【3】脊髄症型(正中型)

 椎間板や骨棘が、脊髄を圧迫するものです。左右の神経根への圧迫と区別して、正中型とも呼ばれます。   (1)症状

 事故後、頚部痛どころか、上肢や下肢までひどい”しびれ”が生じている場合です。例えば上肢については、両手で顔を洗うときに両手が上手く動かない、ボタンがかけずらい、歯ブラシが上手くできない、ボタンがはめられない・・。下肢については、しびれで長時間の歩行でだるさを伴い、階段昇降で痛みが走る・・。神経根圧迫であれば片側の上肢のみに症状がでることに対し、両上肢、あるいは下肢にまで及ぶ場合、(重度の)脊髄損傷か(軽度の)脊髄症型を疑うべきです。   (2)治療

 まずレントゲンで頚椎の損傷がないか確認します。次いで、MRIでヘルニアの脊髄圧迫なのか、脊髄そのものに損傷があるのかを判断します。ヘルニアの圧迫であれば神経根型と類似の治療となります。脊髄に損傷がある場合、必ずT2(高輝度所見)で撮影します。この場合は脊髄に不自然に白く光る病変部が移ります。造影剤を使うこともあります。脊髄に高輝度所見が現れた場合、脊髄損傷は確定的です。これは、「むち打ち」どころの騒ぎではなくなります。

 受傷直後は安静が第一ですが、積極的な処置として、やはり神経ブロックが有用です。症状に応じて硬膜外ブロック、星状神経節ブロックを選択します。このブロック注射は手術扱いで点数(治療費)の高さから、一部の整形外科で積極的に採用しています。しかし、腕の差がかなりでる技術なので医師選びが重要です。

 医師によっては、ステロイド治療に積極的です。副作用が強い薬剤なので、自身の症状と比べて、慎重な判断が望まれます。

 画像に現れるほどの脊髄損傷ならば、残念ながらほぼ不可逆的です。神経線維の切断された脊髄は、手術での回復は見込めません。最新の電極を埋め込む術式(脊髄刺激電極埋め込み術)も、完全ではありません。

 対して、脊髄圧迫に留まる場合でも、麻痺が進行しているケースでは手術適用となります。前方固定術が代表的で、この手術は脊髄を圧迫している椎間板を除去し、腸骨の骨片を空いた隙間に埋め込みます。こでれ、脊柱の隙間が広がり、脊髄への圧迫が除去されます。脊柱管狭窄症でも、この術式が用いられます。これも、執刀する医師により判断したいところです。 続きを読む »

【2】神経根型

   神経根型とは、上図のように脊髄から左右に派生する、神経の通る鞘(さや)に、椎間板や骨棘の圧迫が生じる状態です。左右両方への圧迫もありますが、多くは左右どちらかの圧迫で、圧迫側の上肢に放散痛(腕を走るようなビリビリしたしびれ)が発症します。スパーリングテストとは、わざと首を横に倒して、神経根への圧迫を強め、その放散痛を誘発させるものです。

右に倒すと、右腕~指がビリビリ

 これは、左右の神経根が鎖骨下の上腕神経を経由して、腕の3本の神経(橈骨神経、正中神経、尺骨神経)を経て、指先の抹消神経までつながっているからです。このように、通常の頚椎捻挫に比べて、神経症状が明らかに説明できます。     (1)症状

 肩から手指にかけてしびれを自覚します。首を曲げるとピリピリとした感覚が走ります。先の説明の通り「放散痛」が主な症状です。この状態はMRIで視認できます。薬は単なる痛み止めから、神経性疼痛に対処する「リリカ(プレガバリン)」に変更されます。それでも効かない場合、「トラムセット」など、オピオイド系(麻薬の成分入り)になります。    神経性疼痛の痛み止め薬 👉 続きを読む »

(0)エピローグ

 最初に「むち打ち」被害に遭った被害者さんに、むち打ちの概要と、解決までの道筋を説明します。     交通事故外傷の実に60%は「むち打ち」です。「むち打ち」とは俗称であり、正式にはいくつかの病態に分かれます。いずれも、治療方法が確立されたとは言い難いもので、その理学療法は、電気治療、牽引、ホットパックなど、対処療法の域をでません。痛みには、痛み止め薬が処方されます。また、徒手による整復、マッサージも有効です。頚部~肩への過緊張をとることも改善につながります。この施術、整骨院・接骨院が人気の理由と思います。     多くは安静を続ければ、一定の回復が図れます。よって、保険会社は3カ月で治療費を打ち切る算段をしています。また、仮に後遺障害14級9号が認められても、逸失利益(将来にわたる損害)を2~3年と少なくみる理由は、「いずれ、むち打ちは治るのだから・・」です。    確かに、被害者意識と相まって、症状を重く感じ、治療が長期化するケースは多いものです。被害者さん側も、ある程度の治療を経て、それでよしとする潔さは必要です。ただし、一定数の方は単なる打撲・捻挫と言った筋肉の炎症に収まらず、頚部神経への衝撃から、神経症状に陥ります。すると、痛みに留まらず、上肢のしびれ、頚から肩にかけて重だるい、頭痛、めまい、吐き気、耳鳴り、疲労感など、不定愁訴(ふていしゅうそ)と呼ばれる「なんだか調子悪い」状態が数か月続きます。    それでも、相手損保は何か月も治療費をみてくれないでしょう。だって「たかが捻挫」と思っているからです。およそ、3カ月での打ち切りを予定しています。その場合、”単なる捻挫ではない神経症状”を訴えて、なんとか6カ月までみてもらい、症状固定とします。すぐさま後遺障害を申請、14級9号の認定を得ます。14級とは言え、弁護士に交渉を依頼すれば、主婦でも300万円を超える賠償金になります。その後、自費、あるいは健保で治療をするには、十分な資金を確保できるのです。     損保と延々と治療費を巡って争うことに「利」はありません。「離」あるのみです。予後の治療費を賠償金で確保、つまり、実利ある解決に舵を切ります。一日も早く交通事故を終わりにさせ、平穏な日常生活を取り戻すのです。いつまでも被害事故に捕らわれる日常こそ、最大の損害と思います。    対する相手損保の担当者も、早期に治療費を打切り、解決させたいのです。解決のスピードこそ、保険会社の優先事項だからです。    さて、「むち打ち」の症状は病態によって大きな幅があります。数日で軽快する軽傷から、手術を要する重症まで、症状の個人差もあり、その差は広大です。まず、自らの病態を把握し、適切な医師の治療を受ける必要があります。併せて、症状固定時に間違いのない後遺症診断と、後遺障害・等級認定が得られるよう、周到に計画・準備をします。

 その後、交通事故に長けた弁護士に委任して交渉解決、あるいは「交通事故紛争処理センター」の斡旋で解決させます。速やかに交通事故から卒業しましょう。  

【1】頚椎捻挫型

(1)症状

 多くは追突事故を受けた後に頚部に違和感が生じます。当日はレントゲンで「骨に異常ないですね」と言われ、痛み止めの薬(ロキソニン、カロナールなど)、湿布やモーラステープ、ロキソニンハップが処方されて帰ります。翌日~3日後位になると、痛みに加え、こわばり、肩が重だるい、腕から手指にかけてしびれを感じるようになります。    薬 👉 ロキソニン 湿布&モーラステープ   (2)治療

 安静が第一です。無理に動かしたりせず、痛みが和らぐのを待ちます。町の整形外科で理学療法を続けても良いでしょう。   (3)後遺障害

 医師や保険会社の言う通り、多くは「治る」ものです。したがって、週1回リハビリに通った程度では後遺障害とはなりません。もし、1か月経っても症状が軽減しない場合、早期に【2】神経根型、【3】正中型~の病態を疑い、その際、MRI撮影をして下さい。普通、個人開業医にMRIの設備がありませんので、紹介状を頂いて、総合病院での検査になるはずです。

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  (1)病態

 肉離れ、筋違いの正しい傷病名は、筋挫傷です。筋挫傷とは、筋肉や腱が打撃や無理に引き伸ばされることで生じる外傷です。筋肉組織をやや伸ばした軽度なもの、組織が完全断裂する重度なものまで、拡がりがあります。   ※ 腱・・・筋肉を骨に付着させる組織のことです。交通事故では、転倒時の打撲などで、筋肉を損傷し、筋肉の腫れや内出血が起こります。   (2)症状

 打撲部の痛み、腫れ、圧痛があり、太ももの前の筋、大腿四頭筋であれば、膝の屈曲が制限され、大腿の後部の筋、ハムストリングスであれば、膝の伸展が制限、ふくらはぎの筋、腓腹筋であれば、足関節の背屈が制限されます。受傷機転、損傷した筋肉の圧痛部位から、確定診断が行われています。   (3)治療

 損傷のレベル、範囲、血腫の存在を確認するには、エコー検査やMRIが有用です。初期段階は、安静が一番で、痛いと感じる動作は避けるべきです。

 痛みが和らぐ安定期に入ったら、血流を良くして回復を促します。血流改善には、リハビリで、温める、ストレッチ、マッサージなどが行われています。筋肉に炎症があり、炎症が筋膜に生じているときは、4~7日、炎症が筋肉の中心に生じているときは、3~5日程度で完治します。   ◆ 捻挫のしくみ?

 さて、捻挫とは、靭帯の外傷を意味しています。靭帯は骨と骨をつないでいる組織で、関節内に存在しています。靭帯には、関節が正常範囲を越えて曲がる、伸ばされることのないように安定させる役割があります。

 例えば、足首の外側の関節には、3本の靭帯があります。この靭帯は、足部が前に突出する、内側に曲がり過ぎることのないようにシッカリとつなぎ止めていますが、外側からの着地で、無理に体重が掛かると、靭帯だけでは支え切れなくなって、伸びる、断裂することになり、これを足関節捻挫と呼んでいます。 このような靱帯の外傷は、肘や膝など体内の他の関節でも発生しています。

   発生直後から痛みのために歩行が困難となります。損傷を受けた筋の部位に圧痛があり、ハムストリングスでは、膝の屈曲運動で抵抗を加えると痛みが増強し、ハムストリングスを伸ばすような動作でも、痛みが強くなります。発症機転、損傷筋の圧痛部位から損傷筋の診断をします。

 損傷程度や範囲、血腫の存在の判断には超音波検査やMRIが有用です。受傷直後は、アイシングと、伸縮包帯で圧迫し、損傷を最小限に押さえ込みます。3~5日を経過、痛みが軽くなれば、患部を暖め、ストレッチング運動により、筋の拘縮を予防し、関節の屈伸動作のリハビリ療法が行われます。再発を繰り返すことがあり、慎重に対応する必要があります。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 腓腹筋(ひふくきん)断裂・肉離れ

(1)病態

 ふくらはぎは、下腿骨の脛骨と腓骨の後方に位置するのですが、下腿骨後方は、コンパートメントと呼ばれる隔壁で、浅部と深部に分けられています。

 ふくらはぎは、浅部にある筋肉、腓腹筋とヒラメ筋で構成されており、この2つの筋肉は下腿三頭筋と呼ばれています。下腿三頭筋はアキレス腱に連結しています。   ※ コンパートメント・・・筋肉を覆う筋膜組織で構成された隔壁で、筋間中隔とも呼ばれます。   (2)症状

 ふくらはぎの痛み、内出血、ふくらはぎの一部に凹みが見られる。   (3)治療

 XPで骨折を確認し、次ぎに、超音波検査、MRIで筋肉の損傷状態を確認します。治療は、消炎鎮痛剤、局所注射、固定、物理療法で炎症を抑えますその後、運動療法で筋肉の伸張性を高め、筋肉を柔軟にし、筋力強化を行います

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 変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)      左から 「正常」  ⇒  「初期」  ⇒  「進行期」   (1)病態

 交通事故で、膝関節のプラトー骨折、脱臼、前・後十字靱帯や半月板を損傷しました。救急搬送された治療先に専門医が配置されておらず、結果、不適切な治療が行われた?事故受傷で、膝関節部は不可逆的に破壊され、切断は免れたものの、大きな後遺障害を残した?

 上記の2つのパターンでは、示談締結後の2次性疾患として、変形性膝関節症が予想されます。初期では、軟骨がすり減り、間隔が狭くなる。進行期に至ると、骨棘形成が進み、骨同士が直接にぶつかる。

 正常な膝関節の表面は、軟骨で覆われています。軟骨の働きにより、衝撃を和らげ、関節の動きは滑らかです。そして、滑膜から分泌される関節液により、大腿骨はアイススケートよりも滑らかに滑走しています。関節液は、軟骨の成分であるヒアルロン酸を含んだ粘りのある液体で、膝関節の潤滑油と、軟骨に対する栄養補給の役割を果たしているのです。   続きを読む »

  (1)病態

 上・下肢の筋肉、血管や神経組織は、筋膜や骨間膜に囲まれており、この閉鎖された空間、構造をコンパートメント、あるいは筋区画と呼んでいます。

 下腿には、イラストで示すように、前部、外側、深後部、浅後部の4つのコンパートメントがあります。   ※ コンパートメント ・・・前腕部のコンパートメントは、屈筋群、伸筋群、橈側伸筋群の3つです。前腕部に生じたものは、コンパートメント症候群ではなく、フォルクマン拘縮と呼ばれています。

 前腕部では、屈筋群が非可逆性壊死に陥り、その末梢に拘縮や麻痺を生じることが多いのです。交通事故による大きな衝撃で、この内部に出血が起きると、内圧が上昇し、細動脈を圧迫・閉塞、筋肉や神経に血液が送れなくなり、循環不全が発生し、筋・腱・神経組織は壊死状態となります。この状態が長く続くと、元に戻らなくなってしまいます。

 元に戻らなくなることを、医学の世界では、非可逆性変化といいます。筋肉は4~12時間、神経は12時間を経過すると非可逆性となるのです。脛骨々幹部骨折に合併して、コンパートメント症候群を発症することがあり、かつての交通事故相談会では、1年間に1~2例程度を経験しています。   続きを読む »

(1)病態

 腓骨の単独骨折を解説します。腓骨骨折は、近位端骨折、骨幹部、遠位端骨折の3つに大別されます。

赤○印、上から近位端、骨幹部、遠位端

 腓骨は、脛骨と対になって下腿を形成している骨で、長管骨に属し、脛骨の外側に位置しています。右膝外側を手で触れると、ボコッと飛び出している部分がありますが、それが腓骨の近位端部です。

 膨らんでいる近位端は、腓骨頭と呼ばれています。腓骨頭の先端にはとがった腓骨頭尖があり、脛骨に接する部分に腓骨頭関節面を有しています。

 交通事故では、バイク、自転車と自動車の出合い頭衝突などで、膝の外側部に直撃を受けたときに、腓骨近位端骨折もしくは腓骨頭骨折を発症しています。

 腓骨頭部には、坐骨神経から分岐した腓骨神経が走行しており、腓骨神経麻痺を合併することがあり、そうなると、大変厄介です(腓骨神経麻痺の詳細は、その傷病名で追って解説します)。中央部の骨折は、骨幹部骨折と呼ばれています。

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膝窩動脈損傷(しっかどうみゃくそんしょう)

(1)病態

 鼠蹊部から膝上部まで走行する大腿動脈は、膝窩を通るところで膝窩動脈と名を変えます。

 膝窩とは、膝の後ろのくぼんだ部分です。膝窩動脈損傷は、圧倒的にバイクVS自動車の衝突で発生しています。

 大腿骨顆部骨折、膝関節脱臼、脛・腓骨開放骨折、これらの傷病名に合併することが多く、血行再建が遅れると、膝上切断となる重症例です。特に、膝関節脱臼に伴う膝窩動脈損傷の発生率は、20~40%と報告されています。

 交通事故による膝窩動脈損傷では、骨折や関節・筋損傷などの複雑な病態を合併することが多く、血行再建や観血的整復術は、専門医が担当すべき領域です。   (2)症状

 膝窩動脈損傷は、大腿骨顆部骨折、膝関節脱臼、脛・腓骨開放骨折などに合併して発症することがほとんどで、症状は、これらの骨折や脱臼に伴い、骨折部の激痛、腫れなどで立ち上がることもできませんが、膝窩動脈損傷に限って解説するのであれば、損傷下肢は全体に腫れ上がり、膝関節を中心に皮下出血が認められ、下腿の知覚障害、運動麻痺、チアノーゼが認められることもあります。   続きを読む »

膝蓋前滑液包炎(しつがいぜんかつえきほうえん)

上の赤は膝蓋前皮下滑液包、下の赤が脛骨粗面皮下滑液包

  (1)病態

 膝蓋前滑液包は、皮膚と膝蓋骨、膝のお皿の間に位置しており、膝に対する摩擦を和らげ、膝関節の可動域を最大にする役目を果たしています。

 交通事故では、多くが自転車で転倒、膝を強く打ったときに発症しています。頻繁な膝の曲げ伸ばしで発症することもあって、Housemaid’s Knee(女中膝)とも呼ばれています。   (2)症状

 膝蓋骨の上辺り、部分的に、直径2~3cmの腫れが出現、触れるとブヨブヨ感があります。次第に痛みが出現、腫れもやや大きくなり、膝をスムースに動かせなくなります。このとき、膝蓋前滑液包は炎症を起こしており、ドロドロの滑液包に水がたまっている状態です。   続きを読む »

(4)後遺障害のポイント   Ⅰ. 2014年の無料相談会で、この傷病名が記載された診断書を発見しました。

 一般的に、膝離断性骨軟骨炎は、スポーツによるストレスの繰り返しで発症するものであり、交通事故とは関係のない傷病名と理解していました。初診の救急病院の診断書には、左鎖骨骨折、右膝捻挫と記載されています。右膝離断性骨軟骨炎は、最後に診察を受けた医大系膝関節外来の専門医が診断したものです。

 これで、ピンときました。初診の整形外科医は、XPで右膝をチェック、骨折がなかったので、右膝捻挫と診断したのです。「静かにしていれば、その内、治る?」 これでスルーされたのです。

 「なにか、スポーツをやっておられました?」・・被害者は、趣味でジョギングをしていたのですが、事故後1カ月でウォーキングを開始した頃から、右膝に痛みを感じるようになり、3カ月を経過してジョギングに復帰すると、突然の激痛で膝が曲がらなくなったとのことです。ネット検索で医大系病院の膝関節外来を受診、右膝関節離断性骨軟骨炎と診断され、関節鏡視下で修復術を受けたとのことです。

 受傷6カ月で症状固定、膝関節に機能障害はなく、圧痛と動作痛が認められました。左鎖骨骨折で12級5号は問題ないとして、右膝関節は神経症状で14級9号が認定されました。膝に関しては事故との因果関係に疑問が残りますが、14級が併合されても等級が上がりません(併合12級)ので、”ついでに”認定された印象です。   Ⅱ.

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 膝離断性骨軟骨炎(しつりだんせいこつなんこつえん)

 骨の間に欠片が挟まると、痛み、運動制限を生じます。

  (1)病態

 膝関節の中に大腿骨の軟骨が剥がれ落ちてしまう障害のことです。

 血流障害により、軟骨下の骨が壊死すると、骨軟骨片が分離し、進行すると関節内に遊離します。   (2)症状

 初期では、運動後の不快感や鈍痛の他は、特異的な症状の出現はありません。関節軟骨の表面に亀裂や変性が生じると疼痛も強くなり、日常の歩行でも支障を来します。

 さらに、骨軟骨片が関節の中に遊離すると、膝の曲げ伸ばしで、引っかかり感、ズレ感を生じ、関節に挟まると、激痛を発症、膝がロックして動かなくなってしまいます。

 一般的には、スポーツで、走行、跳躍、肘の回転などを繰り返し行うことで、関節に負担が蓄積して発症すると考えられています。

 関節遊離体は、1~2cmの大きさです。

 関節液の栄養を吸収して大きくなることがあります。自然に消える、小さくなることはありません。   (3)治療

 ロッキング症状、激痛があるときは、関節鏡視下で、生体吸収性ピンを用いて遊離、剥離した骨軟骨片を、欠損部に元通りに修復するオペが実施されています。

 遊離した骨軟骨片の損傷や変性が著しいときは、自家培養軟骨の移植術が行われています。   ◆ 自家培養軟骨

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 膝蓋骨々軟骨々折・スリーブ骨折 (しつがいこつこつなんこつこっせつ)    膝蓋骨シリーズ最後は、骨折、打脱臼を含め、後遺障害のポイントを解説します。    (1)病態

 膝蓋骨の裏の軟骨面は、大腿骨の前面の軟骨と関節を形成しています。これを、膝蓋大腿関節と呼びます。

 膝蓋骨々軟骨々折は、若年の女性に多く、膝蓋骨脱臼に伴うもので、膝蓋骨の内側に小さな軟骨片が残置しています。膝蓋骨が脱臼するとき、元の位置に戻るときに、大腿骨の外側の突起と膝蓋骨が衝突し、こすれあって、膝蓋骨軟骨々折が起こるのです。交通事故では、膝蓋骨脱臼後に軟骨々折を発症しています。   (2)症状

 膝の曲げ伸ばしで、痛みが生じます。

  (3)治療

 手術により、骨片を元の位置に戻すか、除去して固定します。スリーブ骨折は、10歳前後のサッカー、野球少年に多い膝蓋骨下端の剥離骨折で、骨片が小さく見逃されることが多いので要注意です。治療としては、保存的にギプスによる外固定を3~5週間行われています。   (4)膝蓋骨 骨折、膝蓋骨 脱臼、膝蓋骨 骨軟骨々折における後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 膝蓋骨々折(しつがいこつこっせつ)

(1)病態

 膝蓋骨は、膝関節の前方に位置し、膝のお皿と呼ばれる丸い骨のことです。膝蓋骨は、裏側の軟骨部で大腿骨と関節を有し、膝の曲げ伸ばし運動を滑らかに行い、膝関節の動きの中心としてサポートする役目を果たしています。

 私は、自動車で言えばバンパー、つまり、膝関節への直撃を和らげる衝撃吸収装置の役目も果たしていると考えているのですが、どの医学書にも、そのような記載はありません。膝蓋骨=膝のお皿が割れることで、内部の大腿骨&脛骨、靭帯や半月板など、膝関節を構成する重要なパーツが守られる?ことがあるようです。

 交通事故では、自転車、バイクと自動車の衝突で、車のバンパーで直撃を受ける、はね飛ばされて膝から転落する、ダッシュボードに膝部を打ちつけることで発症しており、膝部の外傷では、もっとも多発している骨折です。

  (2)症状

 症状は、強い痛みと膝関節の腫れが出現、膝を自動で伸ばすことができなくなります。骨折のパターンは、横骨折、縦骨折、粉砕骨折の3つです。    (3)治療

 骨片の離開のないときは、保存的に4~6週間程度のギプス固定がなされます。膝を伸ばす大腿四頭筋が急激に強く緊張する、つまり、介達外力により骨片が上下に離開した横骨折では、オペにより、キルシュナー鋼線とワイヤーで8の字固定が行われています。

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(4)後遺障害のポイント   Ⅰ.  秋葉事務所では、大人の脛骨顆間隆起骨折を、前十字靱帯損傷と捉えてアプローチしています。

 相談に来られる被害者さんの多くは、医師から「様子をみましょう」とだけ、さらに弁護士に委任したものの、終始「診断書を待っています」とだけ・・・無為無策で不安になった方々です。これら発見が遅れたもの、発見するも放置され陳旧化したものですが、まずはLachman(ラックマン)テストを行い、脛骨の前方引き出しの度合いを確認しています。

 膝を15~20°屈曲させ、前方に引き出します。前十字靱帯損傷では、脛骨が異常に引き出されます。

  Ⅱ.

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脛骨 顆間隆起骨折(けいこつ かかんりゅうきこっせつ)      (左図)右膝関節の正面骨格図、(右図) 𦙾骨近位端の後方図   (1)病態

 8~12歳の小児に好発、成人でも発生している前十字靭帯付着部の剥離、裂離骨折です。前十字靱帯損傷と同じですが、交通事故では、自転車やオートバイの転倒、田んぼや崖下への転落で発生しています。   (2)症状

 症状は、膝関節の捻挫、打撲後に、急激に膝関節が腫れて強い痛みを訴え、膝を伸展することができなくなります。   続きを読む »

(4)後遺障害のポイント   Ⅰ. 後遺障害の対象は、膝関節の可動域制限と疼痛です。弊所の経験則では、脛骨顆部骨折の多くで「4分の3以下の可動域制限」=12級7号が認定されています。

 20年前までは、「2分の1以下の可動域制限」=10級11号も多く認定されていたそうですが、関節鏡術が進化したこともあり、10級11号は減少傾向となっています。いずれも、可動域制限の原因を画像で示す必要があります。3DCTで変形骨癒合を、MRIで軟骨損傷、併発した靭帯損傷の程度を立証しなければなりません。

 総じて、この部位の骨折からは軽重様々な障害を予断する必要があります。基本通り、受傷時~症状固定時までの画像を見守りながら、立証計画を策定します。後遺障害申請はくじ引きではありません。回復努力を第一としつつ、あらゆる認定パターンを念頭に観察していく必要があります。    可動域制限の実例 👉 12級7号:脛骨プラトー骨折(40代男性・千葉県)   Ⅱ.

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  (1)病態

 大腿骨の中央部で関節を有していない部位を大腿骨々幹部といいます。交通事故では、この部位の骨折が多発しています。バイクを運転中、大腿部に車の衝突を受けたときは、意外と簡単にポッキリと骨折します。衝突の衝撃で空中に投げ出され、膝を地面に打ちつけて転倒したときは、捻れるように骨折します。衝突の衝撃が相当に大きいときは、粉々に骨折します。しかしながら、大腿骨々幹部は、比較的血行が保たれており、骨折後の骨癒合は良好です。   (2)症状

 症状は、骨折した部位の腫れ、疼痛と変形により患肢が短縮し、歩行はまったくできません。   (3)治療

 単純XP撮影で骨折の確認ができます。大腿骨々幹部骨折ですが、2000年頃までは直達牽引(下図)+ギプス固定の保存療法が主体でした。昔のドラマでおなじみですが、石膏のギブスで固定します。お見舞いに来た悪友が卑猥な落書きをするものでした。      現在、ほとんどの整形外科医は、直達牽引後のギプス固定は、入院期間が長くなること、長期の固定による精神的・肉体的ストレス、筋萎縮、関節拘縮などの合併症を無視できないことから、入院期間を短縮し、合併症を最小限にする固定術を積極的に採用しています。小児の骨折であっても、同様にオペが選択されており、歓迎できる傾向です。   続きを読む »

 大腿骨転子部・転子下骨折(だいたいこつてんしぶ・てんしかこっせつ)     (1)病態

 従来、関節包の内側骨折を大腿骨頚部内側骨折、関節包の外側骨折を大腿骨頚部外側骨折と2つに分類していたのですが、最近では、欧米の分類にならって、関節包の内側骨折を大腿骨頚部骨折とし、関節包の外側骨折を大腿骨転子部骨折、大腿骨転子下骨折と3つに分類しています。

 大腿骨転子部骨折は、足の付け根部分の骨折であり、交通事故では、自転車・原付VS自動車の衝突で、自転車・原付の運転者に多発しています。高齢者の転倒では、橈骨遠位端部、上腕骨近位端部と大腿骨頚部・転子部の骨折が代表的です。   (2)症状

 転子部・転子下骨折では、事故直後から足の付け根部分に激しい痛みがあり、立つことも、歩くこともできません。骨折折の転位が大きいときは、膝や足趾が外側を向き、外観からも、変形を確認できます。   (3)治療

 単純XP撮影で、大腿骨転子部に骨折が見られ、確定診断となります。安定型、不安定型のどちらであっても、早期離床を目的として、ほとんどで、手術が選択されています。早期の手術、早い段階からリハビリテーションで、起立、歩行ができるように治療が進められています。大腿骨転子部骨折は、頚部骨折に比べて血液供給のいい部位であり、骨癒合は比較的順調です。

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