自賠責保険と労災、高次脳機能障害の等級が違った・・・典型的な流れを説明します。

 自賠責保険の認定で注意・遂行能力の低下、性格変化、情動障害などから5級となった被害者さんですが、その後に労災の審査で顧問医の診察を受けました。電車に乗って一人でやってきて、顧問医の前でしっかり受け答えもできます。普通に歩いて話している姿から・・「5級ほどの重さはないよね」と思われてしまうのです。

 この方、外見は健常者と変わらなくとも、家族によると事故前後の変化が深刻で、易怒性(キレやすい)に悩まされています。ところが、医師のような他人の前になると、わりとシャンとしていて15分程度は易怒性が発揮されません。5~9級位の患者では、易怒性と言っても程度の軽重があります。常に激高している患者さんは3級以上と言えます。

 また、高次脳機能障害者の「病識が乏しい」ことも、軽く評価される理由の一つです。自らの障害を自覚していないのですから、症状を顧問医に完全に説明できないのです。そのような、患者の隠れた障害をどう評価するのでしょうか? 家族から事前に文章で把握したとして、面接した顧問医に表裏を整合できるものしょうか? つまり、高次脳機能障害の臨床経験もない、専門外の医師による、たった1回の、短時間の、面談で等級が判断される可能性があるのです。

 仮に、事前に専門医の検討が挟まったとして、診察を行う顧問医がすべての症状を確認することは不可能に近いと思います。高次脳機能障害の場合、家族同伴の診察を必須条件にして欲しいところです。何より、高次脳機能障害を熟知した専門医の診察としてもらわなければ、正確な障害の把握など無理です。たまに、事前の審査内容を無視するかの如く、独断で判断する顧問医がいるから怖いのです。    怖い例 👉 初めての経験 労災の顧問医が独断?    一行政書士事務所の訴えなどむなしく、労災では高次脳機能障害の知見乏しい医師による、素人判断に晒される危険が続くと思います。

   それでは、「自賠責>労災」となった等級認定、弊所での実例を挙げます。以下の2例は、労災の審査がお粗末だったと言うより、双方の視点の違いが浮き彫りとなった、致し方ない労災の低等級だったと言えます。      👉 5級2号:高次脳機能障害(40代男性・神奈川県) 自賠責5級 ⇒ 労災9級

 この件は、父の工務店に復職できたことが、労働能力を判断基準に置きがちな労災の等級を下げました。もちろん、現場ではその障害から能力低下がありましたが、親元なので降格やクビになどなりません。また、睡眠や味覚に障害があっても、労働には直接差し支えないとする労災の視点が邪魔になったと思います。さらに、自賠責の申請から労災の申請まで、その数か月の期間に回復が進んだことも、労災顧問医の診察で把握されました。これらの点が低等級の原因です。あまりの等級ダウンから、労災に審査請求しましたが覆らず、苦渋の結果となりました。       👉 実績投稿:高次脳機能障害の審査、自賠責と労災の違い 自賠責7級 ⇒ 労災14級

 このケースは、自賠責は高次脳機能障害の認定を「神経系統の障害」として、一まとめに7級としました。頚椎や鎖骨、上肢・下肢にも骨折があり、痛み・しびれの残存が多く、それら神経症状と脳障害を併せての認定です。自賠責らしく、画像所見の重視の観点から、肩関節の機能障害等はその癒合状態によって可動域制限を否定しています。

 一方、労災は脳障害はほとんどない=14級評価とし、自賠責とは逆に、上肢の機能障害などの可動域制限12級や、頚椎の変形11級を容易に認めています。それぞれ真逆の結果に・・まさに、本シリーズのテーマ「自賠責と労災の認定基準の違い」を体現している実例です。     高次脳機能障害について、弊所では自賠責と労災をほぼ同じ等級に認定させていますが、上記のような逆転の結果も数件生じているのです。         次回・最終回 ⇒ ⑤ ~ ...

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