シリーズ最終回です。 損保マンの誰もが知っている、古典的な保険金詐欺を2つ挙げましょう。
 

1、追突された自動車のトランクに南宋時代の壺

 


 追突された自動車のトランクに都合よく骨董品の壺が積まれていました。経験上、何故か南宋ものが多い。

 この被害者さん、最初は「自動車の修理費だけ弁償してくれればいいよ、警察へ届けると免停になって大変でしょ」と優しく言って、警察への届出をさせないよう仕向けます。ほっとした加害者さん、安めの修理費を振り込んだ後になってから、「実はトランクに積んでいた南宋時代の壺が割れていた。時価500万円なんだが・・」と請求がきます。インチキ臭い壺に似合わす、箱はなぜか大層です(桐の箱が多い)。詐欺者である被害者はいよいよ牙を剥き、加害者の弱腰加減と懐具合を見当しつつ、お次は「むち打ちで働けなくなった」等々、警察の介入のないまま、ズルズル請求を続けます。

 慌てて(自動車)保険会社を介入させても、彼らは対物担当者相手に、粘り強く壺の代金をディスカウントして請求を続けます。担当者は当然、びた一文払いません。損保は詐欺者に対して徹底した態度を貫きます。あるいは、「恐れ入ります、損害調査中ですのでお待ち下さい」と、のらりくらり支払に応じません。もちろん、本当に中島 誠之助先生に壺の鑑定などださないでしょう(脳内でテレビ「なんでも鑑定団」の鑑定中のテーマを流して下さい♪)。

 対して、(詐欺野郎の)被害者も保険金請求訴訟などほのめかすものの、いずれ引き下がります。詐欺者は商売上、目立ちたくないものです。実際に裁判などしたら、保険会社に名が知れ、次の仕事に支障します。取れないと判断したら、さっさと次の獲物に切り替えます。

 もし、すでに契約者がいくらか払ってしまった場合ですが・・・残念ながら、保険会社はその金額を契約者に払わないでしょう。約款上、保険会社の承諾の無い支払に対しては免責を主張できます(ご愁傷様です)。
 

2、事故でローレックスが壊れた・・ではなく、ブルガリが

 

 

 自動車同士が出会い頭で衝突しました。自動車の損傷は大したことなく、保険会社同士の話し合いで終わると思いきや・・数日後、「実はローレックスが割れていたんだよ」と後出しジャンケンさながら、割れたローレックスの腕時計を保険会社に持参してきます。事故直後から数日間、一切時計を見なかったのでしょうか。また、一体どこにぶつけて割れたのでしょうか。それなりの言い訳を用意しているようですが・・・やはり、損保マンは(「また、古典的な手口を・・」とため息ついて)支払いに応じません。

 これも使い古された手口です。圧倒的にローレックスが多い。東京・上野のアメ横で、何故か割れたばったもん(中国製)のローレックスが売っているそうです。誰が買うのか不思議でしたが、ニーズがあったのです。

 私の経験では数年前、交通事故相談会に参加した被害者さんで、「ブルガリが壊れた」と訴える方がおりました。思わず、「ええっ!ローレックスではないのですか?」と、逆に質問してしまいました(ローレックスは売り切れていたのか?)。もちろん、事故状況などから不自然な損害ですから、損保はブルガリの弁償をしないでしょう。

 ここからは私の妄想ですが・・・彼から保険会社SCに電話がかかってくると、電話にでた社員は「あの○○さんから電話です、ブルガリの」と担当者につなぎます。次からは、「ブルガリから電話です」と、社内で統一されていることでしょう。それだけ、ローレックスではないブルガリは珍しいのです。ちなみに、翌年の大阪相談会では、カルティエが登場したそうです。この方も保険会社内では「カルティエ」とあだ名されると思います。

銀座3丁目のブルガリ

 

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