【事案】

自転車信号のない横断歩道を走行中、右方から自動車が衝突、受傷した。救急搬送され、開頭術を実施、一命をとりとめた。診断名は急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、脳挫傷。

【問題点】

依頼者は受傷当時学生で、復学後留学し、優秀な成績で卒業も果たしてした。そして、事故から3年近くが経過していた。外見上、まったく問題ないようにみえることから、受任した弁護士も障害の残存に懐疑的、秋葉への相談となった。

改めて、ご家族同席で綿密に聞き取ると、ご家族からは日々の日常でおかしいところがあるとのこと。これより、高次脳機能障害の追求が始まった。  元々のIQも高い?

【立証】ポイント

主治医はわずかに高次脳機能障害を認めていたが、もともと、基礎学力が高く、偏差値も非常に高かった。「作動記憶」が全体に比して若干低い程度で、神経心理学検査の点数も軒並み高かった。神経心理学検査のみでは高次脳機能障害の立証は限界と判断し、ご家族(母親や兄弟)から本人の日常生活上の問題点を聴取、綿密な打合せを何度も繰り返した。

その結果、勉強はかなりできるが集中力が従前より低下したため、勉強時間と量がかなり増えてしまったこと、また、得意だった家事全般が苦手になったこと、事故前と後で性格変化からか、いい加減になったこと、そのせいで友人から指摘が絶えないこと等を把握した。これらの内容を、特に、神経心理学検査で判別が難しい、性格の変化等を詳細に日常生活状況報告書にまとめて被害者請求をした。

その努力は実り、訴える症状について自賠責が最大限に評価、客観的なデータが乏しいながらも7級4号が認定された。

(平成29年9月)  

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 もう何年も求人を続けておりますが、特殊な分野ですので、応募も少なく、あってもなかなか採用に至りません。

 どこの企業も真面目で優秀な人材を求めていますので、普遍的な問題ではあります。まして、「医療調査業」で募集しても・・どのような仕事なのか、具体的にはわからないでしょう。そもそも、保険会社が主導する医療調査員の仕事も地味で、尚且つ、定着率の低い仕事と聞いています。すると、行政書士の括りで求人することの方が、効果的かもしれません。行政書士で起業することの実態は様々な疑問もありますが、国家資格を持った士業の事務所、知名度も信用も「医療調査」よりはマシでしょう。

 さて、縁あって採用した若手ですが、その育成が仕事の一つでもあります。知識面についてはどんどん実戦経験を積ませて、体で覚えるようにしています。そして、経験したこと、疑問に思ったこと、曖昧な知識について、時折、立ち止まって文献で検証するようにしています。これは、当の私が心がけていることです。そして、セオリー通りにいかず、イレギュラーな事態が起きた時が、応用編となります。その例を一つ紹介しましょう。      交通事故でムチウチとなり、今までに経験したことがないような痛みや上肢の痺れに悩まされている被害者Aさん、受傷3ヶ月目で相手保険会社から治療費打切りの宣告を受けました。まだ、通院治療が続いているのに困り果て、依頼を受けたのですが・・

 連携弁護士は治療延長を相手保険会社に交渉するも、担当者は3ヶ月打切りを譲りません。そこで、秋葉事務所スタッフB君は後遺障害認定を視野に病院同行しました。打切り後、健康保険での通院継続と、万が一、症状が改善しない場合は後遺障害診断書を記載頂けるよう、医師と打合せしました。医師は渋々了承下さいました。

 ここまでは、基本通りの流れです。的確に調整を計ったA君、依頼者さんに、「後遺障害14級が認定された場合、治療費打ち切りされても、賠償面で十分取り戻すことができますよ」と説明、上手くいったつもりでした。しかし、被害者Aさんは仏頂面です。

 Aさんによると、お金の問題ではなく、「治療費の不安なく通院を継続し、しっかり治したい、できればそりの合わないこの整形外科ではなく、知人の接骨院に通いたい、それなのに・・」、B君はお金のことばかりで、まったくこちらの気持ちを汲んでくれない・・と不満をもらし、担当者を代えるよう電話が入りました。

 B君にしてみれば、健保を使った30%自己負担の治療費などたかが知れており、今後3ケ月通ったって3万円もかかりません。そして、14級が取れたら200万円もの賠償金が想定できます。だからこそ、苦労して医師を説得、解決へ向けての理想的な誘導に成功したのです。しかし、当の依頼者さんに感謝どころか恨まれているのです。「どうしてわかってくれないのだろう」、B君にとって、こんな理不尽なことはありません。    さて、論理的に事故の解決を理解できない、損得がわからない、Aさんが悪いのでしょうか? それとも、正しい仕事をしたB君が間違っていたのでしょうか?    B君はすっかり落ち込んで・・・ここで、私はこう指導しています。   ① まず、「B君の仕事自体は間違っていない」→「それをAさんに理解させられなかったB君の能力不足である。人によってリテラシー・理解力に差がある」

 正しいことが、常に正しいと評価されないことは、世の中に溢れています。そのことで一々、へこんでいたら仕事になりません。   ② 次に、「もう1度、Aさんにわかり易く熱意を持って説明しなさい」→「説明(説得)では伝わらない、理解(納得)をしてもらうように話し方を変えなさい」

 相手に合わせた話法が必要です。すべての人に対して同じ話法が通じるほど、人間は単純ではないものです。   ③ 最後に、「それでも、Aさんが翻意しなければ、Aさんの思い通りに方針変更しなさい」

 つまり、Aさんの希望に沿って、14級(200万円)を捨てて、接骨院へ。そして、保険会社から治療費を獲得できる弁護士事務所を探して(ないと思いますが)、そこに依頼すればよいと突き放します。    私達はどこまで行っても依頼者さんの意向を受けてフォローする仕事です。方針が違えば一緒に歩むことはできません。仮に依頼者さんが間違っていても・・なのです。    私達の解決方針が、被害者さんのすべてに同調することなどあり得ません。これは、世の常、とくに仕事の世界では当たり前のことです。B君には最善を尽くさせますが、結果については、客観的に分析する視野を持てばよいのです。

 それともう一つ、人の機微を捉えることです。どんなに正しい知識も、相手が同調しなければ何の意味もありません。色々なタイプの人に合わせられる柔軟性を持つことが、仕事のスキルアップとなります。本件問題の本質は、知識や提案が”正しいか、間違っているか”ではないのです。

 「人は納得したい生き物で、説得されたくない生き物」であること、本例はこれを学ぶ機会だったです。  

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