後遺障害を観察する場合、二つの視点があります。他覚的所見と自覚症状です。簡単に言いますと、
 
〇 他覚的所見・・・専門家の見立て。つまり医師による診断です。
 
〇 自覚症状 ・・・患者自らが訴える症状です。「ここが痛い」「関節が曲がらない」等々です。
 
 調査事務所による審査は当然、他覚的所見を重視します。何故なら、自己申告の症状は詐病(保険金目的のウソ障害)、または、大げさの可能性があるからです。審査側が性悪説(人は元来嘘つき)で考えることは仕方ないのかもしれません。

 したがって、自分にしかわからない症状や苦しみを医師に把握して頂き、確実に診断書に残して頂く必要があります。ここまでは、どの後遺障害にも共通することですが、高次脳機能障害では少し勝手が違います。それは高次脳機能障害の患者の多くが、身らの障害に自覚がないため、認知障害、記憶障害、性格変化、社会適合性など、一緒に暮らす家族の観察が重要となってくるからです。医師の限られた診察時間だけではわからない、細かな変化をきちんと申告、立証する必要があります。

 ほんの数年前、ようやく障害についての審査項目と書式が整理されました。医師の診断書とは別に「日常生活報告書」を添付して、家族の観察結果を申告します。「言葉による指示を理解できますか?」「タバコの火やガスの始末ができますか?」・・・50程度の質問に対し、6段階の評価をしていきます。この書面は、いくらでも恣意的、実態より重めに書くことができます。やはり、参考程度にしか見られないのでは・・という不安も尽きません。そこで、秋葉事務所では、ビデオを用いることがあります。

 元来、裁判で障害の有無・程度を争う際、証拠として映像を用いる方法でした。であれば、自賠責保険の後遺障害の審査にも有力な資料となるはずです。書面では書ききれない患者さん特有の症状や、書面からは伝わらない障害の事実・実態が強烈にアピールできます。先日も、担当の患者さんのビデオを撮影しました。その効果を実感しています。とりわけ3~7級の判定は、大変微妙な審査のとなるはずだからです。
 
 現在、高次脳機能障害を扱う弁護士・行政書士事務所はホームページで大勢見られます。もし、ご相談を考えるなら以下の4要件を指標として下さい。
 
1.高次脳外来に専門医が在籍、評価ができる病院へ誘致できるか?
 
2. 数種のMRI、他にMRA、スペクトなどの画像検査の充実している病院へ誘致できるか?
 
3.言語聴覚士による神経心理学検査が可能な病院へ誘致できるか?
 
4.きわどい症状の時に決め手となる、ビデオ立証など、様々な立証手段を持っているか?
 
 逆に、「画像検査は撮ってあるものだけ提出しましょう」、「長谷川式とMMSEをやったので大丈夫です」、「日常生活報告書等、書類を作成します」、「病院へ同行してアドバイスします」このレベルの「甘い」作業しかできない場合、厳しい結果が待っていると認識して下さい。
 
 次回 ⇒ 神経心理学検査 認知機能・知能検査