交通事故の被害者さんによく見かけることの一つに、「甘え」があります。この甘えは、事故に遭った気の毒な自分を、周囲が好意的に助けてくれるはず・・との期待です。それは、多くの場面で裏切られることになります。   1、救急車

 自分の希望する病院へ運んでくれません。ケガの症状に対応できる、至近の病院を目指してくれますが、患者の希望はまず通りません。重傷者にとっては、病院を選ぶほどの余裕がないものですが、仮に希望する病院を言っても、希望通りになることは稀です。救急車はタクシーではないのです。   2、警察

 被害者の力になってくれることを期待したいところです。しかし、原則、警察は民事不介入です。加害者に刑罰を問う場合、刑事事件として、その第一次調査を担っているに過ぎません。民事に絡む、過失割合など警察が決めることではありません。どちらの肩を持つことはありません。

 また、ケガをしているにも関わらず、「物件事故扱い」を進められることも珍しくありません。「人身事故扱い」となれば、司法警察官の現場検証と実況見分調書の作成、双方へ供述調書を作成する必要があります。物件事故の何倍も面倒なのです。よく、被害者側にも過失がある場合、「あなたも刑罰に問われる可能性がありすよ(だから物件のままにしよう)」と、まるで脅し文句のように迫ってきます。実際は、加害者に相当のケガがない限り、刑罰に問われることはほとんどありません。ただし、その可能性としては0ではないことを根拠に、常套句になっています。    3、病院

 病院はお金をもらって治療する場所です。そこまでは救済機関と言えます。しかし、事故との因果関係が問われる症状について、責任をもって証明する立場ではありません。具体的には、”その症状は事故によって起きたかどうか”など、保険会社の支払いに関して疑義が生じた場合、その問題には立ち入りたくないのです。病院は淡々と治療するだけ、事故との因果関係など知ったこっちゃないのです。その証明は患者自身で動かなければならないのです。      4、加害者    詫びの電話でも一本入れば良い方で、保険会社に対応を任せ、それっきり消えてしまうのが加害者です。当初、「物件事故扱いにして」と泣きつくときは、それはそれは謝罪・反省の態度です。ところが、刑事処分が決まったら、梨のつぶてとなり・・多くの被害者さんは憤慨することになります。

 交通事故での加害者はたいてい外野になります。1年後の解決時期には、事故のことすら忘れていることでしょう。   5、そして保険会社

 加害者側・保険会社の対応に、激怒している被害者さんをよく見かけます。もちろん、態度の悪い担当者もいないわけではありませんが、多くの場合、被害者さんの「俺は被害者なんだぞ!」との態度に原因があります。保険会社は加害者に代わって、事故対応の代行をしているに過ぎません。被害者に対して贖罪する立場ではないのです。被害者の態度から、担当者は写し鏡の対応になっているのです。

 淡々と保険会社の決めた基準額で解決を迫ってきますが、それは当然の姿勢です。被害者さんは紳士的な態度で、理路整然と損害を主張し、その証拠となる資料を丁寧に提出する必要があります。よく、これら書類提出に際して、「そんなの加害者がやるべきだ!」と言う被害者さんがいますが、それは逆です。法律上、被害者が証拠を集めて突きつける立場なのです。それが社会・大人のルールです。自分(被害者)は相手保険会社の契約者=お客様ではないのです。よくよく自身の立場を理解をして、対応していかなくてはなりません。    このように、周囲に味方はいません。被害者さんは、自動的に救われる理想郷を夢見ている場合ではありません。だからこそ、お金で雇われた弁護士や私共だけが味方になりうるのです。  

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