一番好きなお酒は?と聞かれ、あれもこれもと悩み、その回答に窮する時、思いつく酒が「田酒」です。

 好きな食べ物・飲み物、それも嗜好品となれば、簡単に答えられないと思います。お酒はビールもワインも好きですが、酒の種類などその日の気分で嗜好が左右されそうです。また、値段やグレードの差があっても、それぞれの旨さや個性があるものです。もちろん、合わせる料理にも大きく影響します。ワインと料理の組合わせをマリアージュ(フランス語で結婚)と呼ぶそうです。

 先の質問に対して「日本酒では」と付け加えますと、今の時期、お燗の季節は青森県の西田酒造の「田酒」が筆頭にきます。華吹雪という酒米を基本に醸しますが、西田酒造では大吟醸~特別純米など、どのグレードも必ず The 田酒 の味になります。どれも、燗にするとその実力が発揮されます。巷ではフルーティな吟醸香が際立つ日本酒が人気ですが、田酒はその路線を目指しません。味わいが「米」の滋味そのもので、お米の持つふくよかさ、甘みと苦み、うまみが料理を包みます。当然、お米を使った料理、お鮨はじめ日本料理には最高の伴侶となるのです。

 その田酒から、なんと山田錦(酒米でもっとも有名かつ高級種)で醸した酒が発売したではないですか!田酒マニアからすると、ちょとしたニュースです。元々、大吟醸では山田錦があったと記憶していますが、ベーシックグレードの特別純米酒での登場です。    山田錦の田酒・特別純米酒(左)。 ちなみに右隣は「山廃 田酒」で、毎年この時期の定番。もちろん、お燗にするために作られたお酒です。個人的には、ちょっと熱めに燗(55°前後)にして20分置いた、「燗冷まし」がベストです。日本食はもちろん、この時期、七面鳥や鳥のローストなどクリスマス料理にも合います。      山田錦「田酒」の感想ですが、味はいつも田酒の形を残しつつ、最初に山田錦特有の濃厚な甘みがきて、渋みと苦みが追ってきました。全体的に山田錦の実力を備えた力強い酒には違いませんが、やはり、田酒はいつもの華吹雪が合うなぁと思います。    購入時、「今更何で山田錦なの?」と疑問に思い、質問しました。酒店の店主によると、恐らく、全国的に山田錦が余っているので、それを引き受けたのではないか、とのことです。早速、調べた背景事情は以下の通りです。

農林水産省の「令和2年度酒造好適米等の需要量調査結果・酒造好適米の全体需給の推計」   ...

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