2、肩腱板損傷の診断    その多くは、棘上筋腱が大結節付着部から断裂するケースです。   ■ 圧痛部位

 大結節上方(肩と腕をつなぐ部分)に痛みが生じます。特に腕を外転60度から上に挙げた時に顕著で、肩の高さ以上に上げるとその痛みが軽減します。腕の無力感も伴うので腕の上げ下げ自体が自力で困難となります。これらがドロップアームサイン(昨日業務日誌参照)によって判定できます。     ■ 画像

① MRI(T2) ・・・腱板の断裂部分が高輝度で描出されます。   ② MRI(造影剤使用) ・・・完全断裂に至らない損傷の場合、微妙な病変部をよりはっきりさせるため造影剤が有効です。腱板の亀裂部分から造影剤が漏出するので損傷が明らかになります。しかし、造影剤使用はかなり限定的です。最近のMRI高性能マシン3.0テスラでは、断裂部がしっかり写るからです。MRI検査も技師の腕によって左右します。   ③ エコー ・・・超音波をあて反射音波の変化よって画像を描出する技術です、基本的に超音波は液体・固体がよく伝わり、気体は伝わりにくい。よって断裂・亀裂部分が腱の表面に描出されます。MRIより、エコー診断に自信のあるドクターもおりました。   ④ 関節鏡 ・・・腱板不全断裂の確定診断に有用です。主に鏡視下手術(直径2~10mmの細長いビデオカメラを手術部位に挿入し、テレビモニター上に映し出された映像を見ながら行う手術)の際に用います。   ■ 筋萎縮

 視認できますので、等級申請の際に写真添付をします。腱板断裂では断裂のあった棘上筋もしくは棘下筋の委縮となります。しかし他の筋に及ぶ場合、僧帽筋(副神経麻痺)、三角筋(腋窩神経麻痺)の時は腱板損傷以外の病態も疑う必要があります。  

<後遺障害等級>

部位

主要運動

参考運動

肩関節

屈曲 ...

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 最近、肩の不調を訴える被害者が続きました。交通事故外傷でも比較的見逃しやすい筋腱の損傷です。

 断裂まですれば、それなりの検査と治療が行われます。しかし、僅かな亀裂や損傷の場合、単なる捻挫の類と同一視されがちです。後遺障害の診断の時になって「肩が動かない!」と訴えても、診断名や治療実績がなければ認定上疑問視されてしまいます。人体でもっとも自由に動く関節部だからでしょうか、肩の関節部は骨も筋も複雑です。   【1】肩の機能障害      骨に異常はありませんでしたが・・・    ■ 肩関節可動域からチェック

① 腕の拳上(呼ばれてハイッ!と手を上げる)  

 可動域検査で言うと、「屈曲」(前方拳上)です。通常「気を付けの」位置から肩間節を軸に腕を耳の横まで拳げる。背泳ぎの腕の動きです。180度 が参考可動域です。

 ※ 体の柔らかさには個人差がありますので、腕の左右の差を見て異常と判断します。

 上げきった状態での安定には肩周りの鳥口上腕靭帯後方、間節包後部、小円筋、大円筋、棘下筋(肩回りほぼすべて)が正常である必要があります。これらの筋や他に広背筋、大胸筋胸肋部の緊張によって動きが制限されます。   ② 逆に腕を後ろに曲げます  

 可動域検査で言うと、「伸展」(後方拳上)です。「気を付け」の位置から肩間節を軸に腕を後方へ伸ばす = 50度 が参考可動域です。

 鳥口上腕靭帯後方、間節包前部、他に大胸筋鎖骨部、前鋸筋の緊張が影響します。   ③ 真横から腕を挙上

 可動域検査で言うと、「外転」(側方拳上)です。 通常「気を付けの」位置から羽根を広げるように肩間節を軸に腕を耳の横まで拳げる。180度 が参考可動域です。

 屈曲と混同しているケースをみます。説明する時は、「ジュディ・オングのように」と言っています。

 上げきった状態での安定には、肩周りの鳥口上腕靭帯後方、間節包後部、小円筋、大円筋、棘上・下筋(肩回りほぼすべて)が正常である必要があります。他に間節上腕靭帯中部・下部、間節包下部、広背筋、大胸筋の緊張も影響します。

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 腓骨神経麻痺。すねの外側を走る神経が断裂や損傷を受け、足首や足指の自動運動が不能になる症状です。  浅腓骨神経と深腓骨神経の2本の神経が前頚骨筋、長指伸筋、長母指伸筋、第三腓骨筋、長腓骨筋、短腓骨筋、短指伸筋、を支配しています。

 腓骨や脛骨の骨折の影響で神経が損傷するケースが多く、これらが損傷すると自分の意思で足首・足指を曲げられなくなります。程度の軽重はありますが、以下の後遺障害となります。   ○ 足首 → 1下肢の3大関節中の1下肢の用を廃したもの(著しい障害を残すもの =10級)   ○ 足指 → 1足の第一の足指又は他の4の足指の用を廃したもの =12級   ・・・ この場合、上記二つの認定から、併合7級となるはずでした。    この障害の立証で、被害者は2つの壁を経験しました。  

第1の壁 整形外科の仕事は骨をくっつけること?

   脛骨骨折の手術で有名なある名医の手術を受けました。プレートとねじで折れた脛骨をしっかり固定、10か月後見事に骨をくっつけプレートを摘出しました。腕は評判通りです。レントゲンを見ながら、「どうだね、元通りになったろ」と自画自賛です。しかし患者は「あれ足首が動かないな・・」、踏ん張りが利かなくて杖がないと歩けません。足首はだらんと下がったまま動きません。スリッパも自然に脱げてしまう。

 対する医師は、「あとはリハビリを頑張ることだね」と。満足げにリハビリ科に引き継ぎました。足首が曲がらない事には責任がないようです。

 後に後遺障害の審査となり、保険会社に言われるまま、そのレントゲン写真を提出しました。結果は 「骨の癒合は正常で、変形癒合、偽関節は見られないので・・・云々。しかしながら痛みや運動不能は認められるので局部に頑固な神経症状を残すものとして12級13号・・・えっ、杖なしに歩けなくなったのにそんな軽い障害?となりました。

 確かに脛のレントゲンを見ますと、骨折の癒合は問題ないのですが、MRIでは、周辺の筋組織の損傷がはっきり残っています。さらに外見からも筋委縮がはっきり見て取れます。左右の足の太さが違っているのです。そして、いくらリハビリしても足首も足指も曲がりません。これらの事実は審査されていません。   

第2の壁  治療は終わったのに、今頃になってなんで検査を?

   12級13号では異議申立の必要があります。必要な作業は・・・   1、足首・足指の可動域について再度計測します。骨をきれいにつなげる名医でさえ、計測を間違えています。   2、徒手筋力テストを行い、筋力低下を数値化します。   3、筋委縮を立証するため左右の足の外周を計測します。 ※ 私は写真も添付しました。   4、そして、必須は神経伝導速度検査。 麻痺が確実なら「誘導不能」となります。   5、できれば、針筋電図検査。 神経麻痺立証の決定版です。これができれば、4の必要性は下がります。    主治医にお願いして、検査をやり直しです。しかし、この名医である主治医は「可動域の計測は正しい」と自らの間違いを認めません。さらに「筋電図は必要ない」と紹介状を書いてくれません。「私の治療に問題はなかったのだ!」と依怙地になっています。患者さんはこれ以上逆らうこともできず、すごすごと帰ります。手術でお世話になったのだから当然です。    これら困難な2つの壁を乗り越えるのが私の仕事です。もちろん、医師の技術と尽力には敬意を表します。しかしベストな流れは骨の癒合の時点で上記1~5の検査を実施させ、間違いのない診断書を作成することです。そのために、頑なな主治医を説得するか、場合によっては別の病院へ誘導する必要があります。    ちなみにこの被害者のケースでは異議申し立てを行い、腓骨神経麻痺で9級、股関節可動域制限や膝関節硬縮による短縮障害とも併合しなんとか7級までこぎつけました。悪戦苦闘、9か月もかかったのです。    ありのままの真実を立証する・・・名医のおかげで茨の道でした。   続きを読む »

 後遺障害を観察する場合、二つの視点があります。他覚的所見と自覚症状です。簡単に言いますと、   〇 他覚的所見・・・専門家の見立て。つまり医師による診断です。   〇 自覚症状 ・・・患者自らが訴える症状です。「ここが痛い」「関節が曲がらない」等々です。    調査事務所による審査は当然、他覚的所見を重視します。何故なら、自己申告の症状は詐病(保険金目的のウソ障害)、または、大げさの可能性があるからです。審査側が性悪説(人は元来嘘つき)で考えることは仕方ないのかもしれません。

 したがって、自分にしかわからない症状や苦しみを医師に把握して頂き、確実に診断書に残して頂く必要があります。ここまでは、どの後遺障害にも共通することですが、高次脳機能障害では少し勝手が違います。それは高次脳機能障害の患者の多くが、身らの障害に自覚がないため、認知障害、記憶障害、性格変化、社会適合性など、一緒に暮らす家族の観察が重要となってくるからです。医師の限られた診察時間だけではわからない、細かな変化をきちんと申告、立証する必要があります。

 ほんの数年前、ようやく障害についての審査項目と書式が整理されました。医師の診断書とは別に「日常生活報告書」を添付して、家族の観察結果を申告します。「言葉による指示を理解できますか?」「タバコの火やガスの始末ができますか?」・・・50程度の質問に対し、6段階の評価をしていきます。この書面は、いくらでも恣意的、実態より重めに書くことができます。やはり、参考程度にしか見られないのでは・・という不安も尽きません。そこで、秋葉事務所では、ビデオを用いることがあります。

 元来、裁判で障害の有無・程度を争う際、証拠として映像を用いる方法でした。であれば、自賠責保険の後遺障害の審査にも有力な資料となるはずです。書面では書ききれない患者さん特有の症状や、書面からは伝わらない障害の事実・実態が強烈にアピールできます。先日も、担当の患者さんのビデオを撮影しました。その効果を実感しています。とりわけ3~7級の判定は、大変微妙な審査のとなるはずだからです。    現在、高次脳機能障害を扱う弁護士・行政書士事務所はホームページで大勢見られます。もし、ご相談を考えるなら以下の4要件を指標として下さい。   1.高次脳外来に専門医が在籍、評価ができる病院へ誘致できるか?   2. 

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 女子の外貌に醜状を残すもの     12級5号 

 女子の外貌に著しい醜状を残すもの  7級5号

   保険会社に入社し初めて遭遇した後遺障害が醜状痕でした。

 私の担当する契約者さんが運転中に追突事故を起こしました。幸い相手はケガもなく、車の修理だけで示談に応じてくれました。しかし運転していた契約者さん(24歳独身女子)はおでこをバックミラーに打ちつけ何針か縫うケガを負いました。数か月たっても数cmのキズは残っています。

 さあ、初めて後遺障害の申請を行う仕事になりました。

 

顔面部では 10円銅貨以上の瘢痕または 3cm 以上の線状痕 →12級

      鶏卵大以上の瘢痕または 5cm 以上の線状痕 → 7級 です。

   この件で初めて自賠責調査事務所の方と会いました。ほとんどのケガ・障害の審査は書面ですが醜状痕のみ面接があります。すでに私が撮ったキズの写真は送付済みで、キズの長さは約4cmだったと記憶しています。それを踏まえ、調査員が契約者宅へ訪問してくれました。金属製の定規を持って・・。

   訪問した調査員は「はい前髪上げて」と言い、冷たい定規を顔面にあてがいました。「2.8cmかな・・ごにょごにょ」なんか歯切れの悪い説明が延々と続きます。その間、終始涙を溜めて真っ赤な顔の女性契約者さま。自分の顔のキズが将来残るか否か、そんな議論を目の前でされていては無理もないです。

 それに面談前にお化粧!をしようとしていて、私が慌てて止めたのです。    結局、家族も「すぐに消えるよ」「ファンデーション塗ったらわからないよ」と後遺障害の否定に流れていきます。たった一人「12級では・・」と主張する私は孤立無援です。最後に調査員はケロイド状のキズやえぐれたようなえぐいキズの写真を見せて「これが後遺障害の対象」です、と言って「今回はたいしたことなくてよかったですね~」と帰っていきました。 

 これがきっかけで後遺障害認定の困難さを知りました。審査の厳しさ、本人の自覚、周囲の雑音、すべてが等級認定の障害となります。これらをうまくコントロールしなければなりません。今なら12級を獲得する自信がありますが・・ 

 本当に重篤な(重い)ケガを負った人、前向きに回復へ努力する人ほど後遺障害を認めたくないものなのです。その辺の心理、このエピソードからは女心、勉強することは医学的知識だけでは済みません。                                                                                   

 最新式はデジタル表示ですね  

<注意>後遺障害認定等級について平成23年に改正されています。  以下新基準を記載します。

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   頭部を受傷、脳にダメージを負った結果、認知障害や記憶障害、性格変化、身体の麻痺などの後遺障害をもたらすのが「高次脳機能障害」です。10年前までは、その後遺障害等級の基準が整理されていませんでした。今でこそ知られるようになったこの障害ですが、裁判の実例にかなりバラつきのある分野です。それは、画像や計測値だけではなく、日常生活の変化を正確に観察・申告するといった要素も加わるからです。そして、立証も様々なハードルに直面します。   ① 事故直後の意識障害の様子がしっかり記録されているか?

 意識不明、昏睡状態と記録されていれば問題ないですが、記録が空欄もしくは、混濁程度に書かれると、障害そのものが認定されなくなります。ここで「意識清明」と書かれたら高次脳機能障害は「非該当」濃厚となります。これを覆すのは絶望的です。   ② 運ばれた病院が高次脳機能障害に対応できているか?主治医の知識・理解があるか?    急性硬膜下血腫等で手術を行えば、主治医も後遺症の可能性を認識します。しかし、レントゲンだけ撮って「骨には異常ないですね」、CTでも「脳挫傷はないです」、もしくは「わずかです」となると、1週間で退院?なんて例もありました。その場合は、主治医も(外来で何度も診察を重れば別ですが)後遺症の認識を持ちません。    何より、脳のダメージは、経過的に画像診断しなければいけません。ダメージを受けた脳の特徴である脳委縮や脳室拡大は、徐々に進行して、3か月後に顕著になるケースもあります。当然、この病院での検査は無理です。設備のある病院での検査のやり直しが必要となります。   ③ そして、検査だけやってくれる、都合の良い病院はほんとんどありません。

 事故後1年。家族は、回復の願いを込めて被害者に接していますが、忘れっぽい、外出すると迷子になる、家電の操作ができない、会話が成り立たない、キレやすい、趣味に興味を示さなくなった、無気力・・・そして多くの場合、本人に障害の自覚がない。    この段階で等級認定に入るのですが、① ②のつまづきがあると、立証作業は困難を極めます。何故なら、十分な検査設備・人員を備える病院は日本に数えるほどで、設備があったとしても、「治療した病院の検査が不足していましたらから、検査だけやって下さい」では、ほとんどの病院が嫌がります。強力なコネでもない限り、遠まわしに断ります。その理由は、単に治療での収入がないのに検査だけは損、保険適用の問題、様々な裏事情が絡みます。     上記は実際に経験した例です。いかに早めにご相談頂かなければならないか、おわかりと思います。回復への希望、主治医への気遣い、保険会社担当者への過ぎる期待・・・ご家族の方は、これらから距離を置いて冷静に考えることが必要です。    次回 ⇒ 後遺障害認定への道  

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