膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)

左から、正常・亜脱臼・脱臼

 
(1)病態

 膝蓋骨脱臼とは、膝のお皿が、膝の正面の本来の位置から外れることで、膝の構造・形態的特徴から、ほとんどは、大腿骨に対して外側に脱臼しています。膝蓋骨は膝の輪切り図では、大腿骨正面の溝にはまるような位置にあります。膝蓋骨が溝を乗り越えて外れることを脱臼、乗り越えてはいないが、ずれることを亜脱臼と呼びます。

 膝蓋骨は、太ももの側では大腿四頭筋という強い筋肉に、すねの側では膝蓋腱という線維につながり脛骨に連結しています。膝蓋骨は、曲がった膝を伸ばすときに、滑車のような役目で大腿四頭筋の筋力を脛骨側に伝えるサポートをしています。

 膝蓋骨脱臼は10代の若い女性に多く発症し、スポーツ活動中などに起こります。膝蓋骨脱臼は、ジャンプの着地などで筋肉が強く収縮したときや、膝が伸びた状態で急に脛骨を捻るような力が加わったとき、膝蓋骨を打撲したときに発症していますが、元々膝蓋骨が脱臼しやすい身体的条件、膝蓋骨に向き合う大腿骨の溝が浅い、膝蓋骨の形成不全、膝蓋腱の付着部が外側に偏位しているなど、遺伝的要因のある人に起こりやすいといわれています。
 
(2)症状

 脱臼したときは、膝に強い痛みや腫れを生じます。脱臼を発症しても、多数例で膝蓋骨は病院に搬送される前に、元の位置に戻ります。

 
(3)治療

 脱臼に伴い、50%の被害者に、軟骨や骨の損傷が起こるといわれますが、その程度によっては早期に手術が必要になることもあります。手術が必要ないと判断されたときは、まず膝を装具、サポーターなどで固定することになります。

 痛みや関節の腫れが改善した段階では、徐々に体重をかけて歩き、膝を動かすようにします。
 
ダイナミックパテラブレース
 
 膝蓋骨脱臼の20~50%に再脱臼が起こると報告されています。再脱臼をしなくても、50%以上に、痛みや膝の不安定感などの症状が残ります。再脱臼を予防するための治療として、リハビリや運動用の装具による治療を行います。

 リハビリでは、膝蓋骨が外側にずれるのを防ぐように膝蓋骨の内側につく筋肉を強化、膝蓋骨を外側に引き寄せる筋肉や靭帯をストレッチで柔軟性を高める、脱臼を誘発するような姿勢や動作を回避するような運動を繰り返して練習します。

 運動用の装具は、膝蓋骨が外側にずれるのを防ぐ構造物のついたものを使用します。装具は脱臼後の早い時期に日常生活で使用、その後の一定期間はスポーツなどで使用します。
  
(4)後遺障害のポイント
 
「膝蓋骨々軟骨々折・スリーブ骨折」のところで、まとめて解説しています。
 
 次回 ⇒ 膝蓋骨々軟骨々折・スリーブ骨折 そして、後遺障害のポイント