査でもお馴染みの結果ですが、それでも人々の幸福度・満足度は日本より高いのです。先例や歴史に学べば、日本全体が”何事もそこそこの繁栄”、更には”物質的価値から時間的価値”へ、価値観の転換を迫られているのかもしれません。

 翻って私共の事務所ですが、例え困難な事案であろうと被害者救済の推進力はいささかもセーブすることはありません。仕事の質を落とすことのない成長を目指せば、長期的な視野と日々のルーティンの徹底が欠かせません。目先の利益を度外視した長期間の経営計画と、効率に流されない堅実な仕事によって、世の中に必要な存在であり続ける・・これは今までも実践してきたと思います。そこに、更なる創意工夫を加えるためにも、わずかの余裕が必要と思う次第です。それは、一にも二にも人材です。新人の発掘と、自身を含めた社員の成長が鍵でしょうか。そして、次年度からは他士業への連携をより広げていくことも含みたいと思います。

 「時代や環境に即すること、それでも譲れないこと」、「効率を求めること、時には非効率ながら突き詰める姿勢」、これら二律背反する目標を追う事は厳しい道です。それでも、交通事故被害者さん達の「納得」を仕事の到達点とすれば、自ずと打開できると考えています。

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 人工股関節置換術とは、損傷した股関節面を取り除き、人工関節に置き換える手術のことを言います。字の通りですね。人工関節は、金属製のステム(大腿骨軸の代わり)とボール(大腿骨頭の代わり)、ソケット(寛骨臼の代わり)、その内側にライナー(軟骨の代わり)で出来ています。メーカーや人工関節のタイプ、パーツ等によって様々ですが、チタンやコバルトクロム合金、ステンレス、セラミックス、ポリエチレンが一般的です。この軟骨部(ライナー)が摩耗してしまうため、60代未満の方は、再置換術施行の可能性もありますが、人工関節の性能向上により、摩耗しにくくなっている為、一生入れ替えなくても問題ない、若しくは一部のみの入れ替えで済む時代が来ているようです。 ※ ソケットとステムには、骨との親和性が高いとされるチタン合金、ライナーとボールにはポリエチレンとコバルトクロム合金の組み合わせが摩耗に強いものとして使用されているようです。    また、固定方法には大きく分けて「直接固定方法」、「間接固定方法」の2種類があります。 「直接固定方法」とは、大腿骨内部に空洞を作り、そこに人工股関節を挿入します。この場合に使用される人工関節の表面には特殊な加工が施されており、骨の成長によって結合がより進んでいきます。 「間接固定方法」とは、骨セメントと呼ばれる固定剤を人工関節と骨の隙間に流し込み、固定させます。骨の成長を待たずにしっかりとした固定性が得られることなどがあります。

※ どちらの方法が良いかは分かりませんが、直接固定方法が主流のようです。

 このように人工股関節置換術は、非常に高度な医療技術が必要です。また、交通事故においては「因果関係」について、非常に厳しくみてきます。一瞬の判断によって、事故の解決や今後の人生が大きく左右されます。ぜひとも慎重なご判断をお願いしたいと思います。  

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高次脳機能障害の性格変化については、医師が高次脳機能障害の専門的な知見を持たない限り、非常に見逃されやすい症状と前回述べました。

その理由として、以下の(1)~(3)等があげられます。   (1)かかりつけ医がいない限り、事故後病院に運ばれてからはじめて医師に会うことが多く、事故前の患者の性格を確認できないことが多いこと。   (2)事故後の患者を診て頂いても、現状の性格が事故前と違うのかどうかを確認することは、高次脳機能障害に知見の深い病院や医師でない限りあまりないこと。   (3)高次脳機能障害の患者は、性格変化の症状を自覚することはほぼ無く、患者自ら医師に訴えることはあまりないこと。また、不思議なことに、就労不能レベルではない程度の性格変化の場合、家族の前でしか症状が現れず、医師や近所の方々に会う場合には普通に接することができる患者もいます。よって、患者から医師に対して症状を訴えることはあまり期待できません。 そこで、性格変化の症状を必要になってくるのは、家族、特に同居している家族からの報告です。事故前と事故後の性格の違いを判断でき、さらに、医師や病院関係者、近所等の他人に対しては症状が出ないことがあるため、性格変化の症状を一番認識できるのは家族だけなのです。     高次脳機能障害によって性格が変わってしまった場合、これに対する治療方法は、投薬方法があげられますが、効き目は人によってバラバラです。また、投薬以外にできることはあまりありません。このことから、一部の医師は、性格変化について、日常生活に大きく影響しない場合は重く受け止めて頂けないことがあります。この点、性格変化が加齢等によるものであれば、やむを得ないこともあるかもしれません。

他方で、交通事故の場合ですと、保険会社に治療費を請求するため、あるいは後遺障害申請をするため、診断書に性格変化まとめて頂く必要があります。

しかし、短い診察時間で性格変化は表出しづらく、「臨床上大したことない」「診断書に書く必要がない」等、まじめに取り合ってもらえないことがあります。肝心の医師が高次脳機能障害に対して理解して頂かないと、意味がありません。このような医師にあたってしまった場合、性格変化について立証する手段としては、(1)専門医の紹介状を書いて頂き、専門医の診察を受けること、(2)家族からの「日常生活状況報告」として日常のエピソードと共に性格変化の内容についてまとめてから後遺障害申請をすること、の2点があげられます。

専門医や高次脳機能障害について知見の深い病院であれば、家族から性格が変わったことを報告されると、診断書やカルテにまとめてくれます。また、性格変化で日常に影響が出る場合も専門的なアドバイスももらえますので、保険手続面や後の裁判面だけではなく、今後の日常生活を送る上でも、症状をメモ等にしてまとめておくことをお勧めします。また、医師は診察中忙しく、逐一報告しても聞いて頂けないことが多いこと、本人の目の前で性格が変わったことを報告するのは躊躇いがあることが多く、これらの事情からも、メモにしておけば医師に渡して報告が出来ますので、その方面でもお勧めします。  

なお、弊所では専門医にお連れすることだけではなく、やはり家族からの本人の状態・症状を確認し、かつ、家族には常日頃、気付いた点をメモにまとめるようにアドバイスしています。というのも、上記(1)(2)はいずれも重要であるため、後遺障害申請時に使用する日常生活状況報告をまとめる際に極めて有効な手がかりになるといえるからです。

交通事故に遭われた方はご自身で治療努力することは当たり前のことですが、高次脳機能障害で自分ではどうしようもない状況になってしまった場合、最後に助けてくれるのは信頼できる家族である、と言えます。    

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高次脳機能障害の認定に必要な3要件として、① 事故後の意識障害、② 頭部外傷による脳挫傷等、脳外傷による画像所見があること、③ 事故後の症状、があげられます。

この内、③の要件は、記憶障害や言葉が出てこなくなった等のように一見してわかりやすい症状から、わずかに計算ミスしてしまうことや、少し注意力が落ちた等、注意深く確認しないとわからない症状まであり、様々です。

注意深く観察すれば専門の医師や専門の言語聴覚士の検査中に確認できるものもありますので、弊所では専門の検査ができる病院や専門医がいらっしゃる病院で診察を受けるために、紹介状を主治医に書いて頂いたり、通院先で検査が可能であれば、必要な検査のお願いをしたりすることがあります。

しかし、中には医者でも言語聴覚士でも気づきにくい症状もあります。

その一つとして、性格変化があげられます。

性格変化も内容は様々で、例として、易怒性、易疲労性、飽きっぽくなる(注意障害等)、幼児退行、等があげられます。

易怒性とは、性格が怒りやすくなることです。ひどい場合には、就労不能レベルになりますと、病院関係者まで怒鳴り散らして大暴れします。もっとひどい場合には、他者を殴ってしまうこともあります。   易疲労性とは、少し作業するだけであっという間に疲れ果ててしまうことです。事故前は活発で明るい人が、事故後、とても大人しくなり、外出もしなくなるケースもあります。

飽きっぽくなる(注意障害等)とは、家事や仕事の作業中に、全く別の作業をしてしまうこと等を指します。その結果、すべての作業が中途半端になってしまって、何も終わらなくなることもあります。わかりやすいのは、例えば、ある場所を掃除中に、途中で全く別の場所を掃除し始めてしまい、かえって散らかってしまうようなケースがありました。

幼児退行とは、性格が子供っぽくなったことを指します。成人女性が事故後、周りを気にせず(男性の前であっても)、服を着替えてしまうような羞恥心の欠如のケースや、わがままになって周囲を困らせる場合、面談中に飽きて遊んでしまう場合等、様々です。

上記した症状以外にも性格変化のバリエーションがあります。これら性格変化が事故後生じた場合、高次脳機能障害の症状として、等級認定を検討する必要があります。

しかし、この性格変化については、医師が高次脳機能障害の専門的な知見を持たない限り、非常に見逃されやすい症状といえます。詳しくは次回のブログで述べます。  

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 近年、悪質・危険な運転者に対する罰則強化のために、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(略称:自動車運転死傷処罰法)が、平成26年5月20日施行されました。従前の過失運転致死傷罪とは別物になったのです。

 交通事故で他人を傷つけたとしても、それは故意犯=「わざとではない」ので、殺人罪に比べてはるかに軽い罪に扱われてきました。確かに、飲酒運転や悪質な運転で被害にあった人にとって、「過失によるもの」など受け入れがたく、故意犯に近い厳罰を求める声が強かった背景があります。早速、内容を確認してみましょう。

 

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